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104 祝! 退院ねこさん

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「あー、うん、いいでしょー?」

 三日後、ペルシャ先生最後の診察が終わり、太鼓判が押された。ちょっぴりその言葉尻に不安がよぎったねこさんだったが、ひとまずほっとしたのも事実だった。

「じゃあチンチラくん、後はよろしくー」

「はい、先生!」

 うむ、と頷くと、老先生は静かに部屋を出ていった。


「ねこさん、良かったですね! こんなに早く回復するなんて、さすが凄腕のトレジャーハンターさん!」

 きらきらとまぶしいその笑顔に、どぎまぎするねこさん。

「い、いやー、別にーー」

「はい、じゃあお尻出してくださいねー!」

 ねこさんの胸中など察していないかのように、チンチラは事務的にぶった切った。

 しかも、お尻を出せとの事で‥‥‥。

「‥‥‥え?」

「ん? どうしました?」

 笑顔に恐怖するのは、何度目だろうか?

「どうしても、出さなくちゃだめですか‥‥‥?」

「はい!」

 好ましく思っている女性にお尻なんか出せないのねー‥‥‥。

 そう目で訴えるが、相手もプロのナースである。一歩も引かずにニコニコとしている。

「わ、わかりました‥‥‥のねー」

 観念したねこさんが、ぽふ、とうつ伏せになり形のいいお尻が現れた。

「はい、じゃあ最後のお注射いっちゃいますね!」

「は、はへ? ちゅちゅ、注射なんてこれまで一度もーー」

 ひきつった顔をチンチラにむけると、その目に飛び込んできたのは‥‥‥。

「ひっ!? そ、そんなでっかいお注射見たことなーー」

 極太な注射器、そのずぶとい針先から薬剤が、ぴゅー、と飛び出していた。それを見るナースの瞳が、どこか狂気を帯びていた。

「はい、動かない!」

「ぎ、ぎ‥‥‥」

 がしぃ、と腰を押さえつけられると、がたがたと奥歯が鳴った。

「大丈夫大丈夫! 痛くないですよー?」

 またしても不安をあおる言葉尻である。

 反射的に、全身の筋肉がぎゅー、と硬くなった。

「力抜いて!」

 すぱーん! 

 お尻が心地よい音を響かせると、一瞬筋肉が緩んだ。そこを見逃さないチンチラナースである。

「えい☆」

 ぶっすー!!

「ぎゃああああぁあぁあー!?」

 何のお注射かは定かではないが、その激痛にねこさんの意識が刈り取られた。


 こうしてねこさんの退院は、数時間遅れることとなった‥‥‥。
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