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第1章

第三十三話 「時間」

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う~ん、やっぱりなやむなぁ~。

「真莉亜さん、もう決めましたか?」

あ、ヒアン様。
まだ決めてません。

「そうか……いつでもいいから、言ってください。」

そう言って、ヒアン様は、私の横を通って行った。
や……優しい……。
けど、なやみます。

「真莉亜ちゅわ~ん♡」

その声は……。

「ウルフ一郎さん!」

ウルフ一郎さんが、目をハートにして、足を竜巻のように速く動かして、こっちへ走って来るのが見える。

「どうしたのぉ~?そんなになやんでぇ。なにかあったのぉ~?」

あ、実はぁ……ちょっと、あることでなやんでるんです。

「あることでなやんでるぅ?」

(ま、まさか!最近、テンパヤローとの関係があやふやで、もう、どーしようもならないとか!?)

(俺様も一緒だ、真莉亜ちゃん!)

(最近、ネルは俺様に冷たいし、もう、離婚届を出そうかなぁ~?っと、思ってるんだ!だから……。)

「真莉亜ちゅわ~ん♡一緒に浮気しよ~ん♡」

は?なに言ってるの?

「実はですね……。」


                                    ☆


私は、ウルフ一郎さんに、女王になるかどうかのことを話した。
そしたらウルフ一郎さんは、たばこを「フー。」と、吸っちゃって。

「なるほどねぇ。それでなやんでいるのかぁ。」

はい。
私はこくりとうなずいた。

「ま、別にいいじゃねぇの?なってもならなくても。」

ウルフ一郎さんまで……。

「ウルフ一郎さんは、どう思いますか?私が女王になって欲しいか、ならなくていいか。」

「俺様?そうねぇ。」

ウルフ一郎さんは、サングラスの奥に光る、夜行性の目で、私を見つめた。

「……女王様にふさわしいのは、君しかいないよ、真莉亜ちゃん。」

え……。

「俺様、2年前からずーっと、君を見ていたけど、君は優しいし、困っている人がいたら、放っておけないタイプだし、大切な人を思う気持ちもあるし、それに、正義感があるし。君が女王様になったら、この国はもっと、平和になるかもしれねぇ!そして、もっといい国になるかもしれねぇ!この国を変えるのは、君しかいないよ、真莉亜ちゃん!俺様、君が女王になって欲しいんだよ!」

ウルフ一郎さん……。

「私も同じです、真莉亜お姉様。」

えっ!?マドレーヌちゃん!?
で、でも、マドレーヌちゃん、それでいいの!?私がなったら、もう二度と、なれないかもしれないんだよ!?

「その夢はもう、あきらめました!」

う、うそ……。

「私、聞いてたんです。ジュンブライトお兄様と、真莉亜お姉様が話しているところを。私、正直言って、残念な気持ちになりましたけど、ずっと前から、真莉亜お姉様を見ていて、この人なら、ヴァンパイア界を、より平和な国に変えられると、信じてました。私、女王になるのはあきらめて、副女王になって、真莉亜お姉様を、サポートしていきますっ!」

マドレーヌちゃん……。
ウルフ一郎さん。

「ん?どうした?」

「私、決めました。」

「なにを?」

私は笑顔で、ウルフ一郎さんの方を振り返った。

「私、ヴァンパイア界の女王になりますっ。」

「真莉亜ちゃん……ふっ、そうこなくっちゃね。」

はいっ!
私は笑顔でうなずいた。
では早速、ヒアン様に言ってきま~す!

「気を付けてね~!」

ウルフ一郎さんは、私の方に向かって、手を振った。



                                ☆
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