遠くて近きルナプレール ~転生獣人と復讐ロードと~

ヘボラヤーナ・キョリンスキー

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第二章 迷宮都市の救世主たち ~ドキ!? 転生者だらけの迷宮都市では、奴隷ハーレムも最強チート無双も何でもアリの大運動会!? ~

2-125.追放者のオーク、ガンボン(56)「アレ、大丈夫?」

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「デジーちゃん……?」
 リリブローマさんがそう疑問系で言うのは、多分あの死体で作られた大巨人のてっぺんに据え付けられてる女性のことじゃない。
 複数のデジーさんの魔力……そう言ってたリリブローマさんの言葉通りなら、その視線の先に居る炎の渦を身にまとった小柄な人影。
 死体の大巨人の腕に乗っかって激しくそれを攻撃しているその人物のことだ。
 一見すると炎の精霊みたいな姿だけど、あれは多分、レイフの母であり闇の森ダークエルフ、ケルアディード郷の元氏族長のナナイさんが使う【紅蓮の外套】みたいなものなんじゃなかろーか。
 
 その火の玉状態の誰かを見て、リリブローマさんは「デジーちゃん」とつぶやいた。俺の聞き間違えでなければ、だ。
 火の玉さんは死体の巨人に組み付くようにして乗っかって、薄透明の膜のような身体へと火の付いたままダガーのようなもので切りかかる。全体の大きさからすれば微々たるダメージに見えるけど、あれが見たとおりに死体を組み上げた化け物で、火の玉さんが魔法の炎を身に纏っているのなら、小さくとも確実にダメージは与えているだろう。
 
 そのまま他の巨人達も同様に部位に集中して攻撃を始める。ニルダムさんがまたも呪文を唱えて火属性魔力をみんなに帯びさせ援護する。
 指先を、手首から先を、そして肘をと破壊し、粉砕し、あるいは切断する。
 ダメージに怯み、腕を引っ込めようとしても、腕の数を増やし全体のバランスが悪い死体の巨人は、常にどれかの腕を支えにしないと体勢を安定させられないようで、その一つに集中攻撃。
 巨体と見た目のおぞましさに、一撃の破壊力から最初は戸惑ってはいたが、ここに来て再び戦意が上がって来てる。
 一つには火の玉さんの攻撃が効いているのが分かった事もあるだろうし、もう一つはこの「巨人達の死体で作られた大巨人」というものへの、おぞましさからくる嫌悪や恐れよりも、仲間達を冒涜されたという怒りが上回ったのだろう。
 
 火属性魔力の助けを受けつつ勇猛果敢に攻めかかる巨人達を見、俺もこりゃぼんやりしてられない、と棍棒を構えて突撃。
 その瞬間、
「待避! 離れて待避しろ!」
 上空からJBの大きな声。何? 何かあるの? と思って見回し……、ぐわぁっ! と悶絶。
 何じゃあこりゃあ~!? と目を剥いて見ると、死体を組み上げた大巨人の、色んな場所に見えている顔が、一斉に口を開き呪詛のような呻きのような声をあげだしている。
 その声を耳にした巨人達は、皆、苦悶の表情でのたうち、また屈み込む。動けるものは多くなく、中には倒れ這いつくばる者も居る。
 
 俺? は、彼らに比べればたいしたことはない。胸がムカつくような嫌悪感や吐き気を感じてはいるが、動き回るのに支障がある程ではない。
 つまりはこれ、オークである俺にはある程度の耐性がある闇属性の呪い……呪歌? みたいなもんなんだろう。金色オオヤモリのそれを、さらに強力に広範囲にしたようなやつだ。
 
