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第二章 迷宮都市の救世主たち ~ドキ!? 転生者だらけの迷宮都市では、奴隷ハーレムも最強チート無双も何でもアリの大運動会!? ~
2-37.追放者オークのガンボン(36)「暑ィーでございますよ! 」
しおりを挟むほぼ、裸でいる。
もはやここは裸裸ランドだ。
ほぼ裸とは言え、一応下半身は履いている。
さすがに前世が男だとは言え、現在女子そのもののレイフの前でリトルビッグサンをオティンポロンは如何なものかと、ワタクシーと言えども思うのでーあります。良識と常識の砦にビルドイン。
いやね。
もう、暑ィーでございますよ!
糞暑ィーのでございますよ!
ドユコト!?
ここ来るまではどちらかというとややひんやりcoolだったじゃ無いですか!?
地底湖とかあってさ!
ひんやりcool感あってさ!
そしてそこでは俺のこの、天然ミートテックが、実に良い案配で機能していたじゃーーねえですか!?
それが、ここ!
むしろそのマイファットこと、脂肪遊技がね!?
糞暑ィーではあーーーりませんか!?
ブヒー、だよ、ブヒー!!
暑くてブヒー、だよ!
てなわけで、一応水の入った浅いくぼみに足をつけて涼んで居るのだけど、これもはや水というよりぬるま湯。
タカギさんなんか全身そこに浸かってるけども、まあだるんだるんですよ。
元気なのは、最初からレイフが召喚出来ていた猫熊みたいなのと、ここに来る前に使い魔になったという水の精霊獣ケルピーだけ。
猫熊のインプは幻魔とかいう、他の次元に存在する精神体に魔力で作ったかりそめの肉体を与えているタイプの使い魔だそうで、元々気温の影響をほとんど受けない。
勿論溶岩だの吹雪だのでダメージは受けるんだけど、こういう周りが暑い寒い程度の温度差では行動に支障が出ることは無いらしい。
ケルケルケルっピことケルピーの方はというと水属性の魔法をかなり使えるので、自分の周りに霧のバリアみたいなのを張って結構な熱気を遮断している。
ただ存在そのものが水属性魔力の塊でもあるため、直接強い炎の力みたいなのに触れるとむしろヤバいらしい。
で、大蜘蛛はというと、あてがわれたねぐら区画に巣を貼って、あとはたいていじぃーーーーっとしてる。
いや、糸を紡いだりしてるから、俺よりかは働いてるか。てか大蜘蛛はいつもそんなか。
この溶岩に囲まれた島は、レイフ曰わく「ネクストステージ」なのだという。
レイフ曰わく、と言うか、厳密には「レイフ曰わく、“生ける石イアン”曰わく」なんだけど、とにかく昨日まで居た「巨大な地底湖のある空間」は第一ステージで、こちらは第二ステージ。
ステージって何なのよん? と思うけど、まあ実際何だろねえ。
「次のステージに進もうと思うけど、どう思う?」
と先日レイフに聞かれて、まあまずはポカーン面ですよ。
それで説明された諸々だけど……うん、正直良く分からん!
「物凄くおおざっぱに言うと、ね。
ダンジョン作って、敵の魔力溜まりを支配してクリア。
そしたら次のステージに進んで、別の敵を倒して、また次のステージへ進む。
そういうもの、としてここは作られてるんだよ」
「え? ゲーム?」
「そう。“ゲームみたい”なんじゃなくて、“ゲーム”そのものだったんだ」
「はへ?」
レイフの推測では、つまりこの空間と人為的魔力溜まり、そして“生ける石イアン”は、「ダンジョンキーパー同士の対戦ゲーム」として造られたものではないか? と、いうのだ。
「えーと、それは……古代ドワーフ達が?」
古代ドワーフ達の娯楽? としての、遊技場なのか? と言うと、
「……んーー。そこは、ちょっと、まだ……微妙?」
何故に?
「この、“生ける石イアン”は、なんというか何回かに分けてアップデートされてるっぽいんだよね。
なので、記憶……いや、記録されている情報にまばらな抜けがあるみたいでさ。
聞いてもはっきりしない部分もあるし、ステージを進めてアンロックしないと開示されない情報みたいのもあるらしいのよ。
そもそも最初に、いつ誰がどういう目的で作ったのかとか、その辺がいまいちはっきりしないし」
むーん。
何やら色々もどかしい。
「でね。
曰く、基本的には僕らがこのまま、最初に設定された通りの順番にダンジョンバトルをクリアし続けていけば、平均クリア時間としては2~30日くらいあれば外へ繋がる場所に出られる……はずなんだって」
「はず?」
「そう。僕らが最初に来たとき、石扉が壊れてたりしたじゃん?
ああいう風に、“生ける石イアン”の知らない場所で何かしら不具合が起きてる可能性もあるから、それらが無ければ、ということで」
まあ、長いこと全く使われて無かったであろうことは確かだしね。
「けど、それとは別のやり方……例えば『正規ルートなんか無視して、ここから強引に穴掘って外へ出ちゃえー』を、やろうとするとするじゃない?」
とそれはまあ、当初の予定通りに、ということではある。
「その場合、“生ける石イアン”としては、どれくらい時間がかかるかが分からない」
むむう?
「まず、“生ける石イアン”自体は、完全にここでのダンジョンバトル用にカスタマイズされた魔導具なので、この会場として設定された領域以外のことが正確には分からない。
今現在のこの地底湖のあるエリアから、どれくらいの距離を掘り進めば外なのかとか、そこがどんな場所なのか、という情報が無いわけさ」
これは、前にも話していた事に通じている。
「で、その上でこの人為的魔力溜まりの力で掘り進められる領域というのにも制限があるらしいんだ。
プログラム上、ダンジョンバトルの会場として設定された範囲が決まってて、その外側を掘り進めようとするなら 魔力溜まりの魔力ではなく、僕自身の自前の魔力を使わなきゃならない。
そうなると、作業効率がガクンと下がる」
「あー……」
最初に闇の森の移転門から飛ばされて来たときには、壊れた石扉を破壊する魔法すら巧く行かなかったレイフだ。
単独で、“生ける石イアン”による効率化の恩恵を受けていても尚、ダンジョンバトルの領域の外側に出れば、ほんの数メートル掘るだけでどれだけかかるか……。
それらの事を含めれば、結局提示された次のステージとやらに進むしか選べる選択肢は無い。
そして俺たちは、最初のダンジョンハートを封印し、手に入れた多くの食材素材に、作った魔導具雑貨類、魔晶石等々などを持ち、こちらの“ネクスト・ステージ”へと集団移転をして来たのだ。
この蒸し風呂のような熱気と溶岩の海に囲まれた、岩盤の島へと。
◆ ◆ ◆
で。
冒頭の様に、俺とタカギさんはブヒブヒ言いながらぬるま湯と化した水場でだれている。
こっちにきて半日くらい経つけど、ぶっちゃけそれしかしてない。
転移した場所は、半径50メートルで高さ10メートルくらいのほぼ円形の島。
多分横から見ると、ちょっとしたホールケーキみたいな形に見えるはずだろう。フォルムとしてはマフィンみたいかな?
そのちょうど真ん中辺りに魔力溜まりとダンジョンハートの区画があった。
そしてその周囲が、ほぼほぼ溶岩の海。
いやいやいや。
死ぬよ! 普通に!
俺もレイフもこれにはかなりビビった。
けどこの周りの溶岩は、一応本物の溶岩とはちょっと違うらしい。
どういうことかというと、前のステージの魔力溜まりが水属性に特化されていたのと同様に、ここには火属性の魔力に特化された魔力溜まりがあるのだそうな。
そしてその火属性の魔力により、これまた人為的に疑似溶岩流のようなものを作り出している。
まあ、移動したハナから即焼死、なんて構造になってたら、ゲームとしては成り立ってない。
これらが“生ける石イアン”によるダンジョンバトルゲーム用に造られたステージだというのであれば、そんな仕掛けはされてないはずだ……壊れて無い限りは。
即死する程のものではないとは言え、熱気がじりじりと気力体力を削っていく。
レイフはまずダンジョンハートに魔力を注いで支配下におくと、使い魔の猫熊インプと、新たに追加のインプを3体ほど呼び寄せて、この島に穴を掘らせ始める。つまりは地下室。
そしてそこに生活居住空間と貯蔵庫やら何やらを作り、前のときも使っていた保冷庫や水の出せる魔導具等々も設置。
俺達が生きていけるような拠点を間に合わせで作る。
それで一段落するが、まだまだだ。
穴を掘ったときに出た土、というか岩を使い、ダンジョンハート区画周りに壁を建ててインプ達に強化させ、その周りに従属魔獣たちのためのねぐら区画、例の歩く丸鶏のなる丸鶏の木が生える家畜小屋区画などを設置。
ついでにダンジョンハート区画の壁に上から水を流し続ける仕掛けをつけて、周りをぐるりと浅めの水路で囲った。
少しでも涼を呼び込もうという意図らしいが、そこに足を浸けてのへーっとしてる俺が言ってるとおり既にぬるま湯だ。
新しく“工房”という区画が設置出来るようになったそうで、これは今までは便宜的に使っていた「ちょっとした作業用の小部屋」とは異なり、結構本格的な備品、道具制作が出来るらしい。
ここで猫熊インプ達は掘り出した岩屑などを素材として、扉や鍵、梯子、罠といった物を作ったりしている。
大蜘蛛の方は魔力の籠もった糸を紡ぎ出し、それを紐や縄にしたり、また布にしたりまでしてる。
この区画内では魔力溜まりと“生ける石イアン”の魔力による補正でそれら「何かを作る行為」の効率がアップするようになってるのだとか。
俺もミスリルダガーを研いだり、棍棒と鎧の補修をしたりした方が良いのだけど……ダルくて何もやってない。
そろそろ食事の準備でもしなきゃならないなー、とも思っているが、それすらもうやりたい気分にならないくらいだ。
周りを見回すと、溶岩の海の中にここと同じような大小様々な島が各所に点在している。
大蜻蛉も召喚して空から偵察をさせているが、熱くて疲れるせいか長時間偵察にいけず、ちょいちょい戻って来てる。
勿論、大蜻蛉用のねぐら区画は、大蜘蛛とは離しているみたいだけどね。あいつすぐ食おうとしてくるし……。
◆ ◆ ◆
そうやって、周りの監視と称して水に足を浸けてぐでって居ると、さすがにグボゴボボギュルーーーー、と腹の虫。
ぐーむ。空腹には勝てぬ。どうしたものか。
階下に降りて行くと、あれ、こっちの方がやや涼しくなってる? 最初はむしろ蒸し暑いくらいだったけど、魔晶石を用いた魔導具やら何やらを仕込んだお陰もあって、地下階に涼しい空気の層が出来たっぽい。
よっしゃこれで勝てる! そう思い食料庫へ入り、さらに涼しい空気を満喫しつつ食材を漁る。
この保冷の魔導具は、仕掛けそのものは難しくないらしい。
相応の魔力を魔晶石に込めておくだけ。
ただし、そのバランス調整がけっこう繊細なのだとか。
まず保冷、というか、周りを冷気で冷やすのには、水属性と風属性の魔力とを適切な割合で配合する必要がある。
水属性が強すぎても風属性が強すぎても駄目。
その上で、それらを個々で作動させる術式と、組み合わせた上で作動させる術式を埋め込む。
この術式というのは……回路、みたいなもの? という解釈で良いのかな。
つまり、原理そのものはそんなに複雑ではないけど、素材の配合と組み合わせ方に技術がいる、と。
レイフ曰わく、これも“生ける石イアン”によるサポートが無ければ、レイフ個人だと簡単には作れないらしい。
二つの同じくらい……パチンコ玉くらいの大きさの魔晶石をはめ込んだ、固い石のプレートには、正に回路図のような術式の陣がうっすらと浮かび上がっていて、保冷庫の中に冷気を生み出してる。
ひんやり涼しい冷気が心地良い……。
…………。
………………。
……………………。
……おおっとヤベぇ、時の経つのを忘れかけた。
この保冷庫には、前の場所で手に入れた食材などを持ってこれるだけ持って来て入れてある。
双頭オオサンショウウオから岩蟹、そして巨大デンキウナギ……モドキまで。
“生ける石イアン”によると、巨大デンキウナギモドキはウナギでもデンキウナギでもなく、下位の亜水竜の一種だったらしい。
竜の亜種なので、「有る意味ドラゴンスレイヤーじゃね?」なんてレイフは言ってたけど、そんなことより問題は味!
