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後編
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【side ライル王太子】
レイチェルからマリアを拷問していると聞いた俺は、急いでリーベルト家にむかった。限界まで馬を走らせ、リーベル家に着いた俺は、マリアの引き渡しを要求するも、『そのような方は当家にはおりません』としらを切られてしまう。
(クソが! 王太子である俺の言う事を聞かないとは……こうなったら父上に頼んで勅命を出してもらうしかない!!)
そう思い、急いで王宮に戻り、父上の部屋を訪れたのだが…………。
「父上! お話が――」
「――っ!? この、愚か者ーーー!!!」
父上は部屋に入ったのが俺だと分かるや否や、俺を怒鳴りつけた。
「ち、父上? 一体何を――」
「貴様は……貴様はなんと愚かな事をしたのだ! おい!」
「はっ!」
父上が近衛兵に目配せすると、その近衛兵はなんと王太子である俺を力尽くで床に組み伏せたのだ。
「ぐはっ!」
「この……この大バカ者が!!」
俺は床に組み伏せられた状態から、何とか顔を上げて父上を見る。
「父上、何を……何をするのですか!?」
「黙れ!! 貴様、自分が一体何をしたのか、分かっているのか!!」
(何をしたか? レイチェルとの婚約を破棄した事か? でもそれくらいで……)
「れ、レイチェルとの婚約を破棄した事でしょうか? それでしたら――」
「――その程度であれば、貴様を王太子から外せばすれば済む話だ! そんな事ではない!! 貴様はあの女を何だと思っている!!!」
(俺を王太子から外す!?!? 父上は何を言っているんだ!? い、いやそれより……)
「あ、あの女とはマリアの事でしょうか?」
「そうだ! 貴様、あの女が何者か分かっているのか!?」
俺を王太子から外すという父上の言葉も気になったが、今はこの拘束から逃れるのが先だと思い、父上が気にしている事を話した。
「何者も何も……マリアは300年ぶりに異世界から召喚に成功された聖女です」
教会の奇跡である『異界渡り』。失敗する事も多いそれが、300年ぶりに成功した。その奇跡の証がマリアだ。
(そんな事、父上もご存じだろうに……)
だが、俺の答えを聞いた父上は、驚愕に目を見開いた。
「貴様……それを本気で……本気で言っているのか??」
「?? え、ええ。もちろんです」
教会の司教達が、マリアを『異界渡り』で召喚したことは、王家も認めている。なぜか、国民には発表していないが、王家と教会が認めている以上、マリアは聖女で間違いない。
(何か間違っているのか?? そう言えば、レイチェルが『マリアは聖女ではない』と言っていたような……)
そんなことを考えていた俺に、父上は何かを諦めたような顔で呟いた。
「まさか、貴様が何も分かっておらんとはの……貴様の無能を見抜けなかったわしの責任か……」
「父上? いったい何を――」
「――貴様は『異界渡り』をどのように認識しておる?」
「は?」
俺の言葉を遮り、父上は俺に聞いてきた。
「答えよ。『異界渡り』をどのように認識しておるのだ?」
「『異界渡り』は異界から聖女を呼び出す儀式です」
「では『聖女』とはなんだ?」
「…………『異界渡り』で召喚された女性です。優れた知識を持ち、その知識でこの国を豊かにしてくれます」
父上が聞いている内容は、この国の国民であれば、子供でも知っている内容だ。そんなことを聞いてくる父上の意図が読めず、俺はただ父上の質問に答えるしかなかった。
「ああ。その通りだ。では、『異界渡り』が失敗すると、どうなる?」
「『異界渡り』に失敗すると『異界』ではなく、『この世界』の女性が召喚されます」
「どのようにして、召喚された女性が『異界』から召喚されたと判断するのだ?」
「それは……『異界』の知識を持っているか否か、です」
「では、どのようにしてその知識が『異界』のものであると判断するのだ?」
「………………え?」
「どのようにしてその知識が『異界』のものであると判断するのだ、と聞いておる。答えよ」
「そ、それは……」
俺は父上の質問に答える事が出来なかった。
(『俺達の知らない知識』であれば、『異界』のもの? いや、他国の知識であれば、俺達が知らない知識などいくらでもある。ではどうやって『異界』の知識だと決める???)
沈黙する俺に、父上は衝撃の事実を話した。
「はぁ。この愚か者が。よいか? 『異界渡り』は『異界』から女性を召喚する儀式ではない。『他国』の女性を誘拐する儀式だ」
「………………は? はぁぁあああ!!!???」
(この世界の女性!?!? いや、誘拐って!?!?)
「ど、どういうことですか!!」
「どうもこうもない。昔から我が国は他国の優れた知識を真似する事で栄えてきたのだ。『異界渡り』は他国の知識を得るための手段にすぎん」
「そ、そんな……では、聖女というのは……」
「異国の女性だ。儀式の中で、『他国』の『国家機密』を多く知っている女性が選ばれるようにしておるが、断じて異界の女性などではない」
「し、しかし……これまでも召喚された聖女達は皆、我が国の発展に貢献してきたと……」
「なぜ異界から召喚された聖女であれば、我が国の発展に力を貸すのだ?」
「そ、それは、その……王子に惚れた聖女が自ら力を貸してくれると……」
「ああ、もちろん、それであっさりと懐柔された聖女もおる。国民に開示できた聖女は皆そうだったな。だが、『国家機密』を多く知っている女性だぞ? 大半は、そう簡単にはいかん。ゆえに、脅迫し、薬漬けにして、強制的に協力させているのだ。リーベルト家がな」
「んなっ!!!」
次々と明らかになる驚愕の事実。だが、そうであるならマリアはその条件には当てはまらないはずだ。なぜなら……。
「し、しかし、今回の聖女は――!」
「『俺に惚れていた』か?」
「っ! そうです! その通りで――」
「ああ、そうだ。わしもそう思っておった。ゆえに、貴様の婚約者を入れ替える事も視野に入れておったし、その事は、リーベルト公爵やレイチェル嬢にも話してあった」
「………………は??」
(婚約者の入れ替えをレイチェルは聞いていた?? だったらなぜ??)
「だが、昨日、重大な事が分かったのだ。あの者はただの『聖女』ではない。隣国が用意した。『元娼婦』の『工作員』だ」
「は? ……はぁぁあああ!!!???」
今日一番の驚きに、俺は声にならない声を上げた。
(マリアが……元娼婦? そんな……そんなバカな……)
混乱する俺をよそに、父上は話を続ける。
「我が国の『聖女』システムを逆手に取った隣国が『工作員』を送り込んできたのだ。貴様を篭絡するための様々な知識を持った女性をな。わしらはそれにまんまとはまってしまった。レイチェル嬢があの者に違和感を感じ、リーベルト家があの者の調査をしていなければ、今頃どうなっていたか……聞いておるか?」
だが、俺は父上の話を半分も聞いていなかった。
「娼婦? マリアが? 娼婦???」
(全て嘘だったのか? 指先がわずかに触れただけで照れていたあの表情も。初めて手を繋いだ時の初々しさも。緊張しながらもそっと交わした口づけも……)
マリアとの思い出が、次々と頭を流れていく。その全てが、心温まる、素敵な物だった。しかし、それらが全て演技であったのならば……。
何を信じればいいのかわからなかった。
「そうだ。貴様らを篭絡するためにも、その方が都合が良かったのだろう。失敗しても元娼婦なら切り捨てやすいからな」
「そんな……嘘だ。そんな事……」
「ライル? おい、ライル!」
混乱した俺は、心を閉ざすことで、自分の心を守った。もはや、父上の言葉すら聞きたくない。
「はぁ、まさかここまで脆いとは。おい!」
父上の呼びかけに応じた近衛兵が部屋に入ってきて俺を拘束する。
「こやつを東の棟に隔離しておけ。これ以上、王家の恥を晒すわけにはいかん」
「「はっ!」」
父上の命令で、俺は、棟に幽閉されることになった。少し前の俺であれば、この状況に絶望しただろう。だが、心が壊れかけた俺は、絶望する余裕すらなかった。
