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35話
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「ずっと見ていたの?」
寝惚けた声で問うクリストファーにマリアンヌはにっこりと微笑む。
何時も自分の寝顔を見られているマリアンヌは、今日、クリストファーよりも早く起きた事に機嫌が良い。
そんなマリアンヌをクリストファーは目を細め愛おしげに見詰める。
マリアンヌへの愛がダダ漏れなクリストファーの甘い視線に気付いたマリアンヌは、恥ずかしさの余り俯いてしまう。
(あ、朝から、なんなのよ、クリストファーの、あ、あの、蕩けるような眼差しは!
し、心臓に悪いわ。
も、もう、クリストファーったら、は、恥ずかしいじゃないの。
あんな瞳で見詰められて平常心を保つ事なんて、絶対に無理……)
と、心の中で叫んでいたマリアンヌの視線が、ふと、胸元に止まった。
数秒間、硬直し、そしてじわじわと羞恥が全身に広がっていく。
クリストファーとの情事の名残りが目に焼き付き、マリアンヌは青ざめ、ぷるぷると震え出す。
(こ、こんなに痕を付けて、も、もし誰かに見られたら……。
う、ううん、ち、違うわ、私、クリストファーに)
昨日の痴態を思い出したマリアンヌは、この場から直ぐに離れたいと心の中で発狂していた。
(い、いやああああ!
く、クリストファーの馬鹿ああ!
私、お願いしたのに、もう無理だってお願いしたのに!
なのに、あ、あんな事、して……。
こんな事をお父様もお母様も、ううん、これが夫婦の営みなの?
ま、まだ、私とクリストファーは夫婦ではないけど、でも……)
恐る恐る下腹部に触る。
触れて違和感を感じない事を知り、興奮していた感情がすうと静まっていく。
破瓜の証がない事を知ったマリアンヌは、ほっと胸を撫で下ろした。
(破瓜の痛みは今回も無かった……。
クリストファーとはまだ、結ばれてはいないけど、でも。
……。
って、い、一体、何を考えているのよ、マリアンヌ!
じゅ、純潔は奪わないって、クリストファーが、い、何時も言ってるじゃないの。
婚姻を結ぶ迄は最後迄はしないって、でも……)
ほんの少しだけ悲しいかな、と切ない感情に囚われているとクリストファーに名を呼ばれる。
「マリアンヌ……」
いつの間にか目の前にクリストファーがいる。
美の化身であり、完璧な美貌を誇るクリストファーが己の視界を奪っている。
間近に迫るクリストファーに驚く間もないマリアンヌはクリストファーに唇を奪われる。
ちゅっと音を立てて口付けするクリストファーに、マリアンヌは目を見開く事しか出来ない。
一瞬の出来事にマリアンヌの羞恥で膨らんでいた脳内は破裂寸前である。
「く、クリストファーああ……」、と上擦った声でクリストファーの名を呼ぶ事しか出来ない。
(な、何、不意打ちな事をするのよ、クリストファーはっ!
こ、こんな、わ、私……)
真っ赤になってクリストファーを見詰めるマリアンヌにクリストファーは蠱惑的な眼差しで問う。
「何を考えていたの?」
神秘的な紺碧の瞳に紫水晶の輝きがクリストファーの瞳に宿る。
クリストファーの妖艶な瞳の魔力に捕らえていたマリアンヌは、一瞬、我を忘れ惚けていた。
「マリアンヌ?」
クリストファーに名を呼ばれ、マリアンヌは弾かれた様に顔を上げる。
我に返ったマリアンヌは対なる君の魔力がクリストファーを襲い瞳が紫色に変化したと思いクリストファーの瞳を見るが瞳の変化は見当たらなかった。
良かった、とほっと一息付き安心したマリアンヌだったが、今度はクリストファーの様子がおかしい事に気付く。
急に口を噤むクリストファーの表情が心なしか沈んでいる様に見える。
(もしかして、クリストファー。
傷付いているの?
私がクリストファーのキスに不機嫌になったと思って、落ち込んだの?)
有り得ると思い、マリアンヌは素早くクリストファーの首に腕を回し強引に唇を奪う。
ちゅっと今度はマリアンヌがリップ音を鳴らしてクリストファーにキスをする。
一瞬の出来事にクリストファーは呆気に取られ、そして頬を真っ赤に染めマリアンヌを見詰める。
「ま、マリアンヌ?」
「ど、どう?
