上 下
176 / 218

174 お腹の中の邂逅

しおりを挟む
「むう……なにやら見覚えのあるダンジョンなのねー」

 宝箱のトラップで、どこかへ飛ばされたねこさん。どうやらどこかのダンジョン内にいるようだ。

「この下り階段……嫌な予感しかしないのね……」

 今にもまたたびの香りが漂ってきそうな階段に、顔をしかめた。

 ずどーん、ずどーん!

 唐突に、あの足音が響いてくる。そう、忘れもしない地響きを伴って。

「やっぱりここは……ダンジョンまたたび……なのねー」

 ぬ、とまたたびゴーレムが階下から顔を出した。その巨大な目が、赤々と光っている。

「……」

 全身から嫌な汗が噴き出す。トラウマが蘇り、体が動かなかった。

 ぐおおおぉおおぉおおっ!!

「っ!?」

 おぞましい咆哮に、縮み上がる……と、その時。

「悪い冗談は……やめてよ……」

 不意に背後から悲痛なつぶやきが聞こえ、絶望で崩れ落ちるような誰かの気配を感じた。

 そろり、と振り返るとそこには……うずくまりながらすすり泣くキジメロの姿があった。

「キジメロさん……?」

「え……」

 ゆっくりと顔を上げた彼女の視線とねこさんの視線が絡み合う。

「ねこさん……どうして?」

「ねこさんにもわからないのね……」

 本来いるはずがない場面に突如現れたねこさん。その事で、キジメロが冷静さを取り戻していく。

「あたしは魔法生物に、食べられたんだ……今見せられたのは、過去のトラウマ……たぶん、精神攻撃系の奴なんだ」

「む……という事は、ねこさん、それのお腹の中に飛ばされていたのね?」

「たぶん……」

 キジメロが、こくりと頷いた。

「ふーむ、その魔法生物の攻撃で、ダンジョンまたたびの光景が見えた……と?」

「え!? ねこさんは、ダンジョンまたたびに行ったことがあるの?」

「少し前にいったのねー! でも、こてんぱんだったのね……」

 複雑な笑みを浮かべるねこさんに、彼女は何だかほっとしていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

レベルアップしない呪い持ち元神童、実は【全スキル契約済み】 ~実家を追放されるも呪いが無効な世界に召喚され、爆速レベルアップで無双する~

なっくる
ファンタジー
☆気に入っていただけましたら、ファンタジー小説大賞の投票よろしくお願いします!☆ 代々宮廷魔術師を務める名家に庶子として生まれたリーノ、世界に存在する全ての”スキル”を契約し、一躍神童と持ち上げられたがレベルアップ出来ない呪いが 発覚し、速攻で実家を追放されてしまう。 「”スキル辞典”のリーノさん、自慢の魔術を使ってみろよ!」 転がり込んだ冒険者ギルドでも馬鹿にされる日々……めげないリーノは気のいい親友と真面目な冒険者生活を続けていたのだが。 ある日、召喚獣として別世界に召喚されてしまう。 召喚獣らしく目の前のモンスターを倒したところ、突然リーノはレベルアップし、今まで使えなかったスキルが使えるようになる。 可愛いモフモフ召喚士が言うには、”こちらの世界”ではリーノの呪いは無効になるという……あれ、コレってレベルアップし放題じゃ? 「凄いですっ! リーノさんはわたしたちの救世主ですっ!」 「頼りにしてるぜ、リーノ……ふたりで最強になろうぜ!」 こっちの世界でも向こうの世界でも、レベルアップしたリーノの最強スキルが大活躍! 最強の冒険者として成り上がっていく。 ……嫉妬に狂った元実家は、リーノを始末しようととんでもない陰謀を巡らせるが……。 訪れた世界の危機をリーノの秘儀が救う? 「これは……神の御業、NEWAZAですねっ!」 「キミを押さえ込みたいんだけど、いいかな?」 「せ、せくはらですっ!」 これは、神童と呼ばれた青年が、呪いの枷から解き放たれ……無数のスキルを駆使して世界を救う物語。 ※他サイトでも掲載しています。

器用貧乏の底辺冒険者~俺だけ使える『ステータスボード』で最強になる!~

夢・風魔
ファンタジー
*タイトル少し変更しました。 全ての能力が平均的で、これと言って突出したところもない主人公。 適正職も見つからず、未だに見習いから職業を決められずにいる。 パーティーでは荷物持ち兼、交代要員。 全ての見習い職業の「初期スキル」を使えるがそれだけ。 ある日、新しく発見されたダンジョンにパーティーメンバーと潜るとモンスターハウスに遭遇してパーティー決壊の危機に。 パーティーリーダーの裏切りによって囮にされたロイドは、仲間たちにも見捨てられひとりダンジョン内を必死に逃げ惑う。 突然地面が陥没し、そこでロイドは『ステータスボード』を手に入れた。 ロイドのステータスはオール25。 彼にはユニークスキルが備わっていた。 ステータスが強制的に平均化される、ユニークスキルが……。 ステータスボードを手に入れてからロイドの人生は一変する。 LVUPで付与されるポイントを使ってステータスUP、スキル獲得。 不器用大富豪と蔑まれてきたロイドは、ひとりで前衛後衛支援の全てをこなす 最強の冒険者として称えられるようになる・・・かも? 【過度なざまぁはありませんが、結果的にはそうなる・・みたいな?】

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!(改訂版)

IXA
ファンタジー
凡そ三十年前、この世界は一変した。 世界各地に次々と現れた天を突く蒼の塔、それとほぼ同時期に発見されたのが、『ダンジョン』と呼ばれる奇妙な空間だ。 不気味で異質、しかしながらダンジョン内で手に入る資源は欲望を刺激し、ダンジョン内で戦い続ける『探索者』と呼ばれる職業すら生まれた。そしていつしか人類は拒否感を拭いきれずも、ダンジョンに依存する生活へ移行していく。 そんなある日、ちっぽけな少女が探索者協会の扉を叩いた。 諸事情により金欠な彼女が探索者となった時、世界の流れは大きく変わっていくこととなる…… 人との出会い、無数に折り重なる悪意、そして隠された真実と絶望。 夢見る少女の戦いの果て、ちっぽけな彼女は一体何を選ぶ? 絶望に、立ち向かえ。

処理中です...