その後、国を見限ったリーベルト家は『聖女システム』の詳細な仕組みを手土産に、隣国に亡命したらしい。そして、『聖女システム』を独占したい隣国によって、この国は滅ぼされた。後顧の憂いを断つために、王族は処刑されることになり、父上と母上、そして俺は断頭台に掛けられる。
「い、嫌じゃ!! わしは、わしはこんなところで!! ――っ!! おい、貴様! わしを! わしを助け――」
「……あなた――」
父上と母上の首が飛び、いよいよ次は俺の番となった。死刑執行人が俺の首に刃をあてる。
(俺の番か……)
どこか他人事のようにそう考えていたら、死刑執行人に話しかけられた。
「お久しぶりですね」
「……レイチェル??」
懐かしい声に顔を上げると、元婚約者の顔があった。
「なぜ……なぜ、お前がここに……」
「私達の亡命の条件が『死刑執行人を引き受ける事』だからです。誰もやりたがらないこの役を。まぁ、『拷問官』から『死刑執行人』に変わっただけなので、私達にとっては大差ありませんけど」
レイチェルは、自虐的な笑みを浮かべてそう言った。婚約してからも幾度となく見た、悲し気な笑みだ。
(そうだ。レイチェルは……いや、リーベルト家は王家の為にその手を汚してきてくれたのだ。それなのに俺は……)
「レイチェル、その……今まですまなかった。俺がもっとお前の……」
「――あー、はい。もう、そういうのいいです。もうどうしようもないので」
「え??」
その言葉の意味を理解する前に、俺の意識は、この世から消えた。
レイチェルからマリアを拷問していると聞いた俺は、急いでリーベルト家にむかった。限界まで馬を走らせ、リーベル家に着いた俺は、マリアの引き渡しを要求するも、『そのような方は当家にはおりません』としらを切られてしまう。
(クソが! 王太子である俺の言う事を聞かないとは……こうなったら父上に頼んで勅命を出してもらうしかない!!)
そう思い、急いで王宮に戻り、父上の部屋を訪れたのだが…………。
「父上! お話が――」
「――っ!? この、愚か者ーーー!!!」
父上は部屋に入ったのが俺だと分かるや否や、俺を怒鳴りつけた。
「ち、父上? 一体何を――」
「貴様は……貴様はなんと愚かな事をしたのだ! おい!」
「はっ!」
父上が近衛兵に目配せすると、その近衛兵はなんと王太子である俺を力尽くで床に組み伏せたのだ。
「ぐはっ!」
「この……この大バカ者が!!」
俺は床に組み伏せられた状態から、何とか顔を上げて父上を見る。
「父上、何を……何をするのですか!?」
「黙れ!! 貴様、自分が一体何をしたのか、分かっているのか!!」
(何をしたか? レイチェルとの婚約を破棄した事か? でもそれくらいで……)
「れ、レイチェルとの婚約を破棄した事でしょうか? それでしたら――」
「――その程度であれば、貴様を王太子から外せばすれば済む話だ! そんな事ではない!! 貴様はあの女を何だと思っている!!!」
(俺を王太子から外す!?!? 父上は何を言っているんだ!? い、いやそれより……)
「あ、あの女とはマリアの事でしょうか?」
「そうだ! 貴様、あの女が何者か分かっているのか!?」
俺を王太子から外すという父上の言葉も気になったが、今はこの拘束から逃れるのが先だと思い、父上が気にしている事を話した。
「何者も何も……マリアは300年ぶりに異世界から召喚に成功された聖女です」
教会の奇跡である『異界渡り』。失敗する事も多いそれが、300年ぶりに成功した。その奇跡の証がマリアだ。
(そんな事、父上もご存じだろうに……)
だが、俺の答えを聞いた父上は、驚愕に目を見開いた。
「貴様……それを本気で……本気で言っているのか??」
「?? え、ええ。もちろんです」
教会の司教達が、マリアを『異界渡り』で召喚したことは、王家も認めている。なぜか、国民には発表していないが、王家と教会が認めている以上、マリアは聖女で間違いない。
(何か間違っているのか?? そう言えば、レイチェルが『マリアは聖女ではない』と言っていたような……)
そんなことを考えていた俺に、父上は何かを諦めたような顔で呟いた。
「まさか、貴様が何も分かっておらんとはの……貴様の無能を見抜けなかったわしの責任か……」
「父上? いったい何を――」
「――貴様は『異界渡り』をどのように認識しておる?」
「は?」
俺の言葉を遮り、父上は俺に聞いてきた。
「答えよ。『異界渡り』をどのように認識しておるのだ?」
「『異界渡り』は異界から聖女を呼び出す儀式です」
「では『聖女』とはなんだ?」
「…………『異界渡り』で召喚された女性です。優れた知識を持ち、その知識でこの国を豊かにしてくれます」
父上が聞いている内容は、この国の国民であれば、子供でも知っている内容だ。そんなことを聞いてくる父上の意図が読めず、俺はただ父上の質問に答えるしかなかった。
「ああ。その通りだ。では、『異界渡り』が失敗すると、どうなる?」
「『異界渡り』に失敗すると『異界』ではなく、『この世界』の女性が召喚されます」
「どのようにして、召喚された女性が『異界』から召喚されたと判断するのだ?」
「それは……『異界』の知識を持っているか否か、です」
「では、どのようにしてその知識が『異界』のものであると判断するのだ?」
「………………え?」
「どのようにしてその知識が『異界』のものであると判断するのだ、と聞いておる。答えよ」
「そ、それは……」
俺は父上の質問に答える事が出来なかった。
(『俺達の知らない知識』であれば、『異界』のもの? いや、他国の知識であれば、俺達が知らない知識などいくらでもある。ではどうやって『異界』の知識だと決める???)
沈黙する俺に、父上は衝撃の事実を話した。
「はぁ。この愚か者が。よいか? 『異界渡り』は『異界』から女性を召喚する儀式ではない。『他国』の女性を誘拐する儀式だ」
「………………は? はぁぁあああ!!!???」
(この世界の女性!?!? いや、誘拐って!?!?)
「ど、どういうことですか!!」
「どうもこうもない。昔から我が国は他国の優れた知識を真似する事で栄えてきたのだ。『異界渡り』は他国の知識を得るための手段にすぎん」
「そ、そんな……では、聖女というのは……」
「異国の女性だ。儀式の中で、『他国』の『国家機密』を多く知っている女性が選ばれるようにしておるが、断じて異界の女性などではない」
「し、しかし……これまでも召喚された聖女達は皆、我が国の発展に貢献してきたと……」
「なぜ異界から召喚された聖女であれば、我が国の発展に力を貸すのだ?」
「そ、それは、その……王子に惚れた聖女が自ら力を貸してくれると……」
「ああ、もちろん、それであっさりと懐柔された聖女もおる。国民に開示できた聖女は皆そうだったな。だが、『国家機密』を多く知っている女性だぞ? 大半は、そう簡単にはいかん。ゆえに、脅迫し、薬漬けにして、強制的に協力させているのだ。リーベルト家がな」
「んなっ!!!」
次々と明らかになる驚愕の事実。だが、そうであるならマリアはその条件には当てはまらないはずだ。なぜなら……。
「し、しかし、今回の聖女は――!」
「『俺に惚れていた』か?」
「っ! そうです! その通りで――」
「ああ、そうだ。わしもそう思っておった。ゆえに、貴様の婚約者を入れ替える事も視野に入れておったし、その事は、リーベルト公爵やレイチェル嬢にも話してあった」
「………………は??」
(婚約者の入れ替えをレイチェルは聞いていた?? だったらなぜ??)
「だが、昨日、重大な事が分かったのだ。あの者はただの『聖女』ではない。隣国が用意した。『元娼婦』の『工作員』だ」
「は? ……はぁぁあああ!!!???」
今日一番の驚きに、俺は声にならない声を上げた。
(マリアが……元娼婦? そんな……そんなバカな……)
混乱する俺をよそに、父上は話を続ける。
「我が国の『聖女』システムを逆手に取った隣国が『工作員』を送り込んできたのだ。貴様を篭絡するための様々な知識を持った女性をな。わしらはそれにまんまとはまってしまった。レイチェル嬢があの者に違和感を感じ、リーベルト家があの者の調査をしていなければ、今頃どうなっていたか……聞いておるか?」
だが、俺は父上の話を半分も聞いていなかった。
「娼婦? マリアが? 娼婦???」
(全て嘘だったのか? 指先がわずかに触れただけで照れていたあの表情も。初めて手を繋いだ時の初々しさも。緊張しながらもそっと交わした口づけも……)
マリアとの思い出が、次々と頭を流れていく。その全てが、心温まる、素敵な物だった。しかし、それらが全て演技であったのならば……。
何を信じればいいのかわからなかった。
「そうだ。貴様らを篭絡するためにも、その方が都合が良かったのだろう。失敗しても元娼婦なら切り捨てやすいからな」
「そんな……嘘だ。そんな事……」
「ライル? おい、ライル!」
混乱した俺は、心を閉ざすことで、自分の心を守った。もはや、父上の言葉すら聞きたくない。
「はぁ、まさかここまで脆いとは。おい!」
父上の呼びかけに応じた近衛兵が部屋に入ってきて俺を拘束する。
「こやつを東の棟に隔離しておけ。これ以上、王家の恥を晒すわけにはいかん」
「「はっ!」」
父上の命令で、俺は、棟に幽閉されることになった。少し前の俺であれば、この状況に絶望しただろう。だが、心が壊れかけた俺は、絶望する余裕すらなかった。
その後、国を見限ったリーベルト家は『聖女システム』の詳細な仕組みを手土産に、隣国に亡命したらしい。そして、『聖女システム』を独占したい隣国によって、この国は滅ぼされた。後顧の憂いを断つために、王族は処刑されることになり、父上と母上、そして俺は断頭台に掛けられる。
「い、嫌じゃ!! わしは、わしはこんなところで!! ――っ!! おい、貴様! わしを! わしを助け――」
「……あなた――」
父上と母上の首が飛び、いよいよ次は俺の番となった。死刑執行人が俺の首に刃をあてる。
(俺の番か……)
どこか他人事のようにそう考えていたら、死刑執行人に話しかけられた。
「お久しぶりですね」
「……レイチェル??」
懐かしい声に顔を上げると、元婚約者の顔があった。
「なぜ……なぜ、お前がここに……」
「私達の亡命の条件が『死刑執行人を引き受ける事』だからです。誰もやりたがらないこの役を。まぁ、『拷問官』から『死刑執行人』に変わっただけなので、私達にとっては大差ありませんけど」
レイチェルは、自虐的な笑みを浮かべてそう言った。婚約してからも幾度となく見た、悲し気な笑みだ。
(そうだ。レイチェルは……いや、リーベルト家は王家の為にその手を汚してきてくれたのだ。それなのに俺は……)
「レイチェル、その……今まですまなかった。俺がもっとお前の……」
「――あー、はい。もう、そういうのいいです。もうどうしようもないので」
「え??」
その言葉の意味を理解する前に、俺の意識は、この世から消えた。
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