気がついたら異世界転移してました!?~変わったのは世界と私達!?

かもめ みい

文字の大きさ
上 下
2 / 13

しおりを挟む
 はっ? えっ? 今、なんて言った?

「異世界……?」
「そうだ。目が覚める前の事、何も思い出せないか?」
「さっき起きたばかりだから……。ちょっと待ってね。えっと、とりあえず確認だけど、私は気絶落ちじゃないって事?」
「ああ、そうだ。此処には自分達の足で来てそのままチェックインの受付をした。記憶にはないか?」

 自分達で……。だからなんとなく見覚えがあったのかな?

 でも、宿屋って何処も似たような作り出し、一概にそうとも言えない?
 それに、こんな事でナユタが私にわざわざ嘘をつくとは思えないし。

 彼とはこのゲームでパーティーを組んで一年は経っているから、ある程度の彼の人となりというか、性格は知っているつもりだ。
 例え、VRという仮想世界でキャラを作っていたにしても、それでも一年もキャラを徹底して演じてわざわざこのタイミングでそれを壊すような、そんなしょうもない嘘をつく事はしないだろう。


 私だってこのユウ──ユウトというキャラを作っている。
 今となってはほとんど地がでているけど、それでも初対面の人や知人レベルの人には作ったキャラで接している。
 それをわざわざ壊そうとは思わない。ある程度慣れたら、自然と壊れていっちゃうというか、徐々に地に近づいていっているというか。
 でもそれは意図して壊しているわけじゃないから、騙しているわけでは……。って、あれ? なんか混乱してる?

 ええっと、ええっと……。

 完全に混乱していた私は温かいものに包まれていた事に、暫く経って気が付いた。

 包まれた事によって、トクントクンと規則正しく聞こえる心音は自分以外のもので、その音が私の心を落ち着かせてくれた。

 そして、そんな事をしてくれる人はただ一人しかいない。

「ナユタ……」
「焦らなくていい。ゆっくりとでいいから……」
「うん……。暫く、こうしててもらってもいい?」
「勿論だ」
「ありがとう……」

 ナユタがいてくれてよかった……。

 本当に、頼りになる優しいお兄さんだよね。

 さて、もう一度よく考えてみよう。

 ナユタはここはVRではなく、現実だって言ってた。しかも異世界。
VRじゃないなら、なんでナユタは此処にいるの?
そして異世界だと、現実だと思う理由は?

「ねぇ、ナユタ。仮に此処が現実で、異世界だとしたらどうしてナユタはナユタの──VRのキャラなの?」
「そうだなぁ……。ユウは何か思い出したか?」
「ごめん……。何にも。でも、思い出せないのは直前? の事で、それより前の事とかは覚えてるよ!
 えっと、確か天空の塔の攻略をしていたよね?」

 私は記憶を呼び起こす。



 ユウ──ユウト事、私、諏訪優那は約二年前からVRMMORPGのオズをプレイしていた。

 VRMMO──仮想現実大規模多人数オンラインの事で、元は軍事目的やら医療目的に作られていたのを、日本の一企業がどうにかしてゲームに流用できないものかと開発をしたのが最初。

 さすが、ゲーム大国日本だね、なんて自国の事ながら感心したよ。

 発売当初はそれはうーんと高かったけど、ゲーマーの多い国でしかも極める事が好きな人が多かったんだろうね。
 勿論、そこに絡む利益も凄かったんだろうけど僅か十年程で、値段は発売当初の五十分の一にまで落ちた。
 ついでにゲーム機もかなりコンパクトになって、ヘッドマウントギアと脈を図るブラッディープレシャーボックスとネット回線が接続されていて、横になれる場所であれば問題なくゲームが出来るようになった。

 発売当初は、かなり大きな筐体だったらしいから、技術革新というか、技術者の方々の目まぐるしい努力のお蔭だと思う。

 装置のコンパクト化もあってか爆発的に売れ、それに伴ってゲームの種類も沢山増えた。
 今では子供からお年寄りまでVRをやって当たり前の時代だ。

 もう少し現実を現実として認識できる年代になってからという事で、乳幼児など小さい子供は禁止されているけどね。

 そんな数あるゲームの中から、私がなんとはなしに選んだのが『オズ』だった。

 よくあるファンタジーの世界。
色々な種族、冒険など、本当によくある設定、ストーリーだった。
 じゃあなんで選んだかというと、CMで使われていたキャラが可愛かったからという事と、アバター──自キャラ──のパーツが多く、より個性を出せそうだったから。
それだけの理由。

 さあ、どんなキャラを作ろうかと思った時に何をやりたいかと考えて、魔法が使いたいよねー。じゃあ魔法に秀でた種族がいいよねーと、単純に考えて種族はエルフを選択した。

エルフの顔パーツは美形なものが多かったんだけど、それはなんかありきたりな感じがして、此処は綺麗より可愛いがいいよなぁと必死に可愛い顔を探した。
 どうせ可愛いいを目指すならレベルの高い可愛いを目指そう!と、より必死になってパーツを探した。

