恋心

華南

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恋の誤算

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あの男との偶然の再会に見せた茉理の動揺。

茉理のあの顔を見つめ俺は決心した。

茉理を抱く、と……。

茉理が望むまで待つつもりだった。
茉理が俺の事を欲し女として俺を求めることをずっと願い、待ち続けた。

欲望を心の奥にずっと押さえ込みながら……。

愛しているから。
誰よりも愛しているから、だから待ち続けた。

だが……。

ずっと待ち望んでも俺を望むことなど、決して、ない。
苦い思いに心が苛む。
嗤いたい心境だった。
恋に狂った男が考える、愚かな嫉妬に……。
そして、人の想いを思い通り変えることが出来ると考えた浅はかな考えに。

別れた男など忘れさせれると、何処でそんな傲慢な言葉が浮かんだ?
望む言葉を選んで、想いの限り言葉に刻んで、そして包むように愛すれば心が手に入ると。

余りに滑稽すぎる。

計算どおりに人の心など変えさせることなんて出来る筈は無い。

ましてや恋情に人の思惑など通じる筈が無い!

本当に愚かとしか言えない。

だが、それでも……。

決して手に入らない想いに焦がれながらも、俺は茉理を愛することを止める事が出来ない。
茉理を諦める事なんて出来ない。

俺は茉理を愛している。

愛しているからそんな愚かでどうしようも無い考えに捕らわれる。

愛しているから心が欲しかった。
心から望む繋がりを欲しかった……。

(茉理……)

室内に設置してある露天風呂から出てきた茉理に視線が釘付けになる。

ほんのりと頬が薄紅色に染まり、普段下ろしている髪を一つに纏め上げ、白い項が儚げで艶やかだ。
不安げに俺を見つめる目が俺の中に潜む嗜虐心を煽り立てる。

茉理を抱きたい!

一瞬にして感情を奪った瞬間だった……。

その後、己の激情のまま俺は動いた。

茉理の腕を引き胸に強く抱きしめながら、身体を押し倒しシーツへと纏い付ける。
噛み付くように唇を奪い茉理の抵抗を奪うように深く貪る。

優しさの一片も無い、己の欲望のままに茉理を暴いていく。
浴衣の合せから手を割り込ませ、柔らかな乳房を強く掴む。
茉理の顔が歪み、痛みで涙を滲ませる。

「…いや」

唇から漏れる抵抗の言葉……。

未だに心の中に過去の男が燻っている女を俺は強引に抱いている。
虚しいだけの、悦びを見出す事すら出来ない身体の繋がり。

想いあう、互いの感情など一切、存在しない。

だが初めて抱く茉理に俺は今までに無いほど、身体が興奮している。
やっと抱きたいと思っていた女を抱ける悦びに身体が打ち震えている。

ふふふ、哀れな程、自分が滑稽過ぎる……。

心が手に入らない女をそれでも欲しがり、悦んでいる馬鹿な男の性に。

ふるり、とたおやかな乳房が合せから覗かせる。
一気に浴衣を広げ白い胸元に顔を潜める。
ねっとりに口に含み舌で絡め上げ、強く吸いつく。
甘い馨りが漂う。

茉理から漂う女の香り。

執拗に胸を犯し茉理の中に潜む女を暴こうとするが、愛しても無い男の愛撫に反応するとは到底思えない。
抵抗が激しくなる茉理の手首を解いた帯で縛り、頭上へ纏い付ける。
恐怖で目に涙を溢れさせ俺を見つめる茉理…。

その顔が更に俺を煽っているとは思わないのだろうか?

俺の中に湧き上がる黒い感情に火を灯しているとは思わないのだろうか?

自分がこんなに精神を奪われるとは思わなかった。
恋がこんな激情を、冷静な思考を簡単に奪い去るとは範疇に無かった。

恋に狂う……。

ああ、これが本当に欲しいと思っていた存在への俺の真実の感情なんだ。

全てを奪おうとする俺の中に潜む狂気なんだと。


胸への愛撫から下肢へと移ろうと、俺は茉理から浴衣を剥ぎ取り、身に纏っているモノを全て奪う。
俺の目を茉理の白い裸体が捕らえる。
自然と喉が鳴る。

(なんて綺麗なんだ……)

手が震える。
冒し難い程の穢れの無い白い裸体に、一瞬俺は躊躇いながらも、茉理の身体に触れていく。

辿るように脇腹から臍にかけて指を這わせ、震える下肢に触れる。
濡れていない花芯に、俺はくつり、と嗤う。

(濡れるわけ、ないか……)

深い嘆息と共に、自虐的な笑みが浮かぶ。
強引に中に指を這わせ、舌を使い、茉理が善がる場所を無理やり引き出し、快楽へと落としていく。
最初、痛みだけを訴えていた茉理の口から甘い喘ぎが漏れてくる。

その声に俺の欲望が刺激され、茉理を更に攻め立てる。
とろりと流れる愛液に俺の口角が上がる。

目を潤ませ甘い吐息を零す茉理の膝裏に手をかけ、強引に中に進んでいく。
一瞬、茉理の中の狭さに顔を歪ませる。

余り男に慣れて無いことは薄々気づいていたが、中の狭さに俺は驚いた。
だが、それ以上に男の本能を強く刺激した。

あの男が出来なかった茉理の中に潜む女を俺が開花させればいい、と……。

茉理の目に驚愕が浮かぶ。
何も纏ってない俺がそのまま、中に入るとは思っていなかったらしい。

避妊などしない。
子供が出来たら茉理は俺から離れる事など考えないだろう…。
中を満たして俺の全て受け止め、そして俺の子を宿せばいい。

そうすれば茉理は俺から逃れようとは思わなくなる。

あの男の存在が心の中にいても、子供という繋がりで俺の側にいるだろう……。

男女の愛は一生、二人の間に存在しないかもしれない。
だが、子供と言う繋がりで分かち合える事は出来る。

ああ、俺は本当に狂っている。
こんな卑怯な手段に訴えるほど、俺は茉理に溺れていたんだ。

頭をふり、何度も俺の動きに涙を流す茉理。
信じられない、と言った目で俺を見つめている。

その目に心の中が深く抉られる。

こんな事で茉理を奪いたくなかった。
本当は心から望まれて茉理を愛したかった……。

だが、今更引き返す事等、出来ない!

強く中を穿ち茉理の中に熱い飛沫を注ぎ込む。
受け止められない俺の精が茉理の下肢から流れていく。

ああこれで茉理は俺のモノだ……。

暗い感情が一気に溢れ、茉理に言葉を投げかける。

「…絶対に離さないから。
未だにあの男に気持ちが捕らわれている事は解っている。
だけど、茉理は俺のモノだ。
泣き叫ぼうが心にあの男がいようが、茉理を手放すものか!」

ああ、そうだ。
泣き叫ぼうが、俺の事を憎もうが茉理を離さない!

俺の言葉に茉理が涙ながらに訴える。
その言葉に俺の思考が停止する……。

(今、何を言った?
茉理が俺を愛している?
俺との恋に溺れている、あの男を愛していない…)

「要さんが好き。
貴方の事を愛している……。
だからずっと戸惑っていた。
もし、貴方が私を抱いて幻滅したらどうしようと、ずっと悩んでいた。

私、前の彼に抱いても面白みがないと言われたから、それをずっと引きずっていて恐かったの。
貴方の事が好きすぎてもう抑える事が出来菜ほど、貴方との恋に溺れている。
貴方から別れを告げられたら私は……」

それは俺が言う言葉だ。
俺は君以上に君との恋に溺れている。
君が俺から離れたら俺は壊れていくだろう…。

ああ、俺は君に愛されていた。

俺は。

俺は!

強引に茉理の唇を奪い言葉を奪う。
そして茉理に愛を囁く。

その言葉に茉理が口付けで想いを俺に伝える。

抑える事の出来ない幸せ。
君を本当に手に入れた瞬間。
自然と涙が滲む。
溢れる想いを君に伝えたい。

君に俺の愛の全てを注ぎたい。

その想いを伝えるため。

俺は再び茉理の唇を奪い、愛を深めていった……。
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