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意外に馴染んじゃってます?

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「わぁ! ユーノ……お父さん!!
 すっごく大きいね!」

 私はユーノスが捕らえてきたイノシシを、歓喜の表情で見つめた。

「ん? ……ああ!」

 すっごく大きい!!

 そしておいしそう!!!

 ああん!!

 食べたいけど……、きっとお店用だよねぇ?

「こことかすごく太いし……」

 そう言いながら、私はイノシシの逞しい後ろ脚を指でなぞる。

「逞しい……!!!」

 きっと噛み応えがあって、お塩振って焼いてもおいしそうだし。

「おいしそう……!!!!」

 いっそのこと燻製でも……!!!

 いろんなことを考えて思わず涎が出そうになった。

 ううう!!!

「……あれ?
 ユーノ……お父さん?
 顔が赤いよ?
 お熱?」

 ふとかえり見えるとユーノスの顔が何となく赤い。

「ふぐぅ……な……何でもない。
 大丈夫だ」

「……ならいいけど?」

 ユーノスはそう言いながら、馬車で運んできた肉たちを次々に奥へと運んで行った。

 う~ん。

 咳とかしてないし、きびきび動けてるし、大丈夫、なのかなぁぁぁ???

 少しユーノスの様子が気になったけど、「アルミン! 手伝って!!」とレンタールの声が奥から響いてきて、私は我に返って奥へと向かった。

 あ、アルミンって、今の偽名ね。

 それにしてもあぶない、あぶない。

 お肉は新鮮なうちが勝負!

 早く解体しなきゃ!!


 

「ホントに大丈夫ですか?」

 心配そうにユーノスが聞いてきたけど。

 お肉のためだもの。

 私、頑張る!!!

 私は頷きながら、血で汚れてもいいように専用のエプロンを着用の上、裏庭の広い場所で、包丁片手にイノシシの解体にとりかかった。

「心配なさらなくてもアルメリア様の解体技術はプロ並みですよ?」

 レンタールがすかさずフォローを入れてくれた。

「こっちは任せて、レンタールはお料理、お料理!」

 私がそう言うと、レンタールは頷いて調理場へと戻っていく。

 私もさっさと終わらせてお店に戻らなきゃ!

 一人で料理と接客だと、レンタール大変だもん!

「ユーノスも、余分な得物があれば、売りに行ってもいいよ?」

 大猟の時はいつも、ユーノスは町のお肉屋さんに得物を卸しに行く。

 だけどユーノスは首を振って、「いえ……。今日は解体を手伝います」と応えた。

 そっか。

 二人でやれば、早いもんね。

 このお店はじめてから、解体は主に私の仕事だったけど、そう言えばユーノスの前で解体するのは初めてだった!

 手早く捌いていると、横目に見ていたユーノスが「……すごい!!」と、呟いていた。

 えへへ!!!

 私、こう見えてやればできるんです!!!!




 思い起こすとアルメリア様は、昔から不思議な方だった。

 非常に深い知識を備えながら、一方でひどく無知……いやあれは無垢……さを同時に兼ね備えていて、いつも愚直な自分はアルメリア様に驚かされる。

 狩ってきた得物を急に捌くと言い出されたときは驚いたが、レンタール殿がおっしゃられた通り、解体の技術は慣れた私の技術をも上回っていた。

 しかも、解体の済んだ後、小さな唇をいっぱいに開けて、綺麗にはがしたイノシシの毛皮を噛みつこうとしていたので、慌てて静止してしまった。

「ア、アルメリア様!!
 お待ちください!!!」

「……え?」

「一体その毛皮をどうされるおつもりですか?」

「え?
 噛んでなめそうと思って!!!」

「はぁっ?」

「……えっ?
 おかしい??」

「………噛んでなめすなど……聞いたことがゴザイマセン」

「えぇー!!
 ホント?
 ……でも、古代グルシアの文献で、動物の皮は噛んで柔らかくしてなめすと良いって……」

「……私の知っているのは、フォールガルの木の煮汁とかまどの灰を一緒に煮込む方法です……」

「……そうなの?」

「ハイ」

 アルメリア様は少し名残惜しそうにしていたが、こればかりは致し方あるまい!!!! 心を鬼にして私は皮を取り上げた。

 ……これはすぐに街の皮職人にでも持って行こう。

 うん……。




 へんだなぁ……。

 レンタールの前で解体した時は、皮なめしの方法が間違ってるって言われなかったのに。

 でもまぁ、ユーノスが嫌がってるし、服は汚れるし、美味しい訳でもないし、そんなに好きじゃないから、いっか!!!

 井戸のわきでさささと汚れを落とし、店に戻った私は再び戦場のような忙しさに忙殺された。

「坊や、ビールおかわり!」

「ありがとうございます!!
 レンっ……お母さん、ビール一つ!!」

「こっちも頼む!!」

「あ、はい!
 ありがとうございます!!
 ビールも一つ追加!!!」

 忙しい!!!

 ほんとに忙しくて!!!!

 なんか……!!!

 なんか……!!!

 すごく、楽しい!!!

 毎日ご飯は美味しいし、お腹いっぱいだし、皆優しくて楽しいし!!!

 こんなに毎日が楽しくてしょうがないなんて!!!!!

 幸せぇ……!!!!

 ほんと。

 出来ることならずっとこのままで過ごしたいな……。

 ………無理だろうけど。

 
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