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第1章

第三十八話 「ウルフ一郎さん、また人間になる?」

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「うぇーん、うぇーん!」

「……ゔぅ。ガオンにおっぱい、やらないと。」

ガチャッ。

「んく、んく、んく……。」

「よーし、よし。おいしいかぁ?」

ん!?ウルフ一郎が、ガオンにミルクをやってる!

「おい、お前!」

「あ、ネル、おはよう。」

おはようじゃなくて!
なんでミルクをやってんだ!

「ん?毎日おっぱいをやったら、なくなるからと思って。」

……。もう、いい。

「あ、ご飯、俺様がつくったから。」

……はいはい。


                           ☆

「あ、う!」

ガオンはおもちゃで遊んでいる。
そして、あたしは皿を洗っている。

「ネル。」

って、おい!
いきなり背後からだきつくなよっ!
しにくいじゃねぇかぁ。

「アハハハハ。」

笑うんじゃねぇ……ふっ。

「うふふふふ。」

「フハハハハハ!」

だんだん、こいつとの深い愛が、芽生えたような気がする……。


                             ☆


よし、ガオンのおむつはかえたっと!
あとはお買い物に行くだけ……。
ん?あいつ、どっか行こうとしてるぞ?
はっ、まさか!

(……もう、愛し合わなかったら、いい。おとぎの国に帰ろう。さようなら、ネル。お前との夫婦生活、楽しかったぜ。)

「まて、ウルフ一郎!」

あたしはいきなり、ウルフ一郎の背後にだきついた。

「お願いだ……行かないでくれ……。あたしのそばから、離れないでくれ。また、さびしい思いをすんじゃねぇか。」

「あ……。」

「『たのむ、行かないでくれ……。あたし、お前がいなくなると、さびしく感じるんだよぉ。』」

(……あの時と同じだ。)

ピカーッ!

「……ネル。」

黒くてモフモフとした毛皮の手が、あたしの手を、ぎゅっとにぎった。

「あぁ。どこにも行かない。お前と、ずっと一緒にいたいから。」

ウルフ一郎……。お前、オオカミに戻ってる……。

「へっ?」

ウルフ一郎は、自分の体や耳を触り始めた。

「うわあああ!ほんとだぁぁぁ!俺様、元に戻ってるぅ!ネルが愛する心を取り戻したから、戻れた……!」

なに言ってるんだか。けどまあ、よかったな。

「ああ!」

と、ウルフ一郎がニッと笑った、その時!

「うぇーん、うぇーん!」

あっ、ガオンを置いて来ちゃった!

「ガオーン、ごめんねぇ。よーちよち。もう、大丈夫だよぉ。」

「う、う~!」

「ガオーン、お父しゃん、元に戻りまちたよーん♡」

「う、う~!」

「や……やっと泣かなくなった……。」



                              ☆
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