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第二章 迷宮都市の救世主たち ~ドキ!? 転生者だらけの迷宮都市では、奴隷ハーレムも最強チート無双も何でもアリの大運動会!? ~
2-3.ピクシーのピート「チョーーもの知らずなんですけど!」
しおりを挟むチョーー信じられない!
分かる? 「信じられない」じゃないのよ? 「チョーー信じられない!」なのよ?
何がって、アレよ、アレ!
チョーー臭くてチョーー汚くて、チョーー失礼な髭もじゃもじゃよ!
だいたいさ! チョーー死にかけて……ていうかほぼ死んでたのを、アタシがパタヘロパタヘロしながら愛らしい羽根の魔法の粉かけてあげて助けてあげたワケじゃない!? つまりあのチョーー汚くてチョーー臭い死にかけ髭もじゃもじゃが今生きてるのって、どっからどー見ても間違いなく全部アタシのお陰じゃない?
誰だってそー思うでしょ? アタシだってそー思うし!
だからね、アタシ、言ってやったワケよ。変態親分が部屋を出て行ってからさ!
「ちょっと! 髭もじゃもじゃ!
さっきのチョーー失礼なその言い草は何なのよ!?
アンタがチョーー死にかけてたのを助けてあげたのは誰だと思ってんのよ!?」
へへー、って。そうよコレ、「へへー、ありがとうごぜーますだ!」って!
そう言うべき流れよね?
なのにまた髭もじゃもじゃ、はてな? みたいな顔してさ。
「JB、お前……か?」
って!
もう本当、チョーーもの知らずなんですけど!
「あのねー!
このチリチリぽん助が治癒術士に見える!?
病気になっても蛙の黒焼きとか食べて薬になるとか信じてる野蛮なゲンシジンよ!? ムチモーマイのポンポンチキチキよ!?
それより目の前にこんな可愛くて可憐なピクシーが居るんだから、当然アタシの魔法の粉のおかげに決まってるじゃない!?」
もう、ジョーシキってのが無いのよ、この髭もじゃもじゃは!
ぷんがぷんがとフンガイして叱りつけてやると、またきょとーん、みたいな顔して、
「あ? てことは俺は今、魔法の粉キメて旅してるから、こんな変なもん見てるのか?」
変なもん!? ちょっと! 精霊へのシンコーシンある人たちなら、チョーーアガメタテマツリしてるとこよ!?
「あー、オッサン。
まあ色々信じられねえことあるだろうが、とりあえずアイツの言ってることは本当だ。
オッサンを治療したのはアイツの魔法の粉で、別に麻薬でも何でもねえ」
チリチリの奴が珍しくマトモなことを言った!
「けど、アイツの言うことは無視していいぞ。
マトモに相手しても疲れるだけだ」
ゼンゲンテッカイ! チョーー失礼過ぎ!
それから髭もじゃもじゃは、「ふーん。良く分からんが、まず飯と風呂だな。あ、あとひげ剃りもだ」とか言って! チョーーアタシのこと無視すんの!
チリチリはチリチリで、「……オッサン、マイペース過ぎだろ……」とかちょっと呆れ顔しつつ、大きなたらいにお湯を張ったり、食事の支度したりと色々してさ。ちょっと、髭もじゃもじゃよりアタシの方のメンドーを見なさいよ!
で。
その間もチリチリと髭もじゃもじゃは、何か色々話してんのよ。
「ここはアメリカじゃなくて異世界だ」
とか、
「オッサンは転生して生まれ変わったんだ」
とか、
「この世界には魔法があって、魔物や妖精も実在してる。オッサンはこれからアイツの命令通りに、古代ドワーフの魔法の遺物の修理をしなきゃいけない」
とか。
チリチリが何でそんなワケの分かんない話しているのか分かんないけどさ。
ワケ分かんない話と、今更何言ってんのか、みたいな当たり前過ぎる話、ね。
それに対して髭もじゃもじゃは、何かいちいち驚いたり、怪しんだり、チョーー当たり前すぎることを聞き返したりしてるわけ。
なのに、何でか変に慌てたりとかはしてなくて、チョーー落ち着いた感じで髭なんか剃ってんの。
んで、ナイフで髭剃ってたらほっぺた切っちゃってさ。
そしたら、「これもアイツの魔法の粉で治せるのか?」
とか!
んで、チリチリが「ピクシーの魔法の粉なら、その程度の切り傷は即治るぜ」
とか!
そんでカゴの下に付けられてる窪みのトコから、アタシの魔法の粉を指でちょちょっと掬って、ぺとぺとって傷に塗って、「おお、こりゃあ便利だ」だって!
「あったり前でショー! ピクシーの魔法の粉は、チョーー万能薬なんだから!」
えへん! と威張ってやったのに、「なかなかたいしたもんだ」って。
……アタシの凄さ分かった割には、ウヤマイ感がチョーー足りないンですけど!?
「……なーんかオッサン、適応力高すぎねえか?」
お風呂入って髭剃って口元と顎の下だけに整えて、古くて臭くて汚くてボロボロに焼け焦げて破れていた、服と言う名のぼろぼろ布の切れ端を捨てた後、それよりはマシなぼろ布を新たに着てから、チリチリの支度した料理を二人で食べて、なーんかそんな話してるワケ。
「そうか?
まあ、俺もそれなりに色々経験してるからな」
とか、何か事も無げーに返してるのが、ちょっと何かいらっとするから、言ってやったの。
「そーよ! アンタちょっとオカシーんじゃないの?
事のジューダイセーが分かってないのよ!?
変態に捕まって、レーゾクの首輪させられて、閉じ込められてるのよ!?
少しは泣いたりわめいたりしなさいよ!」
でないと何かアタシだけ騒いでてバカみたいじゃん!
そしたら髭もじゃもじゃは、雑草とか洞窟キノコとかオオネズミ肉とか煮込んだ臭っさいスープを食べながら、
「んー……。
その、隷属の首輪、ってーのは、どんなシロモノなんだ?」
って。
「レーゾクの首輪はレーゾクの首輪よ!
変態が変態な欲求満たすために、他人の首にはめるの!」
「……具体的には、“主人に危害を加えられない”、“主人の命令を聞かなければならない”とかだな。
この場合の“主人”ってのは、さっきの邪術士シャーイダール……あー、黒ずくめで背中の曲がった仮面被ってた奴だ。
とにかく、奴には逆らわない方が良いぜ」
「逆らうとどうなるんだ?」
「モノによるらしいけど、聞いた話だと首輪が締まって窒息死させられるとか、雷の力で痺れさせられるとかあるらしい」
「だから髭もじゃもじゃ……えーと、もうもじゃもじゃじゃないから、髭もさもさ……は、とにかくあの変態に変態な命令させられる変態奴隷なの!」
「……マトモに取り合わなくていいぞ」
ちょっと何よ、チリチリ!
失礼なチリチリを無視して、髭ももさもさはまた少し考えごと。
それから、
「つまり、命令違反をしても即死するとは限らないし、主人以外には危害を加えられるのか」
じろっ、とチリチリを見る。
「……おい、オッサン、何考え……おわ!」
手に持ってた臭いスープの入ってた木のお椀をカコーン! と投げつける。
「おい、待てってオッサン! やめ……おいっ!」
チリチリは投げられる色んなものを器用にかわして、手に取ったお椀で逆に髭もさもさをスコーンとひっぱたく。
もう、野蛮よ、野蛮!
「実験だよ、実験。
まあ、奴が直接命令して止めたりしないかぎり問題無さそうだな」
「問題大有りだっつうの!」
野蛮人どうしで野蛮なケンカしてるわ! いやあねぇ~。
それからしばらくして、アタシはこの野蛮でもの知らずな髭もさもさに、いかにアタシが素晴らしく愛らしい輝きに満ちた存在かを聞かせてあげていると、チリチリが大きなズダ袋にガチャガチャと何かを入れて引きずって来たのよね。
「一応……まあ、シャーイダールが今まで蓄えてきた、“使えなくなってる”遺物なんだけどよ。
しっかし、どーしたもんかね。
オッサンにこれ直せっつったところで、……なあ~~」
ズダ袋からは鎧だの兜だのから、サークレットにイヤリング、その他キンキラキンに光る古代ドワーフ工芸品がドッサリ。
「お、こりゃあ金か?」
髭もさもさが驚いて聞くけど、もの知らずねー。
「違うわよー、ドワーフ合金よー。
てーか、髭もさもさもドワーフでしょ。なのに知らないの?」
「おお、俺はドワーフなのか?」
何言ってんのかしら、髭もさもさは。髭と一緒に色んなもの無くしたの?
「まー、多分そうだろーな。俺もドワーフとの深い付き合いねえから、イマイチ良く分かんねえけどさ。
ドワーフ合金てのは、古代ドワーフに伝わってたとされる金色の合金で、金の持つ変質化しにくいって利点と、エルフのミスリル銀より高い硬度を持ってる。だから古代ドワーフの遺跡からは良く出てくるんだけどな。
特殊な魔力を帯びた金属なンで、普通に加工や補修しようとしても出来ないんだよ。
伝統技術を受け継いだドワーフの名工か、それらを学んだ高い技能を持った魔鍛冶師でもないと修繕も出来ねえ。
それでさらに付与魔法を再現したりするとなれば……まあ、えらいこったぜ」
あら、チリチリの癖に何か詳しいじゃない。
ていうか髭もさもさのもの知らずっぷりがひどすぎよね!
「ふぅーんむ」
なんて言いながら髭もさもさが手にとって眺めたり弄ったり。
「なあ、オッサン。
まずはどーやってシャーイダールの追求を誤魔化すか考えた方がいいぜ。
あいつはそう無闇やたらに人を殺したりするタイプじゃねえけど、流石にこれでなーんも出来ないってなりゃ、どー出てくるか分かんねえし」
そーよね。アタシが助けてあげたのに、髭もさもさが焼き髭もさもさになったら目も当てらんないもん。
「いやー……うん。
出来るかもしれんぞ」
「は?」
「え?」
ちょっと何言ってんのよ、髭もさもさ!
「おい、オッサン、何言ってんだよ……」
「そーよそーよ! 変な見栄とか張らないでよ!」
焼き髭もさもさとか、別に見たくないし!
二人の猛抗議を受けてもしれっとして、髭もさもさはトントンと自分の頭の横を指で軽く叩きながら、
「何故か知らんがこの中にやり方の知識が入っとる」
……ハア?
ほんと、何言ってんだか分かんないんですけど?
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