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そして、ベリアモルゼへ
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兄さんの婿入りの前日である。
感傷的な午後を過ごしていたら、遠くから速足で近づいてくるレンタールの姿が見えた。
「アルメリア殿下。
お探ししました!
ガルディア様がお召しにゴザイマス」
「えぇ?
兄さんが?
今頃ベリアモルゼに向かう準備で忙しいと思ったけど。
何の御用だろう?」
そして、すぐに兄さんの自室に向かい、招き入れられた私は、兄さんの変貌ぶりに度肝を抜かされることになる。
「ににににに、兄さん?
兄さんだよね????」
私が驚くのも仕方がないことだ。
会っていなかった3か月の間に、兄さんは横方向に3倍くらい成長していた。
要するにめちゃくちゃ太っていた。
「なななななな何があったの?
病気?
はっ……!!!
ま、まさか、ノ、ロ、イ?」
私はあまりの変貌にただオロオロと狼狽するばかりだ。
「あほか、アルメリア。
ベリアモルゼに行ったら、少女趣味の女王のことだ。
美味しい飯もまわらんかもしれん!
だから、今のうちにと思って食べてたら、ちょっとばかり太っちゃっただけだ」
「えええええええええ?
ちょっとじゃないですよ?
全然ちょっとだけじゃないから!!!!!
だだだだだって、明日お婿行くんですよ?
だだだだだだ、だいたい、3か月前に作った花婿衣裳合わなくなったら、どうするの????
服が弾け飛んじゃいますよ?」
「そんなこと心配しなくて大丈夫だ!!」
「そそそそそそうなのですか?
作り直したんですね?
あ、それとも伸縮する衣装とか?」
「あほか。
アルメリア。
そんな無駄なことをするわけがない!!」
「え……???
それで本当に、大丈夫なんですか?」
「当たり前だ!」
私は、落ち着いた様子のガルディア兄さんに、やっと安心することができた。
ちょっとおバカさんと思ってたけど、ちゃんとするときは、ちゃんとするんだなぁ。
何がどうして大丈夫なのか、分からない。でも大丈夫ならよかったな、と私は思った。
次の言葉を聞くまでは。
「お前が着るんだから」
「……………………え????」
なんだろう。
私、耳がおかしくなったかな?
なんか今、花婿衣裳を私が着るみたいなこと言ってたような気がする。
「どうせ、3年、だけだ」
「えぇ?」
「父上の話だと、3年たったら、俺は、帰ってこれるそうだ」
「そうなのですか?」
「ああ。
実をいうとな、アルメリア。
女王との決め事では、最初は俺じゃなくて、お前が行くはずだったのだ」
「!!!!!!!!
ええええええええええ!!!!!!
し……知りません!!!!
そそそそんなのぜんぜん、聞いてませんよ???
わわわわ私、行きたくない。
だだだだだって!!!
女王様、しょしょしょ、少女趣味、なんでしょう??
体中舐められるんでしょう????
穴という穴に、太くて、長い棒を突き刺されるんでしょう????
わわわわ、私、しんじゃう!!!
死んじゃうから!!!!!」
泣き出した私を、あやすようにガルディア兄さんは頭を撫でた。
「ばかだな、死ななくて、大丈夫だ?
最後まで話はちゃんと聞け」
「は……はい。
ガルディア兄…さん」
私はヒック、ヒックとしゃくりあげながら兄さんの言葉を待った。
「いいな、アルメリア。
父上とベリアモルゼの女王ドリモアの話し合いによると、いきなり少女を寄こされるのは、いかにも外聞が悪い、となったらしい。
それで、3年たったら第二十王女のジュリエッタをベリアモルゼに派遣することを条件に、俺と三年間白い結婚をする、ということで折り合いがついたそうだ」
ジュリエッタ。会ったことない妹だけど可哀想に。
体中を舐められた挙句穴という穴に棒を突っ込まれるなんてありえない。
私は想像するだけで背筋に悪寒が走り、全身が震えた。
それにしても兄さん、さすがに結婚相手の名前間違えなかったな。
すごい!
「ふーん。
じゃあ、兄さん、三年たったら戻ってくるの?」
「そうだ。
それも、名目上の結婚で、ベリアモルゼに行ったら、だらだらと遊んですごすだけでいいのだ」
「そっか、良かった」
ガルディア兄さんはだらだらするの得意だもの。
「それでな、アルメリア」
「はい?」
「名案を思い付いた」
「……何を?」
「名目上の結婚なら、ばれないだろ」
「何がですか?」
「だから、女ってことが、だ」
「えええええええええ!!!!!」
私は驚きのあまり腰を抜かしそうになった。
「兄さん!!
女???
おおおおおお女だったの?
あああああ、危ない!
危なすぎます!!!!!
ばれたら死んじゃいますよ!!!!」
「馬鹿だな。
俺は男だ」
「…………え?
ゴメンなさい兄さん。
私、全然、分からないんだけど?
兄さんが男なら、女ってばれないって、誰の事?」
「お前に決まってるだろ?」
私は兄さんが何を言っているのか分からず、途方にくれた。
兄さん……私はもう、あなたの言葉が理解できなくなりました……。
「もう、ほんとに鈍いな?
