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第3章 躍進の始まり
60.【ミルキアーナ男爵6 2人の気持ち】
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「バミューダ君を養子に……ですか?」
クリスさんにつられて俺もバミューダ君を見る。
「ええ。ミルキアーナ男爵曰く『ミルキアーナ家の娘とクランフォード商会の息子の婚約』が特許取得の条件として記載されているんですよね?」
「そう聞いています」
「でしたら、バミューダ君がクランフォード家の養子になってミーナ様と婚約すれば万事解決です」
確かにそれならミルキアーナ男爵の条件は満たせる。だけど……。
「バミューダ君はそれでいいの?」
俺は赤くなってうつむいているバミューダ君に聞いた。
「店長様と家族になれるの嬉しい……です。それに……」
バミューダ君は女性陣に囲まれているミーナ様をちらりと見る。
「……ミーナ様好き……です」
(あらま)
予想外だった。バミューダ君もミーナ様に一目惚れしたのだろうか。
「ミーナ様、僕を助けてくれた……です」
(??)
何のことか分からない俺にクリスさんが説明してくれる。
「わたくしも遠くから見ただけですが……面接の時、お店の外でバミューダ君に絡んでいる輩がいたんです。ミーナ様が何かをおっしゃったら引き下がっていましたけど」
「前のお店の先輩様に『お前みたいなゴミが受かるわけないだろ』って言われた……です。でも、ミーナ様が『うるさいわ。そんなことを言う貴方達の方がゴミですの。これから大事な面接なのに、ゴミを視界に入れたくありませんわ。今すぐ失せなさい』って言ってくれた……です。おかげで先輩様に殴られずに済んだ……です」
面接の日にそんなことがあったなんて知らなかった。驚いている俺にクリスさんがこっそり耳打ちする。
「先ほどミーナ様に聞いたところ、『バミューダ君とは今日が初対面だ』と言っていました。おそらく、それどころでなくて忘れているのだと思います」
その時のミーナ様は、色々切羽詰まっていたのだろう。
何にせよ、当人同士が思いあっているのであればなんの問題もない。むしろ、喜ばしい事である。俺はミーナ様にこのことを伝えようと声をかけた。
「ミーナ様。先ほどの件ですが――」
「――で! す! か! ら! いい加減白状してください!」
「わ、わたくしは……その……ぅぅ……」
「ミーナお嬢様! 誰なんですか! お嬢様をたぶらかした男は!」
「た、たぶらかしてなんて……わたくしが勝手に……」
「さっきからアレンはんの方見とるけどアレンはんやないんやろ? 誰なんや?」
「で、ですから……その……はぅ……」
ミーナ様はちらちらとこちらを見ている。その視線の先にいるのはバミューダ君だが、周りにいる女性陣は俺を見ていると勘違いしているようだ。
「やめる! ……です!」
「え? バミューダ君?」
ミーナ様の前にバミューダ君が立ちはだかり、女性陣からミーナ様を守った。
「いじめはダメ! ……です!」
「わ、私たちはいじめなんてしてないよ! ただ話をしてただけで――」
「でも、ミーナ様困ってた! ……です!」
「はぅっ。バ、バミューダ様が……私の名前を……」
「……お嬢様? まさか……」
「ミーナ様。店長様が呼んでる……です」
「え、あ、はい……ですわ」
バミューダ君がミーナ様の手を取って俺の方に連れてきた。真っ赤になったミーナ様はバミューダ君のような口調になっている。
「店長様。ミーナ様連れてきた……です」
「ミーナきました……ですわ」
「ありがとう、バミューダ君。ミーナ様、もう少しお話ししたいことがあるので、応接室に行きましょうか」
「は、はいですわ」
「バミューダ君もついて来てくれるかな」
「! アレン様、それは――」
「――分かった……です」
バミューダ君を連れて行くことにミーナ様は抗議の声を上げようとしたが、バミューダ君に遮られた。
「僕もミーナ様に話したいことがある……です」
「わ、わたくしに……ですの?」
「はい……です」
ミーナ様がバミューダ君を見る。バミューダ君は真剣な表情を浮かべていた。
「……分かりましたわ。それでは一緒に参りましょう」
「はい! ……です!」
バミューダ君とミーナ様の手は握られたままで、バミューダ君がミーナ様をエスコートしているようにも見える。
俺とクリスさん、バミューダ君とミーナ様が休憩室を出て応接室に向かう。リンダさんもついて来ようとしたが、ユリに止められていた。
「もしかして…………が……ミーナ様の…………」
「そんな! でも…………なら…………に……」
「ほー…………面白…………やな」
休憩室からかすかに声が聞こえた。どうやら皆も気付いたようだ。
応接室に入り、俺とクリスさんが隣に座り、向かいにバミューダ君とミーナ様が座る。
「さて、先ほどの件ですが――」
バミューダ君にエスコートしてもらい、幸せそうな顔をしていたミーナ様の表情が曇った。
「――バミューダ君をクランフォード家の養子にして、バミューダ君とミーナ様に婚約して頂こうと思います」
「………………………………ふぇ?」
俺の言葉の意味が理解できたなかったのか、ミーナ様が、俺とバミューダ君を交互に見る。少したってから、叫び声をあげた。
「ななな、なにをおっしゃっているんですの!?」
「言葉通りの意味です。ミルキアーナ家の娘であるミーナ様とクランフォード商会の息子となるバミューダ君が婚約していただきます」
「そ、そんな……そんなこと……バミューダ様にご迷惑が――」
「――迷惑じゃない……です」
バミューダ君がミーナ様を見てきっぱりと言い切る。
「ミーナ様、僕を助けてくれた優しい人……です。結婚できるなんて夢のよう……です」
「わたくしが?」
「僕じゃミーナ様と釣り合わない……です。でも、僕が結婚しないとミーナ様が、辛い思いをするってクリス様に聞いた……です。それなら、僕が頑張る! ……です!」
俺がクリスさんを見ると、クリスさんはにっこりとほほ笑んだ。どうやらクリスさんが上手く言ってくれたらしい。
(バミューダ君がやけに強気だと思ったけど……ミーナ様のためだったのか)
「バミューダ様……」
ミーナ様もバミューダ君を見つめた。そしてゆっくりと話し始める。
「……わたくしは、メイドの子ですわ」
以前、クリスさんに『ミーナ様はお母様の身分が低く、家での立場が弱い』と聞いたことがある。
「側室や……妾ですらない。お父様が気まぐれで手を付けたメイドの子なんですの。幸い、ミルキアーナ家によく産まれる赤毛をでしたので、お父様の子として認めて頂けましたが、そうでなければどうなっていたか……」
ミーナ様は自分の髪を触りながら続けた。
「お父様はわたくしの事を『優秀な商家と繋がるための駒』と言っていましたわ。正妻様や側室様、その子供達にも同じようなことを言われましたの」
ミーナ様の眼に涙が浮かぶ。
「……ずっと……年配の商人の後妻か……妾になるのだと……思っていましたわ。そう覚悟していたのですが……バミューダ様が……わたくしを守ってくださって……産まれて初めて恋をしましたの」
バミューダ君が驚いている。
「わたくしのような者、本来、バミューダ様とは釣り合いません。ですが、バミューダ様がそれでもいいとおっしゃって下さるのなら……」
ミーナ様は涙を拭いた後、頭を下げた。
「……不束者ですが、よろしくお願いいたしますわ」
「――はい……です!」
