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第4章 王都にて
111.【ロイヤルワラント授与2 授与式】
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俺と父さん、そしてカートンさんともう一名のキュリアス商会の方と一緒に、案内役の男性の後ろについて歩く。
「そういえば、ちゃんと紹介しておりませんでしたね。こちら、息子のアレンです」
「おお、そうか、アレン君というのか。何度も店で見ているから初めましてというのも変な気がするが、改めてよろしく頼むよ。こいつは息子のケニーだ」
「ケニーです。よろしく、アレン君」
「こちらこそ、よろしくお願いします!」
ケニーさんは、20代くらいの青年で、その顔にはカートンさんと同じく、柔らかい笑みを浮かべていた。
しばらく歩くと、とても重厚感のある豪華な扉の前で案内役の男性が立ち止まり、俺達に最後の確認をする。
「この扉の奥が、謁見の間です。皆さん準備はよろしいですね?」
(この扉の奥に国王がいるのか……あれ? ……え、あ、やばい。なんか緊張してきた)
扉の向こうを想像したら、急に怖くなってくる。
モーリス王子と謁見した時は、豪華ではあるが一般的な応接室に近い部屋での謁見だった。今思えば、あれはモーリス王子の、こちらを緊張させないようにする心遣いだったのだろう。
あの時とは違う、いかにも『高貴な身分の方がいる場所』だと主張してくる扉を前に、俺は動けなくなってしまう。
(待って! やばいやばい! もうすぐ授与式が始まる! 落ち着け! 落ち着け!!)
「アレン」
焦る俺の肩に父さんが手を置いた。
「お前、クリス様とキュリアス商会のケーキ食べたのか?」
「え? ……あ、うん」
「美味かったか?」
「そりゃ、美味しかったよ」
「そっか。なら、明日案内してくれ。もちろん母さん達も一緒にな。でないと、お前とクリス様だけずるいって怒られちまうぞ?」
父さんがニヤリと笑う。
「そう……だね。皆で行こうか」
父さんにつられて俺も笑顔になる。先ほどまで重くのしかかっていた緊張が大分薄れた。
「はっはっは! それはいい。ぜひいらしてください。歓迎しますよ」
「あ、ありがとうございます。必ず行きます」
カートンさんも笑ってくれる。
(父さんもカートンさんも凄いな……)
2人のおかげで、重苦しい空気も感じなくなった。
「準備ができたようですね。それでは、扉を開きます」
案内人の男性によって扉が開かれ、俺達は謁見の間へと足を進める。
次の瞬間、全身に視線を感じた。
扉から国王の下まで続いている赤いカーペットの両脇に、40人近い貴族達がいたのだが、そこにある全ての眼が俺達を観察していたのだ。
(大丈夫……大丈夫だ)
視線の圧力を感じるが、下を向くことはしない。堂々と胸を張って歩き続ける。
貴族たちの間を抜け、王の前まで歩み出て、膝をつき、頭を下げた。
「面を上げよ」
威厳のある声が頭上から聞こえた。ゆっくりと顔を上げる。
「そちらがキュリアス商会とクランフォード商会か」
国王が俺達を見渡した。貴族達から感じた以上の圧力を感じて、思わず目を逸らしそうになるが、全身に力を入れて顔を上げ続ける。
「ふむ。まぁ良いだろう。――みな、聞くがよい! この度、王妃とモーリス王子から『ロイヤルワラント』の推薦があった! 王妃がキュリアス商会のケーキを、モーリス王子がクランフォード商会のリバーシとチェスを、それぞれ『ロイヤルワラント』に推薦したのだ!」
国王が話している最中なので、声を上げるような貴族はいなかったが、貴族達からの圧が強くなったように感じる。
