恋心

華南

文字の大きさ
上 下
27 / 52

恋の嵐 その8

しおりを挟む
「い、一体、なんだったのよ、あれは!」

茉理が急に泣き出し、要の口調に憤りを察した3人は、呆然と事の顛末の余韻に浸っていた。
周りが自分たちを好奇な目で見つめている。
中には自分の会社の女性社員までいる。
課が違うが見た事のある顔に3人は顔を歪める。
明日、自分たちの奇行が会社中に知れ渡るのは時間の問題だ。
あの女が泣いた所為で、自分たちは完全に悪者になっている。

タイミングよく泣きやがって……と心の中で3人が舌打ちする。
全てあの女の計算ずくの行いかと思い、3人は茉理に対して憎しみの感情を強めていく。

「本当に忌々しい。
あんな平凡な女が北澤課長に溺愛されて。
あの課長の冷ややかな口調、初めて聞いたわ。
本当に恐かった……」

「ひ、一ツ橋さんの所為よ。
協定を結んで彼女を追い詰める予定を狂わしたのは!
き、北澤課長に嫌われたら、私、私はこれからどうしたら……」

オロオロしだす二神に三田がせせら笑う。

「あら、そんな事でうろたえるどうするの?二神さんは。
そんなに簡単に課長の事を諦める訳?」

「そうよ、二神さん!
今回はあの女の姑息な行動が北澤課長の逆鱗に触れたけど、でもこれで諦める訳ではないでしょう?
そんなに簡単に諦める想いだったの、貴女は……」

馬鹿にする二人に二神の頬に朱が走る。
心の底で、流石に年長者は繊細な自分とは図太さが違うと思いながら。

「そ、そんな訳、無いでしょう!
簡単に諦めきれる想いでは無いわ!」

「また、作戦を練り直さないていけないわね。
あの女の粗探しをして、正体を暴いて北澤課長の前に証拠を突き詰めるのよ。
あの女がどれ程計算高くて性悪か……。
北澤課長も気持ちが冷めるでしょう、きっと」

「優秀な探偵をリサーチして調査させるのよ、あの女の身辺を。
絶対に別れさせてやる。
今日、あの女の態度を見て決心が固まったわ。
絶対に許すものですか!
北澤課長の心を奪った報い、思い知らせてやる……」

メラメラと茉理に対して復讐の炎を燃やす3人を止める術は無い。
全く持って理不尽で身勝手な3人の考えを抱き、憎しみの炎を燃え滾らしている事を、茉理は知る由も無かった……。

***


「少しは落ち着いた?」

要のマンションに着き、食事を終えた後、要が珈琲を入れたカップを茉理の手に握らす。
熱い湯気は茉理の心を少しずつ解していく。

「……、大丈夫だから、要さん」

横に座る要が茉理の肩を抱き、自分の胸に寄せる。

「そう、悩まないで」

「解っていますから。
本当に大丈夫だから……」

「茉理」

そっと茉理の手に握られたカップを奪い、テーブルの上に置く。
茉理の頤を掴み唇を寄せ、労わるように茉理の唇に触れる。
優しく羽の様に軽く何度も触れる要に、惚けた茉理の唇が自然と薄く開く。
茉理の唇を優しく喰み歯列を舌でなぞり茉理の舌を絡めとる。

「ふ、う…ん」

甘い声が茉理の口から零れる。
何度も角度と変えながら深い口付けを与える要が茉理の背中に腕を回し、ソファに押し倒す。

「か、かなめさ……」

「茉理を愛させて」

茉理の顔をじっと見つめながら要がまた唇を奪う。

執拗に茉理の唇を奪いながらカーディガンを剥ぎ取り、ワンピースのファスナーを下ろす。
腰までワンピース脱がされキャミソール姿になった茉理が要の動きを遮ろうと抵抗をし始める。

「だ、駄目。
こんな明るい所では、い、や……」

口付けの合間に紡がれる茉理の言葉にくっと口角を上げる。

「ここでは無かったらいいんだね?」

唇を解いた要が茉理を抱き上げ妖艶に笑う。
寝室へと向かう要に茉理は、慌てふためきと下ろす様に伝えるが、要は一向に聞く気配が無い。

「か、要さん?」

そっと茉理をベットに横たえ耳元で囁く。

「最初に茉理に言っておく。
済まない、明日は仕事を休ませるようになる……」

ぞっとするような要の言葉に、茉理の身体が一瞬、硬直する。

「そ、それって、その……」

唇がぷるぷると震える。
茉理の愛らしい唇に要は指でゆっくりとなぞる。

「今日は帰さない。
俺の愛を体中に感じて」

もう充分に感じています……と叫ぼうとする唇を強引に奪われる。
反論する言葉を奪われ、いつの間にか茉理の口から甘い吐息が零れだす。
体中の熱が要によって高ぶられていく。

熱い夜が要の愛撫によって始まろうとしていた……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

後宮の棘

香月みまり
キャラ文芸
蔑ろにされ婚期をのがした25歳皇女がついに輿入り!相手は敵国の禁軍将軍。冷めた姫vs堅物男のチグハグな夫婦は帝国内の騒乱に巻き込まれていく。 ☆完結しました☆ スピンオフ「孤児が皇后陛下と呼ばれるまで」の進捗と合わせて番外編を不定期に公開していきます。 第13回ファンタジー大賞特別賞受賞! ありがとうございました!!

処理中です...