バミューダ君が答えた直後、応接室に号泣しているリンダさんが飛び込んできた。
「お嬢様ー!!!」
「――リンダ!?」
リンダさんがミーナ様に抱き着く。
「良かった……良かったですぅー!!!」
「ちょ、ちょっとリンダ! 落ち着きなさい」
ミーナ様が慰めるが、リンダさんは泣き止む気配がない。
「あーあ……せっかくいい雰囲気だったのに……」
「すみません。私が手を離したばっかりに……」
「まぁ、バミューダ君が返事するまでは耐えたんや。ぎりぎりセーフなんやないの」
ユリ、マーサさん、ニーニャさんも顔を出した。
「……いつからいたの?」
「ミーナ様が『メイドの子』って言われた時からだよー」
という事は、バミューダ君を養子にするという話は聞いていないようだ。
「喜べユリ。お前に義弟と義妹ができるぞ」
「………………ほへ?」
俺がバミューダ君とミーナ様を見ると、ユリもつられてみる。
「もしかして……」
「バミューダ君は明日から……ミーナ様は近い将来、クランフォード家の一員となる」
「――!? ……………………や……やったー!!」
ユリが歓声を上げた。
「バミューダ君とミーナ様が家族になるんだ! あ! これで義兄弟姉妹が揃っちゃった! わぁ、嬉しいなぁ」
泣きじゃくるリンダさんにそれをあやすミーナ様、そして大興奮のユリとまたしても収拾がつかなくなってきた時に、バミューダ君の声が響いた。
「皆ここにいるけど……お店、大丈夫? ……です?」
「「「……あ」」」
ナタリーさんはまだ戻っていないので、お店にはマグダンスさんとマナしかいないはずだ。慌てて売り場に向かうとマグダンスさんとマナが何とかお客さんをさばいていたが、2人とも見るからに疲労困憊だった。
「マグダンスさん! すみません! 代わります!」
「あ、アレン様……助かります」
「マナちゃんごめん!」
「ユリピー……もうダメ……」
その後、俺も入って何とかお店を回した。もともとお休みのバミューダ君には、応接室でミーナ様と待っていてもらう。リンダさんとマーサさんも一緒だ。
マグダンスさんとマナが回復した後、俺は急いで役所に行き、養子縁組に必要な書類を貰ってくる。明日、バミューダ君を連れて家に戻り、父さんにサインしてもらう予定だ。
お店に戻り、もうすぐ閉店という時間にナタリーさんが戻ってきた。
「ナタリーさん! おかえりなさい」
「ただいま戻りました。遅くなってしまい、申し訳ありません」
「何か分かったんですか?」
「ええ。今回の件、どうやら無差別ではなく、ミルキアーナ様を狙った可能性が高いです」
「――! そう……ですか。…………まずは閉店作業をしましょう。皆を集めます。終礼の時に詳しく聞かせてください」
「分かりました」
詳しく聞きたかったが、ミーナ様を狙った犯行なら、ミーナ様やリンダさん達も知っていた方が良い。
ナタリーさん達に閉店作業を任せて、俺はミーナ様達を呼びに応接室に向かった。
クリスさんにつられて俺もバミューダ君を見る。
「ええ。ミルキアーナ男爵曰く『ミルキアーナ家の娘とクランフォード商会の息子の婚約』が特許取得の条件として記載されているんですよね?」
「そう聞いています」
「でしたら、バミューダ君がクランフォード家の養子になってミーナ様と婚約すれば万事解決です」
確かにそれならミルキアーナ男爵の条件は満たせる。だけど……。
「バミューダ君はそれでいいの?」
俺は赤くなってうつむいているバミューダ君に聞いた。
「店長様と家族になれるの嬉しい……です。それに……」
バミューダ君は女性陣に囲まれているミーナ様をちらりと見る。
「……ミーナ様好き……です」
(あらま)
予想外だった。バミューダ君もミーナ様に一目惚れしたのだろうか。
「ミーナ様、僕を助けてくれた……です」
(??)
