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164 うっかりネコサン

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『あ……』

 かりかりダンジョンの入り口に到着した途端、ネコサンが立ち尽くした。

「どうしたのねー?」

 だが、いつもと特に変わりないダンジョンの光景に、ねこさんたちは疑問の色を浮かべている。

『こ、こ……ここにあったはずの看板は、どこに行ったんだ……』

 入ってすぐの壁付近を指さす。

「「……看板……ですか?」」

 ギルマスたちが、何やら記憶を必死に遡っているようだ。

「「あ!」」

 そして上がった声には、どこか焦ったような響きが含まれていた。

「そういえば……ネコサンと会う前までは、ここにそんなのがあったような気がするのねー」

 冷や汗を垂らしている二匹とは対照的に、お気楽につぶやくねこさん。

『という事は……ワタシがご主人のアパートへ移住した後に、何かが起こったのか……』

 うーむ、と腕を組み首を捻る様子が、主従で完全にシンクロしていた。

「あ、あのう……」

「そ、そのう……」

 そこへギルマスとキジトラがびくびくと声をかけた。

「「すいませんでした!」」

 突然の謝罪に、ネコサンが慌てて振り返る。

『な、何かあったのか?』

 そして、冷静を装いつつ二匹に視線を送った。

「「じ、じつは……」」


 二匹の言い分はこうだった。

 ──ダンジョンキーパーを語る悪質な看板を撤去しようとギルド連で決まったが、てこでも動かなかった。
 それがある日突然動かせるようになったと聞き、早々に処分した。
 当時はダンジョンキーパーなんて大昔の話と思っていたので、特に疑問に思わなかった──

『なるほど……そういう事だったのか』

 黙って聞いていたネコサンが、そう言うと再び考え込む。

「本当にすいません……」

「何とお詫びしたらよいのか……」

『……いや、いい。ワタシが遠隔管理に切り替えた間隙をついて行われたことだろう。それに、今まで確認を怠っていた私も悪い。だから気にするな』

「「そう言っていただけると助かります」」

『まあ今後は何かあったらここへ連絡してくれ』

 言い終わるとすぐに新しい看板を口から取り出して、定位置と思われる場所に設置した。

「「わかりました」」

『それから、今回の事で今の時代の猫たちが、ワタシたちをどう認識しているのかが分かった。よって他ダンジョン無断使用の件も不問とする』

「対抗戦は、どうなるのねー?」

『もちろん開催していいぞ』

「「はは~っ!!」」

 ギルマスたちは土下座し、ネコサンを拝み倒していた。


 ちなみに、新しい看板にはこう書かれていた。

 ダンジョンは、冒険、トレジャーハント等が目的であれば、自由に戦闘、探索等が行えます。
 ただし、それ以外の目的で使用する際は、下記までご連絡ください。
 なお、個人単位での連絡も受け付けておりますが、可能な限り所属ギルドを通してご連絡いただけると助かります。

 ※それ以外とは、催し物の開催等になります。
  また、犯罪行為及びそれに付随するような行為は禁止されております。
  絶対にやめましょう。
  必ずバレます。そして、生きている事を後悔するような目にあいます。
  ダンジョンキーパーは、口だけではありません。

  かりかりダンジョン ダンジョンキーパー チャトラッシュ
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