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閑話11
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保科さんのマンションに連れられて、そのまま私は保科さんのマンションでの生活を余儀なくされる。
反論など一切認められない。
抵抗して逃げてもすぐに捕らわれてしまう。
もし、仮に逃げ通したとしてもどうやって生活を……。
今の仕事だって当然、解雇される。
ううん、退職を強要するに決まっている。
私は一体、どうなるの?
保科さんとこのまま一緒にいると言う事は、まさか……。
そんな筈は無い。
一瞬、脳裏に浮かんだ言葉は余りにも現実味が無い。
生きる世界も、生活環境も全てが違い過ぎる。
そんな事は天地がひっくり返っても有り得ない。
(それよりも今は貞操の危機をもっと真剣に考えないと。
このままでは保科さんと身体の関係にまで展開しそう。
保科さんにこの貧相な身体を見られるの?
どう、抱かれるって言うの?
わ、私は一柳さんが好きで。
一柳さんなら、私。
……。
今までそんな関係になった男性なんていなかったから、正直、怖い。
キスされただけで気持ちが混乱して、変な気分になって。
好きでもない人でもキスで感じるなんて)
ぼっと、赤くなる。
違うとかぶりを振っても確かに私は感じてしまった。
下腹部が蠢き思わず声が漏れそうになって。
保科さんに気付かれたくない。
もし気付かれたら、私が一柳さんの事を本当に好きか疑われる。
保科さん事を拒んでいても心と身体は違うと思われたら、私。
(い、淫乱じゃ無いから!
す、好きでも無い人とそういった関係なんて、絶対に無理だから)
と思っていても、保科さんの劣情から逃れられる事は……。
「紗雪。
こっちに来い」
急に声をかけられてドキリ、となってしまう。
(ほ、本当に心臓に悪い)
ソファに座って真っ赤になって考え込んでいた私に、保科さんは別の部屋に案内する。
案内された部屋に入ると沢山のブランドショップの紙袋が床に置かれている。
「取り敢えず一通り揃えたが、気に入らなかったら言え。
直ぐに店に連絡を入れて他の商品を用意させる」
「え、そ、そんなこんなに……」
恐る恐る紙袋の中を見る。
取り出して見て付いている値札に言葉を失う。
溜息が出る程の金額に手が震える。
(こ、こんな、ワ、ワンピースに一体、幾らするの?
自分の薄給では到底手にする事が出来ない代物だわ)
ワンピースを見詰めて云々と唸っていたら、試着した姿を見せろと催促する保科さんに着替えるので部屋の外で待っていて欲しいと懇願するが却下されて。
「後ろを向いているから着替えろ」
「……」
(どうしても部屋から出ないと言う事ね)
はああ、とため息を零し、ワンピースを着て保科さんに声をかける。
振り返り私の姿を見て保科さんは思案し、別の紙袋に入っているワンピースを手に取り私に試着する様に促す。
「こっちを着てみろ」
と言いながら見ているからそのまま着ろと言う保科さんをどうにか説得させ、今度は部屋の外で待ってもらう。
充てがわれたワンピースを鏡を見ながら試着する。
(肌触りがいいし、それに凄くシルエットが綺麗)
淡い水色のワンピース。
同色の刺繍が所々に施されてふわりとスカートの裾が広がると、刺繍の色がグラデーションになっている事に気付く。
「紗雪?」
ひょいと部屋に入ってきた保科さんがじっと私を見ている。
見ていると言うよりも、魅入っている?
「ああ、それがいい」
上機嫌な様が半端ない。
「よく似合っている」
と、言いながら背後から抱き締められて。
「紗雪。
綺麗だ……」
チュッと耳朶にキスされる。
(な、なんて事を急にするの!)
「ほ、保科さんっ!」
喚く私を無視し、保科さんは耳元で囁く。
「知っているか?紗雪。
男が女に服を贈る意味を」
すーと急にワンピースのファスナーが下ろされる。
背中が無防備になって思わず声が出てしまう。
「や、やああ、ん」
首筋に保科さんの吐息を感じる。
熱い舌が頸を掠める。
ぞわりとした感覚に下腹部が蠢く。
パチンとブラのフォックが外されて、気付いた私は慌てて胸に守る様に抱き締めようとするが保科さんに腕を取られ遮られる。
直に胸を触られる。
胸の感触を確かめる様に指で揉まれて。
「い、いや……。
保科さん、やめて」
無意識に腰が揺れる。
脚は震えて甘い吐息が零れて。
「紗雪……」
「お、お願い、保科さん……」
胸を揉む保科さんの手を退けようと腕を掴む手に上手く力が入らない。
「祥吾、だ。
名を呼ばないとこのまま続ける」
「そ、そんなこ、と……」
キュッと先端を摘まれる。
急な刺激に甘い吐息が溢れて。
「紗雪、呼んで」
強請る保科さんの声が艶やかで。
頭がくらくらする。
快楽が思考を甘く蕩けさせる。
「ああ、ん。
しょ、祥吾さ、ん」
「……」
(わ、私、どんな声を出して呼んでいるの?
や、やだ、私、恥ずかしい)
こんな、甘い、媚びる様な女の声。
保科さんにどう思われてるの?
「紗雪……」
ゾッとする様な低音のバリトンが鼓膜に響く。
欲情に濡れた男の声。
私を欲しがっているのが解る。
(保科、さん……)
朦朧とした思考で鏡に映る自分と、そして保科さんを見る。
ドクンドクン、と血が逆流する。
頭に警告音が鳴り響く。
(逃げられない……。
だ、駄目、こんなの。
一柳さんが好きなのに)
抵抗しないと駄目なのに。
だけど保科さんの目が私の抵抗を許さない。
今から私は保科さんに身体を奪われる。
初めてを保科さんに……。
「紗雪」
いやいやと頭を振る私を抱き上げた保科さんが歩行を進める。
ベッドにそっと身体を下ろされ保科さんが追い被さってくる。
獰猛な目で私を射抜く。
身体が竦んで逃げられない。
私は……。
すう、と自然と頬に一筋の涙が流れる。
その涙に、一瞬、保科さんの瞳が揺れる。
一柳さん。
もし、願いが叶うのなら私は。
私は貴方に初めてを捧げたかった……。
反論など一切認められない。
抵抗して逃げてもすぐに捕らわれてしまう。
もし、仮に逃げ通したとしてもどうやって生活を……。
今の仕事だって当然、解雇される。
ううん、退職を強要するに決まっている。
私は一体、どうなるの?
保科さんとこのまま一緒にいると言う事は、まさか……。
そんな筈は無い。
一瞬、脳裏に浮かんだ言葉は余りにも現実味が無い。
生きる世界も、生活環境も全てが違い過ぎる。
そんな事は天地がひっくり返っても有り得ない。
(それよりも今は貞操の危機をもっと真剣に考えないと。
このままでは保科さんと身体の関係にまで展開しそう。
保科さんにこの貧相な身体を見られるの?
どう、抱かれるって言うの?
わ、私は一柳さんが好きで。
一柳さんなら、私。
……。
今までそんな関係になった男性なんていなかったから、正直、怖い。
キスされただけで気持ちが混乱して、変な気分になって。
好きでもない人でもキスで感じるなんて)
ぼっと、赤くなる。
違うとかぶりを振っても確かに私は感じてしまった。
下腹部が蠢き思わず声が漏れそうになって。
保科さんに気付かれたくない。
もし気付かれたら、私が一柳さんの事を本当に好きか疑われる。
保科さん事を拒んでいても心と身体は違うと思われたら、私。
(い、淫乱じゃ無いから!
す、好きでも無い人とそういった関係なんて、絶対に無理だから)
と思っていても、保科さんの劣情から逃れられる事は……。
「紗雪。
こっちに来い」
急に声をかけられてドキリ、となってしまう。
(ほ、本当に心臓に悪い)
ソファに座って真っ赤になって考え込んでいた私に、保科さんは別の部屋に案内する。
案内された部屋に入ると沢山のブランドショップの紙袋が床に置かれている。
「取り敢えず一通り揃えたが、気に入らなかったら言え。
直ぐに店に連絡を入れて他の商品を用意させる」
「え、そ、そんなこんなに……」
恐る恐る紙袋の中を見る。
取り出して見て付いている値札に言葉を失う。
溜息が出る程の金額に手が震える。
(こ、こんな、ワ、ワンピースに一体、幾らするの?
自分の薄給では到底手にする事が出来ない代物だわ)
ワンピースを見詰めて云々と唸っていたら、試着した姿を見せろと催促する保科さんに着替えるので部屋の外で待っていて欲しいと懇願するが却下されて。
「後ろを向いているから着替えろ」
「……」
(どうしても部屋から出ないと言う事ね)
はああ、とため息を零し、ワンピースを着て保科さんに声をかける。
振り返り私の姿を見て保科さんは思案し、別の紙袋に入っているワンピースを手に取り私に試着する様に促す。
「こっちを着てみろ」
と言いながら見ているからそのまま着ろと言う保科さんをどうにか説得させ、今度は部屋の外で待ってもらう。
充てがわれたワンピースを鏡を見ながら試着する。
(肌触りがいいし、それに凄くシルエットが綺麗)
淡い水色のワンピース。
同色の刺繍が所々に施されてふわりとスカートの裾が広がると、刺繍の色がグラデーションになっている事に気付く。
「紗雪?」
ひょいと部屋に入ってきた保科さんがじっと私を見ている。
見ていると言うよりも、魅入っている?
「ああ、それがいい」
上機嫌な様が半端ない。
「よく似合っている」
と、言いながら背後から抱き締められて。
「紗雪。
綺麗だ……」
チュッと耳朶にキスされる。
(な、なんて事を急にするの!)
「ほ、保科さんっ!」
喚く私を無視し、保科さんは耳元で囁く。
「知っているか?紗雪。
男が女に服を贈る意味を」
すーと急にワンピースのファスナーが下ろされる。
背中が無防備になって思わず声が出てしまう。
「や、やああ、ん」
首筋に保科さんの吐息を感じる。
熱い舌が頸を掠める。
ぞわりとした感覚に下腹部が蠢く。
パチンとブラのフォックが外されて、気付いた私は慌てて胸に守る様に抱き締めようとするが保科さんに腕を取られ遮られる。
直に胸を触られる。
胸の感触を確かめる様に指で揉まれて。
「い、いや……。
保科さん、やめて」
無意識に腰が揺れる。
脚は震えて甘い吐息が零れて。
「紗雪……」
「お、お願い、保科さん……」
胸を揉む保科さんの手を退けようと腕を掴む手に上手く力が入らない。
「祥吾、だ。
名を呼ばないとこのまま続ける」
「そ、そんなこ、と……」
キュッと先端を摘まれる。
急な刺激に甘い吐息が溢れて。
「紗雪、呼んで」
強請る保科さんの声が艶やかで。
頭がくらくらする。
快楽が思考を甘く蕩けさせる。
「ああ、ん。
しょ、祥吾さ、ん」
「……」
(わ、私、どんな声を出して呼んでいるの?
や、やだ、私、恥ずかしい)
こんな、甘い、媚びる様な女の声。
保科さんにどう思われてるの?
「紗雪……」
ゾッとする様な低音のバリトンが鼓膜に響く。
欲情に濡れた男の声。
私を欲しがっているのが解る。
(保科、さん……)
朦朧とした思考で鏡に映る自分と、そして保科さんを見る。
ドクンドクン、と血が逆流する。
頭に警告音が鳴り響く。
(逃げられない……。
だ、駄目、こんなの。
一柳さんが好きなのに)
抵抗しないと駄目なのに。
だけど保科さんの目が私の抵抗を許さない。
今から私は保科さんに身体を奪われる。
初めてを保科さんに……。
「紗雪」
いやいやと頭を振る私を抱き上げた保科さんが歩行を進める。
ベッドにそっと身体を下ろされ保科さんが追い被さってくる。
獰猛な目で私を射抜く。
身体が竦んで逃げられない。
私は……。
すう、と自然と頬に一筋の涙が流れる。
その涙に、一瞬、保科さんの瞳が揺れる。
一柳さん。
もし、願いが叶うのなら私は。
私は貴方に初めてを捧げたかった……。
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