 お蔭で軽く半日を費やし、ついでに気に入る色がなかったから泣く泣く課金をして出来たのは、透き通るかのような肌の色と天使の環が綺麗に出る銀髪のボブにパッチリお目目の煌くアメジストの瞳、そしてぷっくりとした桜色の唇をもつ天使の如く可愛らしい、大人へと成長して行く途中のアンバランスさがまたなんともいえない危うさの色気を醸し出している十六歳の──王子様。

 そう、王子様。

 なんていうか、テンションがおかしかったんだろうね。
 あまりの可愛さに、ここはいっそ男の子、いや男の娘でいっちゃおうよ! なんて何をとち狂ったんだか、性別『男』で決定してしまいました。

 ログインして一日経って、ハッと我に返った時は、やってしまったという思いで自部屋の床をゴロゴロと転げまわったよ。
 でも、この最高傑作を消す事は私には出来ないから開き直った。
もう気にせず男の娘やってやった。

 服装も装備も、なるべく可愛いものを選んで、見た目女の子になったよ。
 可愛いのは正義っ! なんて心の中で呟いて。
 性別も開示さえしなければ別に問題ないしね。……うん、問題ないよね。

 さすがに仲が良くなった人には説明して性別明かしたけど、中の人の性別に関してはノーコメントで通しきった。
 そこは、個人情報という事でね。

 そんな感じで出来たのが、エルフの魔法使い『ユウト』。仲がいい人には『ユウ』って呼んでもらっている。
 その方が現実の名前とあんまり違和感ないから反応しやすいんだよね。まあ、それが原因で地が出やすいって言うのもあるんだけどさ。

 ユウトの見た目も女の子のものだったから特におかしくはなかったし、概ね受け入れられてたよ。
 拒否反応示す人にはあんまり近寄らないようにしたしね。

 嫌な思いをしてまでゲームはやりたくなかったし。だってゲームは楽しむ為のものなんだから。



 一年間ソロをしたり色々なパーティーに入ったりしてたけど、そろそろ落ち着きたいなぁと思った時に出会ったのがナユタだった。

 ナユタは竜人族という戦闘特化の種族だった。
 戦闘特化なので、元からの体力や防御力は抜群に高く近接攻撃が得意中の得意で、魔法特化の私にとってパーティーを組むには最適の相手だった。

 竜人族は基本的に体躯の大きい──筋肉ガッチリ系の人が多かったけど、ナユタはその人達と比べると幾分かスレンダーだった。

 正直、ムキムキな人が苦手な私にとって竜人族の人はあまり組みたくない相手だったけど、ナユタの体躯なら全然気にならなかったから、お試しでパーティーを組んだ。

 慣れるまでは、竜人族の特徴である縦長の瞳孔のある瞳でジッと見つめられると、何か気に障る事でもしたのかとちょっとビクビクしてたけど、ナユタと付き合っていくうちにそれが彼の癖なんだと気が付いたから今では平気になった。

 ふとした拍子に、ナユタを見ると結構な確率で目が合うから私が勝手に癖だと思っているんだけどね。

 でも、ナユタにはもうすこし自分の容姿をちゃんと把握してほしいと思っている。
若干つり目だから、じっと見つめられると余計に怖いんだよ。本人はそれに気付かないから注意のしようもないんだよね。
 目が怖いから、じっと見ないで欲しいんだけど……。なんて到底言えないし。それってなんか失礼な気がするしね。

 ほんと、なんでつり目にしたんだろうね?

 アバター作成は個人の自由というか、想いだからあんまり突っ込んでは聞けない。だって私はそれで嫌な思いをしたが事あるから。
だから、私から他の人にはアバターについて何かを質問する事はないんだけど……。

どうしても気になったから聞いてしまった。

 答えは、リアルが若干たれ目になっているからというまさかのリアル事情っ!

 どうリアクションしていいのかわからなかったので、どうにか誤魔化す事にした。

「ナユタの個性でとってもいいと思うよ。私は、ナユタはとってもカッコイイと思うしね」

 極上の笑顔をつけて、ついでに上目遣いで──ユウトの身長は百五十程しかないので必然的に上目遣いにはなるけれど──さらにおまけをつけて小首まで傾げてあげましたともっ!

 そん所そこらの乙女より可愛いユウトのこの攻撃で、誤魔化されない筈はないっ!

 例え中の人が、内心で恥ずかしさのあまり転げまわっていたとしてもねっ!

 ナユタは「ありがとう」と柔らかく微笑んで、私の頭を撫でてくれた。

 誤魔化せたのかは分からないけど、私の気持ちは汲み取ってもらえたと思う。

 そんなこんなで、お試し期間を終えた私達はお互いに不満も特になく、戦闘でも連携をとりやすかったのでそのままパーティーを続行する事にした。

 そしてそれは今に至る訳なんだけど……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『自重』を忘れた者は色々な異世界で無双するそうです。

もみクロ
ファンタジー
主人公はチートです!イケメンです! そんなイケメンの主人公が竜神王になって7帝竜と呼ばれる竜達や、 精霊に妖精と楽しくしたり、テンプレ入れたりと色々です! 更新は不定期(笑)です!戦闘シーンは苦手ですが頑張ります! 主人公の種族が変わったもしります。 他の方の作品をパクったり真似したり等はしていないので そういう事に関する批判は感想に書かないで下さい。 面白さや文章の良さに等について気になる方は 第3幕『世界軍事教育高等学校』から読んでください。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

クラスで異世界召喚する前にスキルの検証に30年貰ってもいいですか?

ばふぉりん
ファンタジー
 中学三年のある朝、突然教室が光だし、光が収まるとそこには女神様が!  「貴方達は異世界へと勇者召喚されましたが、そのままでは忍びないのでなんとか召喚に割り込みをかけあちらの世界にあった身体へ変換させると共にスキルを与えます。更に何か願いを叶えてあげましょう。これも召喚を止められなかった詫びとします」  「それでは女神様、どんなスキルかわからないまま行くのは不安なので検証期間を30年頂いてもよろしいですか?」  これはスキルを使いこなせないまま召喚された者と、使いこなし過ぎた者の異世界物語である。  <前作ラストで書いた(本当に描きたかったこと)をやってみようと思ったセルフスピンオフです!うまく行くかどうかはホント不安でしかありませんが、表現方法とか教えて頂けると幸いです> 注)本作品は横書きで書いており、顔文字も所々で顔を出してきますので、横読み?推奨です。 (読者様から縦書きだと顔文字が!という指摘を頂きましたので、注意書をと。ただ、表現たとして顔文字を出しているで、顔を出してた時には一通り読み終わった後で横書きで見て頂けると嬉しいです)

【完結】そして、誰もいなくなった

杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」 愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。 「触るな!」 だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。 「突き飛ばしたぞ」 「彼が手を上げた」 「誰か衛兵を呼べ!」 騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。 そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。 そして誰もいなくなった。 彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。 これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。 ◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。 3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。 3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました! 4/1、完結しました。全14話。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

日本は異世界で平和に過ごしたいようです。

Koutan
ファンタジー
2020年、日本各地で震度5強の揺れを観測した。 これにより、日本は海外との一切の通信が取れなくなった。 その後、自衛隊機や、民間機の報告により、地球とは全く異なる世界に日本が転移したことが判明する。 そこで日本は資源の枯渇などを回避するために諸外国との交流を図ろうとするが... この作品では自衛隊が主に活躍します。流血要素を含むため、苦手な方は、ブラウザバックをして他の方々の良い作品を見に行くんだ! ちなみにご意見ご感想等でご指摘いただければ修正させていただく思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。 "小説家になろう"にも掲載中。 "小説家になろう"に掲載している本文をそのまま掲載しております。

悪役貴族に転生したから破滅しないように努力するけど上手くいかない!~努力が足りない?なら足りるまで努力する~

蜂谷
ファンタジー
社畜の俺は気が付いたら知らない男の子になっていた。 情報をまとめるとどうやら子供の頃に見たアニメ、ロイヤルヒーローの序盤で出てきた悪役、レオス・ヴィダールの幼少期に転生してしまったようだ。 アニメ自体は子供の頃だったのでよく覚えていないが、なぜかこいつのことはよく覚えている。 物語の序盤で悪魔を召喚させ、学園をめちゃくちゃにする。 それを主人公たちが倒し、レオスは学園を追放される。 その後領地で幽閉に近い謹慎を受けていたのだが、悪魔教に目を付けられ攫われる。 そしてその体を魔改造されて終盤のボスとして主人公に立ちふさがる。 それもヒロインの聖魔法によって倒され、彼の人生の幕は閉じる。 これが、悪役転生ってことか。 特に描写はなかったけど、こいつも怠惰で堕落した生活を送っていたに違いない。 あの肥満体だ、運動もろくにしていないだろう。 これは努力すれば眠れる才能が開花し、死亡フラグを回避できるのでは? そう考えた俺は執事のカモールに頼み込み訓練を開始する。 偏った考えで領地を無駄に統治してる親を説得し、健全で善人な人生を歩もう。 一つ一つ努力していけば、きっと開かれる未来は輝いているに違いない。 そう思っていたんだけど、俺、弱くない? 希少属性である闇魔法に目覚めたのはよかったけど、攻撃力に乏しい。 剣術もそこそこ程度、全然達人のようにうまくならない。 おまけに俺はなにもしてないのに悪魔が召喚がされている!? 俺の前途多難な転生人生が始まったのだった。 ※カクヨム、なろうでも掲載しています。

処理中です...