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第4章 王都にて
118.【日々】
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その後、王宮の控室で待っていてくれた父さん達と合流して王宮を後にする。父さん達に国王とどんな話をしたのか聞かれたのでありのままを答えた。
「そう、か。国王陛下はついに、カミール王子とサーカイル王子に見切りをつけたのか」
「そうみたい。それで、モーリス王子を王太子に任命するけど俺に相談役になって欲しいって言われて了承したんだけど……大丈夫かな?」
「ん? 不安か?」
「そりゃ、将来の国王陛下の相談役なんて何やればいいか分からないし……」
「政治的なことは国王陛下達がフォローして下さるんだろ? なら、後はモーリス王子の周りに対するフォローをして差し上げればいいんじゃないか?」
「……どういう事??」
「モーリス王子の政策は、周りに理解されないことが多いからな。そのせいで孤立してしまいがちなんだ。王妃派の貴族達からも疎遠にされていたことがあるらしい」
理解できない物を畏怖し排除しようとするのは人の性なのかもしれない。
「結果が出てきて、周りの人も戻ってきてはいるが、モーリス王子の心境は複雑だろう。一度離れて行ったという確執はどうしても残る。モーリス王子が周りに冷たいのはそのせいだと言われているな」
大した理由もなく、この世界の人を見下しているのだと思っていたが、そんな理由があったとは知らなかった。
「そんなモーリス王子だが、なぜかお前の事は対等に扱ってくださるからな。話し相手になって差し上げればいいんじゃないか?」
「……そうだね。分かった」
前世を覚えている者同士でしかできない会話もあるだろう。やるべきことが明白になったおかげで、だいぶ気が楽になった。
「よし! それじゃ帰るとするか! 『ロイヤルワラント』を授与されたんだ。これからは本業の方が忙しくなるぞ」
「「「おー!」」」
今までは、商品の販売や開発ではなく、女性対応に忙しかったが、これからは、本業に集中できるだろう。それで忙しいなら願ったり叶ったりだ。
これからに期待しつつ、翌日、俺達は自分達の町へ戻った。
それからしばらくは平和な時間が続いた。『ロイヤルワラント』の授与されたことと、ようやく新しく『竹とんぼ』を量産できたことによる忙しさはあったが、以前のように女性が押しかけてくるようなことはなかった。
月に2回ほど、ユリとバミューダ君と一緒に母さんのトレーニングを受ける。一向に強くなれない俺とは違い、ユリとバミューダ君はめきめきと力を付けていった。ちなみに、俺達のトレーニング中はクリスとミーナ様が2人でお茶をしているらしい。トレーニングが終わると、ボロボロになった俺をクリスが介抱してくれる。すぐ隣で、ユリと母さんがニヤニヤしているのが鬱陶しい。なお、バミューダ君とミーナ様は2人で楽しそうにおしゃべりしている。仲睦まじいようで何よりだ。
ニーニャさんとマナは気が合ったのか、一緒にいる姿をよく見かける。仕事の休み時間だけでなく、休日も一緒にいることが多いようだ。一度、2人で何しているのか聞いたことがあるのだが、笑って『内緒』と言われてしまった。
マグダンスさんとナタリーさんは正式に婚約した。ナタリーさんにふさわしい男になったらプロポーズすると言っていたマグダンスさんだが、『ロイヤルワラントを授与された店のチーフをやっている男が何言ってるんだ?』と友人に言われて、翌日にはナタリーさんにプロポーズしたらしい。すでに両家への挨拶も済んで、ナタリーさんが成人次第、籍を入れるそうだ。ちなみに、ナタリーさんの実家は反対するどころか大喜びだったらしい。『護衛として有名になりすぎた娘に嫁の貰い手が現れるなんて奇跡だ』と言ってナタリーさんを怒らせたそうだ。幸せそうな2人なのだが、結婚式で2人の上司として挨拶して欲しいと頼まれており、それだけが悩みの種でもある。年下の俺が上司として挨拶などしていいのだろうかとクリスに相談したら『自己評価が低すぎる』笑われてしまった。『俺が挨拶するのは2人にとって名誉なこと』らしい。正直、実感はわかないのだが、もはや覚悟を決めるしかないだろう。
また、数か月に1回王妃やシャル様、それにモーリス王子に呼ばれて王都に向かう。その際にはクリスやミーナ様を連れて行き、ブリスタ子爵やミルキアーナ男爵の屋敷に泊めてもらうのがルーティンとなっている。ミーナ様とミルキアーナ男爵も言葉を交わすようになってきて、仲睦まじいとまでは言えない物の、以前のようなギクシャクした関係ではなくなってきた。いずれは完全に誤解も解けるだろう。
王都では、王妃に頼まれて『整形』を行ったり、モーリス王子の相談に乗ったりしている。以前、王妃の近衛兵を整形した時から、王妃が様々な怪我人の情報を調べて『整形』するべき人をピックアップして下さるので非常に助かっていた。王妃であれば、変な忖度はせず、本当に『整形』を必要としている人をピックアップして下さるだろう。とはいえ、このことが、王妃の発言力を強める一環になっているのは間違いない。俺達にとっても、無理を言って『整形』を頼んでくる貴族達へのいい牽制になっている。お互い、win winの関係と言えるだろう。
そしてモーリス王子だが、国王から正式に『未来の王太子はモーリス王子だ』という発表があって以降、かなり大変な思いをしている。というのも、未成年であるモーリス王子は正式には王太子にはなれない。あくまで、『成人したら王太子になる予定の者』という立場だ。ゆえに、カミール王子やサーカイル王子、およびその派閥の者がモーリス王子の妨害に躍起になっている。とはいえ、もはや大勢は決しており、今更モーリス王子に反対する者は少ない。国王曰く、『この程度の逆風も対処できないようでは王になる資格はない』とのことだ。モーリス王子もそれは理解しており、兄達の妨害にも対処はしているのだが、精神的な負担は大きいようで、思い通りに進まない事をよく俺に愚痴っている。
そんな生活を2年ほど続けたある日、俺のもとに貴族院から手紙が届いた。
「そう、か。国王陛下はついに、カミール王子とサーカイル王子に見切りをつけたのか」
「そうみたい。それで、モーリス王子を王太子に任命するけど俺に相談役になって欲しいって言われて了承したんだけど……大丈夫かな?」
「ん? 不安か?」
「そりゃ、将来の国王陛下の相談役なんて何やればいいか分からないし……」
「政治的なことは国王陛下達がフォローして下さるんだろ? なら、後はモーリス王子の周りに対するフォローをして差し上げればいいんじゃないか?」
「……どういう事??」
「モーリス王子の政策は、周りに理解されないことが多いからな。そのせいで孤立してしまいがちなんだ。王妃派の貴族達からも疎遠にされていたことがあるらしい」
理解できない物を畏怖し排除しようとするのは人の性なのかもしれない。
「結果が出てきて、周りの人も戻ってきてはいるが、モーリス王子の心境は複雑だろう。一度離れて行ったという確執はどうしても残る。モーリス王子が周りに冷たいのはそのせいだと言われているな」
大した理由もなく、この世界の人を見下しているのだと思っていたが、そんな理由があったとは知らなかった。
「そんなモーリス王子だが、なぜかお前の事は対等に扱ってくださるからな。話し相手になって差し上げればいいんじゃないか?」
「……そうだね。分かった」
前世を覚えている者同士でしかできない会話もあるだろう。やるべきことが明白になったおかげで、だいぶ気が楽になった。
「よし! それじゃ帰るとするか! 『ロイヤルワラント』を授与されたんだ。これからは本業の方が忙しくなるぞ」
「「「おー!」」」
今までは、商品の販売や開発ではなく、女性対応に忙しかったが、これからは、本業に集中できるだろう。それで忙しいなら願ったり叶ったりだ。
これからに期待しつつ、翌日、俺達は自分達の町へ戻った。
それからしばらくは平和な時間が続いた。『ロイヤルワラント』の授与されたことと、ようやく新しく『竹とんぼ』を量産できたことによる忙しさはあったが、以前のように女性が押しかけてくるようなことはなかった。
月に2回ほど、ユリとバミューダ君と一緒に母さんのトレーニングを受ける。一向に強くなれない俺とは違い、ユリとバミューダ君はめきめきと力を付けていった。ちなみに、俺達のトレーニング中はクリスとミーナ様が2人でお茶をしているらしい。トレーニングが終わると、ボロボロになった俺をクリスが介抱してくれる。すぐ隣で、ユリと母さんがニヤニヤしているのが鬱陶しい。なお、バミューダ君とミーナ様は2人で楽しそうにおしゃべりしている。仲睦まじいようで何よりだ。
ニーニャさんとマナは気が合ったのか、一緒にいる姿をよく見かける。仕事の休み時間だけでなく、休日も一緒にいることが多いようだ。一度、2人で何しているのか聞いたことがあるのだが、笑って『内緒』と言われてしまった。
マグダンスさんとナタリーさんは正式に婚約した。ナタリーさんにふさわしい男になったらプロポーズすると言っていたマグダンスさんだが、『ロイヤルワラントを授与された店のチーフをやっている男が何言ってるんだ?』と友人に言われて、翌日にはナタリーさんにプロポーズしたらしい。すでに両家への挨拶も済んで、ナタリーさんが成人次第、籍を入れるそうだ。ちなみに、ナタリーさんの実家は反対するどころか大喜びだったらしい。『護衛として有名になりすぎた娘に嫁の貰い手が現れるなんて奇跡だ』と言ってナタリーさんを怒らせたそうだ。幸せそうな2人なのだが、結婚式で2人の上司として挨拶して欲しいと頼まれており、それだけが悩みの種でもある。年下の俺が上司として挨拶などしていいのだろうかとクリスに相談したら『自己評価が低すぎる』笑われてしまった。『俺が挨拶するのは2人にとって名誉なこと』らしい。正直、実感はわかないのだが、もはや覚悟を決めるしかないだろう。
また、数か月に1回王妃やシャル様、それにモーリス王子に呼ばれて王都に向かう。その際にはクリスやミーナ様を連れて行き、ブリスタ子爵やミルキアーナ男爵の屋敷に泊めてもらうのがルーティンとなっている。ミーナ様とミルキアーナ男爵も言葉を交わすようになってきて、仲睦まじいとまでは言えない物の、以前のようなギクシャクした関係ではなくなってきた。いずれは完全に誤解も解けるだろう。
王都では、王妃に頼まれて『整形』を行ったり、モーリス王子の相談に乗ったりしている。以前、王妃の近衛兵を整形した時から、王妃が様々な怪我人の情報を調べて『整形』するべき人をピックアップして下さるので非常に助かっていた。王妃であれば、変な忖度はせず、本当に『整形』を必要としている人をピックアップして下さるだろう。とはいえ、このことが、王妃の発言力を強める一環になっているのは間違いない。俺達にとっても、無理を言って『整形』を頼んでくる貴族達へのいい牽制になっている。お互い、win winの関係と言えるだろう。
そしてモーリス王子だが、国王から正式に『未来の王太子はモーリス王子だ』という発表があって以降、かなり大変な思いをしている。というのも、未成年であるモーリス王子は正式には王太子にはなれない。あくまで、『成人したら王太子になる予定の者』という立場だ。ゆえに、カミール王子やサーカイル王子、およびその派閥の者がモーリス王子の妨害に躍起になっている。とはいえ、もはや大勢は決しており、今更モーリス王子に反対する者は少ない。国王曰く、『この程度の逆風も対処できないようでは王になる資格はない』とのことだ。モーリス王子もそれは理解しており、兄達の妨害にも対処はしているのだが、精神的な負担は大きいようで、思い通りに進まない事をよく俺に愚痴っている。
そんな生活を2年ほど続けたある日、俺のもとに貴族院から手紙が届いた。
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