不意打ちのキスを受けた感想は。
わ、私だって、相当に恥ずかしいんだから……」
口を尖らせ言葉を詰まらせながら話すマリアンヌに、クリストファーの心臓はバクバクと音を立てて収まらない。
既に思考は蕩けて頬は緩みっぱなしだ。
(ま、マリアンヌが可愛すぎて、心臓が持たない……。
今直ぐにでも妻にしたい!
婚姻を結びたい!
ああ、マリアンヌが欲しいっ!)
マリアンヌと相思相愛になって3ヶ月になるが、未だにマリアンヌの初心な反応に驚かせられる。
純粋で愛らしいマリアンヌが己の愛撫に反応して甘い声を上げ、悶える姿はクリストファーの欲情を煽り止まる事を知らない。
頬を上気させクリストファーに強請るマリアンヌの痴態は既に成熟した女性の色香を漂わせていると思えば、今みたいに不意打ちの口付けに頬を染め恥じらう姿を見せる。
(ああ、早く成人したい……)
変に真面目なクリストファーの、切なる願いで、ある。
「クリストファー?」
「……、マリアンヌは狡いよ」
と、苦笑しながらクリストファーはマリアンヌに告げる。
クリストファーの言葉にマリアンヌは首を傾げきょとんとした表情でクリストファーを見詰める。
その顔も反則だよ、とクリストファーはマリアンヌの愛らしい仕草に心の中で呟く。
何故クリストファーにそんな言葉を告げられるのか、皆目見当が付かないマリアンヌは段々と不機嫌になっていく。
「ど、どうゆう意味よ、クリストファー。
私が狡いって、ど、どうして」
「ふふふ」
と、何処か楽し気なクリストファーにマリアンヌは頬を膨らませ怒り出す。
ぷい、と顔を逸らすマリアンヌのそんな姿さえ愛おしいと思うクリストファーは、既に末期症状だと己に告げる。
「マリアンヌ、愛している……」
真摯な目でクリストファーが言う。
クリストファーの告白にマリアンヌは頬を染め恥ずかしげに言う。
「私もクリストファーを愛している」
互いの視線が混じり合い自然と唇が重なる。
ふわり、と花弁が揺れる。
愛する2人を見守る様にひっそりと紫の薔薇が花弁を綻ばせていた。
寝惚けた声で問うクリストファーにマリアンヌはにっこりと微笑む。
何時も自分の寝顔を見られているマリアンヌは、今日、クリストファーよりも早く起きた事に機嫌が良い。
そんなマリアンヌをクリストファーは目を細め愛おしげに見詰める。
マリアンヌへの愛がダダ漏れなクリストファーの甘い視線に気付いたマリアンヌは、恥ずかしさの余り俯いてしまう。
(あ、朝から、なんなのよ、クリストファーの、あ、あの、蕩けるような眼差しは!
し、心臓に悪いわ。
も、もう、クリストファーったら、は、恥ずかしいじゃないの。
あんな瞳で見詰められて平常心を保つ事なんて、絶対に無理……)
と、心の中で叫んでいたマリアンヌの視線が、ふと、胸元に止まった。
数秒間、硬直し、そしてじわじわと羞恥が全身に広がっていく。
クリストファーとの情事の名残りが目に焼き付き、マリアンヌは青ざめ、ぷるぷると震え出す。
(こ、こんなに痕を付けて、も、もし誰かに見られたら……。
う、ううん、ち、違うわ、私、クリストファーに)
昨日の痴態を思い出したマリアンヌは、この場から直ぐに離れたいと心の中で発狂していた。
(い、いやああああ!
く、クリストファーの馬鹿ああ!
私、お願いしたのに、もう無理だってお願いしたのに!
なのに、あ、あんな事、して……。
こんな事をお父様もお母様も、ううん、これが夫婦の営みなの?
ま、まだ、私とクリストファーは夫婦ではないけど、でも……)
恐る恐る下腹部に触る。
触れて違和感を感じない事を知り、興奮していた感情がすうと静まっていく。
破瓜の証がない事を知ったマリアンヌは、ほっと胸を撫で下ろした。
(破瓜の痛みは今回も無かった……。
クリストファーとはまだ、結ばれてはいないけど、でも。
……。
って、い、一体、何を考えているのよ、マリアンヌ!