「厳選な調査の結果、それぞれの商品は『ロイヤルワラント』を授与するにふさわしい商品であることが証明された! よって、キュリアス商会のケーキとクランフォード商会のリバーシとチェスに『ロイヤルワラント』を授与することを、余の名に置いてここに宣言する!」
国王の宣言の直後、謁見の間は拍手に包まれた。
「双方とも、『ロイヤルワラント』の名に恥じぬよう、より一層精進せよ」
「「はっ! 身に余る光栄に感謝し、日々精進致します!」」
父さんとカートンさんが声を揃えて返事をした。ちなみにこの返事は授与式のしきたりで決まっている言葉だ。
「うむ。この後、そちらの『ロイヤルワラント』授与を祝うパーティーを行う。より多くの者と交流を深め今後に活かせ。さがってよい」
「「はっ! ありがとうございます!」」
国王から退出の許可が出たので、立ち上がって来た道を戻る。行きよりも強い貴族達の視線を感じながら、俺達は謁見の間を後にした。
謁見の間の扉が閉まった直後、俺はよろけて転びそうになってしまう。
「……あっ!」
「おっと! 大丈夫か?」
「ご、ごめん! 大丈夫! ……ってあれ? 足が……」
父さんが支えてくれたので転ばずに済んだが、足に力が入らず自力で立つことが出来ない。
「お疲れさん。よく頑張ったな」
そんな俺を父さんがおんぶしてくれる。
「ちょ! 恥ずかしいよ」
「無理するな。歩けないだろ?」
「それは……そうだけど……」
とはいえ、この年でおんぶは恥ずかしい。
「謁見の間で倒れなかっただけ立派でしたよ。なぁ?」
「ええ。その年で大したものです。正直、僕もギリギリでした」
カートンさんとケニーさんも褒めてくれる。
(いや、確かに外見年齢は12歳だから変じゃないけど……でも恥ずかしい!)
結局、控室まで父さんにおんぶしてもらったが、控室に入る前に降ろしてもらう。
(父さんには悪いけど、こんな姿、クリス達に見られたくない!)
父さんの背で少し休めたからか、控室に着くころには問題なく自分の足で立てた。控室に入るとクリスが出迎えてくれる。
「アレン! お疲れ様です。大変だったでしょう」
「ただいま。本当に大変だったよ。たったあれだけの距離を歩いてこんなに疲れたのは初めてだ……」
「謁見の間は独特の雰囲気がありますからね。パーティーまではまだ時間があります。少し休んでください」
「ありがとう。そうするよ」
女性陣はパーティーに向けて色々準備があるようだが、俺は服を着替えるだけだ。急いで支度する必要はない。
クリスの言う通りソファーに座って一息つくと急に眠気が襲ってくる。突然に襲ってきた眠気に抗う暇もなく、俺は眠りに落ちた。
「そういえば、ちゃんと紹介しておりませんでしたね。こちら、息子のアレンです」
「おお、そうか、アレン君というのか。何度も店で見ているから初めましてというのも変な気がするが、改めてよろしく頼むよ。こいつは息子のケニーだ」
「ケニーです。よろしく、アレン君」
「こちらこそ、よろしくお願いします!」
ケニーさんは、20代くらいの青年で、その顔にはカートンさんと同じく、柔らかい笑みを浮かべていた。
しばらく歩くと、とても重厚感のある豪華な扉の前で案内役の男性が立ち止まり、俺達に最後の確認をする。
「この扉の奥が、謁見の間です。皆さん準備はよろしいですね?」
(この扉の奥に国王がいるのか……あれ? ……え、あ、やばい。なんか緊張してきた)
扉の向こうを想像したら、急に怖くなってくる。
モーリス王子と謁見した時は、豪華ではあるが一般的な応接室に近い部屋での謁見だった。今思えば、あれはモーリス王子の、こちらを緊張させないようにする心遣いだったのだろう。
あの時とは違う、いかにも『高貴な身分の方がいる場所』だと主張してくる扉を前に、俺は動けなくなってしまう。
(待って! やばいやばい! もうすぐ授与式が始まる! 落ち着け! 落ち着け!!)
