5 / 24
第5話
しおりを挟む
「っ……頭……割れそう」
これが二日酔いか……と、ジェフリーは平衡感覚がない体をゆるゆると起こした。
薄暗い部屋に、昇りかけの朝日が差し込んでいる。
覚えていないが、昨晩は自力で寮に戻ってこれたのだろうか?
狭い寝台の縁に腰かけながら、ジェフリーは薄目を開けて寝台の足元に脱ぎ散らかされた自分の服をみた。
「ドリュー……きつい……頼む……」
ジェフリーは、心配そうに彼の顔を覗き込む水の精霊ドリューに、アルコールの解毒を頼んだ。
『飲み過ぎですよ……ジェフリー』
ドリューは苦言を言いながらも、水色の瞳を瞬かせて解毒をしてくれた。
体の不快さは綺麗に無くなったが、体のあちこちに残る痣(あざ)は残っている。
どうやらジェフリーを戒めるために、軽い傷に関しては治してくれる気がないらしい。
どこで怪我をしたんだか……。
ジェフリーは腕に残る打ち身を確認するように視線を上げると、向かい側の寝台のリチャードがこちらを見ていることに気付いた。
「……うわっ。
すまない!」
ジェフリーは慌てて寝台のシーツで体を覆った。
下履きしか穿いてないあられない姿を、リチャードに見られてしまった。
羞恥で頭に血がのぼる。
「いや……気にしすぎだろ?
……男同士なんだから……」
そう……か。俺は今ベータってことになってるんだから、気にしすぎか……。
魔法宮はオメガが多かったせいだろうか。
男同士でも肌を見せるような行為は避けられていた。
リチャードは寝台から立ち上がり、何事もなかったように部屋を出て、共同の洗面所へと向かった。
ジェフリーはリチャードが出ていくのを待って、ようやく伏せていた顔を上げた。
今日のことは自分の不注意だった。
魔法宮では当然のように一人部屋が与えられていたため、ついうっかりするとリチャードがいることを失念している瞬間があるのだ。
特に朝、頭が回っていないときにおこるのだが。
しかし裸を見られた羞恥心は、簡単に拭い去れるものではない。
手早く服を着た後も顔の火照りが去らず、仕方なくジェフリーは窓を開け放ち、風の精霊ルドーを呼んだ。
「ルドー……冷たい風をくれないか?」
頬を赤く染めるジェフリーの様子を、面白そうにルドーは見つめた。
ジェフリーの注文通りに心地よい冷たさの風が窓に吹き込む。
『真っ赤だな。ジェフリー。
いいのか? 可愛い顔をリチャードに見せなくて』
「……可愛くはないだろう?
第一、なんでリチャードに見せないといけない?」
『想い人には素直が一番だ。
ジェフリーは中身の方が可愛いのだから』
やっと火照りが収まってきたというのに、ルドーの「想い人」という言葉で、ジェフリーは再び頬に熱を感じた。
「なっ……」
思わず絶句していると、扉の開く音が聞こえる。
リチャードが戻ってきたようだ。
音から類推するに、身支度をしているらしい。
しかし、赤面しているジェフリーは、振り向けなかった。
ジェフリーはパチパチと頬を両手で叩き、必死で邪念を払う。
……うぅぅ……ルドーが変なこと言うから、意識してしまうじゃないか。
そりゃ、リチャードは今まであったアルファの中では一番気の合うアルファだ。
気さくだし、冒険者生活が長かったせいか世慣れていて話も面白い。
それに、ジェフリーを年下だと思って、なんだかんだと世話を焼く。
先日、山中での訓練中にジェフリーがぬかるみに足を滑らせ斜面に滑り落ちたときも、慌てて迎えに来たほどだ。
ルドーが風で衝撃を減らしてくれていたから、大した傷はなかったのだが。
ジェフリーは慌てたリチャードの表情を思い出して、くっ……と笑みを漏らした。
リチャードの方がよっぽど可愛いと思うけどな……。
そんなことを考えていたら、ようやくに火照りが去る。
ジェフリーもリチャードの後を追うように、身支度を開始した。
もうすぐ、寮の食堂が開く時間だ。
「……なあ?」
乱れた寝台を整えていると、リチャードから声が掛かった。
「……ジェフ、昨日のこと……覚えているか?」
「昨日……?」
困惑気味にジェフが答えると、リチャードは小さいため息をつくと、「覚えてないならいい……。俺は先に行くぞ」と、ジェフリーを置いて、さっさと食堂に行ってしまった。
パタンと閉められたドアを見ながら、ジェフリーは精霊たちに視線を投げかけた。
「……昨日、何かあった?」
途端に、いつもはジェフリーに付いて離れない精霊たちが、蜘蛛の子を散らすようにジェフリーから離れていく。
「……ちょっと!
何があったか、教えてよ!」
ジェフリーの叫びは、空しく響くのだった。
リチャードはズキズキ痛む頭を押さえながら、食堂に向かった。
それは、断じて酒のせいではない。
ジェフが早々に酔いつぶれたせいで、リチャードの酔いは軽いものだった。
昨晩、寮の部屋に戻ってきたジェフは、服を脱ごうと上着のボタンに指をかけるのだが、うまく脱げなくてリチャードに訴えかけてきた。
「……リチャ……、脱ーげーなーい。
あついー!!
……脱がしてよぉ!!!」
ふらつきながらリチャードにすり寄ってきて、ジェフは甘えるように下から覗き込むのだ。
酒を飲ませたら間違いなく襲われるな……。
騎士団のやつらの中にも、もちろんそういう者たちがいる。
しかし、だいたいの人間が知っているその事実に、ジェフは全く気付いていないようなのだ。
だから、性欲処理のためには男でも構わないという連中にとっては、もともとジェフは狙いやすい子猫ちゃんだった。
しかし、田舎から出て来たばかりのジェフは、王都ではまず見かけられないくらいに真面目で性格も良い好青年だ。
だからそんな世界は知らなくてもよいと思うのだ。
今はまだ。
まあ、そのうち世間ずれしてくるだろうとは思う。だがジェフが純朴なうちは、リチャードが守ってやろうと、密かに思っていた。
しかし、ジェフが酔ってこんな乱れた状態になるのが知られれば、明日にでも後ろの貞操を失ってしまうことは想像に容易い。
こっちの気も知らないで、呑気なもんだな……。
「まったく、世話が焼ける……」と文句を言いながら、リチャードはジェフの服に手を掛けた。
服を脱がされているというのに、子供の様にじっとしている。
「ほら!
手を上げろ!」
両手をバンザイさせ、リチャードは上着の下に来ていたジェフの貫頭衣を上に引っ張り上げた。
ああ……また香水をつけたのか……甘い匂いがする。
リチャードはジェフのズボンのベルトを外すと、服が支えを失って足元に落ちた。
下履き以外の衣類をすべてはぎ取ったジェフの体を、リチャードはいとも簡単に持ち上げる。
ジェフの使用している寝台に向かうと、ジェフの体を横たわらせた。
初めて見るジェフの体は、ごつごつした男性的なものではなく中性的に丸みを帯びていて、白い肌は艶を帯びて美しい。
そしてその肌が、アルコールの影響で、ほのかにピンク色に染まっていた。
無駄のない引き締まった体だが、リチャードのそれと違って派手に盛り上がる筋肉ではない。
つ……と、リチャードがやさしく胸元を指でなぞると、ジェフは恥ずかしそうに目を伏せた。
しかし嫌がる様子もなく、ジェフはリチャードに身を任せている。
リチャードはジェフの体に覆いかぶさり、か細い首筋に唇を落とした。
「………あっ……」
ジェフの口からは甘い吐息が漏れた。
そのままリチャードはジェフの下履きに手を伸ばして……。
うわっ!
何やってんだ!!
リチャードは、我に返って顔を上げた。
俺は何を血迷って……!!!!!
驚いて体を起こしたせいで、がんっ! と、寝台の低い天井に頭を打ち付けてしまった。
「ぐっ……!」
痺れた痛みが後頭部を襲う。
しかしその痛みのおかげで、意識がはっきりと保たれた。
甘い匂いを嗅いだ途端に、理性が飛んでしまったようだ。
リチャードは、性器が丸見えになっているジェフの下履きをもとに戻すと、その体の上に上掛けをかけて自分の寝台へと戻った。
盛りのついたガキじゃあるまいし、何をやってるんだ俺は……。
自分の蛮行に、リチャードは恥ずかしさで頭を抱える。
だいたいジェフはベータじゃないか!!
オメガに盛るんならともかく、ベータに盛るなんて俺は変態か!
いくらオメガみたいに甘い匂いをさせているからって、俺は……。
まてよ?
いくらなんでも、匂い嗅いだだけで理性が飛ぶっておかしくないか?
リチャードは、顔を上げて、横たわるジェフを見つめた。
………オメガ?
いや、それにしては発情期がこない。
3か月も一緒にいるんだ。
一度は来ていないとおかしだろ?
発情期が来ないオメガなんて、聞いたことが無い。
ぐるぐると思考がまとまらず、寝台に横たわっていても、全く眠気が訪れなかった。
そして空が白み始めたころ、ジェフが寝台に腰かけながら小さく呟いているのに気付いた。
結局、眠れないまま夜が明けてしまった。
ジェフの様子をぼんやりと見つめていると、ジェフはリチャードの視線に気づいて、昨夜のように肌を赤らめた。
恥ずかしがり、体を丸めたジェフの背中を見つめながら。
「いや……気にしすぎだろ?
……男同士なんだから……」
リチャードは声を絞り出して立ち上がった。
……ったく!!
意思を裏切り勃ち上がりかけた自分の分身に視線を落としながら、リチャードはジェフに気取られないようにそそくさと部屋を出ていった。
その顔は、ジェフに負けないくらいに赤くに染められていたのだが。
◇◇◇◇おまけ◇◇◇◇
第四話で名前のみ出てきたバイロン。
洗面所でリチャードと鉢合わせる。
♯バイロン 「うわっ! お前何朝からおっ勃ててんの?」
♯リチャード「……別に。朝の生理現象ですから」
♯バイロン 「ぷぷ……お若いこって!!」
♯リチャード「(ウルセーナ)……ああ、先輩もう引退してるんですね?」
♯バイロン 「アホか! もりくそ元気だっつーの!」
♯リチャード「相変わらず下品ですね?」
♯バイロン 「いやいや、お前こそ。えげつねーの持ってるじゃねーか」
♯リチャード「(見てんじゃねーぞ)………先輩のは、可愛いサイズですもんね?」
♯バイロン 「見て言え! 見て言えよ!!」(ズボンの前を開けようとするバイロン)
♯リチャード「ゴメンです。目が腐ります」
(すたすたと、バイロンを置いて歩きはじめるリチャード)
♯バイロン 「オイ! 見ろって!!」
♯リチャード「…………(あれに比べたら、俺はまともだな……)」
これが二日酔いか……と、ジェフリーは平衡感覚がない体をゆるゆると起こした。
薄暗い部屋に、昇りかけの朝日が差し込んでいる。
覚えていないが、昨晩は自力で寮に戻ってこれたのだろうか?
狭い寝台の縁に腰かけながら、ジェフリーは薄目を開けて寝台の足元に脱ぎ散らかされた自分の服をみた。
「ドリュー……きつい……頼む……」
ジェフリーは、心配そうに彼の顔を覗き込む水の精霊ドリューに、アルコールの解毒を頼んだ。
『飲み過ぎですよ……ジェフリー』
ドリューは苦言を言いながらも、水色の瞳を瞬かせて解毒をしてくれた。
体の不快さは綺麗に無くなったが、体のあちこちに残る痣(あざ)は残っている。
どうやらジェフリーを戒めるために、軽い傷に関しては治してくれる気がないらしい。
どこで怪我をしたんだか……。
ジェフリーは腕に残る打ち身を確認するように視線を上げると、向かい側の寝台のリチャードがこちらを見ていることに気付いた。
「……うわっ。
すまない!」
ジェフリーは慌てて寝台のシーツで体を覆った。
下履きしか穿いてないあられない姿を、リチャードに見られてしまった。
羞恥で頭に血がのぼる。
「いや……気にしすぎだろ?
……男同士なんだから……」
そう……か。俺は今ベータってことになってるんだから、気にしすぎか……。
魔法宮はオメガが多かったせいだろうか。
男同士でも肌を見せるような行為は避けられていた。
リチャードは寝台から立ち上がり、何事もなかったように部屋を出て、共同の洗面所へと向かった。
ジェフリーはリチャードが出ていくのを待って、ようやく伏せていた顔を上げた。
今日のことは自分の不注意だった。
魔法宮では当然のように一人部屋が与えられていたため、ついうっかりするとリチャードがいることを失念している瞬間があるのだ。
特に朝、頭が回っていないときにおこるのだが。
しかし裸を見られた羞恥心は、簡単に拭い去れるものではない。
手早く服を着た後も顔の火照りが去らず、仕方なくジェフリーは窓を開け放ち、風の精霊ルドーを呼んだ。
「ルドー……冷たい風をくれないか?」
頬を赤く染めるジェフリーの様子を、面白そうにルドーは見つめた。
ジェフリーの注文通りに心地よい冷たさの風が窓に吹き込む。
『真っ赤だな。ジェフリー。
いいのか? 可愛い顔をリチャードに見せなくて』
「……可愛くはないだろう?
第一、なんでリチャードに見せないといけない?」
『想い人には素直が一番だ。
ジェフリーは中身の方が可愛いのだから』
やっと火照りが収まってきたというのに、ルドーの「想い人」という言葉で、ジェフリーは再び頬に熱を感じた。
「なっ……」
思わず絶句していると、扉の開く音が聞こえる。
リチャードが戻ってきたようだ。
音から類推するに、身支度をしているらしい。
しかし、赤面しているジェフリーは、振り向けなかった。
ジェフリーはパチパチと頬を両手で叩き、必死で邪念を払う。
……うぅぅ……ルドーが変なこと言うから、意識してしまうじゃないか。
そりゃ、リチャードは今まであったアルファの中では一番気の合うアルファだ。
気さくだし、冒険者生活が長かったせいか世慣れていて話も面白い。
それに、ジェフリーを年下だと思って、なんだかんだと世話を焼く。
先日、山中での訓練中にジェフリーがぬかるみに足を滑らせ斜面に滑り落ちたときも、慌てて迎えに来たほどだ。
ルドーが風で衝撃を減らしてくれていたから、大した傷はなかったのだが。
ジェフリーは慌てたリチャードの表情を思い出して、くっ……と笑みを漏らした。
リチャードの方がよっぽど可愛いと思うけどな……。
そんなことを考えていたら、ようやくに火照りが去る。
ジェフリーもリチャードの後を追うように、身支度を開始した。
もうすぐ、寮の食堂が開く時間だ。
「……なあ?」
乱れた寝台を整えていると、リチャードから声が掛かった。
「……ジェフ、昨日のこと……覚えているか?」
「昨日……?」
困惑気味にジェフが答えると、リチャードは小さいため息をつくと、「覚えてないならいい……。俺は先に行くぞ」と、ジェフリーを置いて、さっさと食堂に行ってしまった。
パタンと閉められたドアを見ながら、ジェフリーは精霊たちに視線を投げかけた。
「……昨日、何かあった?」
途端に、いつもはジェフリーに付いて離れない精霊たちが、蜘蛛の子を散らすようにジェフリーから離れていく。
「……ちょっと!
何があったか、教えてよ!」
ジェフリーの叫びは、空しく響くのだった。
リチャードはズキズキ痛む頭を押さえながら、食堂に向かった。
それは、断じて酒のせいではない。
ジェフが早々に酔いつぶれたせいで、リチャードの酔いは軽いものだった。
昨晩、寮の部屋に戻ってきたジェフは、服を脱ごうと上着のボタンに指をかけるのだが、うまく脱げなくてリチャードに訴えかけてきた。
「……リチャ……、脱ーげーなーい。
あついー!!
……脱がしてよぉ!!!」
ふらつきながらリチャードにすり寄ってきて、ジェフは甘えるように下から覗き込むのだ。
酒を飲ませたら間違いなく襲われるな……。
騎士団のやつらの中にも、もちろんそういう者たちがいる。
しかし、だいたいの人間が知っているその事実に、ジェフは全く気付いていないようなのだ。
だから、性欲処理のためには男でも構わないという連中にとっては、もともとジェフは狙いやすい子猫ちゃんだった。
しかし、田舎から出て来たばかりのジェフは、王都ではまず見かけられないくらいに真面目で性格も良い好青年だ。
だからそんな世界は知らなくてもよいと思うのだ。
今はまだ。
まあ、そのうち世間ずれしてくるだろうとは思う。だがジェフが純朴なうちは、リチャードが守ってやろうと、密かに思っていた。
しかし、ジェフが酔ってこんな乱れた状態になるのが知られれば、明日にでも後ろの貞操を失ってしまうことは想像に容易い。
こっちの気も知らないで、呑気なもんだな……。
「まったく、世話が焼ける……」と文句を言いながら、リチャードはジェフの服に手を掛けた。
服を脱がされているというのに、子供の様にじっとしている。
「ほら!
手を上げろ!」
両手をバンザイさせ、リチャードは上着の下に来ていたジェフの貫頭衣を上に引っ張り上げた。
ああ……また香水をつけたのか……甘い匂いがする。
リチャードはジェフのズボンのベルトを外すと、服が支えを失って足元に落ちた。
下履き以外の衣類をすべてはぎ取ったジェフの体を、リチャードはいとも簡単に持ち上げる。
ジェフの使用している寝台に向かうと、ジェフの体を横たわらせた。
初めて見るジェフの体は、ごつごつした男性的なものではなく中性的に丸みを帯びていて、白い肌は艶を帯びて美しい。
そしてその肌が、アルコールの影響で、ほのかにピンク色に染まっていた。
無駄のない引き締まった体だが、リチャードのそれと違って派手に盛り上がる筋肉ではない。
つ……と、リチャードがやさしく胸元を指でなぞると、ジェフは恥ずかしそうに目を伏せた。
しかし嫌がる様子もなく、ジェフはリチャードに身を任せている。
リチャードはジェフの体に覆いかぶさり、か細い首筋に唇を落とした。
「………あっ……」
ジェフの口からは甘い吐息が漏れた。
そのままリチャードはジェフの下履きに手を伸ばして……。
うわっ!
何やってんだ!!
リチャードは、我に返って顔を上げた。
俺は何を血迷って……!!!!!
驚いて体を起こしたせいで、がんっ! と、寝台の低い天井に頭を打ち付けてしまった。
「ぐっ……!」
痺れた痛みが後頭部を襲う。
しかしその痛みのおかげで、意識がはっきりと保たれた。
甘い匂いを嗅いだ途端に、理性が飛んでしまったようだ。
リチャードは、性器が丸見えになっているジェフの下履きをもとに戻すと、その体の上に上掛けをかけて自分の寝台へと戻った。
盛りのついたガキじゃあるまいし、何をやってるんだ俺は……。
自分の蛮行に、リチャードは恥ずかしさで頭を抱える。
だいたいジェフはベータじゃないか!!
オメガに盛るんならともかく、ベータに盛るなんて俺は変態か!
いくらオメガみたいに甘い匂いをさせているからって、俺は……。
まてよ?
いくらなんでも、匂い嗅いだだけで理性が飛ぶっておかしくないか?
リチャードは、顔を上げて、横たわるジェフを見つめた。
………オメガ?
いや、それにしては発情期がこない。
3か月も一緒にいるんだ。
一度は来ていないとおかしだろ?
発情期が来ないオメガなんて、聞いたことが無い。
ぐるぐると思考がまとまらず、寝台に横たわっていても、全く眠気が訪れなかった。
そして空が白み始めたころ、ジェフが寝台に腰かけながら小さく呟いているのに気付いた。
結局、眠れないまま夜が明けてしまった。
ジェフの様子をぼんやりと見つめていると、ジェフはリチャードの視線に気づいて、昨夜のように肌を赤らめた。
恥ずかしがり、体を丸めたジェフの背中を見つめながら。
「いや……気にしすぎだろ?
……男同士なんだから……」
リチャードは声を絞り出して立ち上がった。
……ったく!!
意思を裏切り勃ち上がりかけた自分の分身に視線を落としながら、リチャードはジェフに気取られないようにそそくさと部屋を出ていった。
その顔は、ジェフに負けないくらいに赤くに染められていたのだが。
◇◇◇◇おまけ◇◇◇◇
第四話で名前のみ出てきたバイロン。
洗面所でリチャードと鉢合わせる。
♯バイロン 「うわっ! お前何朝からおっ勃ててんの?」
♯リチャード「……別に。朝の生理現象ですから」
♯バイロン 「ぷぷ……お若いこって!!」
♯リチャード「(ウルセーナ)……ああ、先輩もう引退してるんですね?」
♯バイロン 「アホか! もりくそ元気だっつーの!」
♯リチャード「相変わらず下品ですね?」
♯バイロン 「いやいや、お前こそ。えげつねーの持ってるじゃねーか」
♯リチャード「(見てんじゃねーぞ)………先輩のは、可愛いサイズですもんね?」
♯バイロン 「見て言え! 見て言えよ!!」(ズボンの前を開けようとするバイロン)
♯リチャード「ゴメンです。目が腐ります」
(すたすたと、バイロンを置いて歩きはじめるリチャード)
♯バイロン 「オイ! 見ろって!!」
♯リチャード「…………(あれに比べたら、俺はまともだな……)」
9
お気に入りに追加
1,287
あなたにおすすめの小説
結婚式に結婚相手の不貞が発覚した花嫁は、義父になるはずだった公爵当主と結ばれる
狭山雪菜
恋愛
アリス・マーフィーは、社交界デビューの時にベネット公爵家から結婚の打診を受けた。
しかし、結婚相手は女にだらしないと有名な次期当主で………
こちらの作品は、「小説家になろう」にも掲載してます。
条件付きチート『吸収』でのんびり冒険者ライフ!
ヒビキ タクト
ファンタジー
旧題:異世界転生 ~条件付きスキル・スキル吸収を駆使し、冒険者から成り上がれ~
平凡な人生にガンと宣告された男が異世界に転生する。異世界神により特典(条件付きスキルと便利なスキル)をもらい異世界アダムスに転生し、子爵家の三男が冒険者となり成り上がるお話。 スキルや魔法を駆使し、奴隷や従魔と一緒に楽しく過ごしていく。そこには困難も…。 従魔ハクのモフモフは見所。週に4~5話は更新していきたいと思いますので、是非楽しく読んでいただければ幸いです♪ 異世界小説を沢山読んできた中で自分だったらこうしたいと言う作品にしております。
傍若無人な姉の代わりに働かされていた妹、辺境領地に左遷されたと思ったら待っていたのは王子様でした!? ~無自覚天才錬金術師の辺境街づくり~
日之影ソラ
恋愛
【新作連載スタート!!】
https://ncode.syosetu.com/n1741iq/
https://www.alphapolis.co.jp/novel/516811515/430858199
【小説家になろうで先行公開中】
https://ncode.syosetu.com/n0091ip/
働かずパーティーに参加したり、男と遊んでばかりいる姉の代わりに宮廷で錬金術師として働き続けていた妹のルミナ。両親も、姉も、婚約者すら頼れない。一人で孤独に耐えながら、日夜働いていた彼女に対して、婚約者から突然の婚約破棄と、辺境への転属を告げられる。
地位も婚約者も失ってさぞ悲しむと期待した彼らが見たのは、あっさりと受け入れて荷造りを始めるルミナの姿で……?
王道学園に通っています。
オトバタケ
BL
人里離れた山の中にある城のような建物。そこは、選ばれし者だけが入学を許される全寮制の男子校だった。
全寮制男子校を舞台に繰り広げられる様々な恋愛模様を描いた短編集。
6年後に戦地から帰ってきた夫が連れてきたのは妻という女だった
白雲八鈴
恋愛
私はウォルス侯爵家に15歳の時に嫁ぎ婚姻後、直ぐに夫は魔王討伐隊に出兵しました。6年後、戦地から夫が帰って来ました、妻という女を連れて。
もういいですか。私はただ好きな物を作って生きていいですか。この国になんて出ていってやる。
ただ、皆に喜ばれる物を作って生きたいと願う女性がその才能に目を付けられ周りに翻弄されていく。彼女は自由に物を作れる道を歩むことが出来るのでしょうか。
番外編
謎の少女強襲編
彼女が作り出した物は意外な形で人々を苦しめていた事を知り、彼女は再び帝国の地を踏むこととなる。
私が成した事への清算に行きましょう。
炎国への旅路編
望んでいた炎国への旅行に行く事が出来ない日々を送っていたが、色々な人々の手を借りながら炎国のにたどり着くも、そこにも帝国の影が・・・。
え?なんで私に誰も教えてくれなかったの?そこ大事ー!
*本編は完結済みです。
*誤字脱字は程々にあります。
*なろう様にも投稿させていただいております。
転生幼女。神獣と王子と、最強のおじさん傭兵団の中で生きる。
餡子・ロ・モティ
ファンタジー
ご連絡!
4巻発売にともない、7/27~28に177話までがレンタル版に切り替え予定です。
無料のWEB版はそれまでにお読みいただければと思います。
日程に余裕なく申し訳ありませんm(__)m
※おかげさまで小説版4巻もまもなく発売(7月末ごろ)! ありがとうございますm(__)m
※コミカライズも絶賛連載中! よろしくどうぞ<(_ _)>
~~~ ~~ ~~~
織宮優乃は、目が覚めると異世界にいた。
なぜか身体は幼女になっているけれど、何気なく出会った神獣には溺愛され、保護してくれた筋肉紳士なおじさん達も親切で気の良い人々だった。
優乃は流れでおじさんたちの部隊で生活することになる。
しかしそのおじさん達、実は複数の国家から騎士爵を賜るような凄腕で。
それどころか、表向きはただの傭兵団の一部隊のはずなのに、実は裏で各国の王室とも直接繋がっているような最強の特殊傭兵部隊だった。
彼らの隊には大国の一級王子たちまでもが御忍びで参加している始末。
おじさん、王子、神獣たち、周囲の人々に溺愛されながらも、波乱万丈な冒険とちょっとおかしな日常を平常心で生きぬいてゆく女性の物語。
【本編完結済】【R18】異世界でセカンドライフ~俺様エルフに拾われました~
暁月
恋愛
大槻 沙亜耶(おおつき さあや)26歳。
現世では普通の一人暮らしの社会人OL。
男女の痴情のもつれで刺殺されてしまったが、気が付くと異世界でも死にかけの状態に。
そして、拾ってくれたハイエルフのエリュシオンにより治療のためということで寝ている間に処女を奪われていた・・・?!
『帰らずの森』と呼ばれる曰く付きの場所で生活している俺様エルフのエリュシオンに助けられ、翻弄されつつも異世界ライフを精一杯楽しく生きようとするお話です。
生活するうちに色々なことに巻き込まれ、異世界での過去の記憶も思い出していきます。
基本的に俺様エルフに美味しくいただかれています←
【2021/5/19追記】
乙女ゲームとざまぁ要素は4章まで、それ以降は主人公とゆかいな仲間達の波乱万丈な旅行から始まるお話です。
本編は完結しましたが、書ききれなかったその後のお話や番外編などを更新するかも。
宜しければ、そちらもお楽しみください(๑ ˊ͈ ᐞ ˋ͈ )
--------------------------------------
※ムーンライトノベルスでも掲載しています。
※R-18要素のある話には「*」がついています
※書きたいものを思うまま書いている初心者です。
※初めての長編でつたないところが多々あると思います。温かい目で見てくださるとうれしいです。
何度生まれ変わっても愛されないので今生は強気でいきます!
サクラギ
BL
愛されることに飢えた王子と、愛した人に逃げられる運命の魔術師のお話。暗い感じに進みます。しかも胸糞悪い部分多いです。突然行為が始まります。ご了承下さい。
獣人と男子高校生と筋肉の前に書いていたお話なので、拙さがより一層出ていると思います。
それでも良いよと思われる方、どうぞよろしくお願いします。
誤字脱字すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる