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第7章 その日
189【断罪4 処罰】
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サーカイル王子だけでなく、側室やバージス公爵家の人達も舐めた眼でモーリス王太子を見ている。そんな中、モーリス王太子の声が響いた。
「大丈夫です。アレン! 頼む!」
モーリス王太子に呼ばれた俺は拘束されている王子達の元へ行き、2人の腕に魔道具を取り付けようとする。何かを察したのか、2人とも必死で抵抗していたが、衛兵たちに押さえつけてもらって、それぞれの腕に魔道具を付けた。そして、魔道具を付け終えた俺は、モーリス王太子の前に跪く。
「準備が整いました。いつでも起動できます」
「うむ、ご苦労。陛下、今、アレンが2人に付けた魔道具には、2人を真人間にする機能が備わっています。これを使用し、2人を真人間に厚生させた後、国のために尽くしてもらおうと考えております」
「なんと! 人を真人間にする魔道具、だと? それは、洗脳ではないか。王子達を洗脳するというのは、さすがに見過ごせんぞ?」
「ご心配なく。アレンから詳細を聞いておりますが、あの魔道具は、真人間になるまで、とある場所に閉じ込めておく物です。『回復』等の機能も備わっているため、死亡する危険もありません」
「ふむ……そう聞くと、まるで悪さをした子供へのお仕置きのように聞こえるが……それで本当に真人間になるのか?」
「はい、陛下。必ずや、2人共心を入れ替え、国のため、そして民のために尽くしてくれるでしょう。私は2人を信じております」
モーリス王太子はまるで2人を信用しているような口ぶりだが、そもそも、魔道具が『対象者が真人間になった』と判断するまで戻ってこれない仕組みだ。決して2人を信用しての発言ではない。
「……で、あるか。ならば、余からは何もいう事はない。全てそなたに任せよう。」
「ありがとうございます! アレン、魔道具を起動してくれ」
「承知しました」
「……は? ちょっと待て、モーリスよ。ここで起動させる気か?」
国王陛下が驚きの声を上げたが、俺はモーリス王太子の指示に従って、魔道具を起動させようとする。魔道具を起動する瞬間、カミール王子からは憎らし気に、サーカイル王子からはなめた眼で見られた。
(戻ってくる時、2人がどんな目になっているか……ふふ、見ものだな)
そんな2人を無視して俺は魔道具を起動する。起動した魔道具が、俺のダンビュライトの力によって、王宮の『転移』防止の魔道具を打ち破り、2人を『転移』させた。
「な!? 『転移』魔法だと!?」
「ばかな!? 王宮の中で『転移』を使えるわけが……」
「いや、待て。あそこにいるのは、マーク=オーズウェルではないか?」
「なんと……魔法使いの頂点と言われているマーク殿か?」
「マーク殿が協力しているのだとすれば……」
貴族達の間で、『マークさんが協力したから『転移』魔法を発動することが出来た』という認識が広まっていく。
(もしかして、ダンビュライトの事を秘密にするためについて来てくれたのかな?)
ダンビュライトの存在を隠す事まで考えていなかった俺は、思わずマークさんを見つめた。俺の視線に気付いたマークさんがにっこりとほほ笑んでくれる。本当に頼りになる人だ。
「はぁ。まさか、閉じ込めるというのがそういう意味だとは……モーリスよ。そちのお抱えの商人はとんでもない事をするな」
通常、対象を閉じ込める魔道具というのは、『起動した場所から出る事を禁じる』魔道具を指す。特定の部屋や牢屋などでこの魔道具を起動することで、対象をその場に閉じ込めるのだ。
というのも、『転移』魔法は、『転移』の対象を細かく指定する必要があるため、魔道具に付与するには向かない魔法なのだ。今回は、相手がカミール王子とサーカイル王子と分かっていたから専用の魔道具を作成する事が出来たが、普通はそんな汎用性のない作り方はしない。
「ええ。私の最大の支援者で最高の友人です」
モーリス王太子は俺を見ながら微笑んだ。俺も、これまで培ってきた商人としての力をフル活用して、営業スマイルを返す。
「ふふ、平民の友人がいる王太子とはな。それも新しい時代かの……さて、モーリスよ。『最初の仕事』はこれで終わりかの?」
「ええ。本日この場で済ませたい仕事は終わりました。お時間を頂き、ありがとうございます」
「よい。この場であったからこそ、あやつらの命もつながったのだろうからな。それでは、先に進めよ」
「はっ! それでは皆の者。この後は、余が新しい王太子となった祝いの場を用意してある。存分に楽しんで行ってくれ!」
「「「はっ! モーリス王太子、万歳! ルーヴァルデン王国に栄光あれ!!」」」
王子達への処罰が軽いものだったためか、参加者のほとんどは明るい表情で次の祝いの場を楽しみにしている。一部、表情を曇らせている者もいるが、まぁ仕方がないだろう。
次の予定である祝いの場は、大広間に移っての宴だ。基本的には、モーリス王太子を支援している者同士が交流するための楽しい場なのだが、そうでない者達にとって、今後を決めるための重要な場でもある。端的に言えば、モーリス王子が、見事王太子となり、勝ち組となったファミール侯爵家派閥に寝返るか、これまで通りバージス公爵家派閥に身を置くかを決める場なのだ。表情が曇るのも仕方がないだろう。
そんな状況の中、俺は転移させた王子達の事を考えていた。
(カミール王子はそろそろ辛くなってきた頃かな? サーカイル王子はまだまだ余裕だろうけど)
この宴は3時間程の予定だとモーリス王太子から聞いている。早ければ、宴が終わる前にカミール王子は戻ってくるかもしれない。そうなれば、今表情を曇らせている者達の立ち回りも変わってくるだろう。
(ふふふ。楽しみだなぁ)
周りが様々な表情を浮かべている中、俺は一人だけ、暗い笑みを浮かべていた。
「大丈夫です。アレン! 頼む!」
モーリス王太子に呼ばれた俺は拘束されている王子達の元へ行き、2人の腕に魔道具を取り付けようとする。何かを察したのか、2人とも必死で抵抗していたが、衛兵たちに押さえつけてもらって、それぞれの腕に魔道具を付けた。そして、魔道具を付け終えた俺は、モーリス王太子の前に跪く。
「準備が整いました。いつでも起動できます」
「うむ、ご苦労。陛下、今、アレンが2人に付けた魔道具には、2人を真人間にする機能が備わっています。これを使用し、2人を真人間に厚生させた後、国のために尽くしてもらおうと考えております」
「なんと! 人を真人間にする魔道具、だと? それは、洗脳ではないか。王子達を洗脳するというのは、さすがに見過ごせんぞ?」
「ご心配なく。アレンから詳細を聞いておりますが、あの魔道具は、真人間になるまで、とある場所に閉じ込めておく物です。『回復』等の機能も備わっているため、死亡する危険もありません」
「ふむ……そう聞くと、まるで悪さをした子供へのお仕置きのように聞こえるが……それで本当に真人間になるのか?」
「はい、陛下。必ずや、2人共心を入れ替え、国のため、そして民のために尽くしてくれるでしょう。私は2人を信じております」
モーリス王太子はまるで2人を信用しているような口ぶりだが、そもそも、魔道具が『対象者が真人間になった』と判断するまで戻ってこれない仕組みだ。決して2人を信用しての発言ではない。
「……で、あるか。ならば、余からは何もいう事はない。全てそなたに任せよう。」
「ありがとうございます! アレン、魔道具を起動してくれ」
「承知しました」
「……は? ちょっと待て、モーリスよ。ここで起動させる気か?」
国王陛下が驚きの声を上げたが、俺はモーリス王太子の指示に従って、魔道具を起動させようとする。魔道具を起動する瞬間、カミール王子からは憎らし気に、サーカイル王子からはなめた眼で見られた。
(戻ってくる時、2人がどんな目になっているか……ふふ、見ものだな)
そんな2人を無視して俺は魔道具を起動する。起動した魔道具が、俺のダンビュライトの力によって、王宮の『転移』防止の魔道具を打ち破り、2人を『転移』させた。
「な!? 『転移』魔法だと!?」
「ばかな!? 王宮の中で『転移』を使えるわけが……」
「いや、待て。あそこにいるのは、マーク=オーズウェルではないか?」
「なんと……魔法使いの頂点と言われているマーク殿か?」
「マーク殿が協力しているのだとすれば……」
貴族達の間で、『マークさんが協力したから『転移』魔法を発動することが出来た』という認識が広まっていく。
(もしかして、ダンビュライトの事を秘密にするためについて来てくれたのかな?)
ダンビュライトの存在を隠す事まで考えていなかった俺は、思わずマークさんを見つめた。俺の視線に気付いたマークさんがにっこりとほほ笑んでくれる。本当に頼りになる人だ。
「はぁ。まさか、閉じ込めるというのがそういう意味だとは……モーリスよ。そちのお抱えの商人はとんでもない事をするな」
通常、対象を閉じ込める魔道具というのは、『起動した場所から出る事を禁じる』魔道具を指す。特定の部屋や牢屋などでこの魔道具を起動することで、対象をその場に閉じ込めるのだ。
というのも、『転移』魔法は、『転移』の対象を細かく指定する必要があるため、魔道具に付与するには向かない魔法なのだ。今回は、相手がカミール王子とサーカイル王子と分かっていたから専用の魔道具を作成する事が出来たが、普通はそんな汎用性のない作り方はしない。
「ええ。私の最大の支援者で最高の友人です」
モーリス王太子は俺を見ながら微笑んだ。俺も、これまで培ってきた商人としての力をフル活用して、営業スマイルを返す。
「ふふ、平民の友人がいる王太子とはな。それも新しい時代かの……さて、モーリスよ。『最初の仕事』はこれで終わりかの?」
「ええ。本日この場で済ませたい仕事は終わりました。お時間を頂き、ありがとうございます」
「よい。この場であったからこそ、あやつらの命もつながったのだろうからな。それでは、先に進めよ」
「はっ! それでは皆の者。この後は、余が新しい王太子となった祝いの場を用意してある。存分に楽しんで行ってくれ!」
「「「はっ! モーリス王太子、万歳! ルーヴァルデン王国に栄光あれ!!」」」
王子達への処罰が軽いものだったためか、参加者のほとんどは明るい表情で次の祝いの場を楽しみにしている。一部、表情を曇らせている者もいるが、まぁ仕方がないだろう。
次の予定である祝いの場は、大広間に移っての宴だ。基本的には、モーリス王太子を支援している者同士が交流するための楽しい場なのだが、そうでない者達にとって、今後を決めるための重要な場でもある。端的に言えば、モーリス王子が、見事王太子となり、勝ち組となったファミール侯爵家派閥に寝返るか、これまで通りバージス公爵家派閥に身を置くかを決める場なのだ。表情が曇るのも仕方がないだろう。
そんな状況の中、俺は転移させた王子達の事を考えていた。
(カミール王子はそろそろ辛くなってきた頃かな? サーカイル王子はまだまだ余裕だろうけど)
この宴は3時間程の予定だとモーリス王太子から聞いている。早ければ、宴が終わる前にカミール王子は戻ってくるかもしれない。そうなれば、今表情を曇らせている者達の立ち回りも変わってくるだろう。
(ふふふ。楽しみだなぁ)
周りが様々な表情を浮かべている中、俺は一人だけ、暗い笑みを浮かべていた。
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