34 / 73
34話
しおりを挟む
ルーファンとの朝食は緊張の連続だったが、最後のデザートに大好きな桃のコンポートとバニラアイス添えだったので気持ちが一気に緩み、つい笑みが零れていた。
(うーん、美味しい。
ま、満足~)
至福に時、と心の声がだだ漏れだったのか、ルーファンがくすくすと笑っている。
大輪の花が咲き綻んだ様な麗しいルーファンの笑み。
思わず、ぼーと見惚れてしまう。
(本当に綺麗な男性……)
「貴方に心ときめいて」の主要キャラ達は超美形揃いだけどルーファンはその中でも抜きんでいる。
プレイヤーさんの中で誰が一番の美形かと問うても、多分、誰もがルーファンの名を挙げるだろう。
それ程の美麗キャラである。
好みの問題はさて置いて、だけど。
(余りに神々しくて近寄り難いし、本音としては避けたい相手だわ。
美形は遠目で鑑賞するのが一番。
毎日直近で見ていたらコンプレックスに陥ってしまう。
自分よりも綺麗で整っていて、そしてもし恋人となったら……)
それ以上の事を考えて、はたと現実に戻る。
有り得ない展開を抱きつつある自分に心の中で叱咤する。
何、分不相応な事を思うんだろう。
エレーヌが唯のモブキャラである事を忘れ去っている。
いくら今モブからヒロインにチェンジしても、本来のエレーヌは唯のモブキャラであって、主要キャラ達との恋愛では対象外。
だから、もし好きになってしまったら。
シンデレラの様にヒロインと言う魔法が解けて、唯のモブキャラに戻ってしまったら。
絶対に恋愛対象として、ううん、見向きもされない。
生前の久保紗雪の様に、誰にも愛されない……。
(ああ、やだやだ。
ネガティヴになっている。
今はエレーヌなんだから、紗雪の事は過去の事。
引き摺っても何も変わらないでしょう。
今のこの世界で幸せになると決めたのに、何故、後ろ向きになってしまうんだろう)
エレーヌに転生して両親にも兄達にも、そしてグーベルト家に仕えている人々にも愛されて幸せなのに。
なのに紗雪の事を思い出して、時折、翳りを抱いてしまう。
何か大切な事を忘れていると思ってしまって……。
「……」
「え?」
「どうかしたのか?」
思いに耽っている私にルーファンの表情が硬くなっている。
私を心配してそんな表情を?
ま、まさかね。
(ま、全く紗雪ったら。
さっきから自惚れの連続よ。
ルーファンが私の事を気に留めると思うなんて)
でも、そんな勘違いをさせる程、ルーファンは私に対して気遣っている。
朝食だって私の行動を推測して整えていたに相違ない。
だって好きなデザートまで用意して。
この時期に桃のコンポートなんて……。
何処で手に入れたの?と聞いてみたい。
そしてどうして私が好きなのを知っているのも。
(この行動がルーファンが公式とは違う、誰に対しても気遣うキャラなら疑問を持たないんだけど。
さっきの言い振りになんか、俺様な感じととってしまったし。
もしかしてツンデレキャラなら有り得ないと思う……)
「エレーヌ……」
ソファに腰掛けていた私の側に座り、ルーファンが私の顔をの覗き込む。
いつの間にかルーファンが側にいる。
側に体温を感じる。
ルーファンのフレグランスが鼻腔を擽る。
そしてルーファンの美ボイスが鼓膜を奪う……。
そんな感想を抱く私の目の前に、オリバー兄様からプレゼントされたペンダントがある。
ルーファンが差し出している。
留め金が直っている?
まだ昼にはなっていない。
なのに何故。
「誰から貰った……」
「え?」
「……オレ以外の誰から貰った」
「……」
一瞬、ルーファンの言葉に思考がフリーズした。
い、今、なんて言ったの、ルーファン!
オレ以外って、ルーファンとは昨日、初めて逢ったでしょう!
な、何、嫉妬丸出しの言葉を放つの!
(な、何、こ、この展開は!
ル、ルーファンがし、嫉妬しているって、そんなバカな……)
や、やだ紗雪。
頬が熱くなっていくよ。
こんなドキドキ展開ってないでしょう。
だから、ペンダントを拾っても返さなかったの?
留め金が壊れていたのも本当は嘘なの?
私の首元から外したって言うの?
私の勘違いと思いたい。
「これはお前には相応しくない……」
そう言って私の首元に手を回す。
かたり、と音がする。
それ以上に胸の鼓動の方が激しい。
思わず俯いて目を瞑ってしまう。
何をしているの?
「目を開けろ」
ルーファン言葉に従って目を見開く。
胸元に飾られるペンダントが違う。
オリバー兄様のでは、無い。
「ルーファン様……」
「お前にはそれが相応しい」
耳元で囁かれて、私の頸に手を添える。
ルーファンの手の熱さに私の体温が一気に上昇する。
(か、身体が熱い。
ル、ルーファンの手の熱さが伝わって熱い……)
ううん、違う。
ルーファンの手の熱さでは無い。
これはルーファンの行動が、言葉が私を熱くさせる。
くらくらする。
(綺麗なアクアマリンのペンダント。
こんな見事な輝きを放つアクアマリンなんて見た事も無い)
ルーファンの瞳の様に綺麗で見惚れていると、くい、とルーファンに顎を掴まれる。
視線が交わる。
「エレーヌ……」
目が離せない。
綺麗な、綺麗なルーファンの瞳。
魂まで吸い込まれる程の……。
重なっていく。
ルーファンの唇が重なって、そして。
私は自然とルーファンとのキスを受け入れていた。
(うーん、美味しい。
ま、満足~)
至福に時、と心の声がだだ漏れだったのか、ルーファンがくすくすと笑っている。
大輪の花が咲き綻んだ様な麗しいルーファンの笑み。
思わず、ぼーと見惚れてしまう。
(本当に綺麗な男性……)
「貴方に心ときめいて」の主要キャラ達は超美形揃いだけどルーファンはその中でも抜きんでいる。
プレイヤーさんの中で誰が一番の美形かと問うても、多分、誰もがルーファンの名を挙げるだろう。
それ程の美麗キャラである。
好みの問題はさて置いて、だけど。
(余りに神々しくて近寄り難いし、本音としては避けたい相手だわ。
美形は遠目で鑑賞するのが一番。
毎日直近で見ていたらコンプレックスに陥ってしまう。
自分よりも綺麗で整っていて、そしてもし恋人となったら……)
それ以上の事を考えて、はたと現実に戻る。
有り得ない展開を抱きつつある自分に心の中で叱咤する。
何、分不相応な事を思うんだろう。
エレーヌが唯のモブキャラである事を忘れ去っている。
いくら今モブからヒロインにチェンジしても、本来のエレーヌは唯のモブキャラであって、主要キャラ達との恋愛では対象外。
だから、もし好きになってしまったら。
シンデレラの様にヒロインと言う魔法が解けて、唯のモブキャラに戻ってしまったら。
絶対に恋愛対象として、ううん、見向きもされない。
生前の久保紗雪の様に、誰にも愛されない……。
(ああ、やだやだ。
ネガティヴになっている。
今はエレーヌなんだから、紗雪の事は過去の事。
引き摺っても何も変わらないでしょう。
今のこの世界で幸せになると決めたのに、何故、後ろ向きになってしまうんだろう)
エレーヌに転生して両親にも兄達にも、そしてグーベルト家に仕えている人々にも愛されて幸せなのに。
なのに紗雪の事を思い出して、時折、翳りを抱いてしまう。
何か大切な事を忘れていると思ってしまって……。
「……」
「え?」
「どうかしたのか?」
思いに耽っている私にルーファンの表情が硬くなっている。
私を心配してそんな表情を?
ま、まさかね。
(ま、全く紗雪ったら。
さっきから自惚れの連続よ。
ルーファンが私の事を気に留めると思うなんて)
でも、そんな勘違いをさせる程、ルーファンは私に対して気遣っている。
朝食だって私の行動を推測して整えていたに相違ない。
だって好きなデザートまで用意して。
この時期に桃のコンポートなんて……。
何処で手に入れたの?と聞いてみたい。
そしてどうして私が好きなのを知っているのも。
(この行動がルーファンが公式とは違う、誰に対しても気遣うキャラなら疑問を持たないんだけど。
さっきの言い振りになんか、俺様な感じととってしまったし。
もしかしてツンデレキャラなら有り得ないと思う……)
「エレーヌ……」
ソファに腰掛けていた私の側に座り、ルーファンが私の顔をの覗き込む。
いつの間にかルーファンが側にいる。
側に体温を感じる。
ルーファンのフレグランスが鼻腔を擽る。
そしてルーファンの美ボイスが鼓膜を奪う……。
そんな感想を抱く私の目の前に、オリバー兄様からプレゼントされたペンダントがある。
ルーファンが差し出している。
留め金が直っている?
まだ昼にはなっていない。
なのに何故。
「誰から貰った……」
「え?」
「……オレ以外の誰から貰った」
「……」
一瞬、ルーファンの言葉に思考がフリーズした。
い、今、なんて言ったの、ルーファン!
オレ以外って、ルーファンとは昨日、初めて逢ったでしょう!
な、何、嫉妬丸出しの言葉を放つの!
(な、何、こ、この展開は!
ル、ルーファンがし、嫉妬しているって、そんなバカな……)
や、やだ紗雪。
頬が熱くなっていくよ。
こんなドキドキ展開ってないでしょう。
だから、ペンダントを拾っても返さなかったの?
留め金が壊れていたのも本当は嘘なの?
私の首元から外したって言うの?
私の勘違いと思いたい。
「これはお前には相応しくない……」
そう言って私の首元に手を回す。
かたり、と音がする。
それ以上に胸の鼓動の方が激しい。
思わず俯いて目を瞑ってしまう。
何をしているの?
「目を開けろ」
ルーファン言葉に従って目を見開く。
胸元に飾られるペンダントが違う。
オリバー兄様のでは、無い。
「ルーファン様……」
「お前にはそれが相応しい」
耳元で囁かれて、私の頸に手を添える。
ルーファンの手の熱さに私の体温が一気に上昇する。
(か、身体が熱い。
ル、ルーファンの手の熱さが伝わって熱い……)
ううん、違う。
ルーファンの手の熱さでは無い。
これはルーファンの行動が、言葉が私を熱くさせる。
くらくらする。
(綺麗なアクアマリンのペンダント。
こんな見事な輝きを放つアクアマリンなんて見た事も無い)
ルーファンの瞳の様に綺麗で見惚れていると、くい、とルーファンに顎を掴まれる。
視線が交わる。
「エレーヌ……」
目が離せない。
綺麗な、綺麗なルーファンの瞳。
魂まで吸い込まれる程の……。
重なっていく。
ルーファンの唇が重なって、そして。
私は自然とルーファンとのキスを受け入れていた。
0
お気に入りに追加
98
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
醜いと蔑まれている令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます
ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。
そして前世の私は…
ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。
とある侯爵家で出会った令嬢は、まるで前世のとあるホラー映画に出てくる貞◯のような風貌だった。
髪で顔を全て隠し、ゆらりと立つ姿は…
悲鳴を上げないと、逆に失礼では?というほどのホラーっぷり。
そしてこの髪の奥のお顔は…。。。
さぁ、お嬢様。
私のゴットハンドで世界を変えますよ?
**********************
『おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』の続編です。
続編ですが、これだけでも楽しんでいただけます。
前作も読んでいただけるともっと嬉しいです!
転生侍女シリーズ第二弾です。
短編全4話で、投稿予約済みです。
よろしくお願いします。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
変な転入生が現れましたので色々ご指摘さしあげたら、悪役令嬢呼ばわりされましたわ
奏音 美都
恋愛
上流階級の貴族子息や令嬢が通うロイヤル学院に、庶民階級からの特待生が転入してきましたの。
スチュワートやロナルド、アリアにジョセフィーンといった名前が並ぶ中……ハルコだなんて、おかしな
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
皇帝の番~2度目の人生謳歌します!~
saku
恋愛
竜人族が治める国で、生まれたルミエールは前世の記憶を持っていた。
前世では、一国の姫として生まれた。両親に愛されずに育った。
国が戦で負けた後、敵だった竜人に自分の番だと言われ。遠く離れたこの国へと連れてこられ、婚約したのだ……。
自分に優しく接してくれる婚約者を、直ぐに大好きになった。その婚約者は、竜人族が治めている帝国の皇帝だった。
幸せな日々が続くと思っていたある日、婚約者である皇帝と一人の令嬢との密会を噂で知ってしまい、裏切られた悲しさでどんどんと痩せ細り死んでしまった……。
自分が死んでしまった後、婚約者である皇帝は何十年もの間深い眠りについていると知った。
前世の記憶を持っているルミエールが、皇帝が眠っている王都に足を踏み入れた時、止まっていた歯車が動き出す……。
※小説家になろう様でも公開しています
ヒロイン不在だから悪役令嬢からお飾りの王妃になるのを決めたのに、誓いの場で登場とか聞いてないのですが!?
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
ヒロインがいない。
もう一度言おう。ヒロインがいない!!
乙女ゲーム《夢見と夜明け前の乙女》のヒロインのキャロル・ガードナーがいないのだ。その結果、王太子ブルーノ・フロレンス・フォード・ゴルウィンとの婚約は継続され、今日私は彼の婚約者から妻になるはずが……。まさかの式の最中に突撃。
※ざまぁ展開あり
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
このやってられない世界で
みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。
悪役令嬢・キーラになったらしいけど、
そのフラグは初っ端に折れてしまった。
主人公のヒロインをそっちのけの、
よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、
王子様に捕まってしまったキーラは
楽しく生き残ることができるのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ヤンデレお兄様に殺されたくないので、ブラコンやめます!(長編版)
夕立悠理
恋愛
──だって、好きでいてもしかたないもの。
ヴァイオレットは、思い出した。ここは、ロマンス小説の世界で、ヴァイオレットは義兄の恋人をいじめたあげくにヤンデレな義兄に殺される悪役令嬢だと。
って、むりむりむり。死ぬとかむりですから!
せっかく転生したんだし、魔法とか気ままに楽しみたいよね。ということで、ずっと好きだった恋心は封印し、ブラコンをやめることに。
新たな恋のお相手は、公爵令嬢なんだし、王子様とかどうかなー!?なんてうきうきわくわくしていると。
なんだかお兄様の様子がおかしい……?
※小説になろうさまでも掲載しています
※以前連載していたやつの長編版です
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる