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第2章 商会の設立
50.【最愛の人】
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(お店の運用は安定している。正午には少し早いけど、もう準備を始めてもいいよね)
仕事用の服から勝負服に着替えてクリスさんを迎えに行こうとしたが、自室を出たところでユリに止められた。どうやら俺を待ち伏せしていたらしい。
「ユリ? どうしたの?」
「……お兄ちゃん……今日クリス様と出かけるんだよね?」
「え、うん。そうだけど?」
「……はぁ。ちょっとこっち来て」
「??」
そう言ってユリは俺の自室に入って行く。俺が後を追うと、俺の洋服ダンスから紺色のジャケットと黒いズボンを取り出した。
「こっちに着替えて。シャツはそのままでいいから」
「え? この服じゃダメ?」
「ダメ。気持ち悪い」
「――んな!?」
ユリはそういうが、今俺が来ている服は有名店で買った服で、変な服ではないはずだ。
「なんで青色のシャツにピンクのジャケットなのよ。それでいてなんでズボンは黄色なの……」
「えっと……明るい服の方がさわやかに見えるかなって……」
「いくら明るい服でも寒色と暖色を組み合わせたら雰囲気崩れちゃうでしょ! そもそもそのシャツはこっちのズボンやジャケットとセットで売ってた服だよね? センスないんだから奇をてらわずにそのまま着なさい!」
「は、はい!」
義妹に怒られてしまった。俺は急いで指定されて服に着替える。
「……着替えたよ」
「――うん。いいじゃない。そのシャツ、クリス様の色だから選んだんでしょ? そういう気遣いは流石お兄ちゃんね! それじゃ楽しんできて」
「あ、ああ。ありがとう」
青色のシャツを選んだ理由を一発で見抜かれてしまった。顔が赤くなるのを感じる。
なんだかんだで、時間はちょうど正午になるところだった。迎えに行くにはちょうどいい時間だろう。
寮の入口には、俺が予約した馬車が止まっていた。最後に自分の身だしなみを確認してから、マーサさんに声をかける。
「お疲れ様です。クリスさんを呼んで頂けますか?」
「――あら、店長さん。お疲れ様です。少々お待ちください」
そう言ってマーサさんは寮に入って行く。
(マーサさん、俺のシャツを見ていたよな……うぅ、なんか恥ずかしい!)
初めてのデートなのだから、クリスさんの色の服を着て行きたいと思ったのだが、浮かれ過ぎただろうか。でもユリも褒めてくれたし……きっと大丈夫、なはず! ……多分。
少しすると、マーサさんに連れられてクリスさんが出てくる。青いワンピースと白い帽子が、とてもよく似合っていた。
クリスさんが寮の玄関を出て、陽の光に包まれた次の瞬間、俺の視線はある1点にくぎ付けになる。クリス様の左胸に、黒いブローチがしてあったのだ。
(ブローチ……あの色って……そういうこと、だよな。うわ、めっちゃ嬉しい)
装飾品の色で、黒というのは、あまり使われる色ではない。わざわざ黒い装飾品を選んだという事は、『そういうこと』だろう。自分の色を好きな相手が身に着けていることがこんなに嬉しいとは思わなかった。嬉しすぎて言葉を失ってしまう。
そして、同じタイミングで、クリスさんも俺のシャツに気付いたようだ。顔を赤くして固まってしまう。
俺もクリスさんも固まってしまい、動けないでいると、マーサさんが助け舟を出してくれた。
「ほらほら、2人とも! 時間は有限ですよ。早く馬車に乗ってください」
マーサさんに言われてようやく俺達は動き出すことができた。
「じゃ、じゃあ、クリスさん。お手を」
「あ、ありがとうございます」
俺は頭に詰め込んだマナーを思い出しながら、クリスさんを馬車までエスコートした。車の扉を開け、先にクリスさんに乗ってもらってから自分も乗り込み、扉を閉める。俺達が乗り込んだことを確認して、御者さんが馬車を走らせてくれた。
馬車の中で、俺もクリスさんも無言になってしまう。沈黙を破るため、俺からクリスさんに話しかけた。
「そのブローチ……その……お似合いですね」
『私の色ですよね』とは言えず、当たり障りのない台詞になってしまう。
「ありがとうございます。実は、これはもともとは祖母のブローチで、家を出るときに父にもらった物なんです。黒いブローチだから、『もし必要になったら使え』と言われまして……」
その言葉が俺の胸に響いた。
「黒い宝石って珍しいですよね。翡翠ですか?」
「ええ。黒翡翠を中心にブラックダイヤモンドがちりばめられています。……アレンさんは石言葉をご存じですか?」
「石言葉……ですか? すみません。あまり詳しくないです」
「翡翠の石言葉は繁栄や長寿、幸福ですが、黒翡翠は幸運、調和、飛躍などの意味がります。そしてブラックダイヤモンドは――」
クリス様が俺を見る。
「――不滅の愛情、不屈、革新の意味があります」
俺の眼を見ながらはっきりと言ってくれた。
「アレンさんと同じですね」
クリス様の眼には絶対の信頼が浮かんでいる。
「そんなこと……」
「――サーシス伯爵がお店に来た時、私に不安はありませんでした。『絶対にアレンさんが守ってくれる』。そう信じられたんです」
「……」
「そして、実際にアレンさんはサーシス伯爵に屈しませんでした。あんな酷い目にあって……命の危険まであったのに、です。本当に、ダイヤのように硬い意志を感じました」
あの時は、こんなやつにクリスさんを渡すわけにはいかないと必死だった。
「アレンさんが傷付くのが嫌で、私が身代わりにと思いました。ですが、結局私は何もできず、全部アレンさんが解決してくださいました」
「…………」
「……私は幸せ者です」
クリスさんが左胸のブローチを触りながら言う。
「祖母はこのブローチが『幸運をもたらす』と信じて心の支えにしていたそうです」
宝石などのパワーストーンを心の支えにしている人は多い。絶対に砕けない、と信じて。
「私にとっては、アレンさんが心の支えです。『何があっても絶対に守ってくれる』。そう、信じられますから」
「――ええ。必ずお守りします」
重い期待だ。しかし、この期待に応えなければ男じゃない。何より、俺に期待してくれることが嬉しい。
「本当に……アレンさんに会えてよかったです」
小声で呟かれたクリスさんの言葉が、何よりのご褒美だった。
その後、たわいのない会話をしていると、俺の住んでいる町が見えてきた。クリスさんにとって、こんな田舎町、見た事すら無いだろうと思っていたが、そうでもないらしい。
「視察で町を回ったり、農家を訪れたりしますから」
とのことだ。
教会や、集会所、それに俺の家などを案内していく。家に行った時は、店番をしていた父さんが、驚いた顔をしていた。
(後できちんと説明しないとな)
そして最後に、母さんに勧められた場所へ向かう。
「この先です」
俺達の家の近くにある森。その森の奥にある少し開けた場所へ、俺はクリスさんをエスコートする。
目的の場所に着くと、クリスさんは目を見開いてあたりを見渡した。
「……バラが……青い……」
そこには青いバラが咲き誇っていた。青いバラは自然に咲くことはない。物語などで登場する、空想上の植物だ。
「昔、父さんが開発したそうです」
当時商人だった父さんは騎士爵位を持つ母さんとの結婚するという夢があった。母さんも同じ夢を持っていたという。
「母さんにプロポーズするために、父さんは商人として認められる必要があったんです。そこで、青いバラを開発して、その成果を格安でばらまいて、様々な人に根回しする事で、父さんは母さんと結婚出来たそうです。だから、青いバラの花言葉は『不可能を可能に』、そして『夢かなう』らしいですよ」
「……素敵ですね」
クリスさんは、うっとりとした表情で青いバラを眺めている。その横で俺は9本の青いバラを使って花束を作った。
「クリスさん。これを受け取ってくれますか?」
