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第3章 躍進の始まり
95.【サーシスの傷跡12 実験結果】
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「成功だ!」
俺がそう宣言した瞬間、地下室で歓声が沸いた。
「やった! やりましたね、アレン!」
「よくやったわ」
「ほんに大したもんや」
クリス、母さん、ミッシェルさんが口々に褒めてくれた。そんな中、ミルキアーナ男爵が浮かれる俺達を一喝する。。
「落ち着け! 浮かれすぎだ。まだ『開発』が終わったわけではないんだぞ!」
(そうだ……浮かれちゃったけど、まだまだ終わったわけじゃない。気を引き締めないと……それにしても、ミルキアーナ男爵は流石だな)
「すみません。まだ最初の『実験』が成功しただけでした。喜ぶのは『開発』が終わってからにします」
「ああ。希望が見えたのは喜ぶべきことだが、浮かれるには早過ぎる。しっかり頼むぞ」
「はい!」
ミルキアーナ男爵がしっかり締めてくれた。男爵家当主は伊達ではない。そう思ったのだが……。
「なんや、かっこつけおって。あんさんだって浮かれとったやないの」
「は? 何を言って――」
「――思いっきりガッツポーズしとったの、見てたで?」
「なっ! そんなことは――」
「――顔もにやけてたわ」
「クランフォード夫人!?」
「くすくすくす」
「ブリスタ子爵令嬢まで、何を笑っている!」
締めた気が緩んでいくのを感じる……。
(ま、まぁ、気を張り続けてても疲れちゃうからな)
「ほら、ミルキアーナ男爵のおっしゃる通り、まだ『開発』は終わったないんだから! 時間もないしそろそろ再開しよう」
「……ま、アレンはんが言うならしゃーないか」
「そうですね。そろそろ再開しましょう」
「それで? 次は何やるの?」
俺は『材料』を指差して言う。
「まずは今日中に今と同じことをこの顔全体にやろう。その後、3日間様子を見る」
「分かったわ。後は『痛みの軽減』ね?」
「うん。でも、それはシャル様が来られてからになるから、今日は残りの時間で、『骨の修復作業』をやるつもり」
通常、骨折したら、骨を元の位置に戻してから回復魔法をかける。骨の位置がずれたまま回復魔法をかけると、骨が歪な形に回復してしまい、それが『回復した形』になってしまうためだ。そうなってしまったら、もう回復魔法では元の形には戻らない。
「作業内容としては、指を切り落として、骨の形を整えてからくっつけて回復魔法をかけるって感じかな」
「……なるほど。骨を整えている間は回復魔法がかけられないのね?」
「傷口がふさがって指がくっつかなくなっちゃうからね。その間の痛みを軽減する方法は、明日一緒に考えるよ」
「そうね。骨を整えるのはどうやるの?」
「色々試す予定だよ。ミッシェル様に色々道具は用意してもらったから」
「……アレンがやるの?」
「……うん」
色々大変で辛い作業だ。俺がやるべきだろう。
「チャンスは7回。その間に完成させないとね」
「……そう。分かったわ。全力を尽くしましょう。でも、まずは顔をやってからね」
「そうだね。クリスも大丈夫?」
「ええ。いつでも大丈夫です」
「それじゃ、やっていこう。まずはここの大きい火傷から――」
3人で協力して『材料』の火傷の痕を次々に治していく。だんだん慣れてきたのか、手際も良くなってきた。
「やりましたね」
「……うん」
2時間ほどで全ての火傷の痕への処理が完了した。片目や耳や鼻が無いため、まともな顔とは言い難いが、少なくともこの顔を見て『火傷の痕があった』とわかる人はいないだろう。
「皮については、これでいいと思う。『骨の修復作業』を始めよう!」
「ちょい待ち―な」
次の『実験』を開始しようとしたら、ミッシェルさんからストップがかかった。
「ミッシェル様? なんでしょうか?」
「次の『実験』なんやけどな。骨を整えるんはマリーナにやらせた方がええやろ」
「え? いや、ですが……」
確かに、マリーナさんの物作りの腕は確かだ。お願いできるならその方が良い。だが、今回やろうとしているのは『人体の加工』だ。技術だけじゃなく、覚悟が必要になる。
「大丈夫や。なぁ?」
「もちろん! 任せてくださいな!」
いつの間にか地下室の入口にマリーナさんがいた。
「マリーナさん……その……正直助かります。ですが、いいんですか? 人体ですよ?」
「大丈夫だよ! 『何でも言ってね』って言ったでしょ?」
「それはそうですが――」
「――それに、アレン君じゃないけど自分で決めたことだからね!」
「自分で?」
「うん。私達もあの子達の力になりたいんだ。骨の形を整えるのなら私の方が上手く出来る。だから……やらせて?」
マリーナさんの顔には笑みを浮かばせているが、その眼は真剣そのものだ。絶対にやるという強い意志を感じる。
「分かりました。お任せします」
「ありがとう! 後悔はさせないから!」
覚悟ができているなら、マリーナさんの方が上手く出来るだろう。マリーナさんはさっそく道具を用意し始めた。
「なんですか? それ?」
「これ? 拘束で振動して対象を砕く魔道具だよ。こっちはそのやすり版。ちなみに手元を照らして、削りカスを吸い込む機能付き」
「こちらの台は? 色々ボタンがついてますが……」
「『属性』魔法を使って一時的に対象を固定したり硬化したりできる作業台だよ。骨を整えるなら骨を固定したり、周りの血を止めたりしなきゃいけないからね」
言われてみればその通りだ。血の事なんて全く考えていなかった。
(マリーナさんがいてくれて助かった……俺じゃ無理だったな。それにしても)
「『属性』魔法ってすごいですね」
「そうだよー。世間じゃ残念魔法とか言われているけど、私はそうは思わないな」
「俺もです。むしろ一番好きな魔法ですね」
「お! さっすがアレン君! 分かってるねぇ」
ちらりとクリスさんを見ると、恥ずかしそうにもじもじしている。
(……可愛い)
「お待たせ! 準備できたよ」
「ありがとうございます。それじゃ始めましょう!」
クリスに見惚れているうちに準備が完了したようだ。
「『骨の修復作業』を始めます!」
俺がそう宣言した瞬間、地下室で歓声が沸いた。
「やった! やりましたね、アレン!」
「よくやったわ」
「ほんに大したもんや」
クリス、母さん、ミッシェルさんが口々に褒めてくれた。そんな中、ミルキアーナ男爵が浮かれる俺達を一喝する。。
「落ち着け! 浮かれすぎだ。まだ『開発』が終わったわけではないんだぞ!」
(そうだ……浮かれちゃったけど、まだまだ終わったわけじゃない。気を引き締めないと……それにしても、ミルキアーナ男爵は流石だな)
「すみません。まだ最初の『実験』が成功しただけでした。喜ぶのは『開発』が終わってからにします」
「ああ。希望が見えたのは喜ぶべきことだが、浮かれるには早過ぎる。しっかり頼むぞ」
「はい!」
ミルキアーナ男爵がしっかり締めてくれた。男爵家当主は伊達ではない。そう思ったのだが……。
「なんや、かっこつけおって。あんさんだって浮かれとったやないの」
「は? 何を言って――」
「――思いっきりガッツポーズしとったの、見てたで?」
「なっ! そんなことは――」
「――顔もにやけてたわ」
「クランフォード夫人!?」
「くすくすくす」
「ブリスタ子爵令嬢まで、何を笑っている!」
締めた気が緩んでいくのを感じる……。
(ま、まぁ、気を張り続けてても疲れちゃうからな)
「ほら、ミルキアーナ男爵のおっしゃる通り、まだ『開発』は終わったないんだから! 時間もないしそろそろ再開しよう」
「……ま、アレンはんが言うならしゃーないか」
「そうですね。そろそろ再開しましょう」
「それで? 次は何やるの?」
俺は『材料』を指差して言う。
「まずは今日中に今と同じことをこの顔全体にやろう。その後、3日間様子を見る」
「分かったわ。後は『痛みの軽減』ね?」
「うん。でも、それはシャル様が来られてからになるから、今日は残りの時間で、『骨の修復作業』をやるつもり」
通常、骨折したら、骨を元の位置に戻してから回復魔法をかける。骨の位置がずれたまま回復魔法をかけると、骨が歪な形に回復してしまい、それが『回復した形』になってしまうためだ。そうなってしまったら、もう回復魔法では元の形には戻らない。
「作業内容としては、指を切り落として、骨の形を整えてからくっつけて回復魔法をかけるって感じかな」
「……なるほど。骨を整えている間は回復魔法がかけられないのね?」
「傷口がふさがって指がくっつかなくなっちゃうからね。その間の痛みを軽減する方法は、明日一緒に考えるよ」
「そうね。骨を整えるのはどうやるの?」
「色々試す予定だよ。ミッシェル様に色々道具は用意してもらったから」
「……アレンがやるの?」
「……うん」
色々大変で辛い作業だ。俺がやるべきだろう。
「チャンスは7回。その間に完成させないとね」
「……そう。分かったわ。全力を尽くしましょう。でも、まずは顔をやってからね」
「そうだね。クリスも大丈夫?」
「ええ。いつでも大丈夫です」
「それじゃ、やっていこう。まずはここの大きい火傷から――」
3人で協力して『材料』の火傷の痕を次々に治していく。だんだん慣れてきたのか、手際も良くなってきた。
「やりましたね」
「……うん」
2時間ほどで全ての火傷の痕への処理が完了した。片目や耳や鼻が無いため、まともな顔とは言い難いが、少なくともこの顔を見て『火傷の痕があった』とわかる人はいないだろう。
「皮については、これでいいと思う。『骨の修復作業』を始めよう!」
「ちょい待ち―な」
次の『実験』を開始しようとしたら、ミッシェルさんからストップがかかった。
「ミッシェル様? なんでしょうか?」
「次の『実験』なんやけどな。骨を整えるんはマリーナにやらせた方がええやろ」
「え? いや、ですが……」
確かに、マリーナさんの物作りの腕は確かだ。お願いできるならその方が良い。だが、今回やろうとしているのは『人体の加工』だ。技術だけじゃなく、覚悟が必要になる。
「大丈夫や。なぁ?」
「もちろん! 任せてくださいな!」
いつの間にか地下室の入口にマリーナさんがいた。
「マリーナさん……その……正直助かります。ですが、いいんですか? 人体ですよ?」
「大丈夫だよ! 『何でも言ってね』って言ったでしょ?」
「それはそうですが――」
「――それに、アレン君じゃないけど自分で決めたことだからね!」
「自分で?」
「うん。私達もあの子達の力になりたいんだ。骨の形を整えるのなら私の方が上手く出来る。だから……やらせて?」
マリーナさんの顔には笑みを浮かばせているが、その眼は真剣そのものだ。絶対にやるという強い意志を感じる。
「分かりました。お任せします」
「ありがとう! 後悔はさせないから!」
覚悟ができているなら、マリーナさんの方が上手く出来るだろう。マリーナさんはさっそく道具を用意し始めた。
「なんですか? それ?」
「これ? 拘束で振動して対象を砕く魔道具だよ。こっちはそのやすり版。ちなみに手元を照らして、削りカスを吸い込む機能付き」
「こちらの台は? 色々ボタンがついてますが……」
「『属性』魔法を使って一時的に対象を固定したり硬化したりできる作業台だよ。骨を整えるなら骨を固定したり、周りの血を止めたりしなきゃいけないからね」
言われてみればその通りだ。血の事なんて全く考えていなかった。
(マリーナさんがいてくれて助かった……俺じゃ無理だったな。それにしても)
「『属性』魔法ってすごいですね」
「そうだよー。世間じゃ残念魔法とか言われているけど、私はそうは思わないな」
「俺もです。むしろ一番好きな魔法ですね」
「お! さっすがアレン君! 分かってるねぇ」
ちらりとクリスさんを見ると、恥ずかしそうにもじもじしている。
(……可愛い)
「お待たせ! 準備できたよ」
「ありがとうございます。それじゃ始めましょう!」
クリスに見惚れているうちに準備が完了したようだ。
「『骨の修復作業』を始めます!」
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