 待避し切れていなかった巨人達は、無防備にその姿を晒したまま。そこへ、大巨人の腕が襲い掛かろうとしているのを、俺は短い足で必死に駆け寄り、引っ張って攻撃から逃れさせようとするが……。
 ずしん、という重い振動。俺のすぐ横に叩きつけられた大巨人の腕は、別の巨体によりなんとか逸らされた。
「グォオオオオッッッ!!!!」
 野獣じみた咆哮を死体の大巨人の呪歌を打ち消そうとするかに叩きつけるのはキーンダールさん。
 左手に掲げているのは昨日壊した大型の金ピカロボットの剥がした装甲の一部で、それを盾代わりにして振り下ろして来た腕の軌道をなんとか変えたらしい。けれどもその代償は左腕。骨折したのか肩が外れたのか、明らかに力無くだらりと下がってる。
 
「ざっ……ざど、どけ、この……弱っちい……チビスケ……!!」
 唸るようなその声に、俺は慌てて倒れている巨人を引っ張り、なんとか別の岩陰へと運ぼうとするが、いくら怪力のオークと言えども、自分の二倍近くの体格の巨人を簡単に運ぶことは難しい。
 その俺へと手を貸してくれるのはグイドさん。
 いつもの無表情がより恐ろしげなしかめ面で、脂汗を垂らしつつも俺の反対側から巨人の体を支え、身長の違いすぎる2人でなんとか運ぶ。
 
「アレ、大丈夫?」
 岩陰で呪歌を歌い続ける大巨人を右手で指差しつつ、左手で耳を塞ぐ仕草でグイドさんに聞くと、
「ドゥカムが、あの聖獣の加護を、俺にかけてくれた」
 指し示す先に居るのは我らがタカギさんとドゥカムさん。あ、そこにJBと火の玉さんも降り立った。
 グイドさんの表情からは、決して完全に防げているようには見えないが、それでも他の巨人よりはマシ。
「加護の無い巨人達を連れてくるのは俺がやる。ガンボン、お前はあの呪いの歌に恐らく一番強い。あいつを引きつけてくれ」
 ぐむむ! 確かに俺は今現在一番のグッドコンディションっぽい。
 タカギさんの機動力の無い不安はあるが、それは俺にしか出来ないだろう。
 コクリと頷き、それぞれ別れる。
 

 死体の大巨人は6本の腕を持つ。けど腕の数に反して下半身が不十分なアンバランスな造形で、うち一本は身体を支えるのに使っていて攻撃してこない。
 攻撃してくる腕も決して素早く機敏な動きとも技巧に秀でてるとも言えない。一発の破壊力は掠るだけで戦闘不能にされるほど、直撃すれば即死もあり得るが、命中率はそう高くない……と思う。
 むむん、と腕の動きを見る。一本はやはりそのアンバランスな身体を支え、二本はさっきの巨人達の集中攻撃で半分千切れかけている。
 自由に動くのはあと三本だし、その三本も体勢的に一度に同じ対象を狙えるのは二本まで。
 
 一本は……おお、さっきの火の玉さんを狙ってる。火の玉さんは俺なんかよりはるかに素早いし、呪歌の影響もあまり効いてないように見える。
 もう一本はキーンダールさんが防いでる。キーンダールさんは左腕が使えなくなった上、呪歌の効果もやや響いてるっぽい。
 
 で、残り一本が別の弱ってる巨人を叩き潰そうと振り上げられ……その肘へと俺の攻撃が当たる。
 うお、ラッキーヒット!
 手頃な石が転がってなかったので、何かに使えるかと拾ってきていた金ピカロボットの破片を投げつけたのだけど、形も歪だし狙ったところにはうまく投げられない。標的がデカいから当たっただけで、それもダメージはほとんどなし。単に少し注意を引けたぐらいだけど、そのちょっとの間に、グイドさんが狙われていた巨人に肩を貸して待避させる。
 
 目標を失ったその腕が、そのまま俺の方へと振り下ろされる。
 超危ない! 主観的には華麗かつ素早い動きで岩陰へ逃れるが、その岩の上から大巨人の指先が追撃してくるのを、火属性魔力を帯びた棍棒で横に払う。掴まれそうになりそのままゴロンと転がって逃げる。うへ、しつこい!
 岩陰から岩陰へと転がり走り飛び跳ねて、時折指や手首を強かに殴りつけてはいるが、人間なら痛みに悲鳴を上げるだろう一撃を、死体故何ら大きな反応も見せずに追ってくる。確かに部分的には破壊されてはいるものの、命無き怪物らしい動きだ。
 
 けどそうしていると、少しずつだが呪歌にやられていた他の巨人達も、ドゥカムさんが聖獣タカギさんの光の加護を複写していくことで戦線復帰。動きに精彩は欠くものの、それだけでもかなり楽になる。
 そしてさらにそこへ新たな参戦者達。
 大量の水の奔流が腕を打ち据え、また別の腕を放たれた蜘蛛糸が絡め捕る。そこに巨人達に匹敵する体格の灰色岩鱗熊が体当たりと爪とで追撃。おおう、ケルッピさん達だ!
 
 その様子を見てる俺の近くに火の玉さんがやって来て、
「おめーがガンボンだな? レイフが言ってるちびオークの」
 うんうん、と頷く俺。
「アタシはジャンヌだ。あの……飛び回ってる」
 と、そこへJBも降りてくる。
「……JBとも腐れ縁のな」
 うんうん、と再び。
「知、ってる。子ども達からも、聞いてる」
 
「あの魔獣どもも味方……てことで良いんだな?」
 JBからのその問いにも、うんうんうん、とまたまた頷く。
「レイフ、の、使い魔、とか、そーゆーの」
 従属魔獣状態はたまに裏切るけどね! ……てのは、ここでは言わないでおこう。帝国語での巧い言い方も分からんし。
 
「よーし、そんじゃあ……とにかく腕を徹底的に潰すか。あとは出来るなら合唱してる顔の部分も潰していく」
 腕による直接攻撃と呪歌による精神攻撃。その二つを潰していこうという作戦。
 それで行こうと再確認して再び岩陰を出て前に出ようとして……ヤバいものを目にする。
 
 
「ゴァァァァッッッ!!!」
 これは雄叫びでもなくうなり声でもなく悲鳴。
 どろどろの粘液が灰色岩鱗熊の身体を多い、その中の無数の死体が個々に絡みつき組み付く。
 そのどろどろはまるで酸性の粘液のようで、灰色岩鱗熊の体表を焼き、溶かして煙を上げさせる。
 
 その粘液と絡みつく死体を振り払おうと暴れる灰色岩鱗熊だが、その努力は一向に実らない。それどころか撥ね飛んだ粘液や死体が他の巨人達にもかかり、彼らにもダメージを与えてる。
 
 上から叩きつけられる水流はケルッピさんの【水の奔流】で、その激しい勢いでどろどろの粘液と絡みつく死体を剥がすが、既に時遅し。身体の半分以上を溶かされ、また口や鼻などの様々な穴から死体の腕や足、折れて尖った骨などが突っ込まれ引き裂かれと、悲惨な状態だ。倒れ伏し痙攣しているが、多分もう保たない。
 
「ぐえぇ……何だありゃ」
「死体……切り離すと……酸?」
「みてーだな。こりゃ接近戦で戦い続けるのはヤベェぞ」
 腕にしろ何にしろ、切り離された部位とそれを覆っていた半透明の膜は、その切り離した敵に襲いかかり身体を焼き溶かす……。
「だが、さっきまではあんなンじゃなかったぜ? いきなりどーしてだ……?」
「……小さな傷のうちは違った……あー……デカくやられたときだけそーなるのか……ある程度以上にやられたときにだけ、切り離された死体がそーゆー肉を溶かす毒に変わるっつー魔法とか……か?」
 
 ジャンヌさんの推理……というか、これはアレかな? レイフに聞いているの……かな?
 
 ……いや、これ俺、無理だ。
 
「……ああ、どーすんだ? え? 放出?」
 それから、不機嫌そうにそう独り言? を言う火の玉ガールことジャンヌさん。
「何だ?」
「おめーじゃねーよ、レイフと話してんだよ。魔力をな……こう……こうか?」
 そう言うと身体を覆っている炎の渦が大きく肥大化したかと思うと、腕の先から火柱のように放射される。ちょうど火焔蟻のそれを、さらに長く大きくしたような形。
「うおっ!? ぅあっぶねェな、いきなり!?」
「悪ィな。初めてだから調節が分かンねーんだよ。
 ……とにかくグダグダ言ってねーで行くぜ?」
 
 だだっと駆け出して両手から炎を噴射。まさに人間火炎放射器状態だ。
「おい、待てよ! クッソ……おい、ガンボン、お前は無理に突っ込むなよ!?」
 JBも追って飛び立ち、赤く魔力を帯びた風の刃の魔法を放つ。
 
 こうなると俺を含めて遠距離攻撃の出来ない面子は離れて見ている他はない。何人かの巨人は、持ってきてた金ピカロボットの破片なんかを投げつけたり、それらの中の長いやつを使い距離をとりつつ槍のように突き刺したりもしてるが、俺みたいな元々のリーチも短い完全近距離型では難しい。
 
 その中……やはり格別の動きを見せるのがキーンダールさん。右手にはめた死爪竜の爪は俺以上に完全近距離特化だが、激しく動き回り、また殆どまともに動かせないはずの左手にくくられたままの金ピカロボットの装甲を使うことで、落ちてくる死体や粘液をなんとか防いではいる。けれどもそれでも部分部分はひどく焼け焦げ、ダメージを受けてもいる。
 危うい。もう見てらんないくらいに危なっかしい、というかヤバい。そうこうしてるウチに地面に落ちた粘液塗れの死体の一部が、動いているキーンダールさんの足元にまとわりつき、その腕が絡みつく。
 
 苦悶の表情。粘液は死体の巨人も溶かし続けるが、その死体も溶かされ動けなくなるまで攻撃し続ける。溶けながらも絡みつくことで、まさに自爆攻撃みたいにこちらを巻き込んで行くのが目的のようだ。
 俺は駆けつけてその死体を棍棒でアンダースウィングして粉砕し引き離す。ファーーー!
 掴まれた足首とふくらはぎは、皮膚が溶けて中の肉が剥き出しになり、焼け焦げぶすぶすと煙を立ち上らせる。
「グゥゥゥ……どけっ……! 俺はっ……試練を……全うする……!」
 足だけでなく身体のいたるところが火傷し皮膚が溶け負傷し、まともに立つのもしんどいだろう。それなのに、そう言いながら俺を振り解こうとするんだけれども……いやいや、絶対そんなんダメですって!
 
「ケルッピさん!」
 そう呼ぶとひらり上から水の身体を持つ馬、精霊獣のケルピーが降りて来て、やや弱めの水流でキーンダールさんにへばりついた残りの粘液を洗い飛ばす。これが本当の硫酸とかで、ケルッピさんの放つのがただの水ならもっと酷いことになったかもしれないけど、どちらも魔法のものなので大丈夫っぽい。
 さらには手酷い傷口には【癒しの水】で治癒。完治はしないがマシにはなる。
 そして大蜘蛛たちが糸を絡ませ引っ張り、死体の大巨人から引き離すと、叫び続けるキーンダールさんをグイドさん他数人で運んで行く。
 
 ドゥカムさんも多分ある程度の治癒魔法は使えるはず。ニルダムさんは……わからん。
 ケルッピさんと大蜘蛛隊は、被害を受けた巨人を回収し治療するのには絶妙な組み合わせだ。
 
「ケルッピさん、今の、要領で、怪我人……頼む!」
 そう言って目を見ると、「おう、ワシに任しとかんかい! その代わり熊公の仇は頼んだけえのう!」みたいな感じの頼もしい顔。あれ? 何かしばらく会わない内にキャラ変わった?
 
 滴り落ちる粘液を数滴浴び、その痛さに悲鳴を上げそうになるも歯を食いしばり棍棒を振り抜く。
 当たった箇所がボコりと抉れ、腐った肉片が飛び散りさらに粘液がかかりそうになる。それを後退しつつ避け、左手のブレスレットに魔力を通して【自己回復】を使う。ちょっとの飛沫程度なら浴びても治せる。でもすっげー痛い。
 無理して突っ込む気はないけど、他の巨人達が被害を受けたときにケルッピさん達の回収をするまでの時間稼ぎやちょっとした撹乱なら出来そうだ。
 
 もはや腕としての形を保っていない巨大なそれを振るい、その先から滴る粘液を飛び散らかさせ攻撃に変える。この大巨人自体が自分の体そのものを壊しながら武器としてる。
 それを浴びて身体を焼かれる巨人を、ケルッピさんと大蜘蛛が回収、治療し、その前面で追撃しようと迫る腕を棍棒で殴り飛ばし逸らすこと数回。俺の身体にも幾つもの火傷に爛れ。ひりひりとする痛みも重なって、合間合間に使う【自己回復】では積み重なるダメージ全てをリカバリー出来てない。
 
 その腕の動きがまた不安定になり始める。何があったのかと様子を確認すると、上空のJBとジャンヌが放つ魔法の攻撃が、腕ではなく顔の部分───つまり例の「デジーちゃんらしき女性の死体」の方への集中し始めていた。
 デジーちゃんらしき女性の死体は、特に分厚い半透明の粘液と、硬質化した結晶のようなものに守られている。
 ちょうどまるで、樹液の化石の中に閉じこめられた古代の昆虫みたいだ。
 はっきりとは見えないが、透けて見えるその姿には所謂蘇った死者にある腐敗や損傷、おぞましさや不気味さは見受けられず、むしろ本当に生きたまま結晶の中に閉じこめられたかにも見える。
 
 けれどもドゥカムさん曰わく、それこそがこの化け物の核であり、同時に人為的に造られた魔力溜まりマナプールそのものでもあるという。
 その結晶のような頭部へと、ジャンヌの放つ魔法の火柱が叩きつけられている。
 
 
「ああぁぁぁーーー……」
 不意に耳に聞こえてくるのは、リリブローマさんの悲痛な声。
 リリブローマさんにはこの結晶の中の死体……つまり死体から造られた人為的魔力溜まりマナプールの魔力と、火の玉ガールのジャンヌさんの魔力が、どちらもデジーちゃんの魔力と同じ様なものとして感知されていたらしい。
 ジャンヌさんがデジーちゃんであるというのはもはや有り得ないから、それは間違いなくリリブローマさんの勘違いなんだろうけど、リリブローマさんとしては同じデジーちゃん同士が戦っているのを見ているような心境だろう。それは混乱し叫びたくもなる。
 
 が、その叫びを受けてか、それとは関係なくなのか。これまで防戦一方だった死体の巨人の方が反撃をし始める。
 しかも、今までとはまた違ったやり方で、だ。
 
 
 結晶のような頭部の下が、急にばっくりと裂けて開く。
 まさに大きく裂けた口を開いたかのように、だ。
 その中から、噴射するようにしてどろどろの粘液と腕や足などの部位が吐き出され、肩口に張り付いて攻撃をしていたジャンヌさんへとぶちまけられた。
 あまりの勢い。それに加えて攻撃をより近くからしようとしてたジャンヌさんはそれを避けようとするが間に合わない。いや、避けると言うよりとにかく飛び降りて逃げようとするのだけど、着地してからでは間に合いそうにない。

「ジャンヌ!?」
 叫ぶJBに、それを見ていた俺も、共に急いで駆けつけようとする。
 間に合うか? いや、JBはともかく俺は無理。走ると言うよりもはや転がるように移動しつつ、「ケルッピさん!」と叫んで手助けを呼ぶのが精一杯。
 
 バシャバシャ、と地面に巻き散らかされる粘液に無数の骨や肉片。立ち上る白い煙は何を溶かし何を焼いたのか───。
 その向こうに立つシルエットは、いつも以上に大きく見えた。
 
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