ヴァンパイア♡ラブどっきゅ〜ん!

田口夏乃子

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第十二話 「魔法のラブレター」

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ジュンブライトのところにやってきたマドレーヌちゃんは、にこっと笑った。
 
「ジュンブライトお兄様っ。」
 
マドレーヌちゃんの声に気づいたジュンブライトは、後ろを振り向いた。
 
「なんだ?」
 
「一緒に遊びましょう!」
 
「いいぜ。なにして遊ぼうか。」
 
「あたしは、トランプがいい!」
 
「あたしは、かるた!」
 
「私は、おままごと!」
 
「じゃあ、トランプしよう。マドレーヌトランプを持ってこい。」
 
「は~い!」
 
マドレーヌちゃんは、机の上においてあった、トランプを持ってきた。
と、ソラちゃんと、マドレーヌちゃんと、道華と、アキちゃんと、トランプで遊んでいる間、ルクトさんがこっそり、部屋に入ってきた。
ルクトさんは、部屋の中を、見渡している。
ラブレターを、探しているのだ。
 
「え―っと、ラブレターは・・・・・・。」
 
あ!机の上に、ラブレターがある!
 
「ルクトさん!つくえの上に、ラブレターが!」
 
ジュンブライトに気づかれないように、小声で教えると、ルクトさんは机に向かって、そ―っと、歩き始めた。
机の前に来ると、ルクトさんは、ラブレターに手を出そうとした。
 
「じいや、なにやってるんだ?」
 
「ひぃぃぃぃぃ!」
 
ま、まずい!
 
「い、い、いや・・・・・・なんでもないです。」
 
「本当か?けど、机の上にある、あるものを、取ろうとした気がするなぁ。」
 
ぎくぅ!
ルクトさん!ラブレターを取って、すぐ逃げて!
 
「王子、ごめんなさいっ!」
 
ルクトさんは、ラブレターを取って、ぱっと逃げた。
 
「あ、こら!じいや!俺の大事なものを、取るなぁ~!」
 
ジュンブライトは、ルクトさんを追いかけ始めた。
 
「ごめんなさいっ!王子を元に戻すためなんですっ!いつもの王子に戻ってください!真莉亜様を愛していた、あのころの王子に!」
 
「ふっ、やだね。あのクソ女のことは、忘れた。今の俺の彼女は、ネルしかいないんだ!」
 
ジュンブライト・・・・・・。
 
「リリア様!」
 
ルクトさんが、ラブレターを、リリアさんの方に投げると、リリアさんは、ラブレターをキャッチして、外に飛び出した。
 
「返して欲しけりゃ、ネルと別れなさい!さもないと、このラブレターを、やぶるわよ!」
 
「お義姉さん!てめぇ、よくも俺を裏切ったなぁ!信用してたのに!」
 
「どぅわぁれが、お義姉さんよ!クリス!」
 
「ニャッ!」
 
ラブレターをくわえたクリスさんは、へいの上を走った。
 
「ニャーニャーニャッ、ニャッ、ニャッ!」
 
・・・・・・なんて言ってるか、わかんない。
 
「ジュンブライト様!あたしをつかまえてごらんなさい!うふふふふ~って、言ってるわ。」
 
リリアさん、クリスさんの通訳、お願いします!
 
「うわぁぁぁぁぁぁ!」
 
ジュンブライトが、追いかけてこないことに気づいて、クリスさんは、塀の上に飛び下りて、元の姿に戻った。
 
「どうなさったんですか?ジュンブライト様。」
 
「う・・・・・・。」
 
ジュンブライトは、腰をぬかして、ブレスレットをはずして、服を脱ぎ捨てた。
 
「あつい・・・・・・あつい!」
 
ちょっ、ジュンブライト!
 
「あたし達を、だきしめないでくださいっ!」
 
大胆なこと、しないでよ!
ジュンブライトは、私とクリスさんをだきしめながら、たおれた。
 
「はぁ、はぁ、はぁ。」
 
う、うわぁ。ジュンブライトの体、あせがびっしょりだよ。
ドクン、ドクン、ドクン、ドクン!
なにもしていないのに、心臓の音が、ますます、ひどくなるよぉ。
こ・・・・・・これはヤバイよぉ!
 
「はぁ、はぁ・・・・・・ありがとう。お前達のおかげで、すずしくなった。感謝するぜ。」
 
そ、そんな・・・・・・。
 
「大胆なことをして、あたし達にお礼を言うなんて・・・・・・。」
 
「キューンとするじゃありませんか―っ!」
 
プシューッ!
私とクリスさんの鼻から、大量の鼻血が出た。
も、もう、しあわせ~♡
 
「もう、死にた~い♡」
 
「こらー!ぬわーに鼻血を出してんだい!」
 
「紅葉!救急箱!」
 
「うわぁ、すんごい鼻血を流してる・・・・・・。」
 
「って、みなさん!治療している場合じゃありませんよーっ!」
 
「今だ!」
 
ジュンブライトは、立ち上がって、自分の服とブレスレットを持って、ラブレターを手にとって、走り始めた。
 
「じゃあな。ラブレター、返してくれて、ありがとうな。」
 
「そうはいきません!」
 
「わっ!」
 
誰かが、ジュンブライトをおそった。
 
「う・・・・・・ん!?あれ!?」
 
ジュンブライトは、自分の体をさわった。
 
「ない、ない!ラブレターが、な~い!」
 
「へへーん、残念でしたぁ。」
 
ジュンブライトが、前を見ると、そこにはマドレーヌちゃんがいた。
 
「マドレーヌ!」
 
「服、着がえてください。かぜ、ひきますよ?」
 
「あ。」
 
ジュンブライトは服を着て、ブレスレットをはめた。
 
「マドレーヌ、そのラブレターを、返してくれないか?俺の言うこと、聞いてくれるよな?いとこだから。」
 
「いやです!」
 
マドレーヌちゃんが言うと、ジュンブライトは、マドレーヌちゃんを、細い目でにらんだ。
 
「ああん?お兄様にはむかうなんて、いい度胸だなぁ!」
 
ジュンブライトがマドレーヌちゃんに手を出そうとした、その時。
 
「お父さん!」
 
道華が、マドレーヌちゃんの前に立ちはだかって、ラブレターをとった。
 
「なにをするんだ?道華。」
 
「ネルとお母さん、どっちが好きなの?」
 
道華が質問すると、ジュンブライトは、ふっと笑った。
 
「もちろん、ネルだぜ。」
 
「うそを言わないで!本当は、お母さんが好きなんでしょ?心の中で、そう思ってるでしょ!?」
 
「うそは言ってない。道華、春間真莉亜は、にせもののお母さんだ。本物のお母さんは、ネルだ。」
 
「ジュンブライト様っ!」
 
今度は、アキちゃんとソラちゃんが、マドレーヌちゃんの前に立ちはだかった。
 
「バカなこと、言わないでくださいっ!」
 
「そうです!道華のお母さんにふさわしいのは、真莉亜お姉ちゃんですっ!」
 
「・・・・・・なんで、あたしがあのバカ女の味方にならなきゃいけないのよ。」
 
アキちゃんがひそひそ声で、ソラちゃんに話した。
 
「真莉亜お姉ちゃんのためだもん。」
 
「あ、そ。なら、今回は特ってことで。」
 
「お父さん!このラブレター、やぶるよっ!」
 
道華が、ラブレターをやぶろうとしている。
 
「あの、バカで、方向オンチで!」
 
「恋に不器用なバカ剣士のことを、忘れてくださいっ!」
 
「また、お母さんのことを愛してよ!」
 
「どぅわぁれが、恋に不器用だって?」
 
屋根から声が聞こえた。
ジュンブライトが振り向くと、そこにはネルさんがいた。
 
「ネル!」
 
「ジュンブライト様!」
 
ネルさんはうれしそうに、屋根の上から飛び下りて、ジュンブライトにだきついた。
 
「愛してるよ、ネル。」
 
「あたしもです♡ジュンブライト様♡」
 
「ネルさん!」
 
私が大きな声でさけぶと、ネルさんの表情が変わった。
 
「真莉亜!安静にした方が・・・・・・。」
 
大丈夫。もう、鼻血、おさまったから。
看病してくれて、ありがとう。さっすが、私の友達だねっ。
 
「真莉亜・・・・・・。」
 
「なんだ?春間真莉亜。」
 
「ジュンブライトを返してください!道華!」
 
「うん!」
 
道華が投げたラブレターを、私はキャッチして、ラブレターをやぶろうとした。
 
「さもないと、このラブレター、やぶりますよ?」
 
「バ・・・・・・バカなまね、するんじゃねぇ!」
 
怒りにおさまらなくなったネルさんは、刀を出して、私の方にぱっと走って、刀を私の首に向けた。
 
「バカなまねをしているのは、あなたよ。」
 
リリアさんが、きっぱり言った。
 
「うるせぇ!この、アホ姉貴がっ!ジュンブライト様、こいつの首、きっていいですか?」
 
ネルさん!にこっと笑いながら、言わないでくださいよぉ!
 
「いいぜ。こいつはもう、ゴミだから。」
 
ジュンブライト・・・・・・。
 
「はい。では・・・・・・。」
 
ちょっとまってくださいっ!まだ、心の準備が・・・・・・。
 
「なにか、死ぬ前に言いたいことはねぇか?」
 
え・・・・・・・?
 
「遺言だよ、遺言。」
 
わ、私、死にたくありませ~ん!
 
「早く言え!」
 
ひぃぃぃぃぃ!
 
「ジュンブライト!あなたのこと、忘れないから!天国に逝っても、私、あなたのことを愛してますから!」
 
「・・・・・・バカな遺言だなぁ。」
 
「じゃあ、きるとするか。お前ら、春間真莉亜の首が、ぶっとぶところを、だまって見てろ。」
 
「お母さん!」
 
道華!
 
「真莉亜お姉様~!」
 
マドレーヌちゃん!
 
「真莉亜様!」
 
ルクトさん!
 
「真莉亜お姉ちゃ~ん!」
 
ソラちゃん!
 
「真莉亜!」
 
リリアさん、テレサさん、紅葉、クリスさん、アキちゃ~ん!今まで、ありがとうございましたぁ!
最後に、あの有名なまんがに出てきた、名言を言います!
 
「愛してくれて、ありがとう!」
 
「『ОNEPICE』かっ。」
 
ピュー。
 
「でやーっ!」
 
シュッ、シュッ、シュッ、シュッ!
・・・・・ん?私、死んでない。生きてる!
あれ?あそこにある、粉々なっているものはなんだろ。
紙みたいだけど・・・・・・あ!
これ、ラブレターだ!
あの時、いいタイミングで強い風が吹いて、それと同時に、ラブレターが風で吹き飛ばされて、ネルさんがまちがえて、きってしまったんだ!
ネルさんは、目をまるくしているよ。
 
「・・・・・・あなた、きるもの、まちがってない?」
 
「やっかましいわ!あぁ、あたしが愛情をこめて書いたラブレターが、こんなに・・・・・・!一体、誰がラブレターを、こんなに粉々にしたんだよぉ!」
 
「あんたでしょ。」
 
「・・・・・・真莉亜。」
 
ジュンブライト!
私はジュンブライトにだきついた。
 
「私のこと、愛してる?」
 
「あたり前だろ?それがどうした。」
 
ううん、なんにもない。
 
「え―っ?教えろよぉ。」
 
おしえなーい。
 
「なんだよぉ。もう、いじわるだなぁ。」
 
チュッ、チュッ、チュッ、チュ・・・・・・。
ジュンブライトが、私のほっぺたに、キスをした。
もう、やめてよぉ。くすぐったいじゃない。
 
「いじわるするから、罰ゲームだよーん。」
 
チュ・・・・・・。
ジュンブライトがまた、私のほっぺたにキスをした。
 
「よかったねぇ、元に戻って。」
 
「・・・・・・ところでさ、俺、手紙を読んだとたん、急に記憶がぶっとんだんだよ。」
 
え?なにも覚えてないの?
 
「うん。」
 
ジュンブライトがうなずくと、リリアさんが私の肩をたたいた。
 
「ネルがジュンブライトのことが好きっていうこと、ナイショにしときましょう。」
 
と、リリアさんが、私の耳元でささやいた。
 
「はい。」
 
「う・・・・・・。」
 
ネルさんが、涙を流している。
それに気づいたジュンブライトは、ネルさんに近づいた。
 
「どうしたんだ?ネル。」
 
「ほっといてくださいっ!」
 
ネルさんは、ぱっと走り出した。
 
「・・・・・・?俺、なにかしたか?」
 
してない、してない。
 
「あ、そ。」
 

 
 
(ちっくしょー!フラれっちまったぁー!なんであたしは、恋に不器用なんだよぉ!もう、ジュンブライト様に、会わせる顔がない。さようなら、ジュンブライト様春間真莉亜と、しあわせでいてください。あのきれいな満月が、あなたの美しいお顔に見えます。)
 
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