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第一章:朝、目が覚めたらお姫様一行の保護者になっていた俺。

第12話「冒険者ギルドでライセンスチャレンジ」

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 しまった、うかつなことは言うもんじゃないな。

 うっかり口を滑らせたせいで、なら自分達にも使えるようにしてほしいと、ひっつき虫ち化した三人娘たちの猛攻を受けるハメになった。

 しょうがねえから、冒険者ギルドで手ごろな依頼でも受けて、実践と小遣い稼ぎを同時にこなそうと思ったんだが……なんだこれ。

「ここは、女の来るようなところじゃない。
 男漁りなら他所でやれ」

 いつから、冒険者ギルドは女人禁制の硬派な場所になっちまったんだ。

 こいつらヴァルキリー知らねえの?
 お前ら程度、秒で殺されるよ、秒で。

 なんなら、俺も怖いもん。
 一応、平気なフリはしてるけどさ。

「あらあら、どうしま「ガッ」しょうか……あら?
 どうやらお休みの時間みたいですね」

 またあの動きだ。

 俺でもよけられなかった今の動き、他のやつがやられているのを見ていて分かったが、どうやら床に干渉してるみたいだな、なんだよ、こいつも超越してんじゃねえか。

「どうした、マルシス……お前らがやったのか?」

 ふむ、最近の冒険者って結構強そうだな。
 ただの下っ端がこれってことは、ギルドマスター張ってるやつはバケモンだな。

 あんまり刺激しないように、適当な依頼だけもらって引き下がるか。

「おいおい、何だこのブサイクなぬいぐるみ……ぬぉぉぉおおおおおおおおぅぁあああああ!!!!」

「誰がブサイクだ!
 鏡を見てからもう一回言ってみろ!!!」

 こいつ、ピンポイントで俺が一番言われたくない部分をえぐりやがった。
 こんな身体になるまで、一度だってブサイクだなんて言われたことなかったのに!

 おらっ、可愛いって言え!
 カッコいいっていうよりも、可愛い系ですねって言え!

「ごふぃ! も、もうやめっ、ぐはっ!?」

 何て言った今!?
 もう一回言え! 聞こえなかったからもう一回言え! おらおらっ!!

「だ、だからもうやめ……っ!!!!」

 急にデカい声出すんじゃねえ!!!
 小さい声で言え! 囁くように言ってみろっ、オラァッ!!!!

「……その辺でやめておいたほうが良い。
 ギルドマスターに嫌われると、仕事がもらえなくなるかもしれない」

 はぁ?

「んなのこっちだって知ってるよ!
 だけどな、下っ端に舐められたらぁっ、それこそマトモな仕事なんて貰えねえんだよ、おらぁ!!!」

 ほら……何だっけ?
 忘れちまったじゃねえか!? なんで俺が怒ってたか言え! オラッ!!!

「おいおいおい、俺は夢でも見てんのか?
 うちのボスがぬいぐるみにボロ負けしてるような気がするんだが」

 お、ようやくまともそうなのが出て来たな。

「お前がギルドマスターか?
 俺はレオっていうんだ、よろしくな」

「え?
 いやいや、俺はギルマスじゃねえよ」

 そうか。
 じゃあ、もっとやばいやつがここにいるのか……怖くなってきた。

「そ、そうです……けほっ」

 ん?

「わ、私がギルドマスターです」

 ……

 …………

 お、俺、なんかやっちゃいました?



 ――

「さてと、医療室にギルマスを運び終わったし、改めて挨拶といこうか。
 俺はジンオウ。ここでは主に受付を担当している」

 男か……ふむ、悪くないシチュエーションだ。

「おい、お前らちょっとこっち来い」

 俺は三人娘を集めて、ジンオウに聞こえない様に作戦を伝えた。

 作戦の内容はこうだ。

 冒険者ギルドで依頼を受けるにはライセンスが必要。
 実力さえあればすぐに作れるが、これがまた面白い仕組みになっている。

 実力を試すために、ギルド特製の戦闘能力を数値で表す「ステータス・ボード」という石板を使うんだが、一定の基準を超えると、その石板の色が変わる。

 ヴァルキリーなら、最高ランクの「白」まちがいなしだ。
 最高ランクが二人もいれば、Aランクの依頼だって受けられるだろう。

 なら、後はその依頼をパパっと片付ければ、とりあえずこの子たちが当面の間生活に困るようなことはないはずだ。

 まあ、最悪灰色でもBランクは受けられるだろうし……お、そろそろ結果が出たようだな。

「な、なんだと……ただもんじゃねえとは思っていたが、まさか二人とも白だとは思わなかったぜ。
 そっちのお嬢さんは受けなくていいんだな、なら、お二人にほい、A級ライセンスの贈呈だ!!」

 よし、狙い通り!

 これで、Aランクの依頼を受けられる。どれにしようかな、あ、あれがいいか?

「さて、じゃあ本番といくか?」

 おお、これなんてなかなか良さそうじゃねえか、おい、これ受けるぞ!

「おっとその前に、腕比べといこうぜ超越者様?」

 いいよ俺は、それより早くしてくれ、きっと今もよだれ垂らしてんだよ!
 早く拭きに戻りたいんだ。

「よだれって何のことだ?
 ……まあいい、何でも好きに拭けばいいさ、ただし、これを受けてからな」

 そう言ってジンオウが手にしたのは、大きな槍だった。
 手入れもされているみたいだし、なかなかの業物と見た。

 いいな、俺も欲しい。
 まあ、全く使えないけど。

「ルールは簡単、どっちがより濃いかだ!」

 ジンオウは満面の笑みを浮かべながら、ステータスボードをこちらに向けて歩いてくる。

 嘘だろ、こんなもんとっくの昔に卒業したんだよ、俺は。

 ルーキーじゃあるまいし、こんなの誰がやるか。

「ちなみに、最高点を塗り替えることが出来たら、Sランクの依頼を受けさせて「ヒュン」……ひゅん?」

 おい、まだかよ?
 早くやろうぜ、Sランクなんて久しぶりだぜ!!!

「おいおい、もう勝った気でいるのか?
 ずいぶん気が早いこって、だがな、早い男は……モテないぜぇえええええ!!!!!」

 お、やるなー。
 一回白になった紙が、また黒に戻りかけてやがる。

 リバースか、流行ったな~。

 あの石板は一定量しか計算できないから、基準値を大幅に超えた場合は元の色に戻ろうとする。

 だから、黒から様々な色に変わった後、白になり、またさまざまな色に変わった後、黒に戻る。

 力を持て余した若いやつほど、ハマっちゃうんだ、これが。
 わかるわかる、だけど、これに勝ったらSだなんて、大分規則が緩くなったなぁ。

「どっちが濃いかってことは、黒に戻せたら勝ちってことだろ?
 じゃあ……ほい、俺の勝ちだな」

 ぽふっ、と石板を叩いて黒から白へ、白から黒に戻す。

「……ふざけてないで、真面目にやれ!」

 え、何で怒られんの?
 今やったじゃん。

 ……んん?

 もしかして、完璧に黒に戻ったからわからなかったとか……な、わけないよな。

 じゃあ……ちょっと色を薄くしたらいいか、ほいっと。

「ちょっと色が薄くなった程度か、白にすらできないだなんて、とんだ見込み違いだった、お前はもう帰れ。
 お嬢ちゃんたちはこっちで説明があるからな」

 ……ああ、そういうこと?
 難癖付けて自分の気に入った奴だけ優遇するパターンね。

 いたいた、昔もこういうやつ。

 アメリアがすぐボコボコにして回るから絶滅したと思ってたけど、そうか……まだ、生きてたのか。

 こうしてみると感慨深いものがある。

 昔はアメリアがすぐにぶっ飛ばすから、俺が相手したことなかったんだよな。

 よしよし、そういうことなら見せてやろう、俺の妙技。

「行くぜ……即興奥義、ゼブラン!!!」

 俺は力をコントロールして、石板を白黒のマダラ模様にしてみせた。
 あえて力を通さない場所を意図的に作り出す、趙高等技術だぜ!

 ふふん、どうだ……すげえだ、ろ?
 あ、もう誰もいなかったわ。

 つか、行くなら声くらいかけてくれてもよくね?

 ……はずかしっ!
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