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結 3/3
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【side ミナ】
「ん? なんだ? 申してみよ」
ライアンス伯爵がジェシーに発言の許可を与えてから、カールから手を放す。カールはジェシーの方に崩れ落ちたが、ぶつぶつと何かをつぶやくだけでジェシーの方を見ようともしない。
「感謝致します、ライアンス伯爵。恐れ入りますが、私はただの娼婦であり、とある方の依頼でカール様の相手をしていたにすぎません。ゆえに、私がカール様と結婚する事はありません」
「………………………………………………え?」
思いもよらぬ言葉に、カールが顔を上げた。
「ジェ、ジェジー? 何を言っで……」
「まだご理解頂けませんか? 先ほども申しました通り、私は娼婦です。本気になられても困ります。当然、結婚などする気はありません」
「な、な……ぞんな……お、俺を……俺を騙じだのが!?」
「『騙した』とは? 色々と演技して男性を喜ばせるのが私共の仕事ですので、カール様の下手くそな愛撫で喜んでいるふりはしましたが、それを『騙した』と言われましても……」
「ぎ、貴様!! あれだげ楽じぞうにじでいだでばないが!!」
「はぁ……後学の為に一つ教えて差し上げます、カール様。女が力任せに愛撫されて喘声を上げるのは、確実に演技です。女性の身体はデリケートなのですよ? その程度の事が分からないようでは、素人童貞丸出しです」
「だ、だが……プロポーズばミザのどぎに皆の前でじでぼじいど……」
「?? ああ! 私の憧れのプロポーズ方法ですね! 確かにそのようなプロポーズに憧れていると言いましたが、カール様からして頂きたいとは思っておりませんよ? お客様からプロポーズして頂きたいなんて思うわけないじゃないですか。よほどのお相手でしたら私だって考えますが、カール様となんて……ふふ、天地がひっくり返ってもあり得ません」
「なっ! ぐ……ぎ、貴様! 貴様ーー!!」
ジェシーの煽りを受けてカールはジェシーにとびかかろうとするが、様子を見ていた数人の男性に取り押さえられてしまった。カールを取り押さえた男性達が、ちらちらとジェシーを見ていたのは気のせいだと思っておく。
「なるほどな。ジェシー嬢、そなたはあくまで娼婦としてカールの相手をしただけで、カールの求婚に応える気は無いという事だな?」
取り押さえられたカールを無視して、ライアンス伯爵がジェシーに聞いた。
「その通りでございます、ライアンス伯爵。もちろん、私からカール様に、結婚して欲しい、プロポーズして欲しいなどとお願いした事はありません」
「ふむ。であるならば、こ度の事は、カールの暴走か。とはいえ、これだけの人の前でそなたに求婚したのだ。我が家から籍を抜く事は避けられんな。ところで……我が家にカールの浮気に関する詳細と今日のミサでカールがやらかす事が書かれた手紙が届いたのだが、そなた、何か知らぬか?」
「はて、何のことでしょうか?」
「くっくっくっ……さようか。差出人は『J』となっておったがな。知らんというのであれば仕方があるまい」
ライアンス伯爵が楽しそうに笑っている間も、ジェシーは無垢な瞳でライアンス伯爵を見つめている。
(いや、『J』って! 隠す気ないじゃん! それなのに、あんな顔しちゃって……カールの事も完全に操っていたみたいだし……女って怖い……うぅ……)
私も女なのだが、とてもではないがジェシーのように立ち回る事は出来ないだろう。『女』である事を最大限利用するのが娼婦という職種なのだが、私はジェシーに、言いようのない敗北感を覚えた。
「大丈夫ですよ。ミナ様にはミナ様の魅力がありますから」
「な、な、な……何をにゅって!」
ロロの的確なフォローに思わず噛んでしまう。しかも動揺のためか、私の声は想像以上に大きくなってしまったらしい。カール達が私の存在に気付いてしまった。
「ミナ……ミナか! おい、ミナ! 助けろ! 俺を助けろ!!」
私の存在に気付いたカールが男達に取り押さえられながら私に命令してくる。
(急に活舌が良くなったな……私という自分より下だと思っている人間が現れて落ち着いたのかな? ま、どうでもいいんだけど……それより、どうしよう、これ。関わるのめんどくさいな……)
「ミナ! おいミナ!! 聞いてんのか!? 婚約者が困ってるんだ! とっとと助けろ!」
私が無視しようかどうしようか迷っていると、カールがさらにわめいた。
(……『婚約者』?)
