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140 限定スキル、発動!
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さっきまで灼熱の日差しで存分に地上を焼いていた太陽が、黒い雲に覆われた。
冷たい風がねこさんの全身に吹き付ける。
その耳に、ごろごろと雷の産声が聞こえてきた。
「やばいのねー」
バイトを終えて帰路についた途端の急変であった。
「引き返すか‥‥‥いや、このまま帰るのねー」
強行突破を決意したねこさんが、ずだだだー、と勢い良く駆け出した。
それを見透かしたかのように大粒の雨が、自由落下を開始する。
「ぬわー、もうちょっと耐えて欲しかったのねー、って、いだーっ!?」
雨粒に白い塊が混入していた。
「こ、これは‥‥‥」
かん! がん! こん! ぎん! がががんっ!!
五百えん玉大の氷塊が、無慈悲に掃射される。その凶弾に、建物や車から切ない悲鳴が上がった。
「雹が降るなんて、聞いてないのねー!? あぎゃ、いだだだだー!!」
そして生身で突っ走るねこさんは、その餌食となり悲鳴を上げるしかなかった‥‥‥。
「うおー! ここはねこバリアに賭けるのねー!!」
ぽわん、と体を優しい光が包んだ。その穏やかな見た目とは裏腹に、乱れ打ちされる雹を完全にシャットアウトして見せた。
「アパートまで、あと約二キロくらいなのねー!」
ねこさんが全力で走って、およそ八分。魔力増加の特訓を開始したばかりの現状では、約六秒しかもたない計算だが‥‥‥。
「あ、ああ‥‥‥」
魔力枯渇の兆候が出始めた。頭の中が真っ白になり、全身がふわふわとしている。
「こ、根性ー!」
実際根性でどうにかなるのは、それに見合う積み重ねがあってこそだ。
ねこさんは、トレジャーハンターとして、死地を何度も潜り抜けてきた。
それは、確固たる裏打ちになる。
魔力が全身を駆けめぐったあの日、それらがトリガーとなり、体質に変化があった。
『瀕死時体力及び魔力リジェネ発動』
今、雹の被弾と全力疾走での体力低下に魔力の枯渇が重なり、発動条件をクリアしたのだ。
「お? おおっ!?」
もりもり沸き上がる体力と魔力に、ねこさんの足が軽やかに回転数を上げていく。
呼応するように雨脚が強まる。雹の大きさも、ゴルフボール位の物が混じりだしていた。
かっ、と雷光が瞬き、間髪入れずに雷鳴が轟いた。
「なのねー!」
だがその程度で今のねこさんは止められない。
この日、ねこさんはマラソンランナー顔負けのスピードで駆け抜けたのだった。
冷たい風がねこさんの全身に吹き付ける。
その耳に、ごろごろと雷の産声が聞こえてきた。
「やばいのねー」
バイトを終えて帰路についた途端の急変であった。
「引き返すか‥‥‥いや、このまま帰るのねー」
強行突破を決意したねこさんが、ずだだだー、と勢い良く駆け出した。
それを見透かしたかのように大粒の雨が、自由落下を開始する。
「ぬわー、もうちょっと耐えて欲しかったのねー、って、いだーっ!?」
雨粒に白い塊が混入していた。
「こ、これは‥‥‥」
かん! がん! こん! ぎん! がががんっ!!
五百えん玉大の氷塊が、無慈悲に掃射される。その凶弾に、建物や車から切ない悲鳴が上がった。
「雹が降るなんて、聞いてないのねー!? あぎゃ、いだだだだー!!」
そして生身で突っ走るねこさんは、その餌食となり悲鳴を上げるしかなかった‥‥‥。
「うおー! ここはねこバリアに賭けるのねー!!」
ぽわん、と体を優しい光が包んだ。その穏やかな見た目とは裏腹に、乱れ打ちされる雹を完全にシャットアウトして見せた。
「アパートまで、あと約二キロくらいなのねー!」
ねこさんが全力で走って、およそ八分。魔力増加の特訓を開始したばかりの現状では、約六秒しかもたない計算だが‥‥‥。
「あ、ああ‥‥‥」
魔力枯渇の兆候が出始めた。頭の中が真っ白になり、全身がふわふわとしている。
「こ、根性ー!」
実際根性でどうにかなるのは、それに見合う積み重ねがあってこそだ。
ねこさんは、トレジャーハンターとして、死地を何度も潜り抜けてきた。
それは、確固たる裏打ちになる。
魔力が全身を駆けめぐったあの日、それらがトリガーとなり、体質に変化があった。
『瀕死時体力及び魔力リジェネ発動』
今、雹の被弾と全力疾走での体力低下に魔力の枯渇が重なり、発動条件をクリアしたのだ。
「お? おおっ!?」
もりもり沸き上がる体力と魔力に、ねこさんの足が軽やかに回転数を上げていく。
呼応するように雨脚が強まる。雹の大きさも、ゴルフボール位の物が混じりだしていた。
かっ、と雷光が瞬き、間髪入れずに雷鳴が轟いた。
「なのねー!」
だがその程度で今のねこさんは止められない。
この日、ねこさんはマラソンランナー顔負けのスピードで駆け抜けたのだった。
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