知識チートの正しい使い方 〜自由な商人として成り上ります! え、だめ? よろしい、ならば拷問だ〜

ノ木瀬 優

文字の大きさ
上 下
172 / 214
第5章 転換期

172【家族との会話】

しおりを挟む
「ええい! いい加減離れんか! 話が進まんじゃろが!」

 おばあちゃんが一喝して、ユリとマナを引き離した。

「まったく……おぬしら、狙われとるという自覚があるのか?」
「大丈夫です。ユリピもお義兄様もは私が守ります!」
「誰が、お義兄様だ」

 マナのボケをスルーしていると、いつの間にか外堀が埋められている可能性があるので、ちゃんと訂正しておく。

「とにかく! おぬしらは強大な敵に狙われとる。ちゃんとその事を意識して単独行動は避けるんじゃぞ? ええな?」
「「「はい!」」」

 休憩室に皆の声がこだまする。今いないメンツには後で俺から伝える予定だ。

「うむ! それから……おぬしがバミューダかの?」
「はい! ……です!」

 おばあちゃんがバミューダ君を頭の先からつま先まで、じっくり眺めた。

「ふむ……心身ともによく鍛えられとる。もう少しで導かれるじゃろな……おぬし、普段のトレーニングはイリスに教わったのか?」
「はい! ……です! お母さんが教えてくれた! ……です!」
「なるほどの。流石イリスじゃ。これならわしが教える事はないの。これからも精進するがよい」
「はい! ……です! ありがとう! ……です!」
「うむ! おぬしとアレンとユリ、それから、ナタリーもいるんじゃったな? であれば、護衛は店の外だけで大丈夫かの」
「はい。皆優秀ですから」

 俺を頭数に入れていいのかは微妙だが、他3人がいるだけで、戦闘力としては申し分ないだろう。

「ふふふ。ええ、仲間を作ったの。確かにこれだけの戦力があるなら、自分を囮に情報収集を……と考えるのも分からなくはない。じゃが、もう危険な事はするでないぞ?」
「分かっています。約束は守りますよ」
「……約束、ですか?」

 クリスが訝し気に聞いてきた。

「ああ。復讐のは俺達に任せてくれる代わりに、情報収集は王妃様とおばあちゃんに任せる事になったんだ」
「「「――!? 王妃様!?」」」

 皆が一斉に叫んだ。

(……そう言えば、王妃様が俺達のために情報収集してくれるってとんでもない話だよな……色々あって感覚がマヒしてたよ)

「アレン……その、なぜ、王妃様が……」
「あー、うん。王妃様と母さんって、昔は友人だったんだって。それで、王妃様が今回の事を気に留めてくださったんだ」
「そう言えば……授与式でもそのような事をおっしゃっていましたね。なるほど、王妃様にとってもご友人の敵討ち、というわけですか……」

 クリスが補足してくれた事で、他の皆も一応、納得してくれたようだ。

「ま、そういうわけじゃから、おぬしらはしばらく普通に生活しとってくれ。焦って敵に付け入るスキを与えるでないぞ」
「「「分かりました!」」」
「うむ! ……さて、堅苦しい話はこれで終わりじゃ。後は、おぬしらの話を聞きたい! 普段どんなことをしておるのか、どのような事が好きなのか、色々話させてくれ!」

 そう言っておばあちゃんは皆の前に座った。マナが皆の分のお茶を淹れてくれる。

 その後、俺達はおばあちゃんと色々な話をした。自分達の事も話したし、おばあちゃんの事も聞いた。途中でマグダンスさん達が休憩に来たが、クリスとマナとミーナ様が交代してくれて、俺とユリとバミューダ君に『せっかくだからおばあちゃんと話してて』と言ってくれたので、甘える事にする。



 そうこうしていると、あっという間に日が暮れて、おばあちゃんは王宮に帰る時間になった。俺も一緒に『転移』して王宮まで送ろうかと思ったが、泣いてしまうからいいと言われたので、支店の中でお見送りをする事にした。

「今日は招待してくれてありがとの。おぬしらと話せて良かったのじゃ」
「こちらこそ。色々ありがとうございました。また来てくださいね」
「おばあちゃん、また来てね!」
「また、お話ししたい! ……です!」
「ふふふ。嬉しい事を言ってくれるの……あー涙腺が限界じゃ。すまぬが、送ってくれるかの?」
「あ、待ってください! おばあちゃんに渡したい物があるんです!」

 俺は急いで店長室に行き、目当ての魔道具を持って戻ってくる。

「これ、持って行ってください。俺が開発した『遠くにいる人に音声を届ける』魔道具です」
「……は? 音声を届ける……じゃと?」

 おばあちゃんは魔道具を見て茫然としてしまった。

「ええ。これがあれば、遠くにいても俺と会話ができます。市販するつもりはありませんが、おばあちゃんには特別です」

(おばあちゃん用のと、モーリス王子用のを間違えないようにしないとな)

 現在、『遠くにいる人に音声を届ける』魔道具は、糸電話のように1対1でしか使用できないので、話す相手によって魔道具を変えなければならないのだ。間違った魔道具を使うと、別の相手につながってしまう。

 さっそく、おばあちゃん使い方を教えると、今度はあきれた表情をされてしまった。

「なんとまぁ……わしらも定時連絡用に似たような魔道具を使用しておるが、それよりはるかに使いやすいのう。個人でこのような魔道具を作り出すとは……流石はアレンじゃ」

(あ、そっか。マークさんが作った失敗作でも、連絡する時間をあらかじめ決めておけば使い道はあるんだ。ん? あれ?)

「もしかして、おばあちゃん。マークさんを知っていますか?」
「ん? おお、知っておるぞ。魔法使いであやつを知らんもんはおらんじゃろ。それに、わしはあやつとは元同僚じゃからの」
「「え!?」」

 俺とユリが驚きの声を上げる。

「そう驚く事でもあるまい。あやつは『魔導書貸出店』に勤めておるんじゃぞ? 前職が王宮勤めでもなんらおかしくないじゃろ」

 言われてみれば確かにその通りだ。だが、どうしても、マークさんが王宮に勤めている姿を想像することが出来なかった。

「ま、その話はまた今度じゃな。さて、名残惜しいがそろそろ送ってくれるかの?」
「分かりました! またね! おばあちゃん!」
「またね……です」
「また連絡しますね」
「ああ。またの」

 ユリが『転移』を使うと、おばあちゃんの足元が光り出す。おばあちゃんが転移する直前、おばあちゃんの眼に涙が浮かんでいたが、見なかったふりをした。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?

伊東 丘多
ファンタジー
ジャストキルでしか、手に入らないレアな石を取るために冒険します 小さな少年が、独自の方法でスキルアップをして強くなっていく。 そして、田舎の町から王都へ向かいます 登場人物の名前と色 グラン デディーリエ(義母の名字) 8才 若草色の髪 ブルーグリーンの目 アルフ 実父 アダマス 母 エンジュ ミライト 13才 グランの義理姉 桃色の髪 ブルーの瞳 ユーディア ミライト 17才 グランの義理姉 濃い赤紫の髪 ブルーの瞳 コンティ ミライト 7才 グランの義理の弟 フォンシル コンドーラル ベージュ 11才皇太子 ピーター サイマルト 近衛兵 皇太子付き アダマゼイン 魔王 目が透明 ガーゼル 魔王の側近 女の子 ジャスパー フロー  食堂宿の人 宝石の名前関係をもじってます。 色とかもあわせて。

処理中です...