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第5章 転換期
162【これから】
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お墓作りを手伝ってくれた神父様にお礼を言って、俺達は、家戻った。ユリの『転移』魔法の事はなるべく秘密にしておきたかったので、誰にも見られていないことを確認してから、順番に支店の裏口に『転移』してもらう。
裏口から支店の中に入ったが、店内は閑散としている。
(いつもなら、この時間はもう人がいっぱいいたのに……)
そんなことを考えながら、支店の入口に向かうと、マグダンスさんやナタリーさんが、来てくださったお客さんに『特許権を奪われてしまったので、しばらく休業する事』を説明していた。昨日の今日で、まだ話が広まっていないのか、多くのお客さんが店内に入ろうとしており、なかなか大変そうだ。
俺も手伝おうと思い、入口に向かおうとした時、店の裏口からミッシェルさんが飛び込んできた。
「アレンはん! この手紙はどういう事や!」
飛び込んできたミッシェルさんは、珍しく、ヴェールを外している。化粧もしていないし、服装もかなりラフな感じだ。きっと手紙を読んで飛んできてくれたのだろう。
ミッシェルさんの後ろにいるターニャさんも、取り乱しているミッシェルさんを見て、いつもは無表情な顔を、困惑させていた。
「ルークはんにイリスはんまで殺されたって……あんさんらは平気なんか? 襲われたりしとらんのか?」
ミッシェルさんが俺の肩を掴んで話し続ける。
「いざとなったら、わてのところで匿ったるからな。他の皆は――」
「――落ち着いて下さい! 俺達は大丈夫ですから。色々お話ししたいので、応接室に来て頂けますか?」
俺が、ミッシェルさんの言葉を遮って話しかけると、少し落ち着いたのか、俺の肩から手を離した。
「そ、そうやな……取り乱してもうた。かんにんな」
「いえ。こちらこそ、急な手紙で申し訳ありません。来て頂き、ありがとうございます」
他の皆には、店の入口を手伝ってもらうように指示をしてから、俺はミッシェルさんを連れて応接室に向かう。
応接室に着くと、ミッシェルさんが早く話を聞きたがったので、お茶も淹れていなかったが、俺は家に帰ってからの事を順番に話し始める。
家に帰ったら、父さんと母さんが殺されていた事、俺とユリも攫われそうになった事、特許権が失われていて、役所から人が来た事、そして今朝、父さんと母さんの墓を作った事。俺が話し終えるまで、ミッシェルさんは黙って聞いてくれた。
「なんやのそれ……しかも、犯人が近衛兵って……なんなんや……」
「ええ。しかもダンビュライトの首飾りを持っている近衛兵です。黒幕は大分絞られるかと」
「まぁ、確証はあらへんけど…………一番怪しいんは第2王子やな」
「……やっぱりそう思いますか?」
「ああ。従順な振りしとったけど、野心まみれの顔を隠しきれてなかったしな。なんかするなとは思っとったんよ。けど、まさかこんなことをしでかすとはな……」
王宮で、俺を取り込めなかったので、実力行使で来たのだろう。そう言えば、第2王子に騙されて王宮に行った話をミッシェルさんにしていなかった。
「実は――」
ミッシェルさんに、騙されて王宮に行った話をすると、納得したようにうなずく。
「そやったんか……そやけど第2王子にしては雑な事しとるな。西側の連中が切り崩されている事に気付いて、慌てたんか? いや、それにしても……」
そう言うと、ミッシェルさんが俺に向けて頭を下げた。
「かんにんな。わてがあんさんを巻き込まんでもうたから。そのせいでルークはんとイリスはんだけでなく、あんさんまで……」
「そんな……ミッシェル様の責任ではありません。僕も不注意でした」
実際、王子に呼び出されるような事があったのだ。もっと警戒しておくべきだったと、今更ながら思う。
「せやけど――」
「――それより、第1王子が犯人というのは考えられませんか? 彼だって、西側の貴族を切り崩されたことに気付いたら、何とかしようとするでしょうし……」
「あー、その線もなくはないけどな。第1王子がそないな事に頭回るとは思えんのよ」
話題を逸らしたことで、ミッシェルさんは頭を上げてくれる。
(ってか、第1王子を『あれ』扱いですか……)
「まぁ、いずれにしても証拠のない仮説や。どっちが犯人の可能性もある。そう思って注意しときや」
「そうですね。そうします」
「いざとなったら、わての所で匿ったるからちゃんと言うんやで? ……それで? あんさんはこれからどないしはるんや? 『今後について話』したいゆうとったけど……」
少し間を置いてから、ミッシェルさんが聞いてきた。
「あ、そうですね。その話もしましょう。……以前お見せした。魔道具をクランフォード商会でも販売しようかなと思いまして」
「ああ! 『部屋の温度を上げる』魔道具や『洗濯物を乾かす』魔道具やな。なるほど! 遊具の代わりにそれらを売っていこうっちゅう訳やな?」
「はい。販売はミッシェル様にお任せすると言っていたのですが……」
「かまへん、かまへん。あんさんが作った物をあんさが売って何が悪いんや? 問題ないに決まっとるやないの。ほなら、わてらはクランフォード商会の支店がない町で売ることにするわ。具体的にはここと王都以外やな」
「……あ」
(王都のお店の事、すっかり忘れてた)
「ん? どしたん?」
「い、いえ。なんでもないです。それで、フィリス工房では魔道具の生産は請け負っていないので、どうしようかなと……」
「あぁ、なるほど。そやなぁ……魔道具の生産が出来る工房を紹介したってもええんやけど……せっかくやし、フィリス工房に魔道具を作れるようになってもらお。今日まだ、時間ええか?」