あんな面倒な年表は覚えられるのに、ホントに不思議だ?
だから、お前は俺の代わりに、ベリアモルゼに行くんだ!
俺の、影武者として」
「うううううううううううううう嘘!
嘘でしょ?
むむむむむむむ無理!
絶対無理!
だって、私殺されるっ!!
絶対死んじゃう!! 死んじゃうから!!!!」
「まぁまぁ落ち着け、アルメリア!!
水でも飲め」
兄さんは泣きわめく私に、優しい手つきで水を飲ませてくれた。
ゆっくりと私を抱き寄せ、背中を撫でる。
「さぁ……落ち着け、アルメリア」
私は少しずつだけど落ち着くことができた。
落ち着いてきたのはいいけれど……あれ? 眠い。
なんで………???
「……きた……。アルメ……。
……いい……だぞ??」
兄さんの声が小さく、遠くに聞こえてきて、よくわからない。
「……ア兄……ん?
わ……たし……???」
「アルメリア様。
アルメリア様。
もう、着きますよ?」
レンタールの声が響いた。
がたがた揺れる音と、振動。
あ……れ……??
私??
一体どうしたんだっけ???
「さあ、起きてください??」
レンタールに促され、私はゆっくりと瞳を開いた。
「???
レンター……ル???」
「……はい」
「えっと……、ここ、何処」
「……べリアモルゼです」
「ふーん。
………え?
……は?」
ベリアモルゼ??
兄さんの婿入り先だよねぇ??
ベリアモルゼ………!!!!!
私は驚きのあまりはっきりと覚醒して起き上がった。
あ!!
私の服、兄さんの!!!
なんで???
だけど次の瞬間、馬車は停まり……考える暇もなく、馬車の扉が開いた。
「ようこそ、ガルディア殿下。
ベリアモルゼの国民はあなたを歓迎いたします」
侍従らしき男性が、私に声をかける。
ううううう、嘘!!
嘘でしょう!!!!!!
私は驚きと恐怖で身を固まらせた。
「ガルディア殿下。
……後戻りはできませんよ?
頑張りましょうね??」
レンタールはにっこりと笑うと、私に先立って馬車を降りた。
それからぎくしゃくと体を動かしながら馬車を降りると、ブーデリアではお目にかかったことがないほどの多数の侍従に出迎えられた。
ばれたら死ぬ。
ばれたら死ぬ。
私の脳裏にあったのはそれがすべてだ。
それから多数の人々と挨拶を交わしたが、後で考えると、何一つ覚えていなかった。
感傷的な午後を過ごしていたら、遠くから速足で近づいてくるレンタールの姿が見えた。
「アルメリア殿下。
お探ししました!
ガルディア様がお召しにゴザイマス」
「えぇ?
兄さんが?
今頃ベリアモルゼに向かう準備で忙しいと思ったけど。
何の御用だろう?」
そして、すぐに兄さんの自室に向かい、招き入れられた私は、兄さんの変貌ぶりに度肝を抜かされることになる。
「ににににに、兄さん?
兄さんだよね????」
私が驚くのも仕方がないことだ。
会っていなかった3か月の間に、兄さんは横方向に3倍くらい成長していた。
要するにめちゃくちゃ太っていた。
「なななななな何があったの?
病気?
はっ……!!!
ま、まさか、ノ、ロ、イ?」
私はあまりの変貌にただオロオロと狼狽するばかりだ。
「あほか、アルメリア。
ベリアモルゼに行ったら、少女趣味の女王のことだ。
美味しい飯もまわらんかもしれん!
だから、今のうちにと思って食べてたら、ちょっとばかり太っちゃっただけだ」
「えええええええええ?
ちょっとじゃないですよ?
全然ちょっとだけじゃないから!!!!!
だだだだだって、明日お婿行くんですよ?
だだだだだだ、だいたい、3か月前に作った花婿衣裳合わなくなったら、どうするの????
服が弾け飛んじゃいますよ?」
「そんなこと心配しなくて大丈夫だ!!」
「そそそそそそうなのですか?
作り直したんですね?
あ、それとも伸縮する衣装とか?」
「あほか。
アルメリア。
そんな無駄なことをするわけがない!!」
「え……???
それで本当に、大丈夫なんですか?」
「当たり前だ!」
私は、落ち着いた様子のガルディア兄さんに、やっと安心することができた。
ちょっとおバカさんと思ってたけど、ちゃんとするときは、ちゃんとするんだなぁ。
何がどうして大丈夫なのか、分からない。でも大丈夫ならよかったな、と私は思った。
次の言葉を聞くまでは。
「お前が着るんだから」
「……………………え????」
なんだろう。
私、耳がおかしくなったかな?
なんか今、花婿衣裳を私が着るみたいなこと言ってたような気がする。
「どうせ、3年、だけだ」
「えぇ?」
「父上の話だと、3年たったら、俺は、帰ってこれるそうだ」
「そうなのですか?」
「ああ。
実をいうとな、アルメリア。
女王との決め事では、最初は俺じゃなくて、お前が行くはずだったのだ」
「!!!!!!!!
