148 / 218
146 新感覚飲料
しおりを挟む
花火大会も終わると、一気に秋本番が……やってこない。
かりかりタウンは連日の猛暑日続きで、観測史上初の○○を連発していたのだ。
そんな全猫たちがぐったりとしている中、新たな○○史上初が生まれようとしている!
「あ、あちゅいのねー……」
主役はそう、ねこさんだ。
バイトも終わり、いつもの帰り道を汗を拭きながら歩いている。
「西日がきついのね……」
沈んでいく太陽が、置き土産の如く強烈な日差しをお見舞いしていた。
「……事務所でお水を一杯貰えばよかったのね」
早く帰りたい一心で、うっかり水分補給を忘れたねこさん。
「流石にきつくなってきたのねー……む? これは……」
そんな彼の目に飛び込んできたのは、道端に佇む一台の自動販売機だった。
当たりがでたら1本サービス!
これでもかと自己主張するその文言が、ねこさんを捉えて離さない。
「ま、当たらないのはわかっているけど……」
喉の渇きも限界間近だったので、ふらふらとそれに近づいていった。
「全品100えんなのねー……でも、ラインナップが微妙なのねー」
一瞬ほころびかけた頬が、しょんぼりと戻っていく。
スポーツドリンクや炭酸系が全くない……あったのはこれだけだった。
冷やしおでん缶 冷やしおでん缶 冷やしおでん缶 サスガ 冷やしおでん缶
「……え? サスガって、あの伝説の? え? 復刻されてたっけ?」
サスガ……それは、今からウン十年前に販売されていた、個性的すぎる味の清涼飲料水。それを飲んだ猫たちは、ことごとく地獄のそこへ突き落されたという……。
もちろんねこさんは飲んだことはなかったが、その存在はいまだに語り継がれていて、かりかりタウンで知らない猫はいない程の代物なのだ。
それが今、目の前にある。
「……」
ちゃりーん!
無言で硬貨を投入すると、震える肉球で購入ボタンを押し込んだ。
がごーん!
何だかその音にさえ、王者の威厳を感じてしまうねこさんだった。
ゆっくりとブツを取りだして、隅々まで観察する。
新感覚飲料 サスガ
好奇心を刺激するキャッチコピーに、ねこさんの喉が鳴った。
「消費期限は……問題ないみたいなのね……それでは!」
年代を感じるプルタブに指をかけ、一気に開け放つ。
ぷし!
心地よい音が響いた。
「……タブが取れるタイプは初めてなのね」
ねこさんにとって何かと新感覚なのは、間違えではなかったようだ。
「……」
恐る恐る匂いをかいでみる。
「え……なんだ、おいしそうな匂いなのねー」
爽やかなコーラ系のような匂いに、なんだか肩透かしを食らったようにきょとんとするねこさん。
「これは楽しみなのね!」
警戒心を解き、一気に口に含んで……。
「~~~~~~~~っ!?」
どたーん!
もんどりうって倒れ込んだねこさんが、気絶した……。
ねこさん史上初の新感覚飲料は、そのあまりにも個性的すぎる味によって、記憶から抹消されたのだった!?
かりかりタウンは連日の猛暑日続きで、観測史上初の○○を連発していたのだ。
そんな全猫たちがぐったりとしている中、新たな○○史上初が生まれようとしている!
「あ、あちゅいのねー……」
主役はそう、ねこさんだ。
バイトも終わり、いつもの帰り道を汗を拭きながら歩いている。
「西日がきついのね……」
沈んでいく太陽が、置き土産の如く強烈な日差しをお見舞いしていた。
「……事務所でお水を一杯貰えばよかったのね」
早く帰りたい一心で、うっかり水分補給を忘れたねこさん。
「流石にきつくなってきたのねー……む? これは……」
そんな彼の目に飛び込んできたのは、道端に佇む一台の自動販売機だった。
当たりがでたら1本サービス!
これでもかと自己主張するその文言が、ねこさんを捉えて離さない。
「ま、当たらないのはわかっているけど……」
喉の渇きも限界間近だったので、ふらふらとそれに近づいていった。
「全品100えんなのねー……でも、ラインナップが微妙なのねー」
一瞬ほころびかけた頬が、しょんぼりと戻っていく。
スポーツドリンクや炭酸系が全くない……あったのはこれだけだった。
冷やしおでん缶 冷やしおでん缶 冷やしおでん缶 サスガ 冷やしおでん缶
「……え? サスガって、あの伝説の? え? 復刻されてたっけ?」
サスガ……それは、今からウン十年前に販売されていた、個性的すぎる味の清涼飲料水。それを飲んだ猫たちは、ことごとく地獄のそこへ突き落されたという……。
もちろんねこさんは飲んだことはなかったが、その存在はいまだに語り継がれていて、かりかりタウンで知らない猫はいない程の代物なのだ。
それが今、目の前にある。
「……」
ちゃりーん!
無言で硬貨を投入すると、震える肉球で購入ボタンを押し込んだ。
がごーん!
何だかその音にさえ、王者の威厳を感じてしまうねこさんだった。
ゆっくりとブツを取りだして、隅々まで観察する。
新感覚飲料 サスガ
好奇心を刺激するキャッチコピーに、ねこさんの喉が鳴った。
「消費期限は……問題ないみたいなのね……それでは!」
年代を感じるプルタブに指をかけ、一気に開け放つ。
ぷし!
心地よい音が響いた。
「……タブが取れるタイプは初めてなのね」
ねこさんにとって何かと新感覚なのは、間違えではなかったようだ。
「……」
恐る恐る匂いをかいでみる。
「え……なんだ、おいしそうな匂いなのねー」
爽やかなコーラ系のような匂いに、なんだか肩透かしを食らったようにきょとんとするねこさん。
「これは楽しみなのね!」
警戒心を解き、一気に口に含んで……。
「~~~~~~~~っ!?」
どたーん!
もんどりうって倒れ込んだねこさんが、気絶した……。
ねこさん史上初の新感覚飲料は、そのあまりにも個性的すぎる味によって、記憶から抹消されたのだった!?
0
お気に入りに追加
50
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
転生幼女の怠惰なため息
(◉ɷ◉ )〈ぬこ〉
ファンタジー
ひとり残業中のアラフォー、清水 紗代(しみず さよ)。異世界の神のゴタゴタに巻き込まれ、アッという間に死亡…( ºωº )チーン…
紗世を幼い頃から見守ってきた座敷わらしズがガチギレ⁉💢
座敷わらしズが異世界の神を脅し…ε=o(´ロ`||)ゴホゴホッ説得して異世界での幼女生活スタートっ!!
もう何番煎じかわからない異世界幼女転生のご都合主義なお話です。
全くの初心者となりますので、よろしくお願いします。
作者は極度のとうふメンタルとなっております…
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
欠損奴隷を治して高値で売りつけよう!破滅フラグしかない悪役奴隷商人は、死にたくないので回復魔法を修行します
月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
主人公が転生したのは、ゲームに出てくる噛ませ犬の悪役奴隷商人だった!このままだと破滅フラグしかないから、奴隷に反乱されて八つ裂きにされてしまう!
そうだ!子供の今から回復魔法を練習して極めておけば、自分がやられたとき自分で治せるのでは?しかも奴隷にも媚びを売れるから一石二鳥だね!
なんか自分が助かるために奴隷治してるだけで感謝されるんだけどなんで!?
欠損奴隷を安く買って高値で売りつけてたらむしろ感謝されるんだけどどういうことなんだろうか!?
え!?主人公は光の勇者!?あ、俺が先に治癒魔法で回復しておきました!いや、スマン。
※この作品は現実の奴隷制を肯定する意図はありません
なろう日間週間月間1位
カクヨムブクマ14000
カクヨム週間3位
他サイトにも掲載
婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが
マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって?
まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ?
※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。
※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる