Fate of love 〜運命の恋〜

華南

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6話

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***

恒と偽りの式を挙げ、そのまま式を挙げたホテルで蜜月を迎えようとしていたみのりは、佑の指示に従いそのままウェディングドレスを纏い、佑を待っていた。

本当はここから逃げ出したい。
ずっと佑から逃れたいと思っていた。
今でも自分が愛しているのは和彦だけ。

10年の歳月が経っても和彦に対する想いは色褪せる事が無かった。

「ねえ、みのり。
初めてお前の身体に触れた時、お前は僕を拒んだね。
僕がみのりの番だって言っても、全然、信じてくれなくて僕はどれだけ哀しかったか解る?」

「……」

「こうしてみのりの身体を暴こうとして、強引にみのりの衣服に手をかけ、上半身裸体にして」

ビリリ、絹が引き裂く音がみのりの耳を犯す。
佑の眼が底知れぬ怒りを漂わせている。
この世界の摂理と言っても、愛する番が己では無い男と、神前で永遠の愛を誓い合った。
それも2度も、だ。

身体中の熱が沸騰するかと思う程、佑の思考は収まりのつかない怒りで荒れ狂っていた。
みのりが結衣を護る為に恒と偽りの婚姻を結んだ事に、佑は今直ぐにでも結衣をこの世から抹殺したかった。
だが、そうするとみのりの命が危ぶまれる。
結衣を我が娘の如くこよなく愛するみのりが、そのまま命をこの世に繋げている事は無いだろう。

それにディオンも。
最愛の番を喪った恒が佑を道連れにこの世から去ろうとするのは目に見えている。

獣人が愛する番の命を奪われて、復讐しないのは逆に愚かである。
その獣人の理を佑は充分、理解していた。

「や、やめて……」

破られたウェディングドレスをみのりの身体から剥がし、下着姿になったみのりの身体に覆い被さる。
ベットに身体を沈められ身体の自由を奪われたみのりは、震えながら佑の顔を見詰めた。

恐怖で蒼ざめている己を実感する。
がたがたと身体中が震えて止まらない。

この十年間、まさに地獄だった。
佑と出会い、みのりの事をずっと番だと囁き続ける佑の異常な執着が恐ろしかった。
佑の視界から逃げ出したいと、何度も何度も心の中で願っていた。

だが、もし自分が佑から逃れたら佑は結衣の命を奪ってしまう。
みのりの心が未だに結衣の父親に向けられている事に佑は気付いている。

その原因が結衣にあると佑は思っている。

そうでは無い。
それだけとは言い切れない。
佑のみのりへの想いはみのりの常識では余りにも異質過ぎる。

理解に苦しい。
いや、理解したいとも思えない。

番だから求めるのは当たり前。
愛を交わすのが当たり前。
番しか存在を認めない佑の異常性は、この世の常識を持ち合わすみのりには不可解としか言えない。

パチン、とブラのフォックが外される。
やけにリアルにみのりの鼓膜に響く。

ホテルの最上階にあるスウィートルーム。
この世界での恒と佑は日本でも屈指の資産を持つ佐崎グループの御曹司である。
このホテルも佐崎グループが有するホテルのスウィートルームである。

何度も佑には裸体を晒している。
この十年間、最後の一線を越える事はしなかったが、みのりは佑の愛撫を身体の隅々まで受けていた。

「ああ、お前のここにやっと己を放つ事が出来る……」

艶やかに微笑みながら佑はみのりのショーツに手をかける。
床にブラとショーツが落され、全裸になったみのりの淡いに手を這わせ、ゆっくりと中に指を入れていく。
ずぷり、と水音が聴こえる。

「い、いや」

「みのり。
僕の愛を受け入れるんだ……」

強引に唇を奪われ、中を解する佑にみのりは首を振りながら抵抗を試みる。

(いや!
愛してもいない男に身体を奪われるなんて嫌!
和彦さん、助けて……)

「みのり……。
この十年間、僕は待った。
いい加減、僕の番と言う事を自覚しろ」

「あ、ああ……」

佑の指の抜く差しが激しくなっていく。
思考が恐怖と快楽の間で彷徨っている。
感じたく無い、だけど、散々佑によって馴らされた身体は直ぐに快楽を拾ってしまう。
みのりの意思とは関係なく反応する身体に、みのりの思考が一瞬、嫌悪に陥るが直ぐにた佑が与える快楽に塗り潰される。

「あん、だ、駄目……」

「みのり……」

いつの間にか、唇が解かれ佑が与える快楽にみのりは譫言の様に言葉を紡いでいる。
意味を無さないみのりの言葉に、自然と佑の口角が上がる。

ずっとみのりの身体に快楽を植え付けていた。
10年前、出会ってからずっと。
最初、拒んでいたみのりも結衣の事をチラつかすと大人しく佑の命に従った。
この世界でも、己の世界でも佑は己の思うがまま、権力を振るう事が出来る存在として生を受けている。
結衣をこの世から抹殺する事なんて容易いとみのりの耳元で囁いた時の、みのりの形相。
その表情を佑は今でも思い出しては、言いようもない苛立ちに心が揺さぶられる。
みのりにとって結衣の存在が絶対的だと言う証。

己を番として受け入れての交接では、無い。

今もそうだ。

みのりを思うまま快楽に落とし身体を繋げても、みのりの心に佑を愛する気持ちがあるとは思えない。

それでも佑はみのりを愛する事を止める事が出来ない。

番だからと言えばそれまでだと、佑は自虐的に嗤う。
己は人の姿を纏っていても、所詮は獣人である。

獣人にとっての番は絶対である。
だが人間としての「佑」にとっては、みのりは……。

(いや、僕は最初から人では無い。
偉大なる獣王として生を受けている僕は……)

みのりの両膝に手を入れ、佑はみのりに己を当てがい中に進めていく。

「みのり、愛している」

みのりの口元から苦渋に満ちた声が零れる。
ぬちゃりと音を立てる水音に下肢に流れる鮮血。

(ああ、みのり、みのり!)

佑の思考を狂わすみのりの濃厚な薫り。

腰を掴み激しく中を穿つ佑に、みのりはただただ嬌声を上げるだけ。

(ああ、これが番との情交か。
何て芳しい、濃密な薫りだ。
思考が蕩けて何も考える事が出来無い)

「みのり……」

チカチカと瞼に光がスパークする。
みのりの奥深く白濁が弾け、どくどくと男根が脈打つ音が佑の脳髄に直に響く。
長い射精に佑は恍惚となる。
みのりの子宮に余す事なく己の精を注いでいる。

「はあ……」と自然に零れる溜息の艶やかさ。

佑の心に今までに無い充足感に満ちている。

「みのり……」

佑の甘い囁きにみのりは眼を瞑り、聞いている。
自然と眦に涙が滲む。

佑に身体を奪われた。
愛してもいない佑に……。

和彦さん、御免なさい、とみのりは心の中で謝罪する。

(愛しているのは貴方だけ。
和彦さん……)

そう、心の中で呟きながらみのりは意識を手放した。
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