龍騎士の花嫁

夜風 りん

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第一部 第一章 虚無の安寧

ep6

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 「調査だぁ?」

 ヴィンセントが嫌そうな顔をした。
 執事長はニコリと笑うと、ヴィンセントは前髪を掻き上げた。

 「なんで? 言っただろう、彼女とは3、4年以内に離縁するって」

 「一度でも旦那様に本当の笑顔を見せたことがありますか?」

 「…っ」

 「ないですよね? なら、一度くらいは…」

 ヴィンセントが殺意のこもった視線を執事長に投げかけた。

 「もし、それで彼女が…例の件に関わっていたら、俺は彼女を殺すかもしれない。それでもいいんだな?」

 「よくないですよ? でも、その時は、私が奥様に問いただしてみますね。その後のことは大旦那様にお任せしますから」

 ヴィンセントは苛立たしげに言った。

 「何でお前はいつも父さんにばかり顔色を伺うんだ? 今は俺の担当だろう?」

 「そもそも、大旦那様に雇われていますから」

 執事長は淡々とそう言うと、ヴィンセントが拗ねた顔をしたが、ふと、言った。

 「俺が考えを変えるとでも思っているのか?」

 「いえ、ただ、奥様には一度でいいから本当の笑顔を浮かべて欲しいだけです」

 執事長の言葉にヴィンセントは不機嫌そうな顔をした。
 「あの嘘笑いは見ているだけで嫌になる。笑いたくないなら笑わなければいいのに」

 「それでは、ヴィンセント様は彼女がいつも暗い顔をして過ごしていてもらいたい、と言うことですか?」

 「んなわけあるか。…ただ、嘘つきは嫌いなだけだ」

 ヴィンセントはそう言うと、静かに息を吐き出した。

 「俺はに復讐したいだけなのに、なんで空回るんだ…」

 執事長が笑顔で出て行くと、ヴィンセントは苛立たしげに顔を歪め、写真を手に取る。

 「ディアナ」

 彼は愛おしそうに顔を緩めて目を細めると、写真で満面の笑みを浮かべるその顔にキスを落とした。


 「あの男に復讐してやるから安心しろ。そして、必ずや、墓前にあの男の首を供えてやるから」


 ヴィンセントのその瞳は怒りや憎しみでギラギラと輝いていた。

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