「もちろんです!」
こうして俺は、ミッシェルさんと一緒にフィリス工房に向かった。
道中、ミッシェルさんがヴェールをしていなかったせいで、ひと悶着あったのだが、それはまた別の話。
裏口から支店の中に入ったが、店内は閑散としている。
(いつもなら、この時間はもう人がいっぱいいたのに……)
そんなことを考えながら、支店の入口に向かうと、マグダンスさんやナタリーさんが、来てくださったお客さんに『特許権を奪われてしまったので、しばらく休業する事』を説明していた。昨日の今日で、まだ話が広まっていないのか、多くのお客さんが店内に入ろうとしており、なかなか大変そうだ。
俺も手伝おうと思い、入口に向かおうとした時、店の裏口からミッシェルさんが飛び込んできた。
「アレンはん! この手紙はどういう事や!」
飛び込んできたミッシェルさんは、珍しく、ヴェールを外している。化粧もしていないし、服装もかなりラフな感じだ。きっと手紙を読んで飛んできてくれたのだろう。
ミッシェルさんの後ろにいるターニャさんも、取り乱しているミッシェルさんを見て、いつもは無表情な顔を、困惑させていた。
「ルークはんにイリスはんまで殺されたって……あんさんらは平気なんか? 襲われたりしとらんのか?」
ミッシェルさんが俺の肩を掴んで話し続ける。
「いざとなったら、わてのところで匿ったるからな。他の皆は――」
「――落ち着いて下さい! 俺達は大丈夫ですから。色々お話ししたいので、応接室に来て頂けますか?」
俺が、ミッシェルさんの言葉を遮って話しかけると、少し落ち着いたのか、俺の肩から手を離した。
「そ、そうやな……取り乱してもうた。かんにんな」
「いえ。こちらこそ、急な手紙で申し訳ありません。来て頂き、ありがとうございます」
他の皆には、店の入口を手伝ってもらうように指示をしてから、俺はミッシェルさんを連れて応接室に向かう。
応接室に着くと、ミッシェルさんが早く話を聞きたがったので、お茶も淹れていなかったが、俺は家に帰ってからの事を順番に話し始める。
家に帰ったら、父さんと母さんが殺されていた事、俺とユリも攫われそうになった事、特許権が失われていて、役所から人が来た事、そして今朝、父さんと母さんの墓を作った事。俺が話し終えるまで、ミッシェルさんは黙って聞いてくれた。
「なんやのそれ……しかも、犯人が近衛兵って……なんなんや……」
「ええ。しかもダンビュライトの首飾りを持っている近衛兵です。黒幕は大分絞られるかと」
「まぁ、確証はあらへんけど…………一番怪しいんは第2王子やな」
「……やっぱりそう思いますか?」
「ああ。従順な振りしとったけど、野心まみれの顔を隠しきれてなかったしな。なんかするなとは思っとったんよ。けど、まさかこんなことをしでかすとはな……」
王宮で、俺を取り込めなかったので、実力行使で来たのだろう。そう言えば、第2王子に騙されて王宮に行った話をミッシェルさんにしていなかった。
「実は――」
ミッシェルさんに、騙されて王宮に行った話をすると、納得したようにうなずく。
「そやったんか……そやけど第2王子にしては雑な事しとるな。西側の連中が切り崩されている事に気付いて、慌てたんか? いや、それにしても……」
そう言うと、ミッシェルさんが俺に向けて頭を下げた。
「かんにんな。わてがあんさんを巻き込まんでもうたから。そのせいでルークはんとイリスはんだけでなく、あんさんまで……」
「そんな……ミッシェル様の責任ではありません。僕も不注意でした」
実際、王子に呼び出されるような事があったのだ。もっと警戒しておくべきだったと、今更ながら思う。
「せやけど――」
「――それより、第1王子が犯人というのは考えられませんか? 彼だって、西側の貴族を切り崩されたことに気付いたら、何とかしようとするでしょうし……」
「あー、その線もなくはないけどな。第1王子がそないな事に頭回るとは思えんのよ」
話題を逸らしたことで、ミッシェルさんは頭を上げてくれる。
(ってか、第1王子を『あれ』扱いですか……)
「まぁ、いずれにしても証拠のない仮説や。どっちが犯人の可能性もある。そう思って注意しときや」
「そうですね。そうします」
「いざとなったら、わての所で匿ったるからちゃんと言うんやで? ……それで? あんさんはこれからどないしはるんや? 『今後について話』したいゆうとったけど……」
少し間を置いてから、ミッシェルさんが聞いてきた。
「あ、そうですね。その話もしましょう。……以前お見せした。魔道具をクランフォード商会でも販売しようかなと思いまして」
「ああ! 『部屋の温度を上げる』魔道具や『洗濯物を乾かす』魔道具やな。なるほど! 遊具の代わりにそれらを売っていこうっちゅう訳やな?」
「はい。販売はミッシェル様にお任せすると言っていたのですが……」
「かまへん、かまへん。あんさんが作った物をあんさが売って何が悪いんや? 問題ないに決まっとるやないの。ほなら、わてらはクランフォード商会の支店がない町で売ることにするわ。具体的にはここと王都以外やな」
「……あ」
(王都のお店の事、すっかり忘れてた)
「ん? どしたん?」
「い、いえ。なんでもないです。それで、フィリス工房では魔道具の生産は請け負っていないので、どうしようかなと……」
「あぁ、なるほど。そやなぁ……魔道具の生産が出来る工房を紹介したってもええんやけど……せっかくやし、フィリス工房に魔道具を作れるようになってもらお。今日まだ、時間ええか?」
「もちろんです!」
こうして俺は、ミッシェルさんと一緒にフィリス工房に向かった。
道中、ミッシェルさんがヴェールをしていなかったせいで、ひと悶着あったのだが、それはまた別の話。
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