13 / 52
恋の戸惑い 前編
しおりを挟む
要さんに初めて抱かれたあの日から私は、要さんに毎週末、彼のマンションで過ごす事を余儀なく言い渡された。
彼の言葉を聞いた時、一瞬、恥ずかしさの余りに言葉が出なかった。
彼と一緒に居る事が出来るのはとても嬉しい。
何時も彼の側にいたい。
彼の側で彼の愛を感じていたい……。
ずっと彼に抱かれて嫌われたらどうしようかと、散々悩んでいた。
それが彼に求められて、そして彼と一つになって溶け合って、蕩けるような快楽に身を落として。
まるで自分では無くなる感覚に全てを奪われた。
そう。
彼の愛撫に、喘ぎ、乱され、翻弄されたあの熱い夜。
意識を失う程求められて、目覚めた時には彼のマンションだった事にどれだけ羞恥が体中に走ったか。
(も、もう、あの旅館に行く事なんて絶対に出来ない…!
か、要さんが散々私を愛したから起き上がる事が出来なくて、それで……。
ああん、もう、いや!
恥ずかしさの余り、どうにかなりそう)
一瞬、脳裏に浮かんだ痴態を思い出し頬が熱くなる。
「どうしよう…」
あれ程要に抱かれる事を躊躇っていた以前の自分とは思えない、贅沢な悩みだと茉理は心の中で叱咤する。
情熱的に愛されたと今でも思い出すと身体の奥が熱くなる。
女として求められた。
深く愛され繋がった。
だけど……。
自分の理性まで奪うあの快楽が正直恐いと思うのもまた事実で。
恋に溺れると言う事はこういう意味合いを含めての事なのか…と茉理は着替えをバックに詰めながら何度目かの溜息を零した。
***
マンションから出て駐車場に向かうと既に要が待っていた。
息を弾ませながら要の元に向かう。
「遅くなってごめんなさい…」
詫びる茉理の言葉を遮るように要が優しく言葉をかける。
「そんなに待っていないから、気にしないで欲しい」
穏やかに微笑みながら茉理を見つめる。
アーモンド型の、深い焦げ茶の瞳。
すっと鼻梁が通った整った美貌に茉理は何時見ても要の事を綺麗だ…と見惚れてしまう。
普通、女性に「綺麗」と形容するものだと思っていたが要は特別だ。
一つ一つのパーツが綺麗に顔の中に納まって完成度を高めている。
胸が自然とどきどきと鳴ってしまう。
要といると性格の穏やかと優しさに心ときめくが、彼の美貌にもまたときめく事も真実だと、茉理は要に視線を注ぎながらそう思った。
茉理の無言の視線に気づいた要が苦笑を漏らす。
「俺の顔に何か付いている?」
不躾にじっと見つめていた事に気づいた茉理はあわてて視線を逸らす。
「ご、ごめんなさい、か、要さん。
な、何でも無いです…」
かああ、と頬を仄かに赤く染めうつむく茉理が微笑ましい。
「茉理……」
名を呼ばれて顔を上げ要を見つめる。
顔が近づき唇が触れる。
そっと触れる、優しいキス。
目を閉じ要のキスを受け入れる。
肩を抱き寄せ、茉理の顎に手を寄せ深く茉理の唇を奪う。
とろり、と身体の奥が熱くなる。
要の情熱的なキスに茉理の思考がくらくらとし、眩暈を呼び起こす。
(だ、駄目…。
まだ夕暮れの、こんな駐車場で誰かに見られたら!)
やんわりと要を胸を押す茉理に、要は目を細めながら唇を離す。
「済まない。
恥ずかしかった?」
しれっと何事も無かった様に話す要に茉理は頬を赤く染める。
こくりと素直に頷く茉理に要は既に求める気持ちを抑える事が出来ない。
「…早く茉理を抱きたい」
求める気持ちを隠さない要に、言葉が出ない。
「か、要さん!」
動揺する茉理にくつくつ笑いながら要は車を走行させる。
茉理は要のストレートな欲望に、要を強く意識してしまう。
(ど、どうしよう……。
解っている事なのに、変に意識してしまう。
や、やだ、こ、こんな……)
茉理の中で以前の恋愛が脳裏に過ぎる。
塩崎との恋愛で、身体を求められた時、一つになった悦びも大きかったがそれ以上に身体の引き裂くような痛みも強かった事が、あの後、何度も求められても身体がこわばり茉理は受け入れる事を躊躇っていた。
馴染ませようと塩崎が何度か試みたが一向に茉理の緊張を解す事が出来ない苛立ちに、茉理に触れるのをだんだんと控えるようになっていた。
恋愛に身体の繋がりも必要だと感じていたが、それ以上に塩崎の側にいる事の方がもっと幸せだと考えていた茉理にとってセックスは今ひとつ理解できない事であった。
快楽に身を窶す……。
理性を奪われる様な感覚に陥った要とのセックスは茉理の中の女を刺激し、未知なる思いに茉理を陥らせたと言っても過言では無い。
何も知らなかった「恋」にこんな不可解な感情を齎す。
要との恋愛でもっと知らなかった自分が暴かれ、翻弄されるようになるのか。
初めて要に抱かれたと時とは違う不安が心の中に広がっていく。
求められる喜び、愛される悦び……。
恋愛の深い部分を垣間見始めている茉理にとって、今から要のマンションで求められる事に身体を震えさせるのであった。
彼の言葉を聞いた時、一瞬、恥ずかしさの余りに言葉が出なかった。
彼と一緒に居る事が出来るのはとても嬉しい。
何時も彼の側にいたい。
彼の側で彼の愛を感じていたい……。
ずっと彼に抱かれて嫌われたらどうしようかと、散々悩んでいた。
それが彼に求められて、そして彼と一つになって溶け合って、蕩けるような快楽に身を落として。
まるで自分では無くなる感覚に全てを奪われた。
そう。
彼の愛撫に、喘ぎ、乱され、翻弄されたあの熱い夜。
意識を失う程求められて、目覚めた時には彼のマンションだった事にどれだけ羞恥が体中に走ったか。
(も、もう、あの旅館に行く事なんて絶対に出来ない…!
