涙は枯れないのね

涙は枯れないのね。

涙って枯れないのね。

貴方が亡くなっても、私はきっと泣かないのだろうなって思ってたよ。
　認知症になる前はよく口喧嘩をしていたからね。
認知症になった後も、貴方の記憶の浮き沈みで怒ったことも沢山あったし。
勿論笑ったこともあったよ。

　体調が悪くなって、ずっと病院だったね。
それでも悲しさは感じてなかったよ。
世界のこの状態で面会も全然出来なくて、それでも平気だったよ。

でも、今、そこに居なくても生きているっていう事がどれだけ大きいのかって初めて知ったよ。

　貴方が居なくなって、初めて分かったよ。

　絶対泣かないって思ってた。
でも、今。
貴方の事を思い出すと、貴方の話をすると、そして貴方の顔を見ると、それだけで涙が幾らでも出てくるよ。
　止まる事なく、この涙はどれだけ作られているのか不思議に思うほど。

　幸せだった、なんて分からないよ。
貴方の元に生まれて、育ててもらって、幸せだー！！って言えたら良いんだけど、今は何も分からないよ。
でも、ありがとう。育ててもらったことに感謝しています。

　色々な事が本当にあった、あったね。
苦悩した事もあったね。
力には全くなれてなかったけど、それでも、自分の力で苦悩を乗り越えて、今まで頑張ってきた貴方に、今までお疲れ様でしたって言うべきなんだろうね。
　でも、本当はもうちょっと頑張って欲しかったよ。
ぐだぐだ言ったり、言われたりしながらでも、生きていて欲しかったよ──お父さん。

長い間、本当に本当にありがとうございました。
　私が貴方の子供として生まれたことで、貴方が少しでも幸せを感じてくれていたのなら、嬉しいです。

　お父さん、ありがとう──。