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「あ、ああ。ごめん」
「別に怒ってないからいいよ。
泊まる所はねー。出来たら綺麗なところがいいなぁ。あ、新しいっていう事じゃなくて清潔そうなって事ね」
「……そうだな。それに兎耳族がいれば尚良しってところだろ? ユウなら」
「それはもちろん! でも、兎耳族は宿屋の経営はしていないから、無理なんだよね。あーあ」
ナユタが話題転換に乗ってくれたので、不自然にならない様に更に内容を膨らます。
残念な気持ちは本当なので、第三者が聞いたところで違和感は感じない筈。
誰が聞いているというわけでもないけど、なんとなく、ね。
そんな感じで会話をしながら、私達が見つけたのはこじんまりとして可愛らしい感じの宿だった。
出入り口の両端にプランターが二、三個置いてあり、慎ましく黄色と白の小さな花が咲いていた。壁は木の風合いをそのまま生かしており、屋根と宿屋の看板がピンク色に斑なく塗られている。
新しい建物ではないが、特に目立った汚れも壊れている所もなかったのでキチンと管理されていると思う。
「ナユタ。ここでいいよね?」
「そうだな。空きがあるのを願っておこう」
ナユタの了承も得たので、意気軒昂と宿屋のドアを開けた。
「いらっしゃい」
出迎えてくれたのは、もふもふ。基──狼人族だった。
「泊まりか?」
「ああ。二部屋希望だが、空きはあるか?」
「どーしてっ! どーしてなのよぉっ……」
行き成り叫びだした私に驚いたのか何なのか……。
鋭い一瞥を貰いました。狼人族らうじんぞくの──男性にっ!!
可愛さの微塵もない、このおじ……お兄さんに睨まれるとちびっ子は間違いなく失禁しちゃうだろうというぐらい怖い顔。
身体を鍛えるのが趣味ですか? と聞きたいぐらい、筋肉隆々で逆三角形な体型。上半身に関してはナユタより体格良いよ、間違いなく。
内勤より外勤、事務職より肉体労働。そんな言葉を体現している風貌なのに、何故っ!!
「おいおい、大丈夫か? この嬢ちゃん……」
「まあ、問題ない。理由も分かってるしな」
悲嘆にくれる私を余所に、ナユタとその男性私の事を話している。
行き成り叫びだした私が悪いとは思っている、それでもやっぱり叫ばずにはいられない。
「なんで、なんでこんな逞しいのよー!! ううっ。ここはもっと可愛らしいもしくは色気のあるお姉さんでしょうが……」
「は? 本当に大丈夫なのか?」
「いや、まあ。時間が経てば……」
「ううっ。私の癒し……」
感情が暴走してか、ポロリと涙が零れ落ちた。
一粒零れ落ちると、止まる事無く次から次へと流れ落ちてくる。
「ユウ。落ち着いて、な? ユウには俺がついているだろ? 癒しには程遠いかもしれないが……」
「ええっと、俺が悪いのか? あー……。まあ、なんだその……」
延々と泣き続ける私と、その私を慰めようとする体格の良い男性二人。
傍から見たらおかしいだろうけど、そんな事を気にする余裕はない。
「別に怒ってないからいいよ。
泊まる所はねー。出来たら綺麗なところがいいなぁ。あ、新しいっていう事じゃなくて清潔そうなって事ね」
「……そうだな。それに兎耳族がいれば尚良しってところだろ? ユウなら」
「それはもちろん! でも、兎耳族は宿屋の経営はしていないから、無理なんだよね。あーあ」
ナユタが話題転換に乗ってくれたので、不自然にならない様に更に内容を膨らます。
残念な気持ちは本当なので、第三者が聞いたところで違和感は感じない筈。
誰が聞いているというわけでもないけど、なんとなく、ね。
そんな感じで会話をしながら、私達が見つけたのはこじんまりとして可愛らしい感じの宿だった。
出入り口の両端にプランターが二、三個置いてあり、慎ましく黄色と白の小さな花が咲いていた。壁は木の風合いをそのまま生かしており、屋根と宿屋の看板がピンク色に斑なく塗られている。
新しい建物ではないが、特に目立った汚れも壊れている所もなかったのでキチンと管理されていると思う。
「ナユタ。ここでいいよね?」
「そうだな。空きがあるのを願っておこう」
ナユタの了承も得たので、意気軒昂と宿屋のドアを開けた。
「いらっしゃい」
出迎えてくれたのは、もふもふ。基──狼人族だった。
「泊まりか?」
「ああ。二部屋希望だが、空きはあるか?」
「どーしてっ! どーしてなのよぉっ……」
行き成り叫びだした私に驚いたのか何なのか……。
鋭い一瞥を貰いました。狼人族らうじんぞくの──男性にっ!!
可愛さの微塵もない、このおじ……お兄さんに睨まれるとちびっ子は間違いなく失禁しちゃうだろうというぐらい怖い顔。
身体を鍛えるのが趣味ですか? と聞きたいぐらい、筋肉隆々で逆三角形な体型。上半身に関してはナユタより体格良いよ、間違いなく。
内勤より外勤、事務職より肉体労働。そんな言葉を体現している風貌なのに、何故っ!!
「おいおい、大丈夫か? この嬢ちゃん……」
「まあ、問題ない。理由も分かってるしな」
悲嘆にくれる私を余所に、ナユタとその男性私の事を話している。
行き成り叫びだした私が悪いとは思っている、それでもやっぱり叫ばずにはいられない。
「なんで、なんでこんな逞しいのよー!! ううっ。ここはもっと可愛らしいもしくは色気のあるお姉さんでしょうが……」
「は? 本当に大丈夫なのか?」
「いや、まあ。時間が経てば……」
「ううっ。私の癒し……」
感情が暴走してか、ポロリと涙が零れ落ちた。
一粒零れ落ちると、止まる事無く次から次へと流れ落ちてくる。
「ユウ。落ち着いて、な? ユウには俺がついているだろ? 癒しには程遠いかもしれないが……」
「ええっと、俺が悪いのか? あー……。まあ、なんだその……」
延々と泣き続ける私と、その私を慰めようとする体格の良い男性二人。
傍から見たらおかしいだろうけど、そんな事を気にする余裕はない。
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