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36話
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エレーヌがルーファンの私室にて貞操の危機に陥っている時、エレーヌお嬢様命の三人娘は中々帰ってこないエレーヌにヤキモキしていた。
エレーヌがルーファンの私室に招かれていた事がマリーナ達に伝わった時、三人娘に走った動揺。
第2王子でルーファンの私室に特別に招かれている。
それもデビューを控えている未婚の女性であるエレーヌが。
「エ、エレーヌお嬢様は大丈夫かしら?」
「王太子ラルフ様だけではなく、ど、どうしてルーファン様にまで」
「も、もしかしたら、い、今頃、お嬢様は……」
三人娘の脳裏にピンクの世界が漂っている。
ルーファンとエレーヌが今、まさに結ばれようとしているのでは……。
飛躍すぎではないかと思ってもここは魔窟と喩えられる王宮。
純真無垢なエレーヌが、今、正に……。
きっとそうに違いないと同時に頷いてしまう。
だらだらだらと額に汗がだらだらと。
大切な大切なお嬢様が、ルーファンの毒牙にかかろうとしている。
第2王子ルーファン。
冷静沈着で感情の起伏を感じさせない。
王太子ラルフとはまた違う美貌を放つ、孤高の王子。
その麗しさに心をときめかす令嬢達の羨望を一身に受けても微動だにしない。
噂では子爵令嬢で幼馴染のマリーベルとの恋を囁かれているが真偽は如何に、と令嬢達の関心を集めている。
身分の低い子爵令嬢であるマリーベルであるが、母方の実家がこの国でも屈指の侯爵家。
名門である侯爵家の令嬢であった母親の美貌を凌ぐとさえ言われている。
そんなマリーベルと争おうとする果敢な令嬢は今の所、存在しない。
余りに完璧なマリーベル。
そしてこの国で一番麗しいと喩えられるルーファンに対なる相手とさえ囁かれている。
だが三人娘には噂に高い美貌のマリーベルよりもエレーヌがこの国で一番可憐で美しいと思っている。
そんなエレーヌに心を奪われない男など果たしているのだろうかと思う位に。
「ああ、どうしてお嬢様の散策を引き止める事が出来なかったのかしら」
「エレーヌお嬢様の可憐な姿に懸想しない男なんているかしら。
ルーファン王子だってきっとエレーヌお嬢様に骨抜きにされたに相違ない。
だ、だって気を失ったお嬢様を自ら抱き上げてこの私室までくるなんて、今までのルーファン王子では絶対に有り得ない。
あの、影で鉄面皮とさえ言われているルーファン王子が」
「確かにエレーヌお嬢様は誰よりも可憐でお優しいわ。
それに控えめで清楚な美貌は男性のハートを射止めて離さない。
私達自慢のお嬢様であって、今までは旦那様とオリバー様達の鉄壁な囲いで守られていたけど、この王宮は魑魅魍魎が跋扈するとさえ囁かれている。
その発端が前王妃と側妃の病死。
それに付随しての王妃になったリリアンヌ王妃。
未だに前王妃と側妃の病死には色々と囁かれている。
王妃リリアンヌ様が暗躍されているのでは、と言う。
だ、だから旦那様と奥様、オリバー様達は必死になってエレーヌ様の王妃付き侍女の件について阻もうとしたけれど、勅令とあってはどう足掻いても阻む事が出来なかった。
それを事情をご存じないエレーヌ様も肌で感じたのでしょう。
お優しい方だから王妃の命令を無下にする事が何を物語るのか。
な、涙が出てしまう。
お嬢様の心美しさに」
「お嬢様の心美しさは喩え様も無いし、今はその事に浸っている場合では無いわ。
エレーヌお嬢様がルーファン王子の私室に招かれている。
これが王宮に広がってしまっては……。
由々しき問題だわ。
社交界デビューを果たす前に、既にお嬢様がルーファン王子と親密になっていると伝わってしまったら……」
「エレーヌお嬢様の未来は閉ざされてしまう。
デビュー前にルーファン王子との男女間の事を嘯かれても、仕方ない状況としか言えない。
事実、二人の間に何かあっても、それが喩え無くても私室での何があったかは、推測でしか考えられないから」
「は、早くお嬢様をルーファン王子の私室から取り戻さないと」
悶々とハラハラドキドキする三人娘の前に、エレーヌが扉を開けて入ってくる。
深い焦燥を滲ませる表情に、三人娘の脳裏に有らぬ想像をさせたが。
「な、何かあったのですか?
エレーヌお嬢様」
「……。
大丈夫。
ルーファン様の私室で朝食をご馳走になって、無くしたペンダントを頂いたの。
ただ、それだけ」
「「「……」」」
「緊張の連続で疲れてしまったわ。
少し休みたいの」
普段のエレーヌとは思えない弱々しい声に、三人娘の妄想は更に深くなっていき。
ゆったりと通り過ぎるエレーヌから漂うフレグランス。
エレーヌがつけている香水とは別の。
チラリと三人娘の視線がエレーヌの首筋に一気に注がれる。
ざああ、と血の気が引いていく。
(((な、なんなの、こ、これは!)))
紅い痕跡。
これが何を言うかと言うと……。
よく見るとエレーヌの目が赤い。
泣き腫らした感がハンパない。
(((い、いや~~~)))
さめざめと涙が自然と出てしまう。
じゅ、純真無垢なエレーヌが。
既に純潔を失った?
「エ、エレーヌ様……」
シエナに声かけられ涙ぐむエレーヌに三人娘は確信してしまう。
エレーヌがルーファンの毒牙にかかってしまった事に。
「わ、私、ルーファン様に……」
それ以上の言葉を発する前に泣き崩れ、気を失ってしまったエレーヌ。
真相はどうであれ既にルーファンとの間に事が生じてしまった。
三人娘は余りの絶望に呆然としながらエレーヌを支える事しか出来なかった。
エレーヌがルーファンの私室に招かれていた事がマリーナ達に伝わった時、三人娘に走った動揺。
第2王子でルーファンの私室に特別に招かれている。
それもデビューを控えている未婚の女性であるエレーヌが。
「エ、エレーヌお嬢様は大丈夫かしら?」
「王太子ラルフ様だけではなく、ど、どうしてルーファン様にまで」
「も、もしかしたら、い、今頃、お嬢様は……」
三人娘の脳裏にピンクの世界が漂っている。
ルーファンとエレーヌが今、まさに結ばれようとしているのでは……。
飛躍すぎではないかと思ってもここは魔窟と喩えられる王宮。
純真無垢なエレーヌが、今、正に……。
きっとそうに違いないと同時に頷いてしまう。
だらだらだらと額に汗がだらだらと。
大切な大切なお嬢様が、ルーファンの毒牙にかかろうとしている。
第2王子ルーファン。
冷静沈着で感情の起伏を感じさせない。
王太子ラルフとはまた違う美貌を放つ、孤高の王子。
その麗しさに心をときめかす令嬢達の羨望を一身に受けても微動だにしない。
噂では子爵令嬢で幼馴染のマリーベルとの恋を囁かれているが真偽は如何に、と令嬢達の関心を集めている。
身分の低い子爵令嬢であるマリーベルであるが、母方の実家がこの国でも屈指の侯爵家。
名門である侯爵家の令嬢であった母親の美貌を凌ぐとさえ言われている。
そんなマリーベルと争おうとする果敢な令嬢は今の所、存在しない。
余りに完璧なマリーベル。
そしてこの国で一番麗しいと喩えられるルーファンに対なる相手とさえ囁かれている。
だが三人娘には噂に高い美貌のマリーベルよりもエレーヌがこの国で一番可憐で美しいと思っている。
そんなエレーヌに心を奪われない男など果たしているのだろうかと思う位に。
「ああ、どうしてお嬢様の散策を引き止める事が出来なかったのかしら」
「エレーヌお嬢様の可憐な姿に懸想しない男なんているかしら。
ルーファン王子だってきっとエレーヌお嬢様に骨抜きにされたに相違ない。
だ、だって気を失ったお嬢様を自ら抱き上げてこの私室までくるなんて、今までのルーファン王子では絶対に有り得ない。
あの、影で鉄面皮とさえ言われているルーファン王子が」
「確かにエレーヌお嬢様は誰よりも可憐でお優しいわ。
それに控えめで清楚な美貌は男性のハートを射止めて離さない。
私達自慢のお嬢様であって、今までは旦那様とオリバー様達の鉄壁な囲いで守られていたけど、この王宮は魑魅魍魎が跋扈するとさえ囁かれている。
その発端が前王妃と側妃の病死。
それに付随しての王妃になったリリアンヌ王妃。
未だに前王妃と側妃の病死には色々と囁かれている。
王妃リリアンヌ様が暗躍されているのでは、と言う。
だ、だから旦那様と奥様、オリバー様達は必死になってエレーヌ様の王妃付き侍女の件について阻もうとしたけれど、勅令とあってはどう足掻いても阻む事が出来なかった。
それを事情をご存じないエレーヌ様も肌で感じたのでしょう。
お優しい方だから王妃の命令を無下にする事が何を物語るのか。
な、涙が出てしまう。
お嬢様の心美しさに」
「お嬢様の心美しさは喩え様も無いし、今はその事に浸っている場合では無いわ。
エレーヌお嬢様がルーファン王子の私室に招かれている。
これが王宮に広がってしまっては……。
由々しき問題だわ。
社交界デビューを果たす前に、既にお嬢様がルーファン王子と親密になっていると伝わってしまったら……」
「エレーヌお嬢様の未来は閉ざされてしまう。
デビュー前にルーファン王子との男女間の事を嘯かれても、仕方ない状況としか言えない。
事実、二人の間に何かあっても、それが喩え無くても私室での何があったかは、推測でしか考えられないから」
「は、早くお嬢様をルーファン王子の私室から取り戻さないと」
悶々とハラハラドキドキする三人娘の前に、エレーヌが扉を開けて入ってくる。
深い焦燥を滲ませる表情に、三人娘の脳裏に有らぬ想像をさせたが。
「な、何かあったのですか?
エレーヌお嬢様」
「……。
大丈夫。
ルーファン様の私室で朝食をご馳走になって、無くしたペンダントを頂いたの。
ただ、それだけ」
「「「……」」」
「緊張の連続で疲れてしまったわ。
少し休みたいの」
普段のエレーヌとは思えない弱々しい声に、三人娘の妄想は更に深くなっていき。
ゆったりと通り過ぎるエレーヌから漂うフレグランス。
エレーヌがつけている香水とは別の。
チラリと三人娘の視線がエレーヌの首筋に一気に注がれる。
ざああ、と血の気が引いていく。
(((な、なんなの、こ、これは!)))
紅い痕跡。
これが何を言うかと言うと……。
よく見るとエレーヌの目が赤い。
泣き腫らした感がハンパない。
(((い、いや~~~)))
さめざめと涙が自然と出てしまう。
じゅ、純真無垢なエレーヌが。
既に純潔を失った?
「エ、エレーヌ様……」
シエナに声かけられ涙ぐむエレーヌに三人娘は確信してしまう。
エレーヌがルーファンの毒牙にかかってしまった事に。
「わ、私、ルーファン様に……」
それ以上の言葉を発する前に泣き崩れ、気を失ってしまったエレーヌ。
真相はどうであれ既にルーファンとの間に事が生じてしまった。
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