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35話
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ルーファンとのキスを自然と受け入れている……。
何処か夢心地の様な感覚。
昨日、初めて出逢っていきなり唇を奪われて、そして今また。
抵抗しないといけない。
ルーファンの事なんて何も知らない。
知っているのは「貴方に心ときめいて」でのルーファンであって、今、この世界のルーファンの事なんて何一つ判らない。
ルーファンがこの国の第2王子であって、年齢が18歳、ううん、19歳になっている?
これもゲームの世界での情報。
でも、全然キャラが違う。
こんなに強引で、オレ様な、そして心を激しく揺さぶられて。
エレーヌがヒロインの立場にチェンジしたから、今、ルーファンと恋愛フラグが強制的に立っているのなら、ルーファンとのこのキスだってルーファンの意思では無いのかも知れない。
そして私もこの世界のシステムで強制的にこの成り行きを受け入れているの?
月下美人の魔法にでもかかったのかしら。
私も、そしてルーファンも。
「エレーヌ……」
濡れた目で見詰められている。
欲情を灯した目で見られた事なんて、
(何かを思い出しそうになっている……。
紗雪は29歳の人生で一柳さんしか心をときめく事なんて無かった。
ずっと憧れていて。
話せた時は気持ちが舞い上がって、そして……)
隣のビルの花壇で掃除のおばちゃんとずっと話していた。
こんな事があったとか、一柳さんの事をあれこれ話していたら、誰かが……。
誰かがじっと私達の話を聞いていて、くすくすと笑っていた。
私達以外にこの花壇にいる。
部外者である私がここにいる事がバレたら……。
一気に身体の熱が冷めていく。
ダラダラと背中に冷たい汗が流れていく。
(ど、どうしよう。
これは非常にマズイのでは……)
怒られる、と覚悟して振り向いたら。
目を細めて笑っていたのは私よりも年上の、30代の男性。
一柳さんと同じ年齢か、もしくはもっと上かもと思いながら見詰めていた。
その男性はとても背が高くて、そして彫りが深く端正な顔をしていた……。
「エレーヌ」
ソファに押し倒されてる。
キスに気を取られて自分の状況が把握出来ていなくて。
「だ、ダメ……」
これ以上は駄目だと抵抗の言葉を塞がれて。
ルーファンが胸元のリボンに手を掛ける。
リボンが解け、一つ一つボタンを外していき。
「や、やだ、こんな事……」
「何が駄目なんだ……」
耳朶に吹きかかるルーファンの吐息。
甘く噛まれて囁かれて。
(こ、こんなのおかしい。
絶対におかしい。
ルーファンの事を好きだと言う気持ちがまだ芽生えていないのに、いきなりキスされて。
そして今、身体を奪われそうになっている。
駄目よ、紗雪。
エレーヌの人生が狂ってしまう。
もし、ここで純潔を失ったら……)
「ああ、エレーヌ」
「ルーファン様、駄目……。
これ以上はやめて、くださ……」
はらりと衣服が開かれ、上半身の素肌が暴かれていく。
涙が自然と溢れていく。
こんな、強引な事、以前もあった。
抵抗して涙を流して、そして一柳さんの名を叫んで……。
そして。
乱れた映像が脳裏を掠める。
仄かに照らされている寝室。
綺麗に整えられたシーツが乱れて、男女が身体を重ねている。
あれは私と、彼と。
腕を頭上に拘束し、私の身体を暴いていく。
激しく抵抗する私の唇を塞いで全裸にさせられて。
「紗雪、俺を見ろ。
今、お前を抱こうとしている俺を見るんだ……」
「い、いや……」
私が好きなのは一柳さんなのに。
なのに私は一柳さんでは無い男性に身体を奪われる。
どうしてこんな事になったの?
どうして私を貴方は求めるの?
私の全てを貴方は奪った癖に、なのに何故私を欲しがるの?
「いや!
た、助けて、誰か助けて!
い、一柳さ、ん……」
悲痛な私の叫び声までもを奪う激しい口付けに翻弄され。
抵抗する意思はいつの間にか快楽の波に閉ざされて。
私は彼に初めてを奪われた……。
重なる恐怖が私の意識を混乱させる。
好きでも無い、男性。
私が好きなのは……。
「た、助けて……。
誰か、お、オリバー兄様!
兄様、兄様っ!」
「……」
「助けて、一柳さん」
「……」
無意識に叫んでしまった。
オリバー兄様の事を。
そして、一柳さんの事を……。
そんな私の抵抗にルーファンの手が止まる。
無言で私の衣服を整え、涙に濡れる私の頬にそっと触れる。
涙が溢れて止まらない。
ボロボロと泣き止まない私に、ルーファンがそっと眦に唇を寄せる。
ルーファンの行為にぴくんと身体が震える。
「泣かないでくれ……」
誰の所為で涙が止まらないのよ、と心の中で罵っていても、上手く言葉に表せない。
「……、お前の気持ちが落ち着いたら、送っていく」
ルーファンの言葉に、私は首を横に振る。
今はルーファンと関わりたく無い。
言葉を交わしたく無い。
「エレーヌ……」
無言を押し通す私に、ルーファンが呟く。
「俺を拒まないでくれ」
どうしてそんな哀しい目で私を見るの?
どうしてそんなに切ない目で……。
久保紗雪は29歳の人生を閉じた。
それは現実であって、この世界でエレーヌ・グーベルト伯爵令嬢として転生した事も事実であって。
何かが抜け落ちている。
記憶の一端が私の中から抜けている。
それはもしかしたら意識的に私の中から消し去ろうとしているのかも知れない。
その記憶はとても哀しくて。
そしてとても残酷で……。
だから私はこの世界に転生したの……。
ふと、過ぎる言葉に心が揺れる。
私は何から逃れる為に、この世界に転生したんだ……。
何処か夢心地の様な感覚。
昨日、初めて出逢っていきなり唇を奪われて、そして今また。
抵抗しないといけない。
ルーファンの事なんて何も知らない。
知っているのは「貴方に心ときめいて」でのルーファンであって、今、この世界のルーファンの事なんて何一つ判らない。
ルーファンがこの国の第2王子であって、年齢が18歳、ううん、19歳になっている?
これもゲームの世界での情報。
でも、全然キャラが違う。
こんなに強引で、オレ様な、そして心を激しく揺さぶられて。
エレーヌがヒロインの立場にチェンジしたから、今、ルーファンと恋愛フラグが強制的に立っているのなら、ルーファンとのこのキスだってルーファンの意思では無いのかも知れない。
そして私もこの世界のシステムで強制的にこの成り行きを受け入れているの?
月下美人の魔法にでもかかったのかしら。
私も、そしてルーファンも。
「エレーヌ……」
濡れた目で見詰められている。
欲情を灯した目で見られた事なんて、
(何かを思い出しそうになっている……。
紗雪は29歳の人生で一柳さんしか心をときめく事なんて無かった。
ずっと憧れていて。
話せた時は気持ちが舞い上がって、そして……)
隣のビルの花壇で掃除のおばちゃんとずっと話していた。
こんな事があったとか、一柳さんの事をあれこれ話していたら、誰かが……。
誰かがじっと私達の話を聞いていて、くすくすと笑っていた。
私達以外にこの花壇にいる。
部外者である私がここにいる事がバレたら……。
一気に身体の熱が冷めていく。
ダラダラと背中に冷たい汗が流れていく。
(ど、どうしよう。
これは非常にマズイのでは……)
怒られる、と覚悟して振り向いたら。
目を細めて笑っていたのは私よりも年上の、30代の男性。
一柳さんと同じ年齢か、もしくはもっと上かもと思いながら見詰めていた。
その男性はとても背が高くて、そして彫りが深く端正な顔をしていた……。
「エレーヌ」
ソファに押し倒されてる。
キスに気を取られて自分の状況が把握出来ていなくて。
「だ、ダメ……」
これ以上は駄目だと抵抗の言葉を塞がれて。
ルーファンが胸元のリボンに手を掛ける。
リボンが解け、一つ一つボタンを外していき。
「や、やだ、こんな事……」
「何が駄目なんだ……」
耳朶に吹きかかるルーファンの吐息。
甘く噛まれて囁かれて。
(こ、こんなのおかしい。
絶対におかしい。
ルーファンの事を好きだと言う気持ちがまだ芽生えていないのに、いきなりキスされて。
そして今、身体を奪われそうになっている。
駄目よ、紗雪。
エレーヌの人生が狂ってしまう。
もし、ここで純潔を失ったら……)
「ああ、エレーヌ」
「ルーファン様、駄目……。
これ以上はやめて、くださ……」
はらりと衣服が開かれ、上半身の素肌が暴かれていく。
涙が自然と溢れていく。
こんな、強引な事、以前もあった。
抵抗して涙を流して、そして一柳さんの名を叫んで……。
そして。
乱れた映像が脳裏を掠める。
仄かに照らされている寝室。
綺麗に整えられたシーツが乱れて、男女が身体を重ねている。
あれは私と、彼と。
腕を頭上に拘束し、私の身体を暴いていく。
激しく抵抗する私の唇を塞いで全裸にさせられて。
「紗雪、俺を見ろ。
今、お前を抱こうとしている俺を見るんだ……」
「い、いや……」
私が好きなのは一柳さんなのに。
なのに私は一柳さんでは無い男性に身体を奪われる。
どうしてこんな事になったの?
どうして私を貴方は求めるの?
私の全てを貴方は奪った癖に、なのに何故私を欲しがるの?
「いや!
た、助けて、誰か助けて!
い、一柳さ、ん……」
悲痛な私の叫び声までもを奪う激しい口付けに翻弄され。
抵抗する意思はいつの間にか快楽の波に閉ざされて。
私は彼に初めてを奪われた……。
重なる恐怖が私の意識を混乱させる。
好きでも無い、男性。
私が好きなのは……。
「た、助けて……。
誰か、お、オリバー兄様!
兄様、兄様っ!」
「……」
「助けて、一柳さん」
「……」
無意識に叫んでしまった。
オリバー兄様の事を。
そして、一柳さんの事を……。
そんな私の抵抗にルーファンの手が止まる。
無言で私の衣服を整え、涙に濡れる私の頬にそっと触れる。
涙が溢れて止まらない。
ボロボロと泣き止まない私に、ルーファンがそっと眦に唇を寄せる。
ルーファンの行為にぴくんと身体が震える。
「泣かないでくれ……」
誰の所為で涙が止まらないのよ、と心の中で罵っていても、上手く言葉に表せない。
「……、お前の気持ちが落ち着いたら、送っていく」
ルーファンの言葉に、私は首を横に振る。
今はルーファンと関わりたく無い。
言葉を交わしたく無い。
「エレーヌ……」
無言を押し通す私に、ルーファンが呟く。
「俺を拒まないでくれ」
どうしてそんな哀しい目で私を見るの?
どうしてそんなに切ない目で……。
久保紗雪は29歳の人生を閉じた。
それは現実であって、この世界でエレーヌ・グーベルト伯爵令嬢として転生した事も事実であって。
何かが抜け落ちている。
記憶の一端が私の中から抜けている。
それはもしかしたら意識的に私の中から消し去ろうとしているのかも知れない。
その記憶はとても哀しくて。
そしてとても残酷で……。
だから私はこの世界に転生したの……。
ふと、過ぎる言葉に心が揺れる。
私は何から逃れる為に、この世界に転生したんだ……。
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