じゅ、純潔は奪わないって、クリストファーが、い、何時も言ってるじゃないの。
婚姻を結ぶ迄は最後迄はしないって、でも……)
ほんの少しだけ悲しいかな、と切ない感情に囚われているとクリストファーに名を呼ばれる。
「マリアンヌ……」
いつの間にか目の前にクリストファーがいる。
美の化身であり、完璧な美貌を誇るクリストファーが己の視界を奪っている。
間近に迫るクリストファーに驚く間もないマリアンヌはクリストファーに唇を奪われる。
ちゅっと音を立てて口付けするクリストファーに、マリアンヌは目を見開く事しか出来ない。
一瞬の出来事にマリアンヌの羞恥で膨らんでいた脳内は破裂寸前である。
「く、クリストファーああ……」、と上擦った声でクリストファーの名を呼ぶ事しか出来ない。
(な、何、不意打ちな事をするのよ、クリストファーはっ!
こ、こんな、わ、私……)
真っ赤になってクリストファーを見詰めるマリアンヌにクリストファーは蠱惑的な眼差しで問う。
「何を考えていたの?」
神秘的な紺碧の瞳に紫水晶の輝きがクリストファーの瞳に宿る。
クリストファーの妖艶な瞳の魔力に捕らえていたマリアンヌは、一瞬、我を忘れ惚けていた。
「マリアンヌ?」
クリストファーに名を呼ばれ、マリアンヌは弾かれた様に顔を上げる。
我に返ったマリアンヌは対なる君の魔力がクリストファーを襲い瞳が紫色に変化したと思いクリストファーの瞳を見るが瞳の変化は見当たらなかった。
良かった、とほっと一息付き安心したマリアンヌだったが、今度はクリストファーの様子がおかしい事に気付く。
急に口を噤むクリストファーの表情が心なしか沈んでいる様に見える。
(もしかして、クリストファー。
傷付いているの?
私がクリストファーのキスに不機嫌になったと思って、落ち込んだの?)
有り得ると思い、マリアンヌは素早くクリストファーの首に腕を回し強引に唇を奪う。
ちゅっと今度はマリアンヌがリップ音を鳴らしてクリストファーにキスをする。
一瞬の出来事にクリストファーは呆気に取られ、そして頬を真っ赤に染めマリアンヌを見詰める。
「ま、マリアンヌ?」
「ど、どう?
不意打ちのキスを受けた感想は。
わ、私だって、相当に恥ずかしいんだから……」
口を尖らせ言葉を詰まらせながら話すマリアンヌに、クリストファーの心臓はバクバクと音を立てて収まらない。
既に思考は蕩けて頬は緩みっぱなしだ。
(ま、マリアンヌが可愛すぎて、心臓が持たない……。
今直ぐにでも妻にしたい!
婚姻を結びたい!
ああ、マリアンヌが欲しいっ!)
マリアンヌと相思相愛になって3ヶ月になるが、未だにマリアンヌの初心な反応に驚かせられる。
純粋で愛らしいマリアンヌが己の愛撫に反応して甘い声を上げ、悶える姿はクリストファーの欲情を煽り止まる事を知らない。
頬を上気させクリストファーに強請るマリアンヌの痴態は既に成熟した女性の色香を漂わせていると思えば、今みたいに不意打ちの口付けに頬を染め恥じらう姿を見せる。
(ああ、早く成人したい……)
変に真面目なクリストファーの、切なる願いで、ある。
「クリストファー?」
「……、マリアンヌは狡いよ」
と、苦笑しながらクリストファーはマリアンヌに告げる。
クリストファーの言葉にマリアンヌは首を傾げきょとんとした表情でクリストファーを見詰める。
その顔も反則だよ、とクリストファーはマリアンヌの愛らしい仕草に心の中で呟く。
何故クリストファーにそんな言葉を告げられるのか、皆目見当が付かないマリアンヌは段々と不機嫌になっていく。
「ど、どうゆう意味よ、クリストファー。
私が狡いって、ど、どうして」
「ふふふ」
と、何処か楽し気なクリストファーにマリアンヌは頬を膨らませ怒り出す。
ぷい、と顔を逸らすマリアンヌのそんな姿さえ愛おしいと思うクリストファーは、既に末期症状だと己に告げる。
「マリアンヌ、愛している……」
真摯な目でクリストファーが言う。
クリストファーの告白にマリアンヌは頬を染め恥ずかしげに言う。
「私もクリストファーを愛している」
互いの視線が混じり合い自然と唇が重なる。
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