なぜかその言葉に憤りを覚える。
「お言葉ですが、カール様。私とカール様との婚約はすでに解消、いえ、貴方によって破棄されております。ゆえに、私達はもはや婚約者ではありません。お間違いのないようにお願い致します」
普段ならカールの戯言など聞き流していただろう。だが、なぜか今は、しっかりと訂正せずにはいられなかった。
「そんな事どうでもいい! とにかく俺を助けろ!」
「……お断りします。なぜ私が貴方を助けなければならないのですか? 私と貴方はもはや赤の他人、いえ、それ以下の関係です」
ようやくロロの言っていた事を理解する。借金を負ったカールは、どうにかして私に助けを求めてくるだろう。もちろん助けるつもりは無いが、追い詰められたカールが何をするか分からない。下手すれば、商会に被害が及ぶ可能性もある。それならいっそ、この場でカールの頼みを断ってしまうのが賢明だろう。
「なっ! お前――!」
「当然であろう。なぜ、ミナ嬢が貴様を助けると思ったのだ? 馬鹿馬鹿しい。浮気しておいて、困ったら、助けを求めるなど……恥を知れ!」
「お、親父……」
そう、この場にはライアンス伯爵がいる。いくらカールでもライアンス伯爵に言われれば、それ以上何かを言ってきたりはしないだろう。そう思っていたのだが……。
「い、いいのかよ!? ミナ、お前、侯爵家と問題起こしたんだろ!? 俺の助けが必要なんじゃないのか!?」
「ああ、その事ですか? ええ、いいんです。もう問題は解決いたしました。それに、平民のあなたがいたところで、なんの助けにもなりません。……そして何より、貴方との婚約なんて2度とごめんです」
「んなっ!?」
カールと婚約していたのは、カールの身分が必要だったから。そのために、私は自分の心を殺して、カールと婚約を結んでいた。親のため、そして、商会の皆の為に。しかし、もうその必要はなく、私が殺した心は、少しずつ生き返りつつある。その心が、カールとの婚約を全力で拒否していた。
「ん? ミナ嬢が侯爵家と問題を起こした? なんだそれは?」
私の拒絶にショックを受けているカールを無視して、ライアンス伯爵が聞いてくる。
「大した話ではないのですが……私共の商品を大変気に入ってくださったとある侯爵様が『金に糸目を付けないからと、4日後の娘の誕生日までに同じ量を納品してほしい』とおっしゃられたのです。もともとは『会場でお出しする分のみ』という事だったのですが、試食された侯爵様が『お土産として配りたい』とおっしゃられて……流石に無理だったので、ご希望された半分の量を納品する事で納得して頂きました」
私が趣味で作り始めたお菓子。ロロに試食してもらったところ、絶対商品として売るべきだと言ってくれたので、売り始めたのだが、大量生産するにはマンパワーが足りな過ぎた。侯爵様からの最初の依頼は納期が1ヶ月以上前だったこともあり、何とか数を揃えられたが、同じ量を4日以内にというのはどうしても無理があったのだ。
「ん? あ、あー! あのお菓子か! 侯爵殿の娘の誕生日会で出したお菓子を、参加した子供限定でお土産にしたら、ご婦人達が『私達の分は無いのか』と詰め寄って『貴族にあるまじき行為をさせるほどおいしいお菓子』として一躍有名になったという」
「そ、そうなのですか?」
「ああ、そうだとも。あれだけおいしいお菓子を出しておいて、お土産は子供達だけというのは酷な事をするなと思ったのだが、そういう背景があったとは……はっはっは! これは愉快だ。まさかミナ嬢の商会のお菓子だとはな」
自分が作ったお菓子がそこまで高評価を得ていると知って、むず痒いものを感じる。
「そ、その……ようやく生産体制を整えられましたので明日から商会で販売開始します……良かったらご購入頂けたらと……」
「ああ、もちろんだ。喜んで購入させてもらおう」
作る方が忙しすぎて、ろくに宣伝できていなかったのだが、これで少しは宣伝できただろう。広場の人達の中にも、興味を持ってくれたような人が何人かいた。
「そんな……そんな事って……それじゃあ俺は……」
そんな中、最後の望みが絶たれたカールが崩れ落ちる。
「もう諦めろ。もはや貴様を助ける者はおらん。貴様には監視の者をつける。借金奴隷となりたくなければ、期日までに指定の金額を自力で稼ぐのだな」
「……い、いやだぁぁ!!!!」
ライアンス伯爵の言葉を受けて、カールは走り出す。
「まったく……仕方のない奴だ。ミナ嬢この度はすまなかった」
「いえ、私共にも得のあった婚約であったことは間違いないですから。それよりも、カール様は最後のチャンスを活かせると思いますか?」
「気付いておったか……さて、どうかの。わしとしては活かして欲しいと思っておるのだが……」
ライアンス伯爵は『期日までに指定の金額を自力で稼げ』と言っただけで、『期日』も『金額』も指定していない。おそらく、少しずつでもちゃんと自力でお金を稼げば、借金奴隷にはしないつもりなのだろう。
「ライアンス伯爵の親心が通じるといいですね」
「……ああ。全くだな」
翌日、私の商会に盗みに入ったカールは、その場でライアンス伯爵がつけた監視の者に取り押さえられ、借金奴隷よりも扱いの酷い犯罪奴隷として、過酷な鉱山送りになった。
「ん? なんだ? 申してみよ」
ライアンス伯爵がジェシーに発言の許可を与えてから、カールから手を放す。カールはジェシーの方に崩れ落ちたが、ぶつぶつと何かをつぶやくだけでジェシーの方を見ようともしない。
「感謝致します、ライアンス伯爵。恐れ入りますが、私はただの娼婦であり、とある方の依頼でカール様の相手をしていたにすぎません。ゆえに、私がカール様と結婚する事はありません」
「………………………………………………え?」
思いもよらぬ言葉に、カールが顔を上げた。
「ジェ、ジェジー? 何を言っで……」
「まだご理解頂けませんか? 先ほども申しました通り、私は娼婦です。本気になられても困ります。当然、結婚などする気はありません」
「な、な……ぞんな……お、俺を……俺を騙じだのが!?」
「『騙した』とは? 色々と演技して男性を喜ばせるのが私共の仕事ですので、カール様の下手くそな愛撫で喜んでいるふりはしましたが、それを『騙した』と言われましても……」
「ぎ、貴様!! あれだげ楽じぞうにじでいだでばないが!!」
「はぁ……後学の為に一つ教えて差し上げます、カール様。女が力任せに愛撫されて喘声を上げるのは、確実に演技です。女性の身体はデリケートなのですよ? その程度の事が分からないようでは、素人童貞丸出しです」
「だ、だが……プロポーズばミザのどぎに皆の前でじでぼじいど……」
「?? ああ! 私の憧れのプロポーズ方法ですね! 確かにそのようなプロポーズに憧れていると言いましたが、カール様からして頂きたいとは思っておりませんよ? お客様からプロポーズして頂きたいなんて思うわけないじゃないですか。よほどのお相手でしたら私だって考えますが、カール様となんて……ふふ、天地がひっくり返ってもあり得ません」
「なっ! ぐ……ぎ、貴様! 貴様ーー!!」
ジェシーの煽りを受けてカールはジェシーにとびかかろうとするが、様子を見ていた数人の男性に取り押さえられてしまった。カールを取り押さえた男性達が、ちらちらとジェシーを見ていたのは気のせいだと思っておく。
「なるほどな。ジェシー嬢、そなたはあくまで娼婦としてカールの相手をしただけで、カールの求婚に応える気は無いという事だな?」