そう言って俺は花束を手渡す。
「ええ。ありがとうございます。青いバラの花束なんて初めて頂きました」
クリスさんは嬉しそうに受け取ってくれた。
「バラはその本数で花言葉が変わるんですよ」
「そうなんですか?」
「ええ」
バラを1本摘み、クリスさんに手渡す。クリスさんの右手にはバラの花束が、左手には1本のバラが握られている。
俺はクリスさんを見て言った。
「10本で『可愛い人』――」
「ふふっ」
クリスさんがほほ笑んでくれる。俺はクリスさんの右手の花束を指さす。
「9本で『いつもあなたを想っています』――」
「あら……」
バラを1本摘んで、クリスさん左手のバラに近づける。
「――2本で『この世界は2人だけ』――」
クリスさんの手を取り、すべてのバラを近づけた。
「ぁ」
「――そして11本で『最愛』です」
いつもより近い距離でクリスさんを見る。クリスさんも俺を見つめ返した。
顔を近づけるとクリスさんは頬を赤らめて目を瞑る。
青いバラに囲まれた中で、俺は最愛の人に口づけをした。
その後、馬車に乗って帰路につく。行きとは異なり、馬車の中では終始無言だった。時折、クリスさんと視線が合うと、お互いほほ笑みあうが、会話はない。しかし、重苦しい空気はなく、ずっとこのままでいたいとすら思った。
そしてあっという間に、馬車は寮に着いた。俺は先に馬車から出て最後のエスコートをする。
「足元、お気を付けて」
「ええ。ありがとうございます」
クリスさんが馬車から降りた。手をつないで少し歩くと、寮の入口に着いてしまう。名残惜しいが、今日はこれでお別れだ。
「今日はお付き合い下さり、ありがとうございました」
「こちらこそ、ありがとうございました。私の人生で一番幸せな日でした。今度は私の地元に来てくださいね」
「ええ、必ず」
最後にもう一度口づけを交わして、クリスさんが寮に入っていくのを見送る。その手にはバラの花束と2本のバラが握られていた。
仕事用の服から勝負服に着替えてクリスさんを迎えに行こうとしたが、自室を出たところでユリに止められた。どうやら俺を待ち伏せしていたらしい。
「ユリ? どうしたの?」
「……お兄ちゃん……今日クリス様と出かけるんだよね?」
「え、うん。そうだけど?」
「……はぁ。ちょっとこっち来て」
「??」
そう言ってユリは俺の自室に入って行く。俺が後を追うと、俺の洋服ダンスから紺色のジャケットと黒いズボンを取り出した。
「こっちに着替えて。シャツはそのままでいいから」
「え? この服じゃダメ?」
「ダメ。気持ち悪い」
「――んな!?」
ユリはそういうが、今俺が来ている服は有名店で買った服で、変な服ではないはずだ。
「なんで青色のシャツにピンクのジャケットなのよ。それでいてなんでズボンは黄色なの……」
「えっと……明るい服の方がさわやかに見えるかなって……」
「いくら明るい服でも寒色と暖色を組み合わせたら雰囲気崩れちゃうでしょ! そもそもそのシャツはこっちのズボンやジャケットとセットで売ってた服だよね? センスないんだから奇をてらわずにそのまま着なさい!」
「は、はい!」
義妹に怒られてしまった。俺は急いで指定されて服に着替える。
「……着替えたよ」
「――うん。いいじゃない。そのシャツ、クリス様の色だから選んだんでしょ? そういう気遣いは流石お兄ちゃんね! それじゃ楽しんできて」
「あ、ああ。ありがとう」
青色のシャツを選んだ理由を一発で見抜かれてしまった。顔が赤くなるのを感じる。
なんだかんだで、時間はちょうど正午になるところだった。迎えに行くにはちょうどいい時間だろう。
寮の入口には、俺が予約した馬車が止まっていた。最後に自分の身だしなみを確認してから、マーサさんに声をかける。
「お疲れ様です。クリスさんを呼んで頂けますか?」
「――あら、店長さん。お疲れ様です。少々お待ちください」
そう言ってマーサさんは寮に入って行く。
(マーサさん、俺のシャツを見ていたよな……うぅ、なんか恥ずかしい!)
