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155 鬼の10割コンボ、炸裂する!

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『先手必勝!』

 開幕直後、ネコサン操るアンキモが、ハイパー必殺技をかました。

 雷鳴バスターナッコー!

「またやった!? 1ラウンド目の開幕で、ハイパー必殺技は出せないはずなのねー! それにこれはテリヤキの技なのね!」

『さあ、ぶち! 泣けえ! 喚けええ……え?』

 がしいっ! とカルビが難なくそれをガードした。

『兄貴、こんな大技ぶっぱしても、中級者以上なら即ガードしますぜ』

 ぶちはあくまで冷静に言ってのけた。

『それにこんなにめり込んじゃあ……はい、反確』

 そして素早く➡︎+中Kを入力する。

 カルビの蹴り上げになすすべなく宙に浮くアンキモ。

『あ?』

 そこからは素人には分からないコントローラー捌きだった。

 びし、びし、びしし、がきん、ごん、がん、げん、だん!

「あ、地面に落ちちゃったのね……」

『む、コンボが途切れたか? 反撃──』

『うーん、拾えるかな?』

 地面に激突して若干バウンドしたアンキモを、ギリギリのタイミングでカルビの蹴りが拾い上げた。

『うそーん!?』

 クールなネコサンらしからぬ声が、六畳間に響く。

 がががーん、がん、ごん、げがん、ざしゅ、ばい~ん!

(あ! かなり高く蹴り飛ばされたわよ!)

「そ、それより体力ゲージがもうヤバイのね……」

『じゃあ最後はこれで』

 ぶちの指が目にも止まらぬ速さで動いた。

 んん~超回転炭火蹴り!

 炎をまとったカルビが高速回転して、落ちてきたアンキモをその蹴りに巻き込んだ。

 ががががが……がが……ごいーん!

 けーおー! ぷあーふぇくと!!

『……』

 呆然としたロボ兄貴が、ドックからそっとケーブルを抜いた。

『あれ? 兄貴、まだ終わってませんよ?』

『いや、もういい』

 そして、台所へと消えていった。

『じゃあ、ご主人。やりま──』

「すす、すごいのねー! ねこさん10割コンボなんて初めて見たのねー! ぶち……いや、師匠! ねこさんにも教え欲しいのね!!」

 目をらんらんと輝かせたねこさんが、ぶちに迫った。

『わ、わかりやした、わかりやしたから、少し落ちつきましょう』

「あ、ごめんなのねー」

 諫められて若干クールダウンしたねこさんが、ぶちの目の前に正座した。

「それで師匠! 師匠みたいになるには、どうしたらいいですか?」

『そうですねー……まずは規則正しい生活を送る事』

「あ?」

『それから好き嫌いせずに何でも食べる事』

「え、えーと……」

 ぶちの口から出てきた言葉に、困惑を隠せないねこさん。

『いいですかい、ご主人。ゲームとは言え格ゲーは格闘技でさあ。心技体そろって初めて本物と言えるんでさあ』

「そうなのね……ねこさん、少し甘く見ていたのねー」

『なあに、今から改めりゃあいいんでさあ』

「わかったのね!」

 仏様のようなぶちの眼差しに、大きくねこさんが頷いた。

『てわけで、兄貴。後の事はお任せいたしやす』

『……おう』

 台所から小さな返事が響いた。

 そのネコサンの表情は、自分のふがいなさに対する呆れと、弟分の成長に対する喜びとで、複雑極まりないものになっていた。
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