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130 お礼参りはふかひれを持って
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『そう言えばご主人、あめりかんの店長に挨拶したか?』
クーラーのきいた六畳間でダラダラとしているねこさんに、ロボが聞く。
「あ‥‥‥すっかり忘れてたのね」
寒いくらいの部屋なのに、冷や汗が頬を伝う。
『夕方になったらあれを持って行ってこい』
「あれ?」
『ふかひれだ。まだ残っているだろう?』
「ああ! わかったのね。お世話になったお礼としては最適なのねー」
得心した顔で、アイテムボックスをがさごそとやる。
『そうだ。礼には礼で返せば、ご主人の味方はどんどんと増えていく』
大きく頷いたねこさんの手に、大ぶりな乾燥ふかひれが持たれていた。
『うむ、いい大きさだな』
「なのねー」
そして、夕方。どこかで夕立でもあったのか、涼しい風が火照った街を優しく撫でていた。
「じゃあ行ってくるのね!」
『っと、ご主人! ふかひれはアイテムボックスに入れていけ!』
「あ‥‥‥」
しっかりと右手でつかんで出かけようとして、ネコサンにたしなめられた。
『直に持って行ったら、ご主人の手汗で戻ってしまうぞ』
「危なかったのねー」
肉球が汗ばむ前に、慌ててふかひれをアイテムボックスにしまい込むねこさんだった。
クーラーのきいた六畳間でダラダラとしているねこさんに、ロボが聞く。
「あ‥‥‥すっかり忘れてたのね」
寒いくらいの部屋なのに、冷や汗が頬を伝う。
『夕方になったらあれを持って行ってこい』
「あれ?」
『ふかひれだ。まだ残っているだろう?』
「ああ! わかったのね。お世話になったお礼としては最適なのねー」
得心した顔で、アイテムボックスをがさごそとやる。
『そうだ。礼には礼で返せば、ご主人の味方はどんどんと増えていく』
大きく頷いたねこさんの手に、大ぶりな乾燥ふかひれが持たれていた。
『うむ、いい大きさだな』
「なのねー」
そして、夕方。どこかで夕立でもあったのか、涼しい風が火照った街を優しく撫でていた。
「じゃあ行ってくるのね!」
『っと、ご主人! ふかひれはアイテムボックスに入れていけ!』
「あ‥‥‥」
しっかりと右手でつかんで出かけようとして、ネコサンにたしなめられた。
『直に持って行ったら、ご主人の手汗で戻ってしまうぞ』
「危なかったのねー」
肉球が汗ばむ前に、慌ててふかひれをアイテムボックスにしまい込むねこさんだった。
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