か、要さんが散々私を愛したから起き上がる事が出来なくて、それで……。
ああん、もう、いや!
恥ずかしさの余り、どうにかなりそう)
一瞬、脳裏に浮かんだ痴態を思い出し頬が熱くなる。
「どうしよう…」
あれ程要に抱かれる事を躊躇っていた以前の自分とは思えない、贅沢な悩みだと茉理は心の中で叱咤する。
情熱的に愛されたと今でも思い出すと身体の奥が熱くなる。
女として求められた。
深く愛され繋がった。
だけど……。
自分の理性まで奪うあの快楽が正直恐いと思うのもまた事実で。
恋に溺れると言う事はこういう意味合いを含めての事なのか…と茉理は着替えをバックに詰めながら何度目かの溜息を零した。
***
マンションから出て駐車場に向かうと既に要が待っていた。
息を弾ませながら要の元に向かう。
「遅くなってごめんなさい…」
詫びる茉理の言葉を遮るように要が優しく言葉をかける。
「そんなに待っていないから、気にしないで欲しい」
穏やかに微笑みながら茉理を見つめる。
アーモンド型の、深い焦げ茶の瞳。
すっと鼻梁が通った整った美貌に茉理は何時見ても要の事を綺麗だ…と見惚れてしまう。
普通、女性に「綺麗」と形容するものだと思っていたが要は特別だ。
一つ一つのパーツが綺麗に顔の中に納まって完成度を高めている。
胸が自然とどきどきと鳴ってしまう。
要といると性格の穏やかと優しさに心ときめくが、彼の美貌にもまたときめく事も真実だと、茉理は要に視線を注ぎながらそう思った。
茉理の無言の視線に気づいた要が苦笑を漏らす。
「俺の顔に何か付いている?」
不躾にじっと見つめていた事に気づいた茉理はあわてて視線を逸らす。
「ご、ごめんなさい、か、要さん。
な、何でも無いです…」
かああ、と頬を仄かに赤く染めうつむく茉理が微笑ましい。
「茉理……」
名を呼ばれて顔を上げ要を見つめる。
顔が近づき唇が触れる。
そっと触れる、優しいキス。
目を閉じ要のキスを受け入れる。
肩を抱き寄せ、茉理の顎に手を寄せ深く茉理の唇を奪う。
とろり、と身体の奥が熱くなる。
要の情熱的なキスに茉理の思考がくらくらとし、眩暈を呼び起こす。
(だ、駄目…。
まだ夕暮れの、こんな駐車場で誰かに見られたら!)
やんわりと要を胸を押す茉理に、要は目を細めながら唇を離す。
「済まない。
恥ずかしかった?」
しれっと何事も無かった様に話す要に茉理は頬を赤く染める。
こくりと素直に頷く茉理に要は既に求める気持ちを抑える事が出来ない。
「…早く茉理を抱きたい」
求める気持ちを隠さない要に、言葉が出ない。
「か、要さん!」
動揺する茉理にくつくつ笑いながら要は車を走行させる。
茉理は要のストレートな欲望に、要を強く意識してしまう。
(ど、どうしよう……。
解っている事なのに、変に意識してしまう。
や、やだ、こ、こんな……)
茉理の中で以前の恋愛が脳裏に過ぎる。
塩崎との恋愛で、身体を求められた時、一つになった悦びも大きかったがそれ以上に身体の引き裂くような痛みも強かった事が、あの後、何度も求められても身体がこわばり茉理は受け入れる事を躊躇っていた。
馴染ませようと塩崎が何度か試みたが一向に茉理の緊張を解す事が出来ない苛立ちに、茉理に触れるのをだんだんと控えるようになっていた。
恋愛に身体の繋がりも必要だと感じていたが、それ以上に塩崎の側にいる事の方がもっと幸せだと考えていた茉理にとってセックスは今ひとつ理解できない事であった。
快楽に身を窶す……。
理性を奪われる様な感覚に陥った要とのセックスは茉理の中の女を刺激し、未知なる思いに茉理を陥らせたと言っても過言では無い。
何も知らなかった「恋」にこんな不可解な感情を齎す。
要との恋愛でもっと知らなかった自分が暴かれ、翻弄されるようになるのか。
初めて要に抱かれたと時とは違う不安が心の中に広がっていく。
求められる喜び、愛される悦び……。
恋愛の深い部分を垣間見始めている茉理にとって、今から要のマンションで求められる事に身体を震えさせるのであった。
7
お気に入りに追加
55
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜
ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。
そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、
理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。
しかも理樹には婚約者がいたのである。
全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。
二人は結婚出来るのであろうか。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる