118 / 123
第二部 終章 私の騎士様
閑話 『奥の手』
しおりを挟む「父上は女性をオトすのにテクニックでも使っているんですか?」
ヴィクトルがリアラとの旅行から帰ってすぐにそう尋ねると、シリウスは優しく笑った。
「いや? でも、自分が相手との結婚式の時に使いたい教会や、相手を口説いたら最高のムードを演出できそうな空間を抑えておいて、そこに連れて行き、プロポーズするかな」
「なるほど…」
メモを取ろうとした息子に、シリウスは呆れ顔を向けた。
「お前に気になる人でもできたのか?」
「えっと、はい」
照れ笑いを浮かべるヴィクトルにシリウスがフゥッとため息を漏らす。
その直後、ギンッと鋭い眼光が浮かんだ。
「スーヴィエラのこと、奪いにかかってくるならこの場でお前の心を完膚なきまでに折る」
「…父上は本当にスーヴィエラさんのことしか頭にないんですね」
「当然だ。あんなに可愛い生き物、他にいない」
「…自信満々に惚気られても恥ずかしいのですが…」
「……まあ、善処する。で? 知りたいのはオトす方法だったか? …何にも特別なことはないよ。ただ、ムードがあると女子は喜ぶ。比較的、だが。普通の女の子ならそれで十分」
「なるほど…」
「そこに奥の手を使うと効果が上がるぞ」
「奥の手、ですか!?」
ヴィクトルが身を乗り出すと、シリウスはドアがノックされたのでのほほんと返事をした。
「入りなさい」
「失礼します。あ、ヴィクトルさん、こんにちは」
「どうも。お元気そうで何よりです」
「こちらこそ。ところで、シリウス様、そろそろお夕飯の時間ですけど、行きませんか?」
「スー、ちょうどよかった。ちょっとおいで?」
シリウスに手招きされてストンと腰を下ろしたスーヴィエラはシリウスに抱き寄せられてほおを朱に染めたが、耳を甘噛みされて身をよじり、体を逸らした。
「あん…」
「気持ちいい?」
「はぁん…って、な、何をさせるんですか!」
スーヴィエラは一瞬で蕩けたことを恥じたのか、慌ててそう言うと、シリウスが悪戯っぽく笑った。
「スーは可愛いなぁ」
惚気るカップルの様子に惚けた顔をしているヴィクトルへシリウスは楽しそうな顔をした。
「スー、ちょっと上を向いて」
スーヴィエラが大人しくそうすると、シリウスはカプッと喉元に甘噛みした。
「んんっ…」
身をよじったスーヴィエラの喉から口を離すと、治癒魔法を掛けた。
微かに残った歯型が消える。
「これが『奥の手』。オススメはしないが、情事にも使える、かな。結構倒錯したプレイではあるが」
スーヴィエラは瞬いた。耳まで赤くなっている。
「シリウス様!」
ヴィクトルは俯いていたが、頷いた。
「やってみます」
スーヴィエラは止めようとしたが、シリウスは愛しい婚約者の口を優しく塞いで微笑んだ。
「多分、あの子のことだし、本当にはしないから大丈夫」
だが、ヴィクトルが本当にリアラへとそれをしたと聞いて、シリウスは遠い目をしていた。
「マジか…。俺、まだ、起きているスーにこの前初めてしたのに?」
騙されたと知ったヴィクトルは失神したとか。
それ以来、ルルカディア家ではこの『奥の手』が禁断の技術の一つに加えられたらしい。
0
お気に入りに追加
2,203
あなたにおすすめの小説
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる