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第二章 迷宮都市の救世主たち ~ドキ!? 転生者だらけの迷宮都市では、奴隷ハーレムも最強チート無双も何でもアリの大運動会!? ~
2-96.ピクシーのピート(4)「チョーーーーばたばたしてるんですけど?」
しおりを挟むなんて言うか、チョーーーーばたばたしてるんですけど?
バタバタ? わたわた? 何でも良いけど、ぜーーーんぜん落ち着かないのよ、ぜーんぜん。
あの変な面白い顔した娘っ子の顔丸子ちゃんの魔力瘤を浄化して治してあげてさ。
そしたら何か別の娘っ子が攫われたとかでチリポンがばたばたしてて、何かとり戻したとかでばたばたしてて、そしたら次は魔人と戦いがあるとかなんとか言い出してばたばたしてさ。
もうあっちもこっちもバタバタバタバタ。
アタシ、暫くチョーーーー暇。
てか、戦いの前にはあのぬっぽらぶよぶよコボルトに錬金薬を沢山作らせるからってアタシの“妖精の粉”をガンガン出せとか言ってきたんだけど、あのねえ、出せって言われてそうホイホイ出せるほど簡単じゃなーいの、これは! って、怒ってやったんだけどさ。
ま、そんなんしててあいつらもばたばた出掛けてって、細目ちゃんと陰気男とその他大勢くらいが残ってて、んでアタシはあのぶよぶよコボルトの部屋でだいたい退屈してたわけ。
ま、書庫に行ってうんうん唸ってる細目ちゃんをからかってみたり、相変わらず部屋で膝抱えてぶつぶつ言ってる陰気男を脅かしてみたり、それなりには遊べる事もあるわけだけど?
暇は暇よ。ヒマヒママヒマヒヒママヒヒー、よ。
んで、また数日。
よーやくチリポンとかひげもさドワーフとかが戻ってきて、何か面白い話でもあるかしらー? と様子をうかがってみたけど、別にぜーんぜん!
アデアデとかヘン顔丸子ちゃんとか、顎トンガリや不潔のっぽもまだ帰ってこないし、戻って来た連中もなーんかしかめ面して話し合いだの会議だの。
ぜーんぜんアタシを敬ってこないワケ! ドユコト!? 超ヒマじゃん!
「ちょっと細目っ娘! あいつら何なの、ここんとこさ!?」
「……へ? あ? 何?」
あー、寝てたね。寝てたわね細目っ娘。
細目っ娘はここんとこ、昔の本とか記録とかいじくり回して、ボーマとかいうアデアデの住んでた所の奥にあった遺跡の金属板に書かれた文字やら何やらを読もうとしてるらしいのよね。うーわ、つまんなさそ!
文字そのものは古代ドワーフ文字だし、ホンヤク自体は難しくないらしーのね。
内容も、所々誤字脱字はあるものの、単純な単語が幾つか書かれてるだけで特に変なところはないの。
変わってるのはそれがカガミモジ、つまり、鏡に映したみたいに左右ハンテンされてる、ってところ。
けど、それだけ。そっから先が分かんないんだって。
ただのメモ書きみたいな単語を、わざわざ鏡文字にして金属板に刻み、厳重に保管してるワケが無い。だから何か隠された意味がある、って。
なーんか、そんなこと言ってるワケ。
そんなの分かんないと思うけどなー。気まぐれにそーゆーことしたくなることあるじゃん?
ま、そんなのはアタシにはどーでも良いの。問題は、
「あーいーつーらーよ。あーいーつーらー。
ひげもさドワーフやらチリポンやらさ。
何やってんのよ、ばたばたさー!」
もっとアタシを構いなさいよ! ヒマ!
「あー……さあ?
魔人討伐戦の後処理? とか、新しい遺跡探索の準備とか? じゃないの? 」
「なーによ、細目っ娘。アンタも仲間外れちゃんなの?」
わーいわーい、アタシと同じだー!
「違いまーすー。わたしはこの金属板解読という重要な仕事があるの!」
むきー! って。むきむきー! って細目っ娘がムキになっちゃってさ。
ムキになってるから、くるんくるんって周りを飛び回って、
「ふわー、むりむりむりむりー。そーんな細い目で睨み付けてたって、そんなんじゃ何時まで経ってもカイドク? なーんてむりむりむりむりー♪ デキッコナイスのデキデキナーイ♪」
軽ゥーく踊って和ませてあげるわけ。
「細目は関係無いでしょっ! ムカつくチビ妖精!」
むひーっ! って、そこらにある本とか食べかけのサボテンフルーツとか、焼き菓子の入った小皿とか投げつけて来て、アタシはそれをひょいひょい避けながらケラケラ笑うの。ちょっと楽しくなって来たァ~ん!
「当たらなーい、止まらなーい!
へっへー、細目っ娘の投げるものなんてどっこにも当ッたらないよー!」
ひとしきり投げたり避けたりしてたら、しばらくして細目っ娘ちゃんはぐぅぅぅ、とか唸ってへたり込む。
何よ、運動不足よね。そーんなすぐにへばってちゃダメダメじゃない!
「ちょっとー! コンジョー足りないわよ、コンジョー! そんなんだから除け者扱いでお留守番なのよー!
ダメダメダメっ子、細目っ娘ー!」
ふふ! さーて、再開よ再開! また何か投げて来なさいよカマーン!
と、身構えて待ちかまえているのに、細目っ娘ちゃんまーだ全然動こうとしないの。えー、何よ本当にもうお疲れー?
……とか、油断させてかーーーらーーーのーーー……?
何よ? ちょっとちょっとォ~?
……こないの?
そーっと近くに寄って、俯いてる細目っ娘ちゃんの顔を覗き見る。
……え、ヤダ何よ、泣いてんの!?
「ちょっ、ちょっ、ちょっ、コラ! 何よ、何泣いてンのよ!?
何? お腹痛いの? 妖精の粉使う? パタる? パタろっか?」
聞いても全然返事しないで、肩を震わせながらひぐひぐポロポロ。
「……く、た……ず、だ……」
「え、何? 聞こえないじゃない?」
「……役立たず……だもん」
ヤクザ出す? 出さないでよそんなもの!
「わた、し、役立たず、だもん……!
金属、版の、解読だって……全然、進まない、し……!
マーラン、や、スティッフィ、が、命懸け、で、戦ってるとき、何も、出来ない、で……弱い、し……魔法も使えないし、除け者で、留守番、してるしか、無い、役立たず、だもんっ……!」
えー、何よもー! 本気で受け取んないでよ! 何かアタシが悪いみたいじゃんさー!
あれでしょー? ジョーチョフアンテーとかってやつでしょー?
笑い歌の輪舞でも使ってやろーかしら? あれやると勝手に笑い出して止まらなくなるし。
たまにかかりすぎて笑いながら息が止まっちゃう人間居るから、あんまり使いにくいんだけどさ。
しょーがないから、細目っ娘がさっき投げてきたかじりかけのサボテンフルーツを拾ってきて、うじうじしてる口の中にねじ込んでやろうとしたら、じとっとこっちを見てからぺぺって吐き出して来たの。
「ばか! ばか! ばかとんぼ!」
お? やる気? やる!?
って身構えてやるのに、あんまり? そんなに? やる気なさげ?
もう辺りはまあ散らかりーの汚れーの。そのドワーフ合金の金属板とやらの上にも、飲みかけのお茶やら食べかすやらぶちまけられてる。ここ数日細目っ娘ちゃんほとんどこの書庫で生活してるみたいな感じだったしねー。
にしても、金属板だから良かったものの、植物紙とかの本や巻物だったらえらいことになってたでしょ、これ。
流石にそこは分かっててのことだろうけどもねー。
ぐぅぅー、とまた唸ってから、ゴシゴシと目をこすって顔を上げる細目っ娘ちゃん。ただでさえ細いおめめが、はれぼったくなってますます細くなってるわ。細目オブ細目っ娘ちゃんよ。
それから置いてあった布巾を手にして金属板に掛かったお茶を拭き取ろうとして……ぴたりと動きが止まる。
そんで、細い目をさらにさらに細めながら、じぃーーーーっと金属板をにらんでる。
「何よ何よ? どっか割れたか凹んだかしたのー?」
ドワーフ合金ってチョーチョー硬いから、さっき程度のことでそんなことになるわけ無いと思うけどもね。
パタパタと細目っ娘ちゃんの近くに行って、にらんでる先を見てみると、相変わらず特に代わり映えのない金属板。
古代のドワーフ文字が刻まれてて、薄いレリーフやら何やらで飾られてる。
別にいつも通りじゃない? と思って見てると、細目っ娘ちゃんが横のテーブルからお茶の入ったポットを掴んで再びバシャー!
金属板を完全にビショビショに濡らしたの。
それからまたじろじろと金属板をにらみつつ、へらへらフヒヒと笑い出したの!
「え、ちょっと何よ? とうとうおかしくなっちゃったの?」
やだー、やめてよねー! 粉パタパタ必要なやつ? 要る? 粉パタ?
「フフフ、粉? 良いね、粉でも出来るかもね。でもお茶でも十分分かるもの」
何か細ォ~い目をキラキラさせてにへらにへら笑ってる。チョーきもい!
「何よ、何なのよー? どえれーキモいんですけどー?」
そこでいったん、細目っ娘ちゃんは表情を変えて一呼吸。
金属板の上にぶちまけられたお茶を腕ですっと軽く拭う。
そうすると刻まれた文字や飾りレリーフのところ以外のお茶が除かれる。
「地図よ、これ」
へ? 何が?
「ポイントは2つ……じゃなくて3つ、か。
何故金属板に刻んだのか?
何故鏡文字か?
そして、文字の周りの細かい装飾の彫り込みは何か……?」
うわ、何かチョー得意気顔してる!
言いながら別のところから今度は木炭を持ってきて、それを細かく粉にしながら振りまいて、金属板の上に塗りたくる。
「ちょっと、何やってんの? チョー汚いじゃん? 良いの?」
細目っ娘ちゃん、普段はチョーきれい好きなのにー。
そしてそれから再び丁寧に、刻みのない表面部分の濡れた木炭粉を布巾で拭いとる。
お茶と混ざった黒い木炭粉は、刻みの文字と文様をくっきりと浮かび上がらせる。
そこに……今度は奥から安物の植物紙を持ってきて、端の位置を合わせて金属板へと被せると、その上からゴシゴシとこすりつける。
「……と。とりあえず……こんなもんかな?」
ぺらりと捲った植物紙には、さっきまで金属板の刻みに塗り込まれていた濡れた木炭粉が写し取られている。
「ほら、やっぱりそうだ! これは地図だったんだよ!」
カガミモジは反転して普通の文字になってるし、細かい装飾レリーフは確かに地図みたいな形をしてる。
「うーん、ちょっと汚くて読みにくいな。後でもう一度丁寧にやり直そう」
細目っ娘ちゃんはちょいしかめ面。
「で? 何よー? 結局それってば何なのよー?」
確かに地図っぽく見えるけど、アタシにはどこのどーゆー地図かなんて分かんないもんね。
「多分……クトリアの地図。細かい地形は変わってるけど、北に連なる大山脈の“巨神の骨”に、カロド河と南のウェスカトリ湾……この真ん中は……この文字は……中央魔力溜まり?」
ぶつぶつと考え込みながら小声で言う。ちょっと良く聞こえなーい!
「あー、もう。結局それで何が分かンのよ?」
「……多分……ここ。
水、火、地……に続く四つ目の遺跡の場所。
ジャンヌとアデリアの居る場所……“巨神の骨”の、最も高い山とされる、“巨神の骨盤”……。
そこにきっと2人は居るはず……!」
え、何? 変顔丸子ちゃんとアデアデがどーしたの?
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