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○小話
ねえさまとにいさま1
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「そこまでっ!」
ビクトール先生の制止の声に、今まで構えていた剣をゆっくりと下していきます。
その動作だけでも、腕が悲鳴を上げているのでしょう。
ブルブルと小さく震えてしまっています。
「キツイだろ? だが、身体強化に頼っていては強くならないからな。
これも強くなる為には必要な事だ!」
「ええ、もちろん分かっておりますわ。私、是式のことでは根はあげませんわよ?」
ただのお遊びだと勘違いされてはたまりませんわ。
私、お母様のようになるのが夢ですから!
目標はお母様を超える事、ですのよ?
……。
少々厳しいかしら……。
「ありがとうございました」
「おう! まぁ、ゆっくり休め」
「はい。勿論ですわ。適度な休息も体づくりには大切な事、ですわよね?」
「はははっ。よく分かってるじゃないか」
そう言うと、からりと笑ってビクトール先生は出て行かれました。
「ふぅ……」
一呼吸おくと、額から滴り落ちる汗が気になってきました。
集中している時は気にならないのですが……。
今は訓練着なので、ハンカチなどが入るポケットなどはついておりません。
仕方ないですわね……。
そう思って手の甲で拭おうとしたところ、突然、清涼な風が身体全体を包み込みました。
そして滴り落ちる汗どころか、身体全体の汗や不快感も、風がなくなると同時に消え去ります。
これは……。
「お兄様……」
「シーア。令嬢が手で汗を拭うのはちょっといただけないなぁ……」
振り返ると此方に歩いてきているお兄様の姿が見えます。
やはりお兄様の魔術でしたのね。
そんな笑いながら言われても、感謝なんかしませんわよ?
「もうっ! 汗をシャワーで流すのが、頑張ったとひしひしと感じる瞬間ですのよ?
清浄魔術を使われてしまったら、物足りなくなってしまいますわ」
「えー? いいの? ユーリに『ねえしゃま、汗くちゃいでしゅ』なんて言われても?」
「っ!?」
それは絶対嫌ですわっ!!
「まさか、近くにユーリがおりますのっ!?」
「いや、いないけど?」
「お兄様っ!!」
もうっ!
ニシシッと悪戯が成功したとでも言う様に笑うお兄様に、思わず頬が膨らんでしまいました。
動揺のあまり、こんな子供っぽい仕草をするなんて、私もまだまだですわね。
「まぁ、手で汗を拭うなとは言わないけれど、一応気をつけては欲しいかな?」
「どういう事ですの?」
「シアは公爵令嬢じゃないか。僕達家族は気にしないけどさ。世の中の男性は公爵令嬢に夢を持っているからね。
そんな令嬢が手で汗を拭う? 夢も幻滅だよね」
「私、人前ではそんな事いたしませんわ」
「はぁー……。シアもまだまだだね……」
何がまだまだですの?
令嬢教育?剣術?いえ、この場合は令嬢教育ですわね。分かってますわよ、もちろん。
だって、お兄様より私の方が剣術は出来ているはずですもの。ふふふっ。
「んー。なんか脳筋の香りがする……。
シーア。まさか剣術では……。何て考えてないよね?」
「まっ、まぁっ! お兄様失礼ですわよ!
私の令嬢教育がまだまだと仰りたいのでしょう? それぐらい分かっておりますわ!」
「はぁ……」
なぜか盛大なため息がお兄様から返ってきました。
何ですの?
「いや、うん。分かってたよ、分かってたけれども……。
やっぱり父様に言って結界の強化と母様に……?
なんて言えば良いか分からないから、丸投げしよう! うん、そうしよう!
だってこれ、僕が考え込む事じゃない気がするしね」
もうっ!
ブツブツ呟くのは人がいないところでしていただけないかしら?
ビクトール先生の制止の声に、今まで構えていた剣をゆっくりと下していきます。
その動作だけでも、腕が悲鳴を上げているのでしょう。
ブルブルと小さく震えてしまっています。
「キツイだろ? だが、身体強化に頼っていては強くならないからな。
これも強くなる為には必要な事だ!」
「ええ、もちろん分かっておりますわ。私、是式のことでは根はあげませんわよ?」
ただのお遊びだと勘違いされてはたまりませんわ。
私、お母様のようになるのが夢ですから!
目標はお母様を超える事、ですのよ?
……。
少々厳しいかしら……。
「ありがとうございました」
「おう! まぁ、ゆっくり休め」
「はい。勿論ですわ。適度な休息も体づくりには大切な事、ですわよね?」
「はははっ。よく分かってるじゃないか」
そう言うと、からりと笑ってビクトール先生は出て行かれました。
「ふぅ……」
一呼吸おくと、額から滴り落ちる汗が気になってきました。
集中している時は気にならないのですが……。
今は訓練着なので、ハンカチなどが入るポケットなどはついておりません。
仕方ないですわね……。
そう思って手の甲で拭おうとしたところ、突然、清涼な風が身体全体を包み込みました。
そして滴り落ちる汗どころか、身体全体の汗や不快感も、風がなくなると同時に消え去ります。
これは……。
「お兄様……」
「シーア。令嬢が手で汗を拭うのはちょっといただけないなぁ……」
振り返ると此方に歩いてきているお兄様の姿が見えます。
やはりお兄様の魔術でしたのね。
そんな笑いながら言われても、感謝なんかしませんわよ?
「もうっ! 汗をシャワーで流すのが、頑張ったとひしひしと感じる瞬間ですのよ?
清浄魔術を使われてしまったら、物足りなくなってしまいますわ」
「えー? いいの? ユーリに『ねえしゃま、汗くちゃいでしゅ』なんて言われても?」
「っ!?」
それは絶対嫌ですわっ!!
「まさか、近くにユーリがおりますのっ!?」
「いや、いないけど?」
「お兄様っ!!」
もうっ!
ニシシッと悪戯が成功したとでも言う様に笑うお兄様に、思わず頬が膨らんでしまいました。
動揺のあまり、こんな子供っぽい仕草をするなんて、私もまだまだですわね。
「まぁ、手で汗を拭うなとは言わないけれど、一応気をつけては欲しいかな?」
「どういう事ですの?」
「シアは公爵令嬢じゃないか。僕達家族は気にしないけどさ。世の中の男性は公爵令嬢に夢を持っているからね。
そんな令嬢が手で汗を拭う? 夢も幻滅だよね」
「私、人前ではそんな事いたしませんわ」
「はぁー……。シアもまだまだだね……」
何がまだまだですの?
令嬢教育?剣術?いえ、この場合は令嬢教育ですわね。分かってますわよ、もちろん。
だって、お兄様より私の方が剣術は出来ているはずですもの。ふふふっ。
「んー。なんか脳筋の香りがする……。
シーア。まさか剣術では……。何て考えてないよね?」
「まっ、まぁっ! お兄様失礼ですわよ!
私の令嬢教育がまだまだと仰りたいのでしょう? それぐらい分かっておりますわ!」
「はぁ……」
なぜか盛大なため息がお兄様から返ってきました。
何ですの?
「いや、うん。分かってたよ、分かってたけれども……。
やっぱり父様に言って結界の強化と母様に……?
なんて言えば良いか分からないから、丸投げしよう! うん、そうしよう!
だってこれ、僕が考え込む事じゃない気がするしね」
もうっ!
ブツブツ呟くのは人がいないところでしていただけないかしら?
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