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14話
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「ねえ、知っている?
居間にて旦那様と奥様が王太子ラルフ様と、エレーヌお嬢様の事でお話されていて。
どうもその内容がお嬢様を王妃様付きの侍女として王室に召されたいと。
そんな事になったら、エレーヌお嬢様は、このグーベルト家にお戻りになる事が難しくなるわ。
だって、エレーヌお嬢様のお姿と性格を王都の貴族の子息達が知れば、すぐにエレーヌお嬢様の虜になってしまうから。
エレーヌお嬢様は、御自身のお姿の事を謙遜していらっしゃるけど、控えめで清楚な美貌は、私達から見ても魅力に溢れた素敵な方だと思うし。
それにあの汚れない心優しい性格を知れば、誰だってエレーヌお嬢様を好きになるわ。
だって普通、貴族の令嬢って言えば高飛車で我儘で傲慢で、下々の者をまるで奴隷の如く扱うし。
そんな話が王都の侍女ネットワークでよく交わされているけど、そんな話を聞いたらうちのお嬢様の出来の良さったら天下一品だわ。
私が男で貴族の子息に生まれていたら、即、お嬢様に求婚だわ。
ふふふ、既成事実を作ってでもお嬢様を手に入れようとするかも……。
こほん、それは冗談として。
今までは領主様とご子息であるオリバー様とアルフォンソ様の鉄壁な囲があったからこそ、お嬢様の存在は世に広まる事は無かったけど。
この度の事がもし本決まりになって、お嬢様の存在が公になったら……。
ああ、考えただけでも恐ろしい。
エレーヌお嬢様が王都の汚れた男達の毒牙にかかってしまう。
これは由々しき問題だわ。
直ぐにでも王都の侍女ネットワークに協力を求めてお嬢様を護らないと」
「ねえ、シエナ。
それってまだ決まった事では無いでしょう?
あの領主様が首を縦に振ると思う?
王妃様直々の申し出でだとしても、領主様は断固として受け入れないと思うわ。
だって我が領主様ほど王室を毛嫌いされている方はいないでしょう。
昔、領主様が若かりし頃、このグーベルト家も王室の諍いの余波を受けたと言われているし」
「そう、散々な目に遭われたと執事のリチャード様が話されていた事を昔、聞いたわ。
詳細は流石に教えては下さらなかったけど。
グーベルト家では一切触れてはいけない禁忌な事、らしい」
「だけどそんな領主様がよくオリバー様の王都行きをお許しになったわね。
未だに不思議な事だと思っているの、私。
まあ、オリバー様の優秀さは類を見ないし、このグーベルト家で生涯を終わらすには惜しいと親心で思われたのかしら」
「確かにオリバー様は優秀な方だわ。
そしてお人柄も中々どうして領主様に似て領民にお優しいし、エレーヌお嬢様を溺愛されているし。
この度のお話、オリバー様だって断固として反対されるって。
大切な妹君を王都に、それも王妃様付きの侍女となって王都に住む事になったら……。
ああ、エレーヌお嬢様の身の危機、ううん、貞操の問題だわ。
お嬢様が汚れてしまう。
駄目、絶対に反対!
私達の手でお嬢様をお守りしないと」
「ねえ、マリーナ。
確かにその話も大事だけど、今、一番大事な事は、エレーヌお嬢様のお誕生日のお祝いではないの?
そろそろお嬢様もお目覚めになっているでしょう。
先程、オリバー様がお嬢様の為にハーブティーをご用意されたから。
私達は今からお嬢様を素敵なレディにする為の準備に取り掛からないと」
「そ、そうだったわ。
エレーヌお嬢様の16歳のお誕生日だもの。
今までにない程お嬢様を磨き上げて、皆様にお披露目しないと。
ご領主様ご夫妻に、オリバー様とアルフォンソ様、それに、ああもう嫌だけど、王太子ラルフ様にも見せつけないと。
うちのお嬢様の麗しいお姿を」
燃えに燃えるグーベルト家のかしまし3人娘。
この3人の侍女達のエレーヌの心酔っぷりは中々どうしたものか。
余りのお嬢様ラブな3人によって磨きに磨き上げられたエレーヌに、王太子ラルフが更に心を奪われたのは言うまでも無く。
ラルフがグーベルト家を出立する際、お持ち帰りにされそうになったエレーヌを、断固として離さなかったオリバーによってどうにかエレーヌの身の危険は免れたが。
そして悲しい事にどんなにエレーヌが抵抗しても、ゲームの強制力は半端なかった。
社交界デビューは本人の意思に関係なく決定事項となってしまった。
王妃直々のご指名で、社交界デビューを余儀なく果たさなければならに羽目になり。
ゲームの展開では、一ヶ月後であった社交界デビューが誕生日後の一週間後に繰り上げられる事になるとは、エレーヌも、そしてグーベルト家の人々もその時は誰も想定する事が出来なかった。
そしてエレーヌと暫しの別れを迎える事も。
社交界デビューを果たしたその日、エレーヌはグーベルト家に戻る事はなく、王妃付きの侍女としてそのまま王都に滞在する様になる。
「ねえ、知っている?
居間にて旦那様と奥様が王太子ラルフ様と、エレーヌお嬢様の事でお話されていて。
どうもその内容がお嬢様を王妃様付きの侍女として王室に召されたいと。
そんな事になったら、エレーヌお嬢様は、このグーベルト家にお戻りになる事が難しくなるわ。
だって、エレーヌお嬢様のお姿と性格を王都の貴族の子息達が知れば、すぐにエレーヌお嬢様の虜になってしまうから。
エレーヌお嬢様は、御自身のお姿の事を謙遜していらっしゃるけど、控えめで清楚な美貌は、私達から見ても魅力に溢れた素敵な方だと思うし。
それにあの汚れない心優しい性格を知れば、誰だってエレーヌお嬢様を好きになるわ。
だって普通、貴族の令嬢って言えば高飛車で我儘で傲慢で、下々の者をまるで奴隷の如く扱うし。
そんな話が王都の侍女ネットワークでよく交わされているけど、そんな話を聞いたらうちのお嬢様の出来の良さったら天下一品だわ。
私が男で貴族の子息に生まれていたら、即、お嬢様に求婚だわ。
ふふふ、既成事実を作ってでもお嬢様を手に入れようとするかも……。
こほん、それは冗談として。
今までは領主様とご子息であるオリバー様とアルフォンソ様の鉄壁な囲があったからこそ、お嬢様の存在は世に広まる事は無かったけど。
この度の事がもし本決まりになって、お嬢様の存在が公になったら……。
ああ、考えただけでも恐ろしい。
エレーヌお嬢様が王都の汚れた男達の毒牙にかかってしまう。
これは由々しき問題だわ。
直ぐにでも王都の侍女ネットワークに協力を求めてお嬢様を護らないと」
「ねえ、シエナ。
それってまだ決まった事では無いでしょう?
あの領主様が首を縦に振ると思う?
王妃様直々の申し出でだとしても、領主様は断固として受け入れないと思うわ。
だって我が領主様ほど王室を毛嫌いされている方はいないでしょう。
昔、領主様が若かりし頃、このグーベルト家も王室の諍いの余波を受けたと言われているし」
「そう、散々な目に遭われたと執事のリチャード様が話されていた事を昔、聞いたわ。
詳細は流石に教えては下さらなかったけど。
グーベルト家では一切触れてはいけない禁忌な事、らしい」
「だけどそんな領主様がよくオリバー様の王都行きをお許しになったわね。
未だに不思議な事だと思っているの、私。
まあ、オリバー様の優秀さは類を見ないし、このグーベルト家で生涯を終わらすには惜しいと親心で思われたのかしら」
「確かにオリバー様は優秀な方だわ。
そしてお人柄も中々どうして領主様に似て領民にお優しいし、エレーヌお嬢様を溺愛されているし。
この度のお話、オリバー様だって断固として反対されるって。
大切な妹君を王都に、それも王妃様付きの侍女となって王都に住む事になったら……。
ああ、エレーヌお嬢様の身の危機、ううん、貞操の問題だわ。
お嬢様が汚れてしまう。
駄目、絶対に反対!
私達の手でお嬢様をお守りしないと」
「ねえ、マリーナ。
確かにその話も大事だけど、今、一番大事な事は、エレーヌお嬢様のお誕生日のお祝いではないの?
そろそろお嬢様もお目覚めになっているでしょう。
先程、オリバー様がお嬢様の為にハーブティーをご用意されたから。
私達は今からお嬢様を素敵なレディにする為の準備に取り掛からないと」
「そ、そうだったわ。
エレーヌお嬢様の16歳のお誕生日だもの。
今までにない程お嬢様を磨き上げて、皆様にお披露目しないと。
ご領主様ご夫妻に、オリバー様とアルフォンソ様、それに、ああもう嫌だけど、王太子ラルフ様にも見せつけないと。
うちのお嬢様の麗しいお姿を」
燃えに燃えるグーベルト家のかしまし3人娘。
この3人の侍女達のエレーヌの心酔っぷりは中々どうしたものか。
余りのお嬢様ラブな3人によって磨きに磨き上げられたエレーヌに、王太子ラルフが更に心を奪われたのは言うまでも無く。
ラルフがグーベルト家を出立する際、お持ち帰りにされそうになったエレーヌを、断固として離さなかったオリバーによってどうにかエレーヌの身の危険は免れたが。
そして悲しい事にどんなにエレーヌが抵抗しても、ゲームの強制力は半端なかった。
社交界デビューは本人の意思に関係なく決定事項となってしまった。
王妃直々のご指名で、社交界デビューを余儀なく果たさなければならに羽目になり。
ゲームの展開では、一ヶ月後であった社交界デビューが誕生日後の一週間後に繰り上げられる事になるとは、エレーヌも、そしてグーベルト家の人々もその時は誰も想定する事が出来なかった。
そしてエレーヌと暫しの別れを迎える事も。
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