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146 新感覚飲料

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 花火大会も終わると、一気に秋本番が……やってこない。

 かりかりタウンは連日の猛暑日続きで、観測史上初の○○を連発していたのだ。

 そんな全猫たちがぐったりとしている中、新たな○○史上初が生まれようとしている!

「あ、あちゅいのねー……」

 主役はそう、ねこさんだ。

 バイトも終わり、いつもの帰り道を汗を拭きながら歩いている。

「西日がきついのね……」

 沈んでいく太陽が、置き土産の如く強烈な日差しをお見舞いしていた。

「……事務所でお水を一杯貰えばよかったのね」

 早く帰りたい一心で、うっかり水分補給を忘れたねこさん。

「流石にきつくなってきたのねー……む? これは……」

 そんな彼の目に飛び込んできたのは、道端に佇む一台の自動販売機だった。

 当たりがでたら1本サービス!

 これでもかと自己主張するその文言が、ねこさんを捉えて離さない。

「ま、当たらないのはわかっているけど……」

 喉の渇きも限界間近だったので、ふらふらとそれに近づいていった。

「全品100えんなのねー……でも、ラインナップが微妙なのねー」

 一瞬ほころびかけた頬が、しょんぼりと戻っていく。

 スポーツドリンクや炭酸系が全くない……あったのはこれだけだった。

 冷やしおでん缶 冷やしおでん缶 冷やしおでん缶 サスガ 冷やしおでん缶

「……え? サスガって、あの伝説の? え? 復刻されてたっけ?」

 サスガ……それは、今からウン十年前に販売されていた、個性的すぎる味の清涼飲料水。それを飲んだ猫たちは、ことごとく地獄のそこへ突き落されたという……。

 もちろんねこさんは飲んだことはなかったが、その存在はいまだに語り継がれていて、かりかりタウンで知らない猫はいない程の代物なのだ。

 それが今、目の前にある。

「……」

 ちゃりーん!

 無言で硬貨を投入すると、震える肉球で購入ボタンを押し込んだ。

 がごーん!

 何だかその音にさえ、王者の威厳を感じてしまうねこさんだった。

 ゆっくりとブツを取りだして、隅々まで観察する。

 新感覚飲料 サスガ

 好奇心を刺激するキャッチコピーに、ねこさんの喉が鳴った。

「消費期限は……問題ないみたいなのね……それでは!」

 年代を感じるプルタブに指をかけ、一気に開け放つ。

 ぷし!

 心地よい音が響いた。

「……タブが取れるタイプは初めてなのね」

 ねこさんにとって何かと新感覚なのは、間違えではなかったようだ。

「……」

 恐る恐る匂いをかいでみる。

「え……なんだ、おいしそうな匂いなのねー」

 爽やかなコーラ系のような匂いに、なんだか肩透かしを食らったようにきょとんとするねこさん。

「これは楽しみなのね!」

 警戒心を解き、一気に口に含んで……。

「~~~~~~~~っ!?」

 どたーん!

 もんどりうって倒れ込んだねこさんが、気絶した……。

 ねこさん史上初の新感覚飲料は、そのあまりにも個性的すぎる味によって、記憶から抹消されたのだった!?
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