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24話
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(わああ、これ、可愛い……)
ガラスケースに綺麗に陳列されている、アクセサリー。
半輝石やクリスタルガラス、ビーズや淡水パールを使ってのアクセサリーはどれも繊細で美しい。
店内の照明に反射してキラキラと輝いてマリアンヌの目を奪うものばかり。
その中でも特にマリアンヌの心を捕らえたのが、花の形のラピスラズリを中心にシルバーの蔦で囲んだ髪飾りだった。クリストファーの瞳の様に煌めいて綺麗だと嘆息を洩らしながらマリアンヌは髪飾りを熱心に見詰めていた。
隣のクリストファーが目を大きく見開き魅入っているマリアンヌにくすくすと笑っている事に気付くことなく。
余りに熱心に見ているマリアンヌに、クリストファーが側から手を伸ばし髪飾りを摘む。
「クリストファー?」
急なクリストファーの行動に一瞬、マリアンヌは目を丸くさせる。
「僕からプレゼントさせて」
ふっとマリアンヌの耳朶を掠めるクリストファーの声。
思わずぶるりと震えてしまった。
視線が交わりクリストファーが器用に片目を軽く瞑る。
確信犯だと匂わせる仕草にマリアンヌのかああと顔を赤く染め上げる。
(も、もう心臓に悪いんだから、クリストファーったら。
私の反応を楽しんでの悪戯なの?
な、何て意地悪なのよ)
ドキドキと煩い心臓の音。
クリストファーの耳朶を掠める吐息に意識が奪われてしまった。
髪を掬い上げて耳元に指を這わして耳朶に軽く触れる。
クリストファーが自分に触れる事に何の躊躇いもない。
ううん、今までに無い、大胆で積極的だ。
嬉しいと思う反面、マリアンヌの気持ちはそわそわとして落ち着く事が出来ない。
互いの気持ちの隔たりが無くなり、クリストファーの気持ちを知ったマリアンヌにとってはクリストファーとの濃密な空気、甘い囁きや口付けはクリストファーとの性を意識させられるのに十分であった。
このままではなし崩しにクリストファーと結ばれる。
ううん、クリストファーが欲しいから求められたい。
この、切なく身体を疼かせる甘美な迄のもどかしい下腹部の蠢き。
最近、特に身体の違和感にドキドキと鼓動が速くなり、甘い吐息が自然と漏れて……。
(きっとクリストファーが知ったら軽蔑するわ。
こんな、淫らな感情……)
屋敷に迎えに来た時のキスがもっと欲しいなんて。
キスだけでは無い、クリストファーに口付けされた頸と同じく至る場所にクリストファーの痕を刻んで欲しい。
もっとクリストファーに触れて欲しい。
(や、やだ、マリアンヌったら。
これも全てクリストファーが悪いのよ。
私に意識させるクリストファーが……)
マリアンヌが懊悩し切ない溜息を零している間、クリストファーはマリアンヌにプレゼントする紅茶を物色していた。この後、軽く軽食を取ってマリアンヌをある場所に案内し、そこで買った紅茶と焼き菓子でティータイムを設けようと目論んでいた。
(気に入ってくれるだろうか?)
マリアンヌの反応を見るのが楽しくて仕方が無い。
心が満たされている。
愛する女性との相愛に心は満たされている、だが……。
(マリアンヌ、君の全てが欲しいんだ……)
マリアンヌの耳朶に軽く吐息を零した時のマリアンヌの反応。
一瞬、目を潤ませて切なげにクリストファーを見ていた。
意識されている。
そう確信した時、マリアンヌが欲しいと切実なる願望が膨れ上がって。
(もしマリアンヌが赦してくれるのなら……)
マリアンヌに触れたい。
芳しいマリアンヌの肢体に、柔らかい皮膚に甘く噛み、所有の痕をつけて……。
願ってもいいのだろうか?
マリアンヌとの触れ合いに、マリアンヌを愛する事に。
クリストファーの仄昏い一瞬、欲望に火が灯る。
篝火の如く燃え上がり抑える術を失いつつあるクリストファーがマリアンヌに劣情を宿した目で見ている事にマリアンヌは知る由もなかった。
***
クリストファーが会計を済ます間、マリアンヌは店内を見渡していた。
クリスタルガラスで作られた照明は店内を幻想的な光で包んでいた。
ほうと夢心地な気分に浸っていたマリアンヌの心を乱す騒音にマリアンヌは一瞬、顔を歪ませてしまう。
(も、もう、折角、幻想的な雰囲気に酔いしれていたのに、な、何なのよ、騒がしい。
クリストファーと店内に入ってきた時と同じ位にがやがやとして)
ううん、クリストファーとの時の方がもっと酷かったとマリアンヌは心の中で付け加える。
矢鱈と目立つクリストファーの美貌の所為で心が何時も落ち着く事なく緊張を強いられる。
これから先もずっと同じ事が起きる、クリストファーと婚姻したら尚更だ。
ふう、と自然と溜息が零れる。
一体、何度目だろうと思っていると不意に声をかけられて。
「あ、あら、貴女、ピアッチェ家のマリアンヌさんではなくて?」
背後から甲高い声が聴こえてくる。
ギクリと一瞬、身体が力んでしまう。
(あ、あの声は……。
い、嫌だわ、よりに寄って、ど、どうして彼女が)
そして妙に納得した。
店内を騒つかせた張本人が誰かと。
華やかな美貌で人々の目を奪う……。
マリアンヌの背中にじっとりと不快な汗が滲む。
コゼット・ケンティフォリアの登場にマリアンヌはいつになく緊張を強いられていた。
クリストファーにご執心の彼女である。
もし、クリストファーとのデートがばれたら。
いや既に気付いている。
「マリアンヌ?」
会計を済ませたクリストファーがマリアンヌの名を呼ぶ。
クリストファーの登場にコゼット・ケンティフォリアの表情が一気に変わっていく。
「まあああ、クリストファー様が何故、ここに?」
頬を紅潮させ濡れた目でクリストファーに視線を注ぐコゼットにマリアンヌは辟易していた。
マリアンヌの存在なんて歯牙にも掛けない。
コゼットにとってマリアンヌはクリストファーの立場上の婚約者であってそれ以上ともそれ以下とも思っていなかった。
マリアンヌやクリストファーよりも爵位の高いコゼットが圧力をかければクリストファーとマリアンヌの婚約など直ぐに破棄出来ると高を括っている。
それだけ社交界でも特に貴族社会でも多大なる権力を持ち合わせた家柄だと言う自尊心がコゼットを傍若無人とさせていた。
「ねえ、クリストファー様。
あちらのテラスでご一緒にお茶をされませんか。
クリストファー様お気に入りの紅茶を用意していますの」
「……」
「あら?クリストファー様ったら急に黙り込まれて。
ふふふ、婚約者の視線が気になるのね。
お優しいクリストファー様。
クリストファー様が気遣いをされないといけない方では無いでしょう?マリアンヌさんは」
「……」
「意に沿わぬ婚約だと囃されていますわ。
事実、マリアンヌさんを見て私はそう感じ入っています。
ほほほ、今日のマリアンヌさんはいつに無く存在感の薄い、いえ、麗しのクリストファーには相応しくない方」
「それ以上、私の婚約者を貶める言葉を慎んで頂きたい、ケンティフォリア嬢」
「クリストファー様?」
冷ややかで不機嫌さを滲ませるクリストファーの声に、コゼットは軽く悲鳴をあげる。
何故、自分が非難されないといけない。
正しただけではないか、クリストファーに。
マリアンヌがクリストファーには相応しく無い、不釣り合いの婚約者だと言って何がいけないのか。
正論ではないか、誰が見ても美の化身と謳われるクリストファーに平凡なマリアンヌが似合いだと告げる?
己こそが、ケンティフォリア家の薔薇姫と喩えられる自身こそがクリストファーに相応しい。
「私はクリストファー様に真実を申し上げただけで、マリアンヌさんを貶めたなんて。
ふふふ、ほら、周りの方をご覧になって。
クリストファー様と私に羨望の眼差しを注いではいませんか?
うっとりと魅入った表情は私達がお似合いだと評していると思われないのかしら、クリストファー様は」
チラリとマリアンヌを睨め付けてコゼットはクリストファーの腕に絡みつく。
豊満な胸を押し付ける仕草にマリアンヌは非難めいた視線をコゼットに注ぐ。
(ま、まあ何て事をクリストファーにするのよ!
ご自慢の胸でクリストファーを誘惑する魂胆なの?)
一瞬、侍女のエマの言葉が頭に過る。
殿方は女性のマシュマロの様な豊満な胸にロマンを抱くと。
……。
(や、やだ、な、何故、今その言葉が過るのよ!
クリストファーが豊満な胸が好きだなんて、一度も口にした事は無いわ……)
語尾が小さくなっていく。
クリストファーの口から聞く以前にそんな会話すらした事が無い。
無いけどクリストファーだってきっと女性らしいふくよかな胸を望んでいるに相違ない。
段々と落ち込んだ気持ちに陥ってしまう。
クリストファーの事が好きだと自覚してから、愛される喜びと同時に自分の貧相な身体が哀しくなってきて。
(男性が好む肢体では無いし、悦ばせる術さえ知らないもの。
もし、コゼット・ケンティフォリアが本気でクリストファーに迫ってたら、クリストファーは……)
マリアンヌの顔が青褪めてしまう。
思わなかった、ううん、思いたくなかった。
クリストファーが自分から離れていく可能性が芽生えつつある事態に。
クリストファーがもし、コゼット・ケンティフォリアに籠絡されたら。
コゼットの登場にマリアンヌはいつになく焦燥感に駆られたのであった。
ガラスケースに綺麗に陳列されている、アクセサリー。
半輝石やクリスタルガラス、ビーズや淡水パールを使ってのアクセサリーはどれも繊細で美しい。
店内の照明に反射してキラキラと輝いてマリアンヌの目を奪うものばかり。
その中でも特にマリアンヌの心を捕らえたのが、花の形のラピスラズリを中心にシルバーの蔦で囲んだ髪飾りだった。クリストファーの瞳の様に煌めいて綺麗だと嘆息を洩らしながらマリアンヌは髪飾りを熱心に見詰めていた。
隣のクリストファーが目を大きく見開き魅入っているマリアンヌにくすくすと笑っている事に気付くことなく。
余りに熱心に見ているマリアンヌに、クリストファーが側から手を伸ばし髪飾りを摘む。
「クリストファー?」
急なクリストファーの行動に一瞬、マリアンヌは目を丸くさせる。
「僕からプレゼントさせて」
ふっとマリアンヌの耳朶を掠めるクリストファーの声。
思わずぶるりと震えてしまった。
視線が交わりクリストファーが器用に片目を軽く瞑る。
確信犯だと匂わせる仕草にマリアンヌのかああと顔を赤く染め上げる。
(も、もう心臓に悪いんだから、クリストファーったら。
私の反応を楽しんでの悪戯なの?
な、何て意地悪なのよ)
ドキドキと煩い心臓の音。
クリストファーの耳朶を掠める吐息に意識が奪われてしまった。
髪を掬い上げて耳元に指を這わして耳朶に軽く触れる。
クリストファーが自分に触れる事に何の躊躇いもない。
ううん、今までに無い、大胆で積極的だ。
嬉しいと思う反面、マリアンヌの気持ちはそわそわとして落ち着く事が出来ない。
互いの気持ちの隔たりが無くなり、クリストファーの気持ちを知ったマリアンヌにとってはクリストファーとの濃密な空気、甘い囁きや口付けはクリストファーとの性を意識させられるのに十分であった。
このままではなし崩しにクリストファーと結ばれる。
ううん、クリストファーが欲しいから求められたい。
この、切なく身体を疼かせる甘美な迄のもどかしい下腹部の蠢き。
最近、特に身体の違和感にドキドキと鼓動が速くなり、甘い吐息が自然と漏れて……。
(きっとクリストファーが知ったら軽蔑するわ。
こんな、淫らな感情……)
屋敷に迎えに来た時のキスがもっと欲しいなんて。
キスだけでは無い、クリストファーに口付けされた頸と同じく至る場所にクリストファーの痕を刻んで欲しい。
もっとクリストファーに触れて欲しい。
(や、やだ、マリアンヌったら。
これも全てクリストファーが悪いのよ。
私に意識させるクリストファーが……)
マリアンヌが懊悩し切ない溜息を零している間、クリストファーはマリアンヌにプレゼントする紅茶を物色していた。この後、軽く軽食を取ってマリアンヌをある場所に案内し、そこで買った紅茶と焼き菓子でティータイムを設けようと目論んでいた。
(気に入ってくれるだろうか?)
マリアンヌの反応を見るのが楽しくて仕方が無い。
心が満たされている。
愛する女性との相愛に心は満たされている、だが……。
(マリアンヌ、君の全てが欲しいんだ……)
マリアンヌの耳朶に軽く吐息を零した時のマリアンヌの反応。
一瞬、目を潤ませて切なげにクリストファーを見ていた。
意識されている。
そう確信した時、マリアンヌが欲しいと切実なる願望が膨れ上がって。
(もしマリアンヌが赦してくれるのなら……)
マリアンヌに触れたい。
芳しいマリアンヌの肢体に、柔らかい皮膚に甘く噛み、所有の痕をつけて……。
願ってもいいのだろうか?
マリアンヌとの触れ合いに、マリアンヌを愛する事に。
クリストファーの仄昏い一瞬、欲望に火が灯る。
篝火の如く燃え上がり抑える術を失いつつあるクリストファーがマリアンヌに劣情を宿した目で見ている事にマリアンヌは知る由もなかった。
***
クリストファーが会計を済ます間、マリアンヌは店内を見渡していた。
クリスタルガラスで作られた照明は店内を幻想的な光で包んでいた。
ほうと夢心地な気分に浸っていたマリアンヌの心を乱す騒音にマリアンヌは一瞬、顔を歪ませてしまう。
(も、もう、折角、幻想的な雰囲気に酔いしれていたのに、な、何なのよ、騒がしい。
クリストファーと店内に入ってきた時と同じ位にがやがやとして)
ううん、クリストファーとの時の方がもっと酷かったとマリアンヌは心の中で付け加える。
矢鱈と目立つクリストファーの美貌の所為で心が何時も落ち着く事なく緊張を強いられる。
これから先もずっと同じ事が起きる、クリストファーと婚姻したら尚更だ。
ふう、と自然と溜息が零れる。
一体、何度目だろうと思っていると不意に声をかけられて。
「あ、あら、貴女、ピアッチェ家のマリアンヌさんではなくて?」
背後から甲高い声が聴こえてくる。
ギクリと一瞬、身体が力んでしまう。
(あ、あの声は……。
い、嫌だわ、よりに寄って、ど、どうして彼女が)
そして妙に納得した。
店内を騒つかせた張本人が誰かと。
華やかな美貌で人々の目を奪う……。
マリアンヌの背中にじっとりと不快な汗が滲む。
コゼット・ケンティフォリアの登場にマリアンヌはいつになく緊張を強いられていた。
クリストファーにご執心の彼女である。
もし、クリストファーとのデートがばれたら。