一応幾らかぶつ切りにして(大きな刃物が無いのでかなり難儀したけど)持ってきていたそれは、味見したところは正直微妙。
いや、不味くは無い。方向性としては双頭オオサンショウウオに近い。白身魚と鶏肉の間みたいな感じだが、要はやや劣るオオサンショウウオ肉の味、なのだ。
最初はまずはとドラゴンステーキとしゃれ込んでみたけど、塩とハーブ、スパイスだけの味付けではなんとも味気ない。
身が固すぎる、ということはないが、脂も少なくインパクトに欠ける。
薄いトレイに切り身を入れて、スパイスを揉み込んで酒に浸けておくことで、ちょっとばかし食べやすくなった。
ただ、一つだけ特徴があった。それは尾の近く。尾の近くの肉には、特に皮との間に豊富なゼラチン質があったのだ。
そこだけは、双頭オオサンショウウオよりも多かった。
で、これだ! と、ヒラのメイた。ピコリンコーン、と、閃いた。
尾の肉を土鍋に入れてぐつぐつと煮込む。暫くして溶け出したゼラチン質だけを別の小鍋に分けて、再び味付けをして火にかける。
味付けは蜂蜜。そして煮込んで柔らかくしたドライフルーツ。
つまり、フルーツゼリーを作るのだ。
ドライフルーツが柔らかくなったあたりで幾つかの器により分け、冷気を生み出す魔導具の前で冷やす。
その間に、残った尾の肉を刻んだ丸鶏の木のシャキシャキした新芽、茎、戻して柔らかくした干し肉などと合わせて団子にする。
それらにスパイス含めた調味料で味を調え、芋の粉をまぶし衣代わりに。
鍋に残っていた煮汁と塩漬け干し肉の戻し汁を合わせて塩気のあるスープにし、その中へ衣をまぶした肉団子を投入。
肉団子にきっちり火を通したところで、またそれぞれを器に分けて、こちらも冷やす。
良い案配に冷えて固まったところで、完成!
「肉団子の冷製ゼリー寄せ」と、「フルーツゼリー」。
我ながら、すげーちゃんとした料理感ある!
早速、冷えた水と共にトレイに載せて上に向かい、むわっとくる空気の中作業しているレイフの元へ。
レイフは島の中央にあるダンジョンハート区画で、前の時同様のキーパー用のデスクに着いてダンジョン制作を続けているが、すげー目に見えてグデローンとしてる。
レイフの周りには例の水の馬ことケルピーが居て、時折霧をあたりに漂わせて冷やしてくれているようだが、それでも下に比べると確実に暑い。
「あづい~、だるい~、働きたくない~」
暑さとだるさで、めちゃくちゃダメ人間っぽいことを言っているレイフに、暑気払いの意味も込めて冷たい食事を。
「あ~、あじがどうぅ~……でも食欲もなァ~い~……」
うーむ、本格的に熱で溶けかけてる。ぐでぐでのだらりんこだ。
「大丈夫。冷たい」
そう言って、冷やしてたゼリーの器を手に触れさせると、
「うひにゃっ!?」
と小さな悲鳴。
「え? え? 何これ? どしたの?」
レイフの分のスプーンを渡し、机に料理を置く。
俺もその横の地面にぺたり座って食べながら、
「デンキウナギの尻尾、すげーゼラチン」
うおう、ひんやりぷるるん! 美味)し!
これにはレイフも嬉しいサプライズ。
「おおう、おう、本当だ! ゼリー寄せにフルーツゼリー!
肉汁の出汁も効いてて旨いし!
フルーツゼリーも甘いし旨いし!」
おおう! 高評価! やったぜ! ガンボン亭に食べログポイント入れて!
よし、暫くはこれ、作りまくろう!
保冷庫の魔導具前にもっと長く置いておけば、ちょっとしたフローズンゼリーにもなるかもしれんし!
で。
調子に乗って、冷やしまくったフローズンゼリーを食いまくった俺は、翌日随分と蒸し暑いトイレに籠もることになった。
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