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第十話 「ネルさんの弟子」

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ザー、ザー、ザー。
朝から雨が降っていた。
雨がふるなか、私達は歩いていた。
 
「ジュンブライト様♡あたしとあいあい傘しましょう♡」
 
クリスさんが、瞳の中にあるハートを輝かせながら、ジュンブライトのところまで、スキップして行った。
 
「わりい。俺、かささしてるから。てか、お前とあいあいがさする気ねぇ。」
 
「ガーン。」
 
クリスさんは、かさを落として、落ちこんだ。
 
「そ・・・・・・そんなぁ~。」
 
落ちこむクリスさんのところに、テレサさんがかけよった。
 
「かさ、ささないと、かぜ、ひいちゃうよ。」
 
「あんたとあいあいがさ、したくない!」
 
「いや、しようとしてないんだけど。」
 
クリスさんはかさを拾って、立ち上がって、かさをさして、ふたたび歩き始めた。
その横を、道華とマドレーヌちゃんとアキちゃんとソラちゃんが、走った。
 
「わ~い!」
 
「こら、あんた達。そんなに走ったら、危ないよ。」
 
テレサさんが、大きな声で注意した、その時。
 
「あっ!」
 
ソラちゃんが、足をすべらせた。
ソラちゃん、大丈夫?
 
「う・・・・・・うわ~ん!」
 
ソラちゃん、泣かないで。
 
「あんなに走るからでしょ!」
 
「うわ~ん!」
 
ソラちゃんの泣き声が、だんだん大きくなってゆく。
 
「ソラ。泣かないで。みんなのめいわくになっちゃうわ。さ、おんぶしてあげるから、おいで。」
 
紅葉がしゃがむと、ソラちゃんは紅葉の背中にだきついて、だきついた瞬間、紅葉が立ち上がって、歩き始めた。
 
「ごめんね、紅葉。」
 
「いいの。お姉ちゃんって、大変ね。」
 
紅葉はクリスさんに向かって、にこっと笑った。
 
「ネルさーん。ついてきてますかぁ?」
 
私は、後ろにいるネルさんに声をかけた。
 
「うるせぇ!ついてきてるよ!」
 
「そんなの、言ったらだめよ。真莉亜は、方向オンチのあなたを心配して、言ってるんだから。」
 
「やっかましいわ!」
 
「もう、着きましたよぉ。」
 
私達は、菜の花広場にたどり着いた。
菜の花広場に入ると、女の子がいた。
リュウちゃんだった。
ネルさんはかさを落として、ニヤリと笑った。
 
「またせたな、リュウ。決闘しようぜ!」
 
ネルさんの声に気づいたのか、リュウちゃんは、後ろを振り向いた。
 
「よくこられましたね。方向オンチのくせに。」
 
「失礼なっ!」
 
すると、リュウちゃんが、刀を出した。
 
「始めましょう!」
 
「ああ!久しぶりの決闘だから、わくわくするぜ!」
 
ネルさんは、刀を出した。
 
「でやーっ!」
 
「はぁーっ!」
 
二人は走って、刀を重ねた。
 
「相変わらず、お強いですね!」
 
「あたり前だ。それより、聞きたいことがある。」
 
「聞きたいこと?」
 
「ああ、『雷神の風』だ。あのわざは、天気によって、使用できる。『雷神の風』は、雨の時だけ使用できるわざ。つまり、天気が晴れの時、使用できないわざだ!」
 
「!?」
 
リュウちゃんは、自分の刀を離した。
そっか!それでリュウちゃん、決闘の日付を、今日にしたんだ!
 
「お前、果たし状を書く前に、新聞を見ただろ?天気を調べるために。あと、その方法を理解した者は、死なずにするって、あたしのじいちゃんが、言ってたんだ。」
 
「さっすが、桜吹雪のネルさんですね。見てください!私の新しい必殺技を!」
 
ゴロゴロゴロゴロ・・・・・・。
かみなりの音が聞こえた。
ピカーッ!
大きなかみなりが光った。
 
「キャーッ!」
 
私とクリスさんと道華とアキちゃんは、ジュンブライトにだきついた。
 
「お・・・・・・お前ら!だきつくなって!」
 
リュウちゃんの刀が、黄色に光っている。
 
「これが私の必殺技!雷神の風!」
 
リュウちゃんの背後に立った雷神が、ネルさんをおそいにきた。
そして、大きな雷神が、かみなりを鳴らして、リュウちゃんはニヤリと笑った。
 
「雷神の怒りを思い知れー!」
 
リュウちゃんは、黄色く光っている刀を、ネルさんの近くで大きくきると、強い風が吹いてきて、雷神のかみなりとともに、ネルさんをおそった。
 
「桜の壁!」
 
ネルさんがさけんだとたん、花びらが降ってきて、壁になって、ネルさんを、『雷神の風』から守った。
そして、『雷神の風』が、桜の花びらとともに、消えた。
 
「あたしに勝とうとは、いい度胸してるなぁ!桜吹雪のネルをなめんなぁ!」
 
ネルさんは、刀を振りかざすと、ニヤリと笑った。
 
「桜吹雪の舞!」
 
ネルさんがさけんだあと、空から桜の花びらが吹ってきた。
そして、桜の花びらが、ネルさんの前に出た。
こ・・・・・・これが・・・・・・。
 
「『桜吹雪の舞』・・・・・・か。」
 
「でやーっ!」
 
ネルさんは、桜の花びらとともに、リュウちゃんのところに走った。
シュ!
ネルさんは、リュウちゃんの髪の毛をきった。
リュウちゃんの髪の毛は、少しだけ落ちた。
 
「・・・・・・どうだ。これが、『桜吹雪の舞』の力だ。」
 
リュウちゃんは、その場で腰をぬかした。
 
「ま、参りました・・・・・・これが、『桜吹雪』の力・・・・・・!」
 
リュウちゃんは、口をふるわせながら、言った。
 
「お前、強くなったな。ガキのくせによぉ。」
 
「ガキじゃありません!ピッチピチの14歳ですっ!」
 
リュウちゃんは、ネルさんに向けて、土下座をした。
ネルさんは、土下座するリュウちゃんを見つめた。
 
「も・・・・・・もう、あなたに教えられる必要はありませんっ!」
 
「・・・・・・つまり、弟子をやめるってことか。」
 
「ぐ・・・・・・!」
 
リュウちゃんは、唇をかみしめている。
目は涙でいっぱいになって、かわいい顔は、鼻水で台無しになっている。
 
「さ・・・・・・最後の最後まで、めいわくをかけて、すびばぜんでしたぁぁぁぁぁ!」
 
リュウちゃんは泣きながらさけんだ。
それにつられて、ネルさんは、涙を流して、鼻水をたらしながら、口を動かした。
 
「バ・・・・・・バカヤロー!桜吹雪のネル様を、泣かせるんじゃねぇー!」
 
ネルさんのさけび声が、空まで響いた。
 
「全く、泣き虫なんだから。」
 
リリアさんは、大声で泣くネルさんの姿を見て、にこっと笑った。
 
 

 
 
それから3日後。ネルさんからお届け物がきた。
ジュンブライトが、ダンボールを開けると、メロンが入っていた。
 
「おお!夕張メロンじゃねぇか!ん?なんだこりゃ。」
 
ジュンブライトが、不思議そうに、メロンの上にあった手紙を手にした。
これ、ネルさんからじゃない?
 
「ほんとだ!ネルからだ!」
 
ジュンブライトはうれしそうに、手紙を広げた。
手紙には、こんなことが書いてあった。
 
〈拝啓 ジュンブライト様。 お元気ですか?
リュウと別れて3日たちました。
あたしは今、長崎にいます。
けど、一つ疑問があります。
長崎人は、なんて言ってるのか、全然わかりません・・・・・・。
あと、3日前、みっともない姿をお見せして、誠にすみません。
長崎で修行して、強くなって、帰ってきます。
ネルより〉
 
ネルさん、また道に迷ってるんだぁ。
 
「ネルのやつ、中国で迷子になってるな。」
 
ジュンブライトが、手紙に入っていた、ネルさんとパンダの2ショットを見つめながら、つぶやいた。
 
 
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