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プロローグ 悪役令嬢の目覚め
ep2
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不安げに周囲を見渡した彼女は頭を押さえて考え込んでいた。
腰まで届く長くて癖のない綺麗な金髪。それをつまんで持ち上げ、それから、カラーコンタクトを入れているわけではない綺麗な青と紫のオッドアイを瞬かせ、絹のように滑らかな肌に触れた。
「…夢だけど夢じゃなかった…、じゃなくて、これが私? 何億掛かったら若返ってボンキュッボンなレディになることやら…」
そんなことを呟いて頬をグイッとつまんだ彼女は「いふぁい(痛い)」と呟いた。
と、その時、どこからともなく頭上にたらいが現れ、金属のたらいが彼女へ落ちてきて、
カ―――ン
と鈍い音が響いた。
きゅうぅと声を上げ、その場に倒れこんだ彼女の意識は一瞬にして刈り取られたのだった。
☆
彼女がゆっくりと目を覚ますと、白い羽毛の体に包み込まれるようにして寝かされていた。
あまりの気持ちよさに開けかけた瞼を閉じると、彼女を包み込んでいた物体が動き、弾かれたように目を覚ました彼女がその羽毛の寝床から転がり落ちる。
「きゃあ!」
だが、転がり落ちて衝撃を覚悟したのもつかの間。何もない白い空間で転がり落ちた姿勢のままフワフワと空中に浮かんでいた。
淑女らしからぬ体勢に恥じらいを覚え、ゆっくりと起き上がろうと身動きをすると、泳ぐように滑らかな動きですんなり体勢を整えられたのだった。
「目が覚めた?」
穏やかな声に尋ねられ、顔を上げると、目の前にとぐろを巻いた美しい八翼の生えた蛇のような生き物がいた。だが、全身を羽毛が覆っており、穏やかな紫の瞳に柔らかな微笑みが浮かんでいる。
そして、何よりも後頭部に立派な一対の角が生えており、蛇ではないことは明白であった。
「ドラゴン…」
茫然とそう呟くと、その生き物は穏やかに小首を傾げた。
「…うーん、確かにドラゴンであると言えばドラゴンなのだけど、どちらかと言うと私の世界では総称して『龍』と呼んでいるかしら。世界によっても千差万別であるのかもしれないけれど、ね?」
「…”世界”?」
その『龍』は彼女からの質問には答えず、尋ねた。
「あなたは一度死んだ。それは覚えている?」
その問いかけに彼女は小さく頷いた。
「なんとなく。『芸術は爆発である!』って叫んだ奇人の爆弾テロに巻き込まれて、買い物中だっただけなのにそいつとランデブーしちゃったアラサーのOLだったことくらいは」
八翼の龍は促すようにして後ろを振り返り、長い尾を使って押しやるようにして天使のような翼を生やした色白の美少女を前に突き出させた。
「アルゥ。きちんとあなたの口から言いなさい」
「シャルフィーリア先輩の意地悪っ」
なぜかむくれている翼の美少女は拗ねたように彼女の方へ向かってやってくると、言いにくそうに視線を揺らしていたが、不自然なほど明るいテンションで声をかけてきた。
「や、やっほー! 初めまして、かな? 今はアナスターシャちゃん! 私は新人女神のアルゥでーす!」
「…ども?」
ペコッと会釈した彼女にアルゥと名乗った美少女な女神はハイテンションに続ける。
「実はね、前世のあなたである冴えない地味なアラサー処女OLの美代たんは~、名前の漢字間違えによって私が間違って死亡時期を記入していたのだ☆」
びしっとポーズを決めてそう言ったアルゥの言葉に彼女の表情が強張る。
「は?」
それに気が付かないのか、アルゥがハイテンションに続ける。
「その日ね、先輩の神様の代理で美代たんの世界の管理をしていたんだけどぉ、漢字が読めなくって、書けないの! で、辞書を片手に頑張ったんだけど、美代たんのだけ、間違えちゃった♪」
てへっ☆とチロッと舌をのぞかせ、こつんとこめかみに握り拳を当てて小首を傾げた駄女神に彼女は茫然と尋ねた。
「…じゃあ、あんたのせいで爆発事件に巻き込まれたの?」
「そゆこと~…かなぁ?」
考えるようにシャルフィーリアへそう尋ねたアルゥへ先輩であるらしいシャルフィーリアが呆れたように声をかけた。
「そゆことかな、じゃなくて、キチンと謝りなさい」
「…はい」
アルゥが頷くと、鮮やかな土下座を決めた。額を打ち付けかねないような鮮やかさだが、地面と言うものが存在しない空間ゆえ、額を打ち付けんばかりの土下座でも迫力に欠けた。
「申し訳ございませんでした!! 全部私のせいで美代たんは処女のまま、冴えないアラサーで死ぬことになってしまいました!!」
「……事実だけど、処女って繰り返さないでほしいのだけど…? まぁ、事実だし否定できないのがつらいところなんだけどね…。ねぇ…ところで、この姿って見覚えがあるんだけど?」
彼女の姿はスタイル抜群な美少女となっていたわけだが、どうにも見覚えがあったため、確認のために念のため確認を取ろうと声を上げる。
すると、しょんぼりしていたはずのアルゥが秒で回復を見せ、楽しそうにポンっと両手を打ち合わせた。
「わかる!? あなたが生前、最後にプレイしていたノベルゲームの悪役令嬢アナスターシャだよ! ほら、ライトノベルの主人公なんか、悪役転生すると何やかんやで喜んでいるじゃない! 美代たんも悪役令嬢に憧れる側の人間だと思って転生させたの!」
「…ツッコミどころ満載だけど、ライトノベル、知っているの?」
「うん! 神界でも話題彷彿の大人気なんだよ!」
彼女は目を輝かせているアルゥの様子を見ながら、怒っていいのか泣けばいいのかわからずにいた。だが、一つだけ訂正しておきたいところがあり、彼女は告げた。
「一つだけいい?」
「なあに?」
「そのゲーム、オープニングしか見る時間がなくて、説明書しか見ていないんだよね。それに、帰ったらプレイしようと思っていただけだよ」
「え?」
「…だからね、まだどういうゲームだったのか知らなかったんだよね」
アルゥが「えええええええええぇぇぇぇっ!?」と絶叫した。
「うん、本当。アナスターシャ自体、厨二心くすぐられるような美女だけど、私に悪役として生きて処刑回避するだけのスキルなんてないし、平穏に生きたいんだけど殿下たちとのお茶会のせいで危ないフラグがバンバン建設されているんですけど?」
「そ、それはぁ…」
「そもそも、乙女ゲームの世界に転生したいと思ったことなんてないのだけど?」
「ううっ…」
泣きそうな顔になってしまった駄女神に呆れ顔をする彼女。そんな彼女へシャルフィーリアが見かねたのか言葉を掛けた。
「アルゥがごめんなさいね。でも、謝ってもどうしようもないことではあるけれど。…それと、乙女ゲームの世界じゃなく、間違いなく現実であることは現実なの。それもわかってくれるかしら?」
「つまり、それっぽい世界ってこと?」
「…そうじゃなくて、原作って奴よ」
「原作?」
シャルフィーリアが頷いた。
「そう。大昔、間違って向こうの世界からこちらの世界に迷い込んだ男がいたの。転移者とでもいうのでしょうね。偶然が重なって開いてしまったゲートを通ってこちらに迷い込んだ彼はあっという間に死んでしまったわ。でも、世界の管理者たる我々の失態。だから、彼をこの空間に呼んで詫びのために元居た世界に返すことになった」
「…転移者」
「ええ。彼を転生させる前に一つだけ願いをかなえてあげると言ったの。記憶の維持以外にもう一つだけ願いをかなえてあげるのがせめてもの償いだと思ったから。ハーレムを作れるようにしてあげてもいいし、イケメンに生まれ変わって天から三物与えられたような男にしてもいい。でも、彼はこの世界のことをもっと知りたいと言った」
一度言葉を切ったシャルフィーリアは遠い目をした。
「元々シナリオライターをしていて、来世でもそうしたいんだって。そのクリエイティブな部分に刺激が欲しいからって。まあ、彼は恋愛なんて興味がなかったみたいだけど、私は恋物語を寝物語として語った方が楽しいから、過去に起こったこと、これから未来に起こるだろうこと…いろいろな恋の話を聞かせたわ。もちろん、彼が望む冒険譚も、だけど」
彼女は恐るおそる尋ねる。
「…その人がゲームプロデューサーに転生して、シナリオを書き上げた…?」
「でしょうね。別の世界のことはよくわからないけれど、そう。少し味付けをしているでしょうけれど、けど、大筋では変わらない――そんな世界がここ」
否定はなかった。その淡々とした仕草に逆に彼女はギョッとする。
「えっと、つまり、私はこのままいくと転生したはいいけど…断罪される?」
「指をくわえてみていればそうなるわ」
上品に蜷局を巻き直したシャルフィーリアはのんびりとそう応えると、彼女は目を見開いた。
「冗談じゃない! あんなモラハラ野郎に一矢報いることなく破滅するなんて言語道断!」
噛みつかんばかりに身を乗り出した彼女に、シャルフィーリアは優しく微笑んだ。
「そっか」
握り拳を固め、彼女はその場で宣言する。
「私、決めました。モラハラ野郎を引きずりおろして、この私が悪の華として降臨し、引っ掻き回してやりますわ!! …って、あれ? お嬢様言葉が…」
彼女がキョトンとし、アルゥが不安げにシャルフィーリアを見上げると、シャルフィーリアは首を横に振った。
「今は記憶が混濁しているでしょうけれど、やがて溶け合って『あなた』になるでしょう。だから、安心して?」
そう言ってから彼女の視界を翼が覆った。
「さあ、おやすみなさい。アルゥや私のことを恨んでも仕方がないけれど、でも、この世界も好きになってくれると嬉しいかな」
チュッと額に大きな鼻面でキスをされ、意識がゆっくりとホワイトアウトした。
腰まで届く長くて癖のない綺麗な金髪。それをつまんで持ち上げ、それから、カラーコンタクトを入れているわけではない綺麗な青と紫のオッドアイを瞬かせ、絹のように滑らかな肌に触れた。
「…夢だけど夢じゃなかった…、じゃなくて、これが私? 何億掛かったら若返ってボンキュッボンなレディになることやら…」
そんなことを呟いて頬をグイッとつまんだ彼女は「いふぁい(痛い)」と呟いた。
と、その時、どこからともなく頭上にたらいが現れ、金属のたらいが彼女へ落ちてきて、
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あまりの気持ちよさに開けかけた瞼を閉じると、彼女を包み込んでいた物体が動き、弾かれたように目を覚ました彼女がその羽毛の寝床から転がり落ちる。
「きゃあ!」
だが、転がり落ちて衝撃を覚悟したのもつかの間。何もない白い空間で転がり落ちた姿勢のままフワフワと空中に浮かんでいた。
淑女らしからぬ体勢に恥じらいを覚え、ゆっくりと起き上がろうと身動きをすると、泳ぐように滑らかな動きですんなり体勢を整えられたのだった。
「目が覚めた?」
穏やかな声に尋ねられ、顔を上げると、目の前にとぐろを巻いた美しい八翼の生えた蛇のような生き物がいた。だが、全身を羽毛が覆っており、穏やかな紫の瞳に柔らかな微笑みが浮かんでいる。
そして、何よりも後頭部に立派な一対の角が生えており、蛇ではないことは明白であった。
「ドラゴン…」
茫然とそう呟くと、その生き物は穏やかに小首を傾げた。
「…うーん、確かにドラゴンであると言えばドラゴンなのだけど、どちらかと言うと私の世界では総称して『龍』と呼んでいるかしら。世界によっても千差万別であるのかもしれないけれど、ね?」
「…”世界”?」
その『龍』は彼女からの質問には答えず、尋ねた。
「あなたは一度死んだ。それは覚えている?」
その問いかけに彼女は小さく頷いた。
「なんとなく。『芸術は爆発である!』って叫んだ奇人の爆弾テロに巻き込まれて、買い物中だっただけなのにそいつとランデブーしちゃったアラサーのOLだったことくらいは」
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「アルゥ。きちんとあなたの口から言いなさい」
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なぜかむくれている翼の美少女は拗ねたように彼女の方へ向かってやってくると、言いにくそうに視線を揺らしていたが、不自然なほど明るいテンションで声をかけてきた。
「や、やっほー! 初めまして、かな? 今はアナスターシャちゃん! 私は新人女神のアルゥでーす!」
「…ども?」
ペコッと会釈した彼女にアルゥと名乗った美少女な女神はハイテンションに続ける。
「実はね、前世のあなたである冴えない地味なアラサー処女OLの美代たんは~、名前の漢字間違えによって私が間違って死亡時期を記入していたのだ☆」
びしっとポーズを決めてそう言ったアルゥの言葉に彼女の表情が強張る。
「は?」
それに気が付かないのか、アルゥがハイテンションに続ける。
「その日ね、先輩の神様の代理で美代たんの世界の管理をしていたんだけどぉ、漢字が読めなくって、書けないの! で、辞書を片手に頑張ったんだけど、美代たんのだけ、間違えちゃった♪」
てへっ☆とチロッと舌をのぞかせ、こつんとこめかみに握り拳を当てて小首を傾げた駄女神に彼女は茫然と尋ねた。
「…じゃあ、あんたのせいで爆発事件に巻き込まれたの?」
「そゆこと~…かなぁ?」
考えるようにシャルフィーリアへそう尋ねたアルゥへ先輩であるらしいシャルフィーリアが呆れたように声をかけた。
「そゆことかな、じゃなくて、キチンと謝りなさい」
「…はい」
アルゥが頷くと、鮮やかな土下座を決めた。額を打ち付けかねないような鮮やかさだが、地面と言うものが存在しない空間ゆえ、額を打ち付けんばかりの土下座でも迫力に欠けた。
「申し訳ございませんでした!! 全部私のせいで美代たんは処女のまま、冴えないアラサーで死ぬことになってしまいました!!」
「……事実だけど、処女って繰り返さないでほしいのだけど…? まぁ、事実だし否定できないのがつらいところなんだけどね…。ねぇ…ところで、この姿って見覚えがあるんだけど?」
彼女の姿はスタイル抜群な美少女となっていたわけだが、どうにも見覚えがあったため、確認のために念のため確認を取ろうと声を上げる。
すると、しょんぼりしていたはずのアルゥが秒で回復を見せ、楽しそうにポンっと両手を打ち合わせた。
「わかる!? あなたが生前、最後にプレイしていたノベルゲームの悪役令嬢アナスターシャだよ! ほら、ライトノベルの主人公なんか、悪役転生すると何やかんやで喜んでいるじゃない! 美代たんも悪役令嬢に憧れる側の人間だと思って転生させたの!」
「…ツッコミどころ満載だけど、ライトノベル、知っているの?」
「うん! 神界でも話題彷彿の大人気なんだよ!」
彼女は目を輝かせているアルゥの様子を見ながら、怒っていいのか泣けばいいのかわからずにいた。だが、一つだけ訂正しておきたいところがあり、彼女は告げた。
「一つだけいい?」
「なあに?」
「そのゲーム、オープニングしか見る時間がなくて、説明書しか見ていないんだよね。それに、帰ったらプレイしようと思っていただけだよ」
「え?」
「…だからね、まだどういうゲームだったのか知らなかったんだよね」
アルゥが「えええええええええぇぇぇぇっ!?」と絶叫した。
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「そ、それはぁ…」
「そもそも、乙女ゲームの世界に転生したいと思ったことなんてないのだけど?」
「ううっ…」
泣きそうな顔になってしまった駄女神に呆れ顔をする彼女。そんな彼女へシャルフィーリアが見かねたのか言葉を掛けた。
「アルゥがごめんなさいね。でも、謝ってもどうしようもないことではあるけれど。…それと、乙女ゲームの世界じゃなく、間違いなく現実であることは現実なの。それもわかってくれるかしら?」
「つまり、それっぽい世界ってこと?」
「…そうじゃなくて、原作って奴よ」
「原作?」
シャルフィーリアが頷いた。
「そう。大昔、間違って向こうの世界からこちらの世界に迷い込んだ男がいたの。転移者とでもいうのでしょうね。偶然が重なって開いてしまったゲートを通ってこちらに迷い込んだ彼はあっという間に死んでしまったわ。でも、世界の管理者たる我々の失態。だから、彼をこの空間に呼んで詫びのために元居た世界に返すことになった」
「…転移者」
「ええ。彼を転生させる前に一つだけ願いをかなえてあげると言ったの。記憶の維持以外にもう一つだけ願いをかなえてあげるのがせめてもの償いだと思ったから。ハーレムを作れるようにしてあげてもいいし、イケメンに生まれ変わって天から三物与えられたような男にしてもいい。でも、彼はこの世界のことをもっと知りたいと言った」
一度言葉を切ったシャルフィーリアは遠い目をした。
「元々シナリオライターをしていて、来世でもそうしたいんだって。そのクリエイティブな部分に刺激が欲しいからって。まあ、彼は恋愛なんて興味がなかったみたいだけど、私は恋物語を寝物語として語った方が楽しいから、過去に起こったこと、これから未来に起こるだろうこと…いろいろな恋の話を聞かせたわ。もちろん、彼が望む冒険譚も、だけど」
彼女は恐るおそる尋ねる。
「…その人がゲームプロデューサーに転生して、シナリオを書き上げた…?」
「でしょうね。別の世界のことはよくわからないけれど、そう。少し味付けをしているでしょうけれど、けど、大筋では変わらない――そんな世界がここ」
否定はなかった。その淡々とした仕草に逆に彼女はギョッとする。
「えっと、つまり、私はこのままいくと転生したはいいけど…断罪される?」
「指をくわえてみていればそうなるわ」
上品に蜷局を巻き直したシャルフィーリアはのんびりとそう応えると、彼女は目を見開いた。
「冗談じゃない! あんなモラハラ野郎に一矢報いることなく破滅するなんて言語道断!」
噛みつかんばかりに身を乗り出した彼女に、シャルフィーリアは優しく微笑んだ。
「そっか」
握り拳を固め、彼女はその場で宣言する。
「私、決めました。モラハラ野郎を引きずりおろして、この私が悪の華として降臨し、引っ掻き回してやりますわ!! …って、あれ? お嬢様言葉が…」
彼女がキョトンとし、アルゥが不安げにシャルフィーリアを見上げると、シャルフィーリアは首を横に振った。
「今は記憶が混濁しているでしょうけれど、やがて溶け合って『あなた』になるでしょう。だから、安心して?」
そう言ってから彼女の視界を翼が覆った。
「さあ、おやすみなさい。アルゥや私のことを恨んでも仕方がないけれど、でも、この世界も好きになってくれると嬉しいかな」
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