「アレン」
焦る俺の肩に父さんが手を置いた。
「お前、クリス様とキュリアス商会のケーキ食べたのか?」
「え? ……あ、うん」
「美味かったか?」
「そりゃ、美味しかったよ」
「そっか。なら、明日案内してくれ。もちろん母さん達も一緒にな。でないと、お前とクリス様だけずるいって怒られちまうぞ?」
父さんがニヤリと笑う。
「そう……だね。皆で行こうか」
父さんにつられて俺も笑顔になる。先ほどまで重くのしかかっていた緊張が大分薄れた。
「はっはっは! それはいい。ぜひいらしてください。歓迎しますよ」
「あ、ありがとうございます。必ず行きます」
カートンさんも笑ってくれる。
(父さんもカートンさんも凄いな……)
2人のおかげで、重苦しい空気も感じなくなった。
「準備ができたようですね。それでは、扉を開きます」
案内人の男性によって扉が開かれ、俺達は謁見の間へと足を進める。
次の瞬間、全身に視線を感じた。
扉から国王の下まで続いている赤いカーペットの両脇に、40人近い貴族達がいたのだが、そこにある全ての眼が俺達を観察していたのだ。
(大丈夫……大丈夫だ)
視線の圧力を感じるが、下を向くことはしない。堂々と胸を張って歩き続ける。
貴族たちの間を抜け、王の前まで歩み出て、膝をつき、頭を下げた。
「面を上げよ」
威厳のある声が頭上から聞こえた。ゆっくりと顔を上げる。
「そちらがキュリアス商会とクランフォード商会か」
国王が俺達を見渡した。貴族達から感じた以上の圧力を感じて、思わず目を逸らしそうになるが、全身に力を入れて顔を上げ続ける。
「ふむ。まぁ良いだろう。――みな、聞くがよい! この度、王妃とモーリス王子から『ロイヤルワラント』の推薦があった! 王妃がキュリアス商会のケーキを、モーリス王子がクランフォード商会のリバーシとチェスを、それぞれ『ロイヤルワラント』に推薦したのだ!」
国王が話している最中なので、声を上げるような貴族はいなかったが、貴族達からの圧が強くなったように感じる。
「厳選な調査の結果、それぞれの商品は『ロイヤルワラント』を授与するにふさわしい商品であることが証明された! よって、キュリアス商会のケーキとクランフォード商会のリバーシとチェスに『ロイヤルワラント』を授与することを、余の名に置いてここに宣言する!」
国王の宣言の直後、謁見の間は拍手に包まれた。
「双方とも、『ロイヤルワラント』の名に恥じぬよう、より一層精進せよ」
「「はっ! 身に余る光栄に感謝し、日々精進致します!」」
父さんとカートンさんが声を揃えて返事をした。ちなみにこの返事は授与式のしきたりで決まっている言葉だ。
「うむ。この後、そちらの『ロイヤルワラント』授与を祝うパーティーを行う。より多くの者と交流を深め今後に活かせ。さがってよい」
「「はっ! ありがとうございます!」」
国王から退出の許可が出たので、立ち上がって来た道を戻る。行きよりも強い貴族達の視線を感じながら、俺達は謁見の間を後にした。
謁見の間の扉が閉まった直後、俺はよろけて転びそうになってしまう。
「……あっ!」
「おっと! 大丈夫か?」
「ご、ごめん! 大丈夫! ……ってあれ? 足が……」
父さんが支えてくれたので転ばずに済んだが、足に力が入らず自力で立つことが出来ない。
「お疲れさん。よく頑張ったな」
そんな俺を父さんがおんぶしてくれる。
「ちょ! 恥ずかしいよ」
「無理するな。歩けないだろ?」
「それは……そうだけど……」
とはいえ、この年でおんぶは恥ずかしい。
「謁見の間で倒れなかっただけ立派でしたよ。なぁ?」
「ええ。その年で大したものです。正直、僕もギリギリでした」
カートンさんとケニーさんも褒めてくれる。
(いや、確かに外見年齢は12歳だから変じゃないけど……でも恥ずかしい!)
結局、控室まで父さんにおんぶしてもらったが、控室に入る前に降ろしてもらう。
(父さんには悪いけど、こんな姿、クリス達に見られたくない!)
父さんの背で少し休めたからか、控室に着くころには問題なく自分の足で立てた。控室に入るとクリスが出迎えてくれる。
「アレン! お疲れ様です。大変だったでしょう」
「ただいま。本当に大変だったよ。たったあれだけの距離を歩いてこんなに疲れたのは初めてだ……」
「謁見の間は独特の雰囲気がありますからね。パーティーまではまだ時間があります。少し休んでください」
「ありがとう。そうするよ」
女性陣はパーティーに向けて色々準備があるようだが、俺は服を着替えるだけだ。急いで支度する必要はない。
クリスの言う通りソファーに座って一息つくと急に眠気が襲ってくる。突然に襲ってきた眠気に抗う暇もなく、俺は眠りに落ちた。
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