取り押さえられたカールを無視して、ライアンス伯爵がジェシーに聞いた。
「その通りでございます、ライアンス伯爵。もちろん、私からカール様に、結婚して欲しい、プロポーズして欲しいなどとお願いした事はありません」
「ふむ。であるならば、こ度の事は、カールの暴走か。とはいえ、これだけの人の前でそなたに求婚したのだ。我が家から籍を抜く事は避けられんな。ところで……我が家にカールの浮気に関する詳細と今日のミサでカールがやらかす事が書かれた手紙が届いたのだが、そなた、何か知らぬか?」
「はて、何のことでしょうか?」
「くっくっくっ……さようか。差出人は『J』となっておったがな。知らんというのであれば仕方があるまい」
ライアンス伯爵が楽しそうに笑っている間も、ジェシーは無垢な瞳でライアンス伯爵を見つめている。
(いや、『J』って! 隠す気ないじゃん! それなのに、あんな顔しちゃって……カールの事も完全に操っていたみたいだし……女って怖い……うぅ……)
私も女なのだが、とてもではないがジェシーのように立ち回る事は出来ないだろう。『女』である事を最大限利用するのが娼婦という職種なのだが、私はジェシーに、言いようのない敗北感を覚えた。
「大丈夫ですよ。ミナ様にはミナ様の魅力がありますから」
「な、な、な……何をにゅって!」
ロロの的確なフォローに思わず噛んでしまう。しかも動揺のためか、私の声は想像以上に大きくなってしまったらしい。カール達が私の存在に気付いてしまった。
「ミナ……ミナか! おい、ミナ! 助けろ! 俺を助けろ!!」
私の存在に気付いたカールが男達に取り押さえられながら私に命令してくる。
(急に活舌が良くなったな……私という自分より下だと思っている人間が現れて落ち着いたのかな? ま、どうでもいいんだけど……それより、どうしよう、これ。関わるのめんどくさいな……)
「ミナ! おいミナ!! 聞いてんのか!? 婚約者が困ってるんだ! とっとと助けろ!」
私が無視しようかどうしようか迷っていると、カールがさらにわめいた。
(……『婚約者』?)
なぜかその言葉に憤りを覚える。
「お言葉ですが、カール様。私とカール様との婚約はすでに解消、いえ、貴方によって破棄されております。ゆえに、私達はもはや婚約者ではありません。お間違いのないようにお願い致します」
普段ならカールの戯言など聞き流していただろう。だが、なぜか今は、しっかりと訂正せずにはいられなかった。
「そんな事どうでもいい! とにかく俺を助けろ!」
「……お断りします。なぜ私が貴方を助けなければならないのですか? 私と貴方はもはや赤の他人、いえ、それ以下の関係です」
ようやくロロの言っていた事を理解する。借金を負ったカールは、どうにかして私に助けを求めてくるだろう。もちろん助けるつもりは無いが、追い詰められたカールが何をするか分からない。下手すれば、商会に被害が及ぶ可能性もある。それならいっそ、この場でカールの頼みを断ってしまうのが賢明だろう。
「なっ! お前――!」
「当然であろう。なぜ、ミナ嬢が貴様を助けると思ったのだ? 馬鹿馬鹿しい。浮気しておいて、困ったら、助けを求めるなど……恥を知れ!」
「お、親父……」
そう、この場にはライアンス伯爵がいる。いくらカールでもライアンス伯爵に言われれば、それ以上何かを言ってきたりはしないだろう。そう思っていたのだが……。
「い、いいのかよ!? ミナ、お前、侯爵家と問題起こしたんだろ!? 俺の助けが必要なんじゃないのか!?」
「ああ、その事ですか? ええ、いいんです。もう問題は解決いたしました。それに、平民のあなたがいたところで、なんの助けにもなりません。……そして何より、貴方との婚約なんて2度とごめんです」
「んなっ!?」
カールと婚約していたのは、カールの身分が必要だったから。そのために、私は自分の心を殺して、カールと婚約を結んでいた。親のため、そして、商会の皆の為に。しかし、もうその必要はなく、私が殺した心は、少しずつ生き返りつつある。その心が、カールとの婚約を全力で拒否していた。
「ん? ミナ嬢が侯爵家と問題を起こした? なんだそれは?」
私の拒絶にショックを受けているカールを無視して、ライアンス伯爵が聞いてくる。
「大した話ではないのですが……私共の商品を大変気に入ってくださったとある侯爵様が『金に糸目を付けないからと、4日後の娘の誕生日までに同じ量を納品してほしい』とおっしゃられたのです。もともとは『会場でお出しする分のみ』という事だったのですが、試食された侯爵様が『お土産として配りたい』とおっしゃられて……流石に無理だったので、ご希望された半分の量を納品する事で納得して頂きました」
私が趣味で作り始めたお菓子。ロロに試食してもらったところ、絶対商品として売るべきだと言ってくれたので、売り始めたのだが、大量生産するにはマンパワーが足りな過ぎた。侯爵様からの最初の依頼は納期が1ヶ月以上前だったこともあり、何とか数を揃えられたが、同じ量を4日以内にというのはどうしても無理があったのだ。
「ん? あ、あー! あのお菓子か! 侯爵殿の娘の誕生日会で出したお菓子を、参加した子供限定でお土産にしたら、ご婦人達が『私達の分は無いのか』と詰め寄って『貴族にあるまじき行為をさせるほどおいしいお菓子』として一躍有名になったという」
「そ、そうなのですか?」
「ああ、そうだとも。あれだけおいしいお菓子を出しておいて、お土産は子供達だけというのは酷な事をするなと思ったのだが、そういう背景があったとは……はっはっは! これは愉快だ。まさかミナ嬢の商会のお菓子だとはな」
自分が作ったお菓子がそこまで高評価を得ていると知って、むず痒いものを感じる。
「そ、その……ようやく生産体制を整えられましたので明日から商会で販売開始します……良かったらご購入頂けたらと……」
「ああ、もちろんだ。喜んで購入させてもらおう」
作る方が忙しすぎて、ろくに宣伝できていなかったのだが、これで少しは宣伝できただろう。広場の人達の中にも、興味を持ってくれたような人が何人かいた。
「そんな……そんな事って……それじゃあ俺は……」
そんな中、最後の望みが絶たれたカールが崩れ落ちる。
「もう諦めろ。もはや貴様を助ける者はおらん。貴様には監視の者をつける。借金奴隷となりたくなければ、期日までに指定の金額を自力で稼ぐのだな」
「……い、いやだぁぁ!!!!」
ライアンス伯爵の言葉を受けて、カールは走り出す。
「まったく……仕方のない奴だ。ミナ嬢この度はすまなかった」
「いえ、私共にも得のあった婚約であったことは間違いないですから。それよりも、カール様は最後のチャンスを活かせると思いますか?」
「気付いておったか……さて、どうかの。わしとしては活かして欲しいと思っておるのだが……」
ライアンス伯爵は『期日までに指定の金額を自力で稼げ』と言っただけで、『期日』も『金額』も指定していない。おそらく、少しずつでもちゃんと自力でお金を稼げば、借金奴隷にはしないつもりなのだろう。
「ライアンス伯爵の親心が通じるといいですね」
「……ああ。全くだな」
翌日、私の商会に盗みに入ったカールは、その場でライアンス伯爵がつけた監視の者に取り押さえられ、借金奴隷よりも扱いの酷い犯罪奴隷として、過酷な鉱山送りになった。
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