いや既に気付いている。
「マリアンヌ?」
会計を済ませたクリストファーがマリアンヌの名を呼ぶ。
クリストファーの登場にコゼット・ケンティフォリアの表情が一気に変わっていく。
「まあああ、クリストファー様が何故、ここに?」
頬を紅潮させ濡れた目でクリストファーに視線を注ぐコゼットにマリアンヌは辟易していた。
マリアンヌの存在なんて歯牙にも掛けない。
コゼットにとってマリアンヌはクリストファーの立場上の婚約者であってそれ以上ともそれ以下とも思っていなかった。
マリアンヌやクリストファーよりも爵位の高いコゼットが圧力をかければクリストファーとマリアンヌの婚約など直ぐに破棄出来ると高を括っている。
それだけ社交界でも特に貴族社会でも多大なる権力を持ち合わせた家柄だと言う自尊心がコゼットを傍若無人とさせていた。
「ねえ、クリストファー様。
あちらのテラスでご一緒にお茶をされませんか。
クリストファー様お気に入りの紅茶を用意していますの」
「……」
「あら?クリストファー様ったら急に黙り込まれて。
ふふふ、婚約者の視線が気になるのね。
お優しいクリストファー様。
クリストファー様が気遣いをされないといけない方では無いでしょう?マリアンヌさんは」
「……」
「意に沿わぬ婚約だと囃されていますわ。
事実、マリアンヌさんを見て私はそう感じ入っています。
ほほほ、今日のマリアンヌさんはいつに無く存在感の薄い、いえ、麗しのクリストファーには相応しくない方」
「それ以上、私の婚約者を貶める言葉を慎んで頂きたい、ケンティフォリア嬢」
「クリストファー様?」
冷ややかで不機嫌さを滲ませるクリストファーの声に、コゼットは軽く悲鳴をあげる。
何故、自分が非難されないといけない。
正しただけではないか、クリストファーに。
マリアンヌがクリストファーには相応しく無い、不釣り合いの婚約者だと言って何がいけないのか。
正論ではないか、誰が見ても美の化身と謳われるクリストファーに平凡なマリアンヌが似合いだと告げる?
己こそが、ケンティフォリア家の薔薇姫と喩えられる自身こそがクリストファーに相応しい。
「私はクリストファー様に真実を申し上げただけで、マリアンヌさんを貶めたなんて。
ふふふ、ほら、周りの方をご覧になって。
クリストファー様と私に羨望の眼差しを注いではいませんか?
うっとりと魅入った表情は私達がお似合いだと評していると思われないのかしら、クリストファー様は」
チラリとマリアンヌを睨め付けてコゼットはクリストファーの腕に絡みつく。
豊満な胸を押し付ける仕草にマリアンヌは非難めいた視線をコゼットに注ぐ。
(ま、まあ何て事をクリストファーにするのよ!
ご自慢の胸でクリストファーを誘惑する魂胆なの?)
一瞬、侍女のエマの言葉が頭に過る。
殿方は女性のマシュマロの様な豊満な胸にロマンを抱くと。
……。
(や、やだ、な、何故、今その言葉が過るのよ!
クリストファーが豊満な胸が好きだなんて、一度も口にした事は無いわ……)
語尾が小さくなっていく。
クリストファーの口から聞く以前にそんな会話すらした事が無い。
無いけどクリストファーだってきっと女性らしいふくよかな胸を望んでいるに相違ない。
段々と落ち込んだ気持ちに陥ってしまう。
クリストファーの事が好きだと自覚してから、愛される喜びと同時に自分の貧相な身体が哀しくなってきて。
(男性が好む肢体では無いし、悦ばせる術さえ知らないもの。
もし、コゼット・ケンティフォリアが本気でクリストファーに迫ってたら、クリストファーは……)
マリアンヌの顔が青褪めてしまう。
思わなかった、ううん、思いたくなかった。
クリストファーが自分から離れていく可能性が芽生えつつある事態に。
クリストファーがもし、コゼット・ケンティフォリアに籠絡されたら。
コゼットの登場にマリアンヌはいつになく焦燥感に駆られたのであった。
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