何のことか分からない俺にクリスさんが説明してくれる。
「わたくしも遠くから見ただけですが……面接の時、お店の外でバミューダ君に絡んでいる輩がいたんです。ミーナ様が何かをおっしゃったら引き下がっていましたけど」
「前のお店の先輩様に『お前みたいなゴミが受かるわけないだろ』って言われた……です。でも、ミーナ様が『うるさいわ。そんなことを言う貴方達の方がゴミですの。これから大事な面接なのに、ゴミを視界に入れたくありませんわ。今すぐ失せなさい』って言ってくれた……です。おかげで先輩様に殴られずに済んだ……です」
面接の日にそんなことがあったなんて知らなかった。驚いている俺にクリスさんがこっそり耳打ちする。
「先ほどミーナ様に聞いたところ、『バミューダ君とは今日が初対面だ』と言っていました。おそらく、それどころでなくて忘れているのだと思います」
その時のミーナ様は、色々切羽詰まっていたのだろう。
何にせよ、当人同士が思いあっているのであればなんの問題もない。むしろ、喜ばしい事である。俺はミーナ様にこのことを伝えようと声をかけた。
「ミーナ様。先ほどの件ですが――」
「――で! す! か! ら! いい加減白状してください!」
「わ、わたくしは……その……ぅぅ……」
「ミーナお嬢様! 誰なんですか! お嬢様をたぶらかした男は!」
「た、たぶらかしてなんて……わたくしが勝手に……」
「さっきからアレンはんの方見とるけどアレンはんやないんやろ? 誰なんや?」
「で、ですから……その……はぅ……」
ミーナ様はちらちらとこちらを見ている。その視線の先にいるのはバミューダ君だが、周りにいる女性陣は俺を見ていると勘違いしているようだ。
「やめる! ……です!」
「え? バミューダ君?」
ミーナ様の前にバミューダ君が立ちはだかり、女性陣からミーナ様を守った。
「いじめはダメ! ……です!」
「わ、私たちはいじめなんてしてないよ! ただ話をしてただけで――」
「でも、ミーナ様困ってた! ……です!」
「はぅっ。バ、バミューダ様が……私の名前を……」
「……お嬢様? まさか……」
「ミーナ様。店長様が呼んでる……です」
「え、あ、はい……ですわ」
バミューダ君がミーナ様の手を取って俺の方に連れてきた。真っ赤になったミーナ様はバミューダ君のような口調になっている。
「店長様。ミーナ様連れてきた……です」
「ミーナきました……ですわ」
「ありがとう、バミューダ君。ミーナ様、もう少しお話ししたいことがあるので、応接室に行きましょうか」
「は、はいですわ」
「バミューダ君もついて来てくれるかな」
「! アレン様、それは――」
「――分かった……です」
バミューダ君を連れて行くことにミーナ様は抗議の声を上げようとしたが、バミューダ君に遮られた。
「僕もミーナ様に話したいことがある……です」
「わ、わたくしに……ですの?」
「はい……です」
ミーナ様がバミューダ君を見る。バミューダ君は真剣な表情を浮かべていた。
「……分かりましたわ。それでは一緒に参りましょう」
「はい! ……です!」
バミューダ君とミーナ様の手は握られたままで、バミューダ君がミーナ様をエスコートしているようにも見える。
俺とクリスさん、バミューダ君とミーナ様が休憩室を出て応接室に向かう。リンダさんもついて来ようとしたが、ユリに止められていた。
「もしかして…………が……ミーナ様の…………」
「そんな! でも…………なら…………に……」
「ほー…………面白…………やな」
休憩室からかすかに声が聞こえた。どうやら皆も気付いたようだ。
応接室に入り、俺とクリスさんが隣に座り、向かいにバミューダ君とミーナ様が座る。
「さて、先ほどの件ですが――」
バミューダ君にエスコートしてもらい、幸せそうな顔をしていたミーナ様の表情が曇った。
「――バミューダ君をクランフォード家の養子にして、バミューダ君とミーナ様に婚約して頂こうと思います」
「………………………………ふぇ?」
俺の言葉の意味が理解できたなかったのか、ミーナ様が、俺とバミューダ君を交互に見る。少したってから、叫び声をあげた。
「ななな、なにをおっしゃっているんですの!?」
「言葉通りの意味です。ミルキアーナ家の娘であるミーナ様とクランフォード商会の息子となるバミューダ君が婚約していただきます」
「そ、そんな……そんなこと……バミューダ様にご迷惑が――」
「――迷惑じゃない……です」
バミューダ君がミーナ様を見てきっぱりと言い切る。
「ミーナ様、僕を助けてくれた優しい人……です。結婚できるなんて夢のよう……です」
「わたくしが?」
「僕じゃミーナ様と釣り合わない……です。でも、僕が結婚しないとミーナ様が、辛い思いをするってクリス様に聞いた……です。それなら、僕が頑張る! ……です!」
俺がクリスさんを見ると、クリスさんはにっこりとほほ笑んだ。どうやらクリスさんが上手く言ってくれたらしい。
(バミューダ君がやけに強気だと思ったけど……ミーナ様のためだったのか)
「バミューダ様……」
ミーナ様もバミューダ君を見つめた。そしてゆっくりと話し始める。
「……わたくしは、メイドの子ですわ」
以前、クリスさんに『ミーナ様はお母様の身分が低く、家での立場が弱い』と聞いたことがある。
「側室や……妾ですらない。お父様が気まぐれで手を付けたメイドの子なんですの。幸い、ミルキアーナ家によく産まれる赤毛をでしたので、お父様の子として認めて頂けましたが、そうでなければどうなっていたか……」
ミーナ様は自分の髪を触りながら続けた。
「お父様はわたくしの事を『優秀な商家と繋がるための駒』と言っていましたわ。正妻様や側室様、その子供達にも同じようなことを言われましたの」
ミーナ様の眼に涙が浮かぶ。
「……ずっと……年配の商人の後妻か……妾になるのだと……思っていましたわ。そう覚悟していたのですが……バミューダ様が……わたくしを守ってくださって……産まれて初めて恋をしましたの」
バミューダ君が驚いている。
「わたくしのような者、本来、バミューダ様とは釣り合いません。ですが、バミューダ様がそれでもいいとおっしゃって下さるのなら……」
ミーナ様は涙を拭いた後、頭を下げた。
「……不束者ですが、よろしくお願いいたしますわ」
「――はい……です!」
バミューダ君が答えた直後、応接室に号泣しているリンダさんが飛び込んできた。
「お嬢様ー!!!」
「――リンダ!?」
リンダさんがミーナ様に抱き着く。
「良かった……良かったですぅー!!!」
「ちょ、ちょっとリンダ! 落ち着きなさい」
ミーナ様が慰めるが、リンダさんは泣き止む気配がない。
「あーあ……せっかくいい雰囲気だったのに……」
「すみません。私が手を離したばっかりに……」
「まぁ、バミューダ君が返事するまでは耐えたんや。ぎりぎりセーフなんやないの」
ユリ、マーサさん、ニーニャさんも顔を出した。
「……いつからいたの?」
「ミーナ様が『メイドの子』って言われた時からだよー」
という事は、バミューダ君を養子にするという話は聞いていないようだ。
「喜べユリ。お前に義弟と義妹ができるぞ」
「………………ほへ?」
俺がバミューダ君とミーナ様を見ると、ユリもつられてみる。
「もしかして……」
「バミューダ君は明日から……ミーナ様は近い将来、クランフォード家の一員となる」
「――!? ……………………や……やったー!!」
ユリが歓声を上げた。
「バミューダ君とミーナ様が家族になるんだ! あ! これで義兄弟姉妹が揃っちゃった! わぁ、嬉しいなぁ」
泣きじゃくるリンダさんにそれをあやすミーナ様、そして大興奮のユリとまたしても収拾がつかなくなってきた時に、バミューダ君の声が響いた。
「皆ここにいるけど……お店、大丈夫? ……です?」
「「「……あ」」」
ナタリーさんはまだ戻っていないので、お店にはマグダンスさんとマナしかいないはずだ。慌てて売り場に向かうとマグダンスさんとマナが何とかお客さんをさばいていたが、2人とも見るからに疲労困憊だった。
「マグダンスさん! すみません! 代わります!」
「あ、アレン様……助かります」
「マナちゃんごめん!」
「ユリピー……もうダメ……」
その後、俺も入って何とかお店を回した。もともとお休みのバミューダ君には、応接室でミーナ様と待っていてもらう。リンダさんとマーサさんも一緒だ。
マグダンスさんとマナが回復した後、俺は急いで役所に行き、養子縁組に必要な書類を貰ってくる。明日、バミューダ君を連れて家に戻り、父さんにサインしてもらう予定だ。
お店に戻り、もうすぐ閉店という時間にナタリーさんが戻ってきた。
「ナタリーさん! おかえりなさい」
「ただいま戻りました。遅くなってしまい、申し訳ありません」
「何か分かったんですか?」
「ええ。今回の件、どうやら無差別ではなく、ミルキアーナ様を狙った可能性が高いです」
「――! そう……ですか。…………まずは閉店作業をしましょう。皆を集めます。終礼の時に詳しく聞かせてください」
「分かりました」
詳しく聞きたかったが、ミーナ様を狙った犯行なら、ミーナ様やリンダさん達も知っていた方が良い。
ナタリーさん達に閉店作業を任せて、俺はミーナ様達を呼びに応接室に向かった。
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