ええええええええええ!!!!!!
し……知りません!!!!
そそそそんなのぜんぜん、聞いてませんよ???
わわわわ私、行きたくない。
だだだだだって!!!
女王様、しょしょしょ、少女趣味、なんでしょう??
体中舐められるんでしょう????
穴という穴に、太くて、長い棒を突き刺されるんでしょう????
わわわわ、私、しんじゃう!!!
死んじゃうから!!!!!」
泣き出した私を、あやすようにガルディア兄さんは頭を撫でた。
「ばかだな、死ななくて、大丈夫だ?
最後まで話はちゃんと聞け」
「は……はい。
ガルディア兄…さん」
私はヒック、ヒックとしゃくりあげながら兄さんの言葉を待った。
「いいな、アルメリア。
父上とベリアモルゼの女王ドリモアの話し合いによると、いきなり少女を寄こされるのは、いかにも外聞が悪い、となったらしい。
それで、3年たったら第二十王女のジュリエッタをベリアモルゼに派遣することを条件に、俺と三年間白い結婚をする、ということで折り合いがついたそうだ」
ジュリエッタ。会ったことない妹だけど可哀想に。
体中を舐められた挙句穴という穴に棒を突っ込まれるなんてありえない。
私は想像するだけで背筋に悪寒が走り、全身が震えた。
それにしても兄さん、さすがに結婚相手の名前間違えなかったな。
すごい!
「ふーん。
じゃあ、兄さん、三年たったら戻ってくるの?」
「そうだ。
それも、名目上の結婚で、ベリアモルゼに行ったら、だらだらと遊んですごすだけでいいのだ」
「そっか、良かった」
ガルディア兄さんはだらだらするの得意だもの。
「それでな、アルメリア」
「はい?」
「名案を思い付いた」
「……何を?」
「名目上の結婚なら、ばれないだろ」
「何がですか?」
「だから、女ってことが、だ」
「えええええええええ!!!!!」
私は驚きのあまり腰を抜かしそうになった。
「兄さん!!
女???
おおおおおお女だったの?
あああああ、危ない!
危なすぎます!!!!!
ばれたら死んじゃいますよ!!!!」
「馬鹿だな。
俺は男だ」
「…………え?
ゴメンなさい兄さん。
私、全然、分からないんだけど?
兄さんが男なら、女ってばれないって、誰の事?」
「お前に決まってるだろ?」
私は兄さんが何を言っているのか分からず、途方にくれた。
兄さん……私はもう、あなたの言葉が理解できなくなりました……。
「もう、ほんとに鈍いな?
あんな面倒な年表は覚えられるのに、ホントに不思議だ?
だから、お前は俺の代わりに、ベリアモルゼに行くんだ!
俺の、影武者として」
「うううううううううううううう嘘!
嘘でしょ?
むむむむむむむ無理!
絶対無理!
だって、私殺されるっ!!
絶対死んじゃう!! 死んじゃうから!!!!」
「まぁまぁ落ち着け、アルメリア!!
水でも飲め」
兄さんは泣きわめく私に、優しい手つきで水を飲ませてくれた。
ゆっくりと私を抱き寄せ、背中を撫でる。
「さぁ……落ち着け、アルメリア」
私は少しずつだけど落ち着くことができた。
落ち着いてきたのはいいけれど……あれ? 眠い。
なんで………???
「……きた……。アルメ……。
……いい……だぞ??」
兄さんの声が小さく、遠くに聞こえてきて、よくわからない。
「……ア兄……ん?
わ……たし……???」
「アルメリア様。
アルメリア様。
もう、着きますよ?」
レンタールの声が響いた。
がたがた揺れる音と、振動。
あ……れ……??
私??
一体どうしたんだっけ???
「さあ、起きてください??」
レンタールに促され、私はゆっくりと瞳を開いた。
「???
レンター……ル???」
「……はい」
「えっと……、ここ、何処」
「……べリアモルゼです」
「ふーん。
………え?
……は?」
ベリアモルゼ??
兄さんの婿入り先だよねぇ??
ベリアモルゼ………!!!!!
私は驚きのあまりはっきりと覚醒して起き上がった。
あ!!
私の服、兄さんの!!!
なんで???
だけど次の瞬間、馬車は停まり……考える暇もなく、馬車の扉が開いた。
「ようこそ、ガルディア殿下。
ベリアモルゼの国民はあなたを歓迎いたします」
侍従らしき男性が、私に声をかける。
ううううう、嘘!!
嘘でしょう!!!!!!
私は驚きと恐怖で身を固まらせた。
「ガルディア殿下。
……後戻りはできませんよ?
頑張りましょうね??」
レンタールはにっこりと笑うと、私に先立って馬車を降りた。
それからぎくしゃくと体を動かしながら馬車を降りると、ブーデリアではお目にかかったことがないほどの多数の侍従に出迎えられた。
ばれたら死ぬ。
ばれたら死ぬ。
私の脳裏にあったのはそれがすべてだ。
それから多数の人々と挨拶を交わしたが、後で考えると、何一つ覚えていなかった。
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