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第5章 転換期
142【魔道具開発12 休息日の予定】
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「う……く……ぐぅ……うぅぅ……ぷはっ!」
ユリの手の中で、最後のページがめくられて魔導書が閉じた。
「はぁーはぁーはぁー……やった……やったよ! 読み終わった!」
疲れ切ってはいるものの、眼を輝かせてユリが叫ぶ。
「表紙は……『身体の治し方』って書いてある! ちゃん読める!」
「まさか本当に2ヶ月で『創作』以外の全ての属性を修めるとは……大したものです」
マークさんも驚いていた。だが、マークさんから自分より早く魔法を習得した者への嫉妬は感じない。むしろ、嬉しそうにしている。
「これでお兄ちゃんの銃の改良が出来るね!」
「そうだね。ほんと、助かるよ。だけど、それは明日からにして今日は休もう。疲れたでしょ?」
「大丈夫だよ! まだ――」
「――ダメです。お気づきでないようですが、ユリさんの身体には、今までの疲労が大分溜まっています。アレンさん、銃の改良は明後日からにしてください。明日、ユリさんは休息日とします」
俺は明日からと思ったのだが、マークさんから明日は休むように言われてしまった。だが、マークさんが言うのなら間違いないだろう。
「分かりました。ユリ、明後日から銃の改良を手伝って。明日はゆっくり休もう」
「えぇ……でも……分かった」
不承不承といった様子でユリが頷く。この様子だと、明日は気が急いてしまって、あまり休めないかもしれない。
「ユリさん、焦りは予期せぬ事態を招きます。アレンさんの役に立ちたいなら、ちゃんと休んで、身体を万全にしなさい。ゆっくり休みことも大切です。明日は、魔法の練習などせず、ゆっくり休む事。良いですね?」
「――! ……分かりました」
マークさんの説得に納得したのか、先ほどより態度を軟化させてユリが答えた。
「よろしい。アレンさんは、明日はどうされますか?」
「そうですね……俺も休息日にしようと思います」
明後日から忙しくなりそうなので、1日くらいゆっくりするのもいいだろう。
「分かりました。では、明後日にお待ちしてますね。2人共、お疲れ様でした」
「「お疲れ様でした!」」
魔導書貸出店を出て、自分達のお店に戻る途中でユリに話しかけた。
「明日はどうする? 店でのんびりするか?」
「うーん、そうだね……色々買いたい物があるからお買い物に行こうかな!」
「1人で大丈夫か? なんなら、一緒に行くぞ?」
「もぉ、心配し過ぎだよ。ここは王都なんだし、1人で平気だよ」
確かに王都は非常に治安が良く、犯罪などめったに起こらない。治安部隊も見回ってくれているので、女の子が1人で歩いていてもまず大丈夫だろう。
「分かった。あんまり遅くなるなよ?」
「分かってるって。晩御飯までには帰るよ。お兄ちゃんはどうするの?」
「そうだなぁ、いつもみたいにお店で休んでても良いけど……せっかくだから王都を散歩しようかな」
王都に来てからの2か月間、稀にキュリアス商会にケーキを買いに行くもののそれ以外は、メン屋と魔導書貸出店くらいしか行っていなかった。
「色々知っておかないと、クリスさんとデートする時にエスコートできないもんね」
「……心を読まないでくれ」
前回の王都デートではクリスがエスコートしてくれたので、次は俺がエスコートしたいのだ。そのためには王都のお店を知っておく必要がある。
「ふふ。良さそうなお店があったら教えてあげるね」
「助かるよ」
そんなことを話しながら、俺達はお店に戻った。
翌日、のんびりと起床した俺は遅めの朝食を食べて身支度を整える。ユリはもう出かけたようだ。俺も散歩に出かけるため、お店を出て鍵をかけたところで、男に声を掛けられる。
「アレン殿、モーリス王子がお呼びです。王宮までご同行を下さい」
そう言って、男は俺に王族の紋章を見せた。この紋章を持っているという事は、この男は王族からの使者で間違いないという事だ。どうやら散歩に行くことは出来ないらしい。
使者に連れられて王宮に入向かう。
(そう言えば、最初に王宮に入ったのもモーリス王子に謁見するためだったな)
そんなことを考えていると、最初にモーリス王子に謁見した時と同じ部屋に案内された。
(あの時は父さん達がいたけど今は一人か……)
モーリス王子とは何度も会っているため、あの時ほど緊張していない。しかし、1人というのは心細いものだ。
弱音を心の奥底に封じ込めていると、部屋の扉がノックされた。
「アレン殿、王子がお見えになります。ご準備ください」
部屋に待機していた執事に言われて、俺は慌てて跪く。
(あっぶな……王族を出迎えるのに、座ったままでいるやつがあるか!)
何度も外でモーリス王子と会っていた時の癖が抜けていなかった。モーリス王子は気にしないと思うが、ここには執事もいるのだ。気を抜くわけにはいかない。
俺が跪いた事を確認して、執事が扉を開けた。人が入ってくる気配を感じるが、まだ顔を上げるわけにはいかない。
「顔を上げよ」
(あれ? 声が違う?)
聞こえてきた声に戸惑いながら顔を上げる。するとそこには、モーリス王子ではなく、サーカイル王子の姿があった。
ユリの手の中で、最後のページがめくられて魔導書が閉じた。
「はぁーはぁーはぁー……やった……やったよ! 読み終わった!」
疲れ切ってはいるものの、眼を輝かせてユリが叫ぶ。
「表紙は……『身体の治し方』って書いてある! ちゃん読める!」
「まさか本当に2ヶ月で『創作』以外の全ての属性を修めるとは……大したものです」
マークさんも驚いていた。だが、マークさんから自分より早く魔法を習得した者への嫉妬は感じない。むしろ、嬉しそうにしている。
「これでお兄ちゃんの銃の改良が出来るね!」
「そうだね。ほんと、助かるよ。だけど、それは明日からにして今日は休もう。疲れたでしょ?」
「大丈夫だよ! まだ――」
「――ダメです。お気づきでないようですが、ユリさんの身体には、今までの疲労が大分溜まっています。アレンさん、銃の改良は明後日からにしてください。明日、ユリさんは休息日とします」
俺は明日からと思ったのだが、マークさんから明日は休むように言われてしまった。だが、マークさんが言うのなら間違いないだろう。
「分かりました。ユリ、明後日から銃の改良を手伝って。明日はゆっくり休もう」
「えぇ……でも……分かった」
不承不承といった様子でユリが頷く。この様子だと、明日は気が急いてしまって、あまり休めないかもしれない。
「ユリさん、焦りは予期せぬ事態を招きます。アレンさんの役に立ちたいなら、ちゃんと休んで、身体を万全にしなさい。ゆっくり休みことも大切です。明日は、魔法の練習などせず、ゆっくり休む事。良いですね?」
「――! ……分かりました」
マークさんの説得に納得したのか、先ほどより態度を軟化させてユリが答えた。
「よろしい。アレンさんは、明日はどうされますか?」
「そうですね……俺も休息日にしようと思います」
明後日から忙しくなりそうなので、1日くらいゆっくりするのもいいだろう。
「分かりました。では、明後日にお待ちしてますね。2人共、お疲れ様でした」
「「お疲れ様でした!」」
魔導書貸出店を出て、自分達のお店に戻る途中でユリに話しかけた。
「明日はどうする? 店でのんびりするか?」
「うーん、そうだね……色々買いたい物があるからお買い物に行こうかな!」
「1人で大丈夫か? なんなら、一緒に行くぞ?」
「もぉ、心配し過ぎだよ。ここは王都なんだし、1人で平気だよ」
確かに王都は非常に治安が良く、犯罪などめったに起こらない。治安部隊も見回ってくれているので、女の子が1人で歩いていてもまず大丈夫だろう。
「分かった。あんまり遅くなるなよ?」
「分かってるって。晩御飯までには帰るよ。お兄ちゃんはどうするの?」
「そうだなぁ、いつもみたいにお店で休んでても良いけど……せっかくだから王都を散歩しようかな」
王都に来てからの2か月間、稀にキュリアス商会にケーキを買いに行くもののそれ以外は、メン屋と魔導書貸出店くらいしか行っていなかった。
「色々知っておかないと、クリスさんとデートする時にエスコートできないもんね」
「……心を読まないでくれ」
前回の王都デートではクリスがエスコートしてくれたので、次は俺がエスコートしたいのだ。そのためには王都のお店を知っておく必要がある。
「ふふ。良さそうなお店があったら教えてあげるね」
「助かるよ」
そんなことを話しながら、俺達はお店に戻った。
翌日、のんびりと起床した俺は遅めの朝食を食べて身支度を整える。ユリはもう出かけたようだ。俺も散歩に出かけるため、お店を出て鍵をかけたところで、男に声を掛けられる。
「アレン殿、モーリス王子がお呼びです。王宮までご同行を下さい」
そう言って、男は俺に王族の紋章を見せた。この紋章を持っているという事は、この男は王族からの使者で間違いないという事だ。どうやら散歩に行くことは出来ないらしい。
使者に連れられて王宮に入向かう。
(そう言えば、最初に王宮に入ったのもモーリス王子に謁見するためだったな)
そんなことを考えていると、最初にモーリス王子に謁見した時と同じ部屋に案内された。
(あの時は父さん達がいたけど今は一人か……)
モーリス王子とは何度も会っているため、あの時ほど緊張していない。しかし、1人というのは心細いものだ。
弱音を心の奥底に封じ込めていると、部屋の扉がノックされた。
「アレン殿、王子がお見えになります。ご準備ください」
部屋に待機していた執事に言われて、俺は慌てて跪く。
(あっぶな……王族を出迎えるのに、座ったままでいるやつがあるか!)
何度も外でモーリス王子と会っていた時の癖が抜けていなかった。モーリス王子は気にしないと思うが、ここには執事もいるのだ。気を抜くわけにはいかない。
俺が跪いた事を確認して、執事が扉を開けた。人が入ってくる気配を感じるが、まだ顔を上げるわけにはいかない。
「顔を上げよ」
(あれ? 声が違う?)
聞こえてきた声に戸惑いながら顔を上げる。するとそこには、モーリス王子ではなく、サーカイル王子の姿があった。
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