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39話
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誰かが私に迫ってくる。
燃えたぎる憎しみの炎を瞳に宿して。
解らない、解らない。
何故、私はこんなに憎まれないといけないの?
(う、んん……)
朧げな映像が脳裏に浮かぶ。
私を追い詰める人物。
私はずっと抵抗して、そして……。
私の思考は停止した。
生を終える瞬間。
私は……。
***
(ここは……)
ああ、ここは今の私が生を受けている世界。
久保紗雪であった記憶を持つエレーヌが生きる世界。
「貴方に心ときめいて」と言うゲームと同じ世界観を持つ。
どうして私はこの世界に転生したの?
ずっと疑問が心の中で蔓延っている。
ヒロインであるリリアンヌがヒロインで無く、唯の脇役化されていて、そして脇役とも言えない単なるモブキャラであるエレーヌがヒロイン化されている。
この世界が私を中心に動いている。
そうとしか思えない数々の出来事。
王太子ラルフとの出会い、第2王子ルーファンとの出会い。
ルーファン……。
何故、あんなに情熱的な目で私を見詰めるの?
何故、あんなに哀しげに私を見詰めるの?
何故、あんなに切なくて、そして恋焦がれる眼差しで私を射抜くの?
あんなに激しい感情で私を……。
紗雪、を。
(貴方は誰、なの?)
「気が付いたか、エレーヌ……」
纏まらない思考が呼ばれる声で覚醒していく。
どうしてここにいるの?
「オリバー、兄さま……」
(ああ、大好きだった人と同じ声を持つ、私の兄様。
優しくて誰よりも頼り甲斐のある、エレーヌ自慢のお兄様。
でも、紗雪にとっては……)
ふと、ルーファンの姿が過ぎる。
エレーヌの人生には一切、関わりの無い、そして紗雪の時、「貴方に心ときめいて」をプレイしていても余り興味を抱く事の無い。
なのに、今、ルーファンの事が心に引っ掛かる。
何か、大切な事を忘れている。
忘却の淵に何かを落とした……。
「シエナ達が心配して俺の元に来た。
お前がルーファン王子の私室に呼ばれて……」
それ以上の言葉を言い淀む。
多分、気付いている。
ルーファンの私室で只ならぬ事が起こった事に。
「お兄様……」
自然と眦に涙が滲む。
オリバーの顔を見たら視界が歪んでいく。
哀しげな表情が私を追い詰める。
強く拳を握っている。
ルーファンに対しての怒りを全身に表している。
絶対に勘違いしている。
私がルーファンに純潔を奪われた、と。
違うと言いたい。
未遂に終わった、何事も無かった。
でもエレーヌの人生に翳りを与えてしまった。
ルーファンの侍女達があれこれと詮索し、もし、王室に噂が広がっていたら、私はデビュー前に乙女の資格を失ったと思われても仕方が無い。
自分の浅はかな行動が招いた結果だ。
オリバーが誕生日にプレゼントをしてくれたペンダントを落としたばかりに。
(ペンダント……)
胸元に手を充てる。
視界に映るアクアマリンのペンダント。
ルーファンの瞳と同じ。
「いつからだ……」
「……」
「いつ、ルーファン王子に出会った」
「オリバー兄様?」
「ずっとお前を守り大切にしてきた。
俺の最愛の妹。
誰よりも大切な妹を、あの男は……」
「ち、違うわ、兄様!
わ、私はルーファン王子とは何も、無かった……」
信じて、と目で訴える。
涙を流してオリバーを見詰めるの。
「エレーヌ……」
(ああ、兄様……)
そんなに哀しい顔をしないで。
今にも泣きそうな顔で私を見ないで。
そんな顔の貴方を見るのが誰よりも辛い。
だって私は。
紗雪は貴方に心惹かれていたから……。
エレーヌの実の兄であるオリバーに紗雪は恋をした。
自覚したくは無かった。
だって私はエレーヌとして幸せになりたかったから。
なのに紗雪の意識がエレーヌの意識を奪ってしまった。
紗雪の記憶を持つエレーヌにとって、オリバーは禁忌としか言えない。
甘やかな毒を含んだ。
(だから本当はルーファンとの関係を問われても、否と答えない方が本当は良いのかも知れない。
こんな不純な気持ちを抱く紗雪が、オリバーへの想いを断ち切るには)
誤解させたままの方が互いの為に……。
「私とルーファン様は……」
ドキドキとやけに心臓の音が煩い。
今、言おうとしている言葉で、オリバーとの関係に亀裂が入る。
兄妹として、そして紗雪としても。
深窓の、箱入り娘であるエレーヌ。
両親と兄達の愛情を一身に受けて育った令嬢。
伸びやかで誰よりも幸せで。
そんなエレーヌが。
(ごめんなさい、エレーヌ。
私が覚醒したばかりに、貴女の人生を狂わした。
私を赦して……)
涙が溢れて止まらない。
好きでも無い相手。
ルーファンの事は何も知らない。
この世界のルーファンの事など、何一つ。
でもルーファンとは今後、深く関わってくる。
既にエレーヌはルーファンの恋愛の対象として注目されているから。
この胸に光るアクアマリンのペンダントが物語っている。
ああ、どうして気付かなかっただろう。
ゲームの時もルーファンと親密度が高まった時にプレゼントされたでは無いか。ルーファンの瞳と同じ輝きを放つアメジストのペンダントを。
恋人の証としてルーファンの手で付けられて。
そんなイベントが確かに、あった……。
燃えたぎる憎しみの炎を瞳に宿して。
解らない、解らない。
何故、私はこんなに憎まれないといけないの?
(う、んん……)
朧げな映像が脳裏に浮かぶ。
私を追い詰める人物。
私はずっと抵抗して、そして……。
私の思考は停止した。
生を終える瞬間。
私は……。
***
(ここは……)
ああ、ここは今の私が生を受けている世界。
久保紗雪であった記憶を持つエレーヌが生きる世界。
「貴方に心ときめいて」と言うゲームと同じ世界観を持つ。
どうして私はこの世界に転生したの?
ずっと疑問が心の中で蔓延っている。
ヒロインであるリリアンヌがヒロインで無く、唯の脇役化されていて、そして脇役とも言えない単なるモブキャラであるエレーヌがヒロイン化されている。
この世界が私を中心に動いている。
そうとしか思えない数々の出来事。
王太子ラルフとの出会い、第2王子ルーファンとの出会い。
ルーファン……。
何故、あんなに情熱的な目で私を見詰めるの?
何故、あんなに哀しげに私を見詰めるの?
何故、あんなに切なくて、そして恋焦がれる眼差しで私を射抜くの?
あんなに激しい感情で私を……。
紗雪、を。
(貴方は誰、なの?)
「気が付いたか、エレーヌ……」
纏まらない思考が呼ばれる声で覚醒していく。
どうしてここにいるの?
「オリバー、兄さま……」
(ああ、大好きだった人と同じ声を持つ、私の兄様。
優しくて誰よりも頼り甲斐のある、エレーヌ自慢のお兄様。
でも、紗雪にとっては……)
ふと、ルーファンの姿が過ぎる。
エレーヌの人生には一切、関わりの無い、そして紗雪の時、「貴方に心ときめいて」をプレイしていても余り興味を抱く事の無い。
なのに、今、ルーファンの事が心に引っ掛かる。
何か、大切な事を忘れている。
忘却の淵に何かを落とした……。
「シエナ達が心配して俺の元に来た。
お前がルーファン王子の私室に呼ばれて……」
それ以上の言葉を言い淀む。
多分、気付いている。
ルーファンの私室で只ならぬ事が起こった事に。
「お兄様……」
自然と眦に涙が滲む。
オリバーの顔を見たら視界が歪んでいく。
哀しげな表情が私を追い詰める。
強く拳を握っている。
ルーファンに対しての怒りを全身に表している。
絶対に勘違いしている。
私がルーファンに純潔を奪われた、と。
違うと言いたい。
未遂に終わった、何事も無かった。
でもエレーヌの人生に翳りを与えてしまった。
ルーファンの侍女達があれこれと詮索し、もし、王室に噂が広がっていたら、私はデビュー前に乙女の資格を失ったと思われても仕方が無い。
自分の浅はかな行動が招いた結果だ。
オリバーが誕生日にプレゼントをしてくれたペンダントを落としたばかりに。
(ペンダント……)
胸元に手を充てる。
視界に映るアクアマリンのペンダント。
ルーファンの瞳と同じ。
「いつからだ……」
「……」
「いつ、ルーファン王子に出会った」
「オリバー兄様?」
「ずっとお前を守り大切にしてきた。
俺の最愛の妹。
誰よりも大切な妹を、あの男は……」
「ち、違うわ、兄様!
わ、私はルーファン王子とは何も、無かった……」
信じて、と目で訴える。
涙を流してオリバーを見詰めるの。
「エレーヌ……」
(ああ、兄様……)
そんなに哀しい顔をしないで。
今にも泣きそうな顔で私を見ないで。
そんな顔の貴方を見るのが誰よりも辛い。
だって私は。
紗雪は貴方に心惹かれていたから……。
エレーヌの実の兄であるオリバーに紗雪は恋をした。
自覚したくは無かった。
だって私はエレーヌとして幸せになりたかったから。
なのに紗雪の意識がエレーヌの意識を奪ってしまった。
紗雪の記憶を持つエレーヌにとって、オリバーは禁忌としか言えない。
甘やかな毒を含んだ。
(だから本当はルーファンとの関係を問われても、否と答えない方が本当は良いのかも知れない。
こんな不純な気持ちを抱く紗雪が、オリバーへの想いを断ち切るには)
誤解させたままの方が互いの為に……。
「私とルーファン様は……」
ドキドキとやけに心臓の音が煩い。
今、言おうとしている言葉で、オリバーとの関係に亀裂が入る。
兄妹として、そして紗雪としても。
深窓の、箱入り娘であるエレーヌ。
両親と兄達の愛情を一身に受けて育った令嬢。
伸びやかで誰よりも幸せで。
そんなエレーヌが。
(ごめんなさい、エレーヌ。
私が覚醒したばかりに、貴女の人生を狂わした。
私を赦して……)
涙が溢れて止まらない。
好きでも無い相手。
ルーファンの事は何も知らない。
この世界のルーファンの事など、何一つ。
でもルーファンとは今後、深く関わってくる。
既にエレーヌはルーファンの恋愛の対象として注目されているから。
この胸に光るアクアマリンのペンダントが物語っている。
ああ、どうして気付かなかっただろう。
ゲームの時もルーファンと親密度が高まった時にプレゼントされたでは無いか。ルーファンの瞳と同じ輝きを放つアメジストのペンダントを。
恋人の証としてルーファンの手で付けられて。
そんなイベントが確かに、あった……。
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