初めてのデートなのだから、クリスさんの色の服を着て行きたいと思ったのだが、浮かれ過ぎただろうか。でもユリも褒めてくれたし……きっと大丈夫、なはず! ……多分。
少しすると、マーサさんに連れられてクリスさんが出てくる。青いワンピースと白い帽子が、とてもよく似合っていた。
クリスさんが寮の玄関を出て、陽の光に包まれた次の瞬間、俺の視線はある1点にくぎ付けになる。クリス様の左胸に、黒いブローチがしてあったのだ。
(ブローチ……あの色って……そういうこと、だよな。うわ、めっちゃ嬉しい)
装飾品の色で、黒というのは、あまり使われる色ではない。わざわざ黒い装飾品を選んだという事は、『そういうこと』だろう。自分の色を好きな相手が身に着けていることがこんなに嬉しいとは思わなかった。嬉しすぎて言葉を失ってしまう。
そして、同じタイミングで、クリスさんも俺のシャツに気付いたようだ。顔を赤くして固まってしまう。
俺もクリスさんも固まってしまい、動けないでいると、マーサさんが助け舟を出してくれた。
「ほらほら、2人とも! 時間は有限ですよ。早く馬車に乗ってください」
マーサさんに言われてようやく俺達は動き出すことができた。
「じゃ、じゃあ、クリスさん。お手を」
「あ、ありがとうございます」
俺は頭に詰め込んだマナーを思い出しながら、クリスさんを馬車までエスコートした。車の扉を開け、先にクリスさんに乗ってもらってから自分も乗り込み、扉を閉める。俺達が乗り込んだことを確認して、御者さんが馬車を走らせてくれた。
馬車の中で、俺もクリスさんも無言になってしまう。沈黙を破るため、俺からクリスさんに話しかけた。
「そのブローチ……その……お似合いですね」
『私の色ですよね』とは言えず、当たり障りのない台詞になってしまう。
「ありがとうございます。実は、これはもともとは祖母のブローチで、家を出るときに父にもらった物なんです。黒いブローチだから、『もし必要になったら使え』と言われまして……」
その言葉が俺の胸に響いた。
「黒い宝石って珍しいですよね。翡翠ですか?」
「ええ。黒翡翠を中心にブラックダイヤモンドがちりばめられています。……アレンさんは石言葉をご存じですか?」
「石言葉……ですか? すみません。あまり詳しくないです」
「翡翠の石言葉は繁栄や長寿、幸福ですが、黒翡翠は幸運、調和、飛躍などの意味がります。そしてブラックダイヤモンドは――」
クリス様が俺を見る。
「――不滅の愛情、不屈、革新の意味があります」
俺の眼を見ながらはっきりと言ってくれた。
「アレンさんと同じですね」
クリス様の眼には絶対の信頼が浮かんでいる。
「そんなこと……」
「――サーシス伯爵がお店に来た時、私に不安はありませんでした。『絶対にアレンさんが守ってくれる』。そう信じられたんです」
「……」
「そして、実際にアレンさんはサーシス伯爵に屈しませんでした。あんな酷い目にあって……命の危険まであったのに、です。本当に、ダイヤのように硬い意志を感じました」
あの時は、こんなやつにクリスさんを渡すわけにはいかないと必死だった。
「アレンさんが傷付くのが嫌で、私が身代わりにと思いました。ですが、結局私は何もできず、全部アレンさんが解決してくださいました」
「…………」
「……私は幸せ者です」
クリスさんが左胸のブローチを触りながら言う。
「祖母はこのブローチが『幸運をもたらす』と信じて心の支えにしていたそうです」
宝石などのパワーストーンを心の支えにしている人は多い。絶対に砕けない、と信じて。
「私にとっては、アレンさんが心の支えです。『何があっても絶対に守ってくれる』。そう、信じられますから」
「――ええ。必ずお守りします」
重い期待だ。しかし、この期待に応えなければ男じゃない。何より、俺に期待してくれることが嬉しい。
「本当に……アレンさんに会えてよかったです」
小声で呟かれたクリスさんの言葉が、何よりのご褒美だった。
その後、たわいのない会話をしていると、俺の住んでいる町が見えてきた。クリスさんにとって、こんな田舎町、見た事すら無いだろうと思っていたが、そうでもないらしい。
「視察で町を回ったり、農家を訪れたりしますから」
とのことだ。
教会や、集会所、それに俺の家などを案内していく。家に行った時は、店番をしていた父さんが、驚いた顔をしていた。
(後できちんと説明しないとな)
そして最後に、母さんに勧められた場所へ向かう。
「この先です」
俺達の家の近くにある森。その森の奥にある少し開けた場所へ、俺はクリスさんをエスコートする。
目的の場所に着くと、クリスさんは目を見開いてあたりを見渡した。
「……バラが……青い……」
そこには青いバラが咲き誇っていた。青いバラは自然に咲くことはない。物語などで登場する、空想上の植物だ。
「昔、父さんが開発したそうです」
当時商人だった父さんは騎士爵位を持つ母さんとの結婚するという夢があった。母さんも同じ夢を持っていたという。
「母さんにプロポーズするために、父さんは商人として認められる必要があったんです。そこで、青いバラを開発して、その成果を格安でばらまいて、様々な人に根回しする事で、父さんは母さんと結婚出来たそうです。だから、青いバラの花言葉は『不可能を可能に』、そして『夢かなう』らしいですよ」
「……素敵ですね」
クリスさんは、うっとりとした表情で青いバラを眺めている。その横で俺は9本の青いバラを使って花束を作った。
「クリスさん。これを受け取ってくれますか?」
そう言って俺は花束を手渡す。
「ええ。ありがとうございます。青いバラの花束なんて初めて頂きました」
クリスさんは嬉しそうに受け取ってくれた。
「バラはその本数で花言葉が変わるんですよ」
「そうなんですか?」
「ええ」
バラを1本摘み、クリスさんに手渡す。クリスさんの右手にはバラの花束が、左手には1本のバラが握られている。
俺はクリスさんを見て言った。
「10本で『可愛い人』――」
「ふふっ」
クリスさんがほほ笑んでくれる。俺はクリスさんの右手の花束を指さす。
「9本で『いつもあなたを想っています』――」
「あら……」
バラを1本摘んで、クリスさん左手のバラに近づける。
「――2本で『この世界は2人だけ』――」
クリスさんの手を取り、すべてのバラを近づけた。
「ぁ」
「――そして11本で『最愛』です」
いつもより近い距離でクリスさんを見る。クリスさんも俺を見つめ返した。
顔を近づけるとクリスさんは頬を赤らめて目を瞑る。
青いバラに囲まれた中で、俺は最愛の人に口づけをした。
その後、馬車に乗って帰路につく。行きとは異なり、馬車の中では終始無言だった。時折、クリスさんと視線が合うと、お互いほほ笑みあうが、会話はない。しかし、重苦しい空気はなく、ずっとこのままでいたいとすら思った。
そしてあっという間に、馬車は寮に着いた。俺は先に馬車から出て最後のエスコートをする。
「足元、お気を付けて」
「ええ。ありがとうございます」
クリスさんが馬車から降りた。手をつないで少し歩くと、寮の入口に着いてしまう。名残惜しいが、今日はこれでお別れだ。
「今日はお付き合い下さり、ありがとうございました」
「こちらこそ、ありがとうございました。私の人生で一番幸せな日でした。今度は私の地元に来てくださいね」
「ええ、必ず」
最後にもう一度口づけを交わして、クリスさんが寮に入っていくのを見送る。その手にはバラの花束と2本のバラが握られていた。
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