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(うーん、今日もいい天気)
私、エレーヌの朝はすこぶる早い。
伯爵令嬢なのに、日が明ける前に起き、窓を開け部屋の換気を行い、ハーブ畑に水やりをするのが毎日の習慣となっている。
5歳の時、生前の記憶が蘇った私は、まず初めに生前、自分がやりたかった事をしようと試みた。
色々なハーブを育て、ハーブティーとかお菓子作りとか、とにかく身体に優しい生活をしたかった。
瑞々しいハーブを見ると幸せホルモンであるセロトニンがかなり分泌されてる。
一通り水やりを済ませ、今日の朝飲むハーブティーの材料を摘み、籠へ入れていく。
ぷちんと、ローズマリーやミント等摘みながら、その芳しい薫りに悦に入る。
(ああ、よく育っている。
畑も良いし、日当たりも最高。
作物を育てるのに我が領地はかなり良い環境だと言える)
最初、土いじりを始めた時は、皆、何事かと私を訝しみ、直ぐに主治医の医師を呼ばなければ、と屋敷中、大騒動したものだが。
そりゃそうだ。
覚醒する前の私って、本当に薄らぼんやりとした意志が希薄な大人しい子供だった。
それが急に土いじりだ、健康に良い事をしたいって、何事だーと思われても致し方ない。
生死を彷徨って、生き長らえたのだから、これから先、身体に良い生き方をしたいと言う私の熱弁に心打たれた両親や兄達は涙を流しながら、直ぐに苗や種、そしてハーブ育てるのに適している場所を提供してくれた。
肥料に関しても、庭師のベンが事細かく指示し、上手く育てる事が出来る様に私を指導してくれた。
皆、優しい人達だ。
子供の勝手言っての我儘に律儀に付き合ってくれて見守ってくれる。
皆の温かい気持ちが私のハーブ育ての熱に気合を入れてくれた。
そして見渡す限りの一面に、たゆたゆと見事に育ったハーブ達に私の喜びは計り知れず。
感動の余り思いっきり泣いていたら、また両親や兄達が何事かーと主治医の先生を呼び出す始末。
本当に皆、過保護なんだから。
でも、そんな過保護な環境を私は心の中で密かに感謝してる。
神様、もしいるのなら貴方に言いたい。
私をこの世界に転生してくれてありがとう、って。
平凡なモブキャラ。
見た目も平凡、生き方も平凡。
でも誰よりも恵まれて、そして誰よりも幸せだと自負している。
(ああ、生前の私が今の私を見たら……。
うわああ、凄く妬まれそう)
冗談まじりに考え、くすりと笑う。
こんな風に自然と笑える自分が愛しい。
これも恵まれた環境が成せる技か。
うーん、幸せホルモンのセロトニン。
流石と言うか、本当に侮れない。
今後もこの生活を維持出来るように頑張ろう。
心の中でガッツポーズをした。
(本当に紗雪として生きてた時の私は、生気も無く顔色もすこぶる悪かったな。
いっつもこの世の終わりの様な表情していたら、誰も近寄らないわ)
ふと、昔の自分に思いを偲ばす。
生前の私はとにかく何事にも必死で余裕が無く、ただただその日を無事に終える事だけに生きていた。
未来に対しての希望も希薄、恋愛に対しても、仕事に対しても明るい未来を抱く事が出来なかった。
そんな自分に偶然出会った、「貴方に心ときめいて」が心の拠り所になっていたけど。
そして一柳さんに対する密かな恋情。
淡い恋。
その事に思い出してまず考えたのが、生き方改革であった。
とにかく不健康であった生き方を改善したい。
29歳までの食生活が自分の生命に対して危機感を抱かせた。
不規則な生活、栄養の偏った食事、そして日に当たる事ないストレスだらけの日々。
ストレス発散が乙女ゲーム、それもピンクの世界を目指していたなんて、自らを振り返ると余りにも侘しい。
一柳さんに対して恋心を抱いても、女として容姿は凡庸、教養も無し、家柄なんて以ての外。
何一つ、自慢出来るモノなんて無い。
自らの手で手に入れようとしても、全てが悪い方向に向かって、前向きになれない自分がいて。
頑張っても、真面目に生きていても、必ず成功して幸せになるとは到底思えない環境だった。
努力しても報われない。
そんな風にしか思えない自分が嫌で嫌で。
だからこの世界に転生したのかもしれない。
最近、妙にそんな風に思ってしまう。
この頃、特にそうだ。
だって、もうそろそろ物語が始まるとする年齢になるから。
エレーヌはこの物語のヒロインと同じ年で、社交界デビューで友人となる事になっている。
16歳の誕生日を迎える一ヶ月後に。
(あーあ、最近、もう本当にピンクの世界なんてどうでも良いんだけど。
私、このままモブキャラで生涯を終えたいし)
そう願っても、この物語の強制力は半端なかった。
私の必死なる抵抗も功を為さず、物語は始まろうとする。
私、エレーヌは一ヶ月後の誕生日を迎えた一週間後。
社交界デビューを果たす事になる。
私、エレーヌの朝はすこぶる早い。
伯爵令嬢なのに、日が明ける前に起き、窓を開け部屋の換気を行い、ハーブ畑に水やりをするのが毎日の習慣となっている。
5歳の時、生前の記憶が蘇った私は、まず初めに生前、自分がやりたかった事をしようと試みた。
色々なハーブを育て、ハーブティーとかお菓子作りとか、とにかく身体に優しい生活をしたかった。
瑞々しいハーブを見ると幸せホルモンであるセロトニンがかなり分泌されてる。
一通り水やりを済ませ、今日の朝飲むハーブティーの材料を摘み、籠へ入れていく。
ぷちんと、ローズマリーやミント等摘みながら、その芳しい薫りに悦に入る。
(ああ、よく育っている。
畑も良いし、日当たりも最高。
作物を育てるのに我が領地はかなり良い環境だと言える)
最初、土いじりを始めた時は、皆、何事かと私を訝しみ、直ぐに主治医の医師を呼ばなければ、と屋敷中、大騒動したものだが。
そりゃそうだ。
覚醒する前の私って、本当に薄らぼんやりとした意志が希薄な大人しい子供だった。
それが急に土いじりだ、健康に良い事をしたいって、何事だーと思われても致し方ない。
生死を彷徨って、生き長らえたのだから、これから先、身体に良い生き方をしたいと言う私の熱弁に心打たれた両親や兄達は涙を流しながら、直ぐに苗や種、そしてハーブ育てるのに適している場所を提供してくれた。
肥料に関しても、庭師のベンが事細かく指示し、上手く育てる事が出来る様に私を指導してくれた。
皆、優しい人達だ。
子供の勝手言っての我儘に律儀に付き合ってくれて見守ってくれる。
皆の温かい気持ちが私のハーブ育ての熱に気合を入れてくれた。
そして見渡す限りの一面に、たゆたゆと見事に育ったハーブ達に私の喜びは計り知れず。
感動の余り思いっきり泣いていたら、また両親や兄達が何事かーと主治医の先生を呼び出す始末。
本当に皆、過保護なんだから。
でも、そんな過保護な環境を私は心の中で密かに感謝してる。
神様、もしいるのなら貴方に言いたい。
私をこの世界に転生してくれてありがとう、って。
平凡なモブキャラ。
見た目も平凡、生き方も平凡。
でも誰よりも恵まれて、そして誰よりも幸せだと自負している。
(ああ、生前の私が今の私を見たら……。
うわああ、凄く妬まれそう)
冗談まじりに考え、くすりと笑う。
こんな風に自然と笑える自分が愛しい。
これも恵まれた環境が成せる技か。
うーん、幸せホルモンのセロトニン。
流石と言うか、本当に侮れない。
今後もこの生活を維持出来るように頑張ろう。
心の中でガッツポーズをした。
(本当に紗雪として生きてた時の私は、生気も無く顔色もすこぶる悪かったな。
いっつもこの世の終わりの様な表情していたら、誰も近寄らないわ)
ふと、昔の自分に思いを偲ばす。
生前の私はとにかく何事にも必死で余裕が無く、ただただその日を無事に終える事だけに生きていた。
未来に対しての希望も希薄、恋愛に対しても、仕事に対しても明るい未来を抱く事が出来なかった。
そんな自分に偶然出会った、「貴方に心ときめいて」が心の拠り所になっていたけど。
そして一柳さんに対する密かな恋情。
淡い恋。
その事に思い出してまず考えたのが、生き方改革であった。
とにかく不健康であった生き方を改善したい。
29歳までの食生活が自分の生命に対して危機感を抱かせた。
不規則な生活、栄養の偏った食事、そして日に当たる事ないストレスだらけの日々。
ストレス発散が乙女ゲーム、それもピンクの世界を目指していたなんて、自らを振り返ると余りにも侘しい。
一柳さんに対して恋心を抱いても、女として容姿は凡庸、教養も無し、家柄なんて以ての外。
何一つ、自慢出来るモノなんて無い。
自らの手で手に入れようとしても、全てが悪い方向に向かって、前向きになれない自分がいて。
頑張っても、真面目に生きていても、必ず成功して幸せになるとは到底思えない環境だった。
努力しても報われない。
そんな風にしか思えない自分が嫌で嫌で。
だからこの世界に転生したのかもしれない。
最近、妙にそんな風に思ってしまう。
この頃、特にそうだ。
だって、もうそろそろ物語が始まるとする年齢になるから。
エレーヌはこの物語のヒロインと同じ年で、社交界デビューで友人となる事になっている。
16歳の誕生日を迎える一ヶ月後に。
(あーあ、最近、もう本当にピンクの世界なんてどうでも良いんだけど。
私、このままモブキャラで生涯を終えたいし)
そう願っても、この物語の強制力は半端なかった。
私の必死なる抵抗も功を為さず、物語は始まろうとする。
私、エレーヌは一ヶ月後の誕生日を迎えた一週間後。
社